銀行交渉・銀行対応

銀行から事業計画書の提出を求められた理由とは?融資審査で確認する2つのポイント

「銀行から事業計画書を提出してほしいと言われた」

「決算書を提出しているのに、なぜ事業計画書まで必要なのだろうか」

「銀行は事業計画書のどこを確認しているのだろうか」

銀行に融資を申し込んだ際、このような疑問を感じる中小企業の経営者もいらっしゃると思います。

銀行が事業計画書の提出を求めるのは、単に会社の将来の売上や利益を知りたいからではありません。

銀行が事業計画書を求める目的は、主に融資額の妥当性を検証することと、融資の返済可能性を検証することの2つです。

このうち、特に重要なのが返済可能性です。

また、銀行は提出された事業計画をそのまま信用して融資を判断するわけではありません。

計画の実現可能性を確認するとともに、計画どおりに売上や利益が確保できなかった場合でも、融資の回収に大きな懸念がないかという点も検証しています。

この記事では、長年にわたり銀行の法人営業・融資審査に携わってきた経験を踏まえ、銀行が事業計画書を求める理由と、融資審査で実際に確認しているポイントを説明します。

結論|銀行が事業計画書を求める理由は主に2つ

銀行が事業計画書を求める主な理由は、次の2つです。

  1. 申し込まれた融資金額が妥当かどうかを確認するため
  2. 融資した資金を将来返済できるかどうかを確認するため

例えば、会社が新規事業のために3,000万円の融資を申し込んだとします。

銀行としては、まず新規事業に本当に3,000万円が必要なのかを確認します。

さらに、新規事業からどの程度の売上や利益が見込まれ、その利益やキャッシュフローによって借入金を返済できるのかを確認します。

ここで重要なのは、銀行が返済可能性を重視していることです。

融資金額の必要性が十分に説明できても、返済できる見通しが乏しければ、銀行は融資に慎重になります。

銀行が事業計画書で最も確認したいのは、融資を実行した後も会社が返済を継続できるかどうかです。

理由1|銀行は融資額の妥当性を検証している

希望する融資金額が必要資金と一致しているか

銀行は、融資申込金額が会社の事業に必要な金額と見合っているかを確認します。

例えば、会社が新たな設備を導入するために融資を申し込む場合、銀行は設備の見積書や契約書などを確認します。

設備の購入価格が2,000万円で、自己資金を500万円充当する計画であれば、銀行からの融資必要額は原則として1,500万円になります。

このような場合、会社が3,000万円の融資を希望しても、その金額が必要な理由を別途説明できなければ、銀行は融資額を妥当と判断しにくくなります。

新規事業では必要資金を項目別に確認する

新規事業では、設備投資だけでなく、事業開始後の運転資金も必要になる場合があります。

例えば、次のような計画です。

資金の内容 必要金額
機械設備の購入 1,500万円
店舗・事務所の内装 500万円
事業開始時の仕入資金 400万円
売上入金までの人件費等 600万円
必要資金合計 3,000万円

※説明のための仮定事例です。運転資金は支払時期と売上入金時期を踏まえて算定する必要があります。

このように必要資金を具体的に示せば、銀行は融資希望額の妥当性を検討しやすくなります。

一方、「事業を拡大したいので3,000万円必要です」という説明だけでは、金額の根拠が十分とはいえません。

また、銀行は必要資金のすべてを融資するとは限りません。自己資金、既存借入金、事業規模なども踏まえて融資額を検討します。

理由2|銀行は融資の返済可能性を検証している

融資審査で特に重要なのは返済できるかどうか

銀行は、融資した資金を将来返済してもらうことを前提として融資を行います。

そのため、事業計画書で確認する重要な項目は、今後の売上や利益の見通しです。

ただし、売上が増加する計画であればよいというわけではありません。

売上が増えても利益が確保できなければ、返済原資を十分に生み出せない可能性があります。

また、利益が出ていても売掛金や在庫が増加すると、資金繰りが厳しくなる場合があります。

銀行は、売上高や利益だけでなく、キャッシュフローや資金繰り、既存借入金の返済負担なども確認します。

事業計画上の利益と借入金返済額を比較する

例えば、融資後の会社の年間収支が次のようになるとします。

項目 年間金額
税引後利益 800万円
減価償却費 400万円
簡易的な返済原資 1,200万円
既存借入金の年間元金返済額 700万円
新規融資の年間元金返済額 300万円
年間元金返済額合計 1,000万円

※説明のための仮定事例です。税引後利益と減価償却費の合計は簡易的な目安であり、実際の返済能力は運転資金の増減、設備投資、税金支払いなども考慮して判断します。

この例では、簡易的な返済原資1,200万円に対し、年間元金返済額は1,000万円です。

数字の上では返済原資が返済額を上回っています。

しかし、銀行はこの計算結果だけで融資の返済が可能だと判断するわけではありません。

そもそも税引後利益800万円という計画に実現可能性があるのか、資金繰りに余裕があるのかなどを確認します。

銀行が確認しているのは、事業計画書に書かれた返済能力ではなく、実際に実現する可能性の高い返済能力です。

銀行は事業計画をそのまま信用しているわけではない

バラ色の事業計画は融資審査で逆効果になることがある

銀行から融資を受けたいという思いが強いと、事業計画書の売上や利益を大きく見積もってしまうことがあります。

例えば、直近の売上高が1億円の会社が、翌期は1億5,000万円、翌々期は2億円になるという計画を提出したとします。

もちろん、新規の大型受注が確定しているなど、具体的な根拠があれば、そのような成長計画も検討対象になります。

しかし、具体的な材料がないまま売上高が急増する計画を提出しても、銀行がその内容を鵜呑みにすることはありません。

むしろ、融資を受けるために都合のよい数字を並べただけではないかと疑われる可能性があります。

銀行は、事業計画が実現できるかどうかを慎重に確認しています。

売上計画には具体的な根拠が必要

売上増加を見込む場合には、例えば次のような資料が役立ちます。

  • 販売先別の売上計画
  • 商品・製品・サービス別の販売計画
  • 受注済み案件の一覧
  • 商談中案件の進捗状況
  • 販売単価と販売数量の見通し
  • 過去の売上実績との比較

例えば、売上を年間1,000万円増やす計画であれば、主要販売先A社への追加販売600万円、新規販売先B社への販売400万円というように、増加額の内訳を示します。

さらに、その販売がどの程度確実なのかを説明します。

受注が確定している案件と、営業目標にとどまっている案件は分けて整理してください。

利益計画にも根拠が必要

利益の増加を見込む場合も同様です。

例えば、粗利益率を25%から28%に改善する計画であれば、なぜ3ポイント改善できるのかを説明する必要があります。

販売価格を引き上げるのか、仕入価格を引き下げるのか、利益率の高い商品の販売割合を増やすのかなど、具体的な改善策を示します。

事業計画書は、数字が大きいほど銀行の評価が高くなる資料ではありません。

控えめな計画であっても、具体的な根拠があり、返済可能性を説明できる方が銀行の検討材料として有用です。

銀行は事業計画が下振れした場合も検証している

ここが、銀行の事業計画に対する見方を理解するうえで特に重要なポイントです。

銀行は、提出された事業計画が予定どおり進むことだけを前提に融資を検討しているわけではありません。

事業では、売上が計画を下回ったり、原材料価格が上昇したり、予定していた受注が遅れたりすることがあります。

そのため銀行は、計画どおりに業績が推移しなかった場合でも、融資の返済や回収に大きな問題が生じないかを確認します。

計画どおりの場合と下振れした場合を比較する

例えば、融資後の年間返済計画について、次のような2つのケースを考えます。

項目 基本計画 下振れ計画
年間売上高 1億2,000万円 1億円
税引後利益 800万円 200万円
減価償却費 400万円 400万円
簡易的な返済原資 1,200万円 600万円
年間元金返済額 1,000万円 1,000万円
返済原資との差額 +200万円 ▲400万円

※説明のための仮定事例です。売上減少による利益への影響は業種や費用構造によって異なります。

基本計画では返済原資が年間元金返済額を上回っています。

しかし、売上が計画を下回り、利益が減少すると、簡易的な返済原資は600万円となり、年間元金返済額1,000万円に対して400万円不足します。

銀行としては、この不足をどのように補うのかを確認する必要があります。

下振れした場合の対応策も重要

事業計画が下振れした場合には、次のような対応が考えられます。

  • 不急の設備投資を延期する
  • 削減可能な経費を見直す
  • 売掛金の回収や在庫管理を改善する
  • 事業に使用していない資産の売却を検討する
  • 手元資金を踏まえて返済計画を見直す
  • 資金不足が見込まれる場合には早期に銀行へ相談する

ただし、これらの対応策を挙げるだけでは十分ではありません。

例えば、売掛金回収の早期化を計画する場合には、どの販売先とどのような条件変更を協議できるのかを確認する必要があります。

また、手元資金が不足している場合、銀行が必ず追加融資に応じるとは限りません。

銀行は、計画未達となった場合の資金繰りも含めて検証します。

担保があれば返済能力が不足していてもよいわけではない

銀行が融資の回収可能性を検証する際には、担保や保証による保全状況を確認することもあります。

しかし、担保があるから返済能力を確認しなくてもよいということではありません。

銀行融資では、通常、事業から生み出される利益やキャッシュフローによって返済されることが基本です。

担保や保証は、返済が難しくなった場合の回収可能性を検討する材料の一つです。

そのため、担保があっても事業計画の実現可能性や返済能力が不十分であれば、融資が難しくなる場合があります。

銀行から事業計画書を求められた社長が準備すべき資料

銀行から事業計画書の提出を求められた場合、まず銀行が何を確認したいのかを担当者に質問してください。

そのうえで、次の資料を準備すると説明しやすくなります。

資料 銀行が確認する内容
事業計画書 事業内容、売上・利益の見通し
資金使途の明細 融資額の必要性と妥当性
見積書・契約書等 設備投資などの必要金額
販売先別・商品別売上計画 売上計画の具体的な根拠
損益計画 今後の収益力
資金繰り表 現預金の推移と資金不足の有無
借入金一覧表 既存借入金を含めた返済負担
下振れ時の試算 計画未達時の返済可能性

すべての融資申込みで同じ資料が必要になるわけではありません。

設備資金か運転資金か、新規事業か既存事業の拡大かなどによって、必要な資料は異なります。

銀行融資・資金繰りのメール相談

「銀行から事業計画書を求められたが、何を説明すればよいか分からない」

「融資希望額の根拠や返済可能性をどう示せばよいか悩んでいる」

「事業計画が下振れした場合の銀行対応も考えておきたい」

このようなお悩みはありませんか。

長年の法人融資・融資審査の経験を踏まえ、銀行が確認するポイントや事業計画、返済計画、資金繰りの考え方についてメールでご相談を受け付けています。

※ご相談はメールで受け付けています。融資の承認や実行を保証するものではありません。

事業計画を提出した後に毎月確認すべき数字

事業計画書は、銀行に提出したら終わりではありません。

融資を受けた後も、実際の業績が計画どおりに進んでいるかを確認する必要があります。

特に、次の項目を毎月確認することをおすすめします。

  • 売上高:計画と実績にどの程度の差があるか
  • 売上総利益率:予定した利益率を確保できているか
  • 営業利益:本業の収益力が計画どおりか
  • 売掛金・在庫:運転資金が想定以上に増えていないか
  • 現預金残高:手元資金が不足していないか
  • 借入金返済額:今後の返済を継続できるか

特に重要なのは、利益と資金繰りを合わせて確認することです。

売上や利益が計画を下回っている場合には、原因を分析するとともに、今後の資金繰りにどのような影響があるかを確認してください。

事業計画が予定どおり進まない場合の銀行対応

計画と実績の差を説明する

事業計画を提出した後、実績が計画を下回ることもあります。

その場合、計画未達という事実だけでなく、なぜ未達となったのかを説明することが重要です。

例えば、主要販売先からの受注が遅れているのであれば、その理由と今後の受注見通しを整理します。

原材料価格の上昇によって利益率が低下しているのであれば、価格改定や仕入条件の見直しなどの対応策を示します。

返済への影響を早めに確認する

計画未達によって資金繰りが悪化する場合には、借入金返済への影響も確認します。

例えば、今後3か月から6か月の資金繰り表を作成し、返済を続けた場合の現預金残高を試算します。

資金不足が見込まれる場合には、早めに銀行へ相談することが重要です。

銀行に相談する際には、計画未達の原因、改善策、今後の資金繰り見通しを説明できるようにしてください。

事業計画書の提出前に確認する8項目チェックリスト

銀行に事業計画書を提出する前に、次の項目を確認してください。








チェック数:0 / 8

このチェックリストは準備状況を確認するためのものです。チェック数によって融資審査の結果が決まるものではありません。

銀行から事業計画書を求められた場合のよくある質問

Q1.決算書を提出しているのに、なぜ事業計画書が必要なのですか?

決算書は過去の業績や財務内容を確認する資料です。一方、事業計画書は今後の事業見通しや返済可能性を確認するための資料です。特に新規事業や設備投資など、将来の収益が融資返済に大きく関係する場合には重要になります。

Q2.銀行に良い印象を与えるために高い売上目標を示した方がよいですか?

売上目標が高いこと自体が評価につながるわけではありません。重要なのは計画の実現可能性です。具体的な根拠がないバラ色の計画は、かえって銀行の信頼を損なう可能性があります。

Q3.事業計画どおりに進まなければ融資を受けられませんか?

計画が必ず実現すると保証することはできません。銀行は計画の実現可能性に加えて、下振れした場合の返済能力や資金繰り、担保・保証なども踏まえて判断します。

Q4.事業計画書を提出すれば希望額どおりの融資を受けられますか?

事業計画書を提出しただけで希望額どおりの融資が受けられるわけではありません。銀行は必要資金の妥当性、返済能力、既存借入金、財務内容などを確認し、融資額を検討します。

Q5.事業計画書は税理士や専門家に作成してもらってもよいですか?

専門家の支援を受けて作成することは可能です。ただし、社長自身が計画の前提や数字を理解し、銀行に説明できることが重要です。

まとめ|銀行は事業計画の実現可能性と融資の回収可能性を確認している

銀行から事業計画書の提出を求められる理由は、主に融資額の妥当性と返済可能性を確認するためです。

このうち、銀行が特に重視しているのは返済可能性です。

事業計画書に将来の売上や利益が記載されていても、銀行がその数字をそのまま信用するわけではありません。

販売先別の売上見通しや、価格改定、原価削減などの具体的な根拠を確認し、実現可能性を検証します。

さらに、銀行は事業計画が予定どおりに進まなかった場合も想定しています。

売上や利益が計画を下回った場合に、借入金の返済や資金繰りにどのような影響があるのかを確認しているのです。

銀行に提出する事業計画書では、計画どおりに進めば返済できるという説明だけでなく、計画が下振れした場合にもどのように対応するかを示すことが重要です。

銀行から事業計画書を求められた場合には、融資希望額の根拠、売上・利益計画の実現可能性、返済計画、下振れ時の対応策を整理して説明してください。

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