例年よりも多額の融資相談

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過去に管理者が担当していたD社の事例です。
D社はいわゆる塗装業です。
売上規模は10 億円弱の規模で業歴は30年ほどを有する中小企業です。
銀行取引は当行の他に地元の地銀の2 行体制です。
D社の塗装工事の受注は秋口から冬場にかけて集中する特徴を従来より有しています。
そして工事代金の回収は工事完成後の春過ぎとなりますから、秋口から春過ぎまで資金需 要が旺盛になる特徴がありました。
この資金需要を当行と他行の2 行で折半して以前から支援をしてきた経緯があります。
そんなD社から夏場に例年のように融資の申し出がありました。
使途は例年と同じ工事代金回収までのつなぎ資金です。
今年は工事受注が好調とのことで例年よりも少し融資要請額が増加していました。
私は資料をいただいた上でさっそく融資稟議の作成に着手しました。

無担保与信のピーク越え

例年と同じだからそれほど手をかけることもなく、翌日には上司に稟議書を提出しました。 ところが上司からは融資額を少し減らせないかと指示がありました。
その理由を上司に聞くと、過去のD 社に対する融資取引状況を見てみると融資のボリュームが過去のピークを超えるとともに、いわゆる無担保扱いの金額も過去のピークを越えて しまうということでした。
融資のボリュームが過去のピークを超えることよりも無担保扱いの金額がピークを超える ことが重いと指摘を受けました。
私はD社との過去の融資取引の履歴を改めて調査をしました。
その結果、過去のD社に許容していた無担保与信は2 年ほど前の1 億円でした。
ところが今回、仮にD社の希望通りの金額・条件で実行するとなると、過去の無担保与信の許容額を3,000 万円ほど超えてしまうことがわかりました。

担当先とのやり取り

私はD社に出向き融資金額が今回増額となった理由を中心に交渉を行いました。
当方:「先日ご相談いただいたご融資につき、現在銀行内で検討をさせていただいておりま す。今回のご融資額は例年よりも大きな金額となっており、過去のお取引のピークを超え る金額となり、そこが銀行内の検討のポイントなっています。
そこでまず確認したいのですが、いつも当行と地銀さんの2 行で融資を受けられていますが、地銀さんにはいくら融資の相談をされましたか?」
先方:「御行と同じ金額です。単純に必要総額を2 つの銀行さんで折半した金額となります」
私の質問の趣旨は地銀への融資相談額が例年よりも減少していないかを確認したかったのです。
つまり何らかの事情で地銀さんからの融資額が減る可能性があるために、その分を当行へ の融資希望額に上乗せしたのではないかの確認です。
もし地銀への融資相談額の減少分を当行に上乗せしているのであれば、簡単に受け入れな れないケースとなります。
これは例年 2 行で折半して融資を支援してきたものの、地銀の姿勢が消極的なため地銀へ の融資相談額を減らし当行に上乗せしたものであれば、それはネガティブな事柄として受 け入れが容易ではないからです。
幸いに先方の回答は所要総額を例年通り2行で折半したものとのことでしたので、ひとまず安心です。
融資額増額となる詳細な根拠はないか
当方:「そうですか。わかりました。ところで先日、融資総額が増える理由としては工事受 注が増加していると伺いました。一定の資料はすでにいただいているのですが増えた理由が詳しくわかる追加の資料の提出をお願い出来ませんか」
先方:「例えばどのようなものですか」
当方:「現在の工事受注一覧は先日いただきました。しかし残念ながら直前にいただいた決 算書では減収減益のご決算でした。この状態では融資額を増額することに対して銀行内でもいろいろな意見があります。 そこでなのですが、これと同じ類の資料で昨年、一昨年の同時期の工事受注状況がわかるものがあると良いのですが」
私としてはD社の担当者として当社の融資希望額に満額にて対応したいと考えていました。 しかし前期決算が減収減益の状態で過去の無担保与信許容額のピークを超えるにはつらい 状況でした。

そのために融資希望金額が増えた理由をより詳しく、明確に稟議書上にて訴えるために比 較可能な工事受注状況の把握資料を要請したのです。
私としては例年よりも工事受注が増加しているため融資希望金額が増えたことを前向きな 事象として捉えることにより対応することを検討したのです」
先方:「少しお時間をいただければ整理をしてお渡しすることは出来ます。用意をしますか ら数日待ってください」
当方:「ありがとうございます。ところでまだ今の段階でお話するようなことではないかと 思いますが、早めに伝えた方が良いかもしれませんのであえてお伝えします。
今回の融資額ですが昨年の同じ金額まで減額をお願いする結論になるかもしれません。そ れでも大丈夫でしょうか?」
先方:「御行の判断で無理だとすればそれはしょうがないです。何とか繰り回せるように考 えます。しかし出来る限り先日お願いした融資額までお願いします」
当方:「もちろん最善の努力はします。もう 1 つあえてお伺いします。御社からの資材置き 場として利用されている不動産に私どもが根抵当権を設定しております。こちらの不動産 の当行評価額は設定中の根抵当権よりも高額な状態です。こちらの根抵当権の極度額を増 額してご融資は希望金額まで対応させていただくという案はいかがでしょうか」
無担保与信の過去ピークを超えないために私としては不動産担保の根抵当権を増額して無 担保与信を増加させない可能性を探ったのです。
先方:「そこまでは考えていません。根抵当権を増額しようとすれば余計な費用もかかりま すから」
当方:「わかりました。それでは不動産担保は現行のままで先日のご融資希望額まで対応で きるように努力しますので今しばらくお時間をください」
その後D社から工事受注状況の過去からの推移が分かる資料を徴求しました。
過去の推移を比べて足許の工事受注額は増加していますから、それを根拠に融資の稟議を
行いました。
結果としてはD社の希望通りの満額にて融資対応が出来る結論となりました。



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