現預金の推移から見る銀行員の融資可否判断

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まずは5期程度の貸借対照表の現預金項目の数字の推移を見ます。
そして現預金の数字が増加傾向にあればその取引先は大丈夫、逆に減少していればその取引先は要注意となります。
極めてざっくりとした見方ですが、この見方が意外に正しいのです。

粉飾決算だった事例

私が以前担当して取引先に以下のような事実がありました。
損益計算書を見る限り、毎期売上が増加し利益も順調に伸びています。
利益が順調に伸びているということはその取引先は儲かっているということです。
儲かっていれば現預金は増えるはずです。
ところがこの取引先の貸借対照表を現預金の数字の推移を見ると、増加するどころか逆に減少しています。
これはやはりおかしいですよね。
私はこの取引先の社長に上記の疑問点をぶつけてみました。
社長から返ってきた回答は売上が増えているから運転資金が増加しているためというものでした。
確かに売上が増加すれば所要運転資金は増加します。
しかしこの取引先の現預金の減り方は所要運転資金の増加額を上回るものでした。
後で判明したことなのですが、この決算書は嘘でした。
つまり売上・利益とも水増しをした粉飾決算だったのです。

貸付金利用による粉飾決算

また以下のような事例もありました。
その取引先の貸借対照表の現預金の推移を見ると減ってはいませんが逆に増えてもいません。
損益計算書を見るとやはり売上・利益とも増加基調にありました。
利益が伸びていれば現預金も増えるはずです。
しかしこの取引先の場合には増えもせず減ってもいません。
このような時は利益で儲かっている資金が現預金ではなく、どこに向かっているのかを確かめましょう。
貸借対照表の現預金以外の項目で増加している項目をチェックするのです。
増加している項目が売掛金や在庫など営業性のものであればまず懸念はありません。
ところがこの取引先のケースでは社長宛の貸付金が増えていました。
つまり損益計算書で計上されている利益は社長宛の貸付金に向かっているのです。
私は社長に貸付金の中身を確認しました。
社長からに回答は「これは実質は接待交際費だ」ということです。
「受注を確保するためには表には出せない経費が必要だ」というのです。
社長の言うこともわからないのではないのですが、融資の判断においては別の見方をする必要があります。
つまりこのケースでは社長宛の貸付金が増えているのは実質接待交際費です。接待交際費というのは本来なら経費として損益計算書の計上されるべきものです。
それが貸付金として処理されているということは経費処理がなされていませんから、その分だけ利益は水増しされているということです。
このことから損益計算書に計上されている利益ほどこの会社は儲かっておらず、実質の接待交際費を加味すると利益はほとんど出ていない状態だったのです。
そのために貸借対照表の現預金は増加していなかったのです。
融資判断を行う上では損益計算書に計上されている利益をそのまま返済能力に加えることは出来ず、実態の利益にて返済能力を修正した上で検討しています。

このように貸借対照表の現預金の推移を見ることで取引先の実態を銀行員は見ようとします。
真に儲かっていれば現預金は増えます。
赤字であれば現預金は減少します。
現預金は嘘をつかないのです。



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