「融資の折り返し」という言葉が銀行融資の現場ではよく口にされます。
この「折り返し」はマラソンの折り返しなどで使わる意味とは少し異なります。
融資の折り返しとは具体的にどのようなことなのかを説明します。
銀行融資の折り返し資金とは
銀行融資の折り返し資金とは過去に融資を実行して現在返済中のものを元々の融資額に戻して返済が進んだ金額を追加融資することです。
折り返し資金はよく運転資金の場面で利用されていますので運転資金を例にして折り返し資金を説明します。
運転資金の折り返し資金とは
銀行融資の折り返し資金は主に運転資金の融資の場合に使われます。
中小企業向けの銀行の運転資金融資には短期融資ではなく、毎月の返済が付与された長期融資の形態で行われることが少なくありません。
長期資金にて運転資金の融資を実行した場合に、しばしば折り返し資金が登場します。
次の図をご覧ください。
この図の例は運転資金として5,000万円の融資を期間5年の分割返済で行われた場合です。
毎月返済を続けちょうど2年半後には当初5,000万円の融資残高は2,500万円になりました。
ここで新たに5,000万円の融資を実行して先に融資した残高2,500万円のものを同時に全額繰上返済を行います。
実質的にはプラス2,500万円の追加融資を行ったことになりますが、この一連の手続きが折り返し資金です。
そして再び毎月の返済を続けていくことになります。
今回は当初の融資期間5年のちょうど半分の時点で折り返し資金を実行しましたが、特に半分の時点という決まりはありません。
融資実行後1年後に折り返し資金の融資を行う場合もありますし、4年後に行う場合もあります。
いずれにしても折り返し資金は融資の返済途中で返済が進んだ分を復元するものです。
運転資金は常時必要な資金
折り返し資金融資はしばしば運転資金で行われます。
といいますが折り返し資金融資は運転資金の場合のみの取扱いと言ってもよいでしょう。
運転資金というのは事業を行っている限り、常時必要な資金です。
売上金の回収金でもって次なる仕入れに充てたり、従業員の給与に充てたりと事業の継続には欠かせない資金となります。
その資金を分割とはいえ銀行融資の返済に充てていると、肝心の運転資金が不足することになります。
そこで「折り返し資金」のニーズが登場するのです。
折り返し資金融資は必ず行わるものではない
もっとも折り返し資金といっても銀行にとっては新たな融資となり、融資残高が増加する案件です。
折り返し資金の融資を実行するには当然のことながら銀行内では融資稟議が行われます。
業績の悪化などを理由として融資稟議が否決となり折り返し資金融資が行われないことも十分にあり得ます。