中小企業の融資取引を担当していると毎年融資先から決算書をいただきますが、その際、社長から「税金を払いたくないからわざと赤字にしたよ」とのコメント聞くことがあります。
税金対策でわざと赤字にしたのかもしれませんが、銀行の融資取引にはマイナスです。
ある建設業の中小企業の事例
融資取引がある建設業の会社から前期の新しい決算書をもらいました。
その時の建設業の社長と私との会話をご紹介します。
社長:「前期はおかげさまで大きな受注が入って良かったです」
私:「それは良かったですね。前期の決算は良かったのではないですか」
社長:「おかげさまでね。ただそのまま決算すると利益が出すぎて税金をたくさん払わないといけない。そのためいろいろな物を買って赤字にしたよ」
私:「そうなのですか」
社長:「税金はもったいなくて払いたくないからね。だから本当は黒字なんだけど赤字にしたよ」
確かに提出を受けた決算書を見ると備品などを購入して経費が大きく増加し、そのため決算は赤字決算になっていました。
本当にわざと赤字にしたのか?
この建設業のように中小企業では時々「税金を払いたくないからわざと赤字にした」といった説明を聞くことがあります。
本当に税金対策で中小企業がわざと赤字にしたのかもしれません。
ただし外部の存在である銀行には本当にわざと赤字にしたのかどうかはわかりません。
そもそも赤字だったが、対銀行の説明上「わざと赤字にした」との説明をしているとも考えられます。
いずれにしても銀行には本当のことはわかりません。
赤字決算として受け止める
そのため銀行はわざと赤字にしたのかどうかは関係なく、決算書が赤字であれば赤字決算であったと受け止めます。
税金対策で本当は黒字であったがわざと赤字にしたとの説明は聞かないということです。
銀行が中小企業の業績を把握する上では客観的な資料となる決算書が正しいものとして受け止めています。
決算書が黒字であれば黒字決算、決算書が赤字であれば赤字決算と単純に受け止めます。
税金対策でわざと赤字にしたということは考慮しません。
融資審査に影響
この中小企業の建設業の社長からは「今年も比較的大きな受注が見込まれる。また運転資金のお願いをすると思うからよろしく」と言われたが、前期は赤字決算だったということを前提にして銀行は融資可否を検討することになります。
本当は黒字だったということは融資審査にはまったく考慮されません。
わざと赤字にしたまで行かなくても、税金対策で利益を少なくしたと言われる中小企業が少なくありません。
借入金の返済原資は利益です。
その利益がない、あるいはあっても少額であれば融資の返済に懸念をもたらすことになります。
ましてや「わざと赤字にした」との説明は銀行には通用しません。
税金対策が中小企業の大きなテーマであることは理解をしています。
しかしほどほどにしておかないと肝心な資金調達に悪影響を与えることは注意をしておく必要があります。
繰り返しですが銀行に「わざと赤字にした」との説明は通用しません。