銀行融資の基本・審査

売掛金が多いと銀行融資に不利?審査での見方と適正残高を解説

「売掛金が多いと銀行融資の審査に有利になるのか」

「売上は増えているのに、銀行から売掛金が多すぎると指摘された」

「銀行は決算書の売掛金をどのように評価しているのか」

このような疑問を持つ中小企業の経営者の方は少なくないと思います。

売掛金は、商品を販売したりサービスを提供したりした際に発生する債権です。

一般的に、売上が増加すると売掛金も増加する傾向があります。

そのため、売掛金が多いということは、売上が好調であることを示しているようにも思えます。

しかし、銀行融資の審査では、売掛金が多ければ多いほど評価が高くなるわけではありません。

むしろ、売上規模や取引条件と比較して売掛金が多すぎる場合には、銀行が慎重に審査することがあります。

結論から申し上げると、銀行は売掛金の金額だけでなく、売上規模や回収条件と比較して適正な水準にあるか、回収できない売掛金が含まれていないかを確認しています。

今回は、銀行の法人融資業務に長年携わってきた立場から、売掛金が銀行融資の審査に与える影響、売掛金回転期間の計算方法、銀行が不良債権や粉飾決算を疑うケース、融資審査での対策について詳しく解説します。

売掛金が多いと銀行融資に不利になるのか

売掛金が多いという理由だけで、銀行融資の審査に不利になるわけではありません。

売掛金は、売上が発生してから代金を回収するまでの間に計上されるものです。

そのため、売上が増加すれば売掛金も増加することがあります。

銀行が重視するのは、売掛金の金額そのものよりも、売上規模や取引条件に照らして妥当な水準かどうかです。

例えば、月商3,000万円の会社と月商1億円の会社では、同じ売掛金5,000万円でも評価が異なります。

また、売上代金の回収条件が翌月末払いの会社と、3か月後払いの会社でも、通常発生する売掛金の水準は異なります。

売掛金が多いこと自体が問題なのではなく、売上規模や回収条件に見合わない売掛金が存在していないかが重要です。

売掛金とは何か

売掛金とは、商品を販売したりサービスを提供したりしたものの、まだ代金を回収していない債権のことです。

企業間取引では、商品を販売した時点ですぐに代金を受け取るのではなく、後日まとめて代金を回収する掛売りが一般的に行われています。

例えば、4月に商品を販売し、5月末に代金を回収する取引を考えてみます。

4月に売上が発生しても、代金を回収するのは5月末です。

この場合、4月の売上発生時点では売掛金が計上されます。

そして5月末に代金を回収すると、売掛金が減少し、預金などが増加します。

つまり、売掛金は将来回収する予定の売上代金です。

ただし、売掛金として計上されているからといって、必ず全額を回収できるとは限りません。

銀行が売掛金を確認する3つの理由

銀行は融資審査で決算書を分析する際、売掛金の状況を確認します。

主な理由は次の3つです。

1. 売掛金が正常に回収されているかを確認するため

売掛金は、販売先から代金を回収することで現金や預金に変わります。

しかし、販売先の資金繰りが悪化した場合などには、予定どおりに回収できないことがあります。

銀行は、売掛金が正常に回収されているかどうかを確認します。

回収遅延が長期化している売掛金が多い場合には、企業の資金繰りや財務内容に悪影響が生じる可能性があるためです。

2. 売掛金の残高が売上規模に見合っているかを確認するため

売掛金は売上に伴って発生します。

そのため、売上規模と比較することで、売掛金が適正な水準にあるかどうかを判断することができます。

例えば、売上が横ばいなのに売掛金だけが大幅に増加している場合には、銀行はその理由を確認します。

回収条件が変更されたのか、売掛金の回収が遅れているのか、あるいは別の理由があるのかを調べます。

3. 決算書の売上や利益が適切に計上されているかを確認するため

銀行は、売掛金の残高が売上規模に比べて不自然に多い場合、売上の計上内容についても確認することがあります。

例えば、実際には存在しない売上を計上している場合には、売掛金が不自然に増加することがあります。

ただし、売掛金が多いという理由だけで粉飾決算と判断するわけではありません。

銀行は、取引内容や回収条件、売掛金の内訳などを確認して判断します。

銀行融資の審査では売掛金回転期間が重要

銀行が売掛金を分析する際に用いる指標の一つが、売掛金回転期間です。

売掛金回転期間とは、売上代金が回収されるまでに平均してどの程度の期間がかかっているかを示す指標です。

売掛金回転期間が長くなると、売上代金の回収までに時間がかかっていることを意味します。

ただし、回収期間が長いことだけで問題があるとは限りません。

業種や取引条件によって、通常の回収期間は異なるためです。

売掛金回転期間の計算方法

売掛金回転期間は、一般的に次のような計算式で求めます。

売掛金回転期間(月)=売掛金残高÷月平均売上高

月平均売上高は、年間売上高を12か月で割ることで求められます。

例えば、年間売上高が3億6,000万円の場合、月平均売上高は3,000万円です。

この会社の売掛金残高が4,500万円であれば、次のようになります。

4,500万円÷3,000万円=1.5か月

つまり、売掛金回転期間は1.5か月です。

なお、実務では受取手形や電子記録債権なども含めた売上債権全体の回転期間を分析することがあります。

また、決算日時点の残高を使用する場合には、季節変動などによって計算結果が変わることがあります。

売掛金の適正残高はどのように判断するのか

銀行が売掛金を分析する際には、取引条件に見合った残高になっているかどうかを確認します。

例えば、次のような取引条件を考えてみます。

  • 売上代金は月末締め
  • 回収日は翌月末
  • 月平均売上高は3,000万円

この場合、売上が発生してから代金を回収するまでの期間は、売上発生日によって異なります。

月末締め・翌月末回収の場合

例えば、5月1日に売上が発生した場合、代金回収日は6月30日です。

この場合、回収までの期間は約2か月です。

一方、5月31日に売上が発生した場合も、代金回収日は6月30日です。

この場合、回収までの期間は約1か月です。

売上が月内におおむね均等に発生すると仮定すると、平均回収期間は約1.5か月になります。

したがって、月平均売上高が3,000万円であれば、売掛金の目安は次のようになります。

3,000万円×1.5か月=4,500万円

この条件では、売掛金残高4,500万円程度が一つの目安になります。

ただし、これは簡易的な計算例です。

実際の売掛金残高は、売上の発生時期や決算日、季節変動、取引先ごとの回収条件などによって異なります。

売掛金が適正残高より多い場合に銀行が考えること

先ほどの例では、月平均売上高3,000万円、平均回収期間1.5か月とすると、売掛金残高の目安は4,500万円でした。

それでは、売掛金残高が6,000万円や7,000万円だった場合、銀行はどのように考えるのでしょうか。

売掛金残高 売掛金回転期間 銀行が確認するポイント
4,500万円 1.5か月 取引条件とおおむね整合しているか
6,000万円 2.0か月 回収条件の変更や回収遅延がないか
7,000万円 約2.3か月 長期滞留債権や特殊な取引がないか

この例では、売掛金残高が6,000万円の場合、売掛金回転期間は2か月になります。

売掛金残高が7,000万円の場合には、約2.3か月になります。

当初の取引条件から想定される1.5か月より長くなっています。

そのため、銀行は売掛金が増加した理由を確認します。

ただし、売掛金回転期間が長いという理由だけで、不良債権や粉飾決算があると判断するわけではありません。

銀行が売掛金の回収遅延を疑うケース

売掛金が売上規模に比べて多い場合、銀行が懸念することの一つが回収遅延です。

回収遅延とは、契約で定められた期日を過ぎても売上代金を回収できていない状態です。

例えば、通常は翌月末に回収する売掛金が、3か月後になっても回収されていない場合などです。

このような売掛金が増えると、売掛金残高が通常より多くなることがあります。

回収遅延が発生する主な理由

売掛金の回収が遅れる理由には、次のようなものがあります。

  • 販売先の資金繰りが悪化している
  • 販売先との間で請求内容に争いがある
  • 検収や請求手続きが遅れている
  • 契約条件が変更されている
  • 販売先が支払いを停止している

銀行は、回収遅延の原因や今後の回収可能性を確認します。

回収不能の売掛金は融資審査に悪影響を与える

売掛金の中に回収不能と見込まれるものが含まれている場合、銀行はその影響を慎重に確認します。

回収不能の売掛金が発生すると、企業の損失につながる可能性があります。

また、売上代金を回収できないため、資金繰りも悪化します。

そのため、銀行は売掛金の回収可能性を重要な審査項目として確認しています。

銀行が売掛金から粉飾決算を疑うケース

売掛金が不自然に多い場合、銀行が確認するもう一つの点が、売上の計上内容です。

例えば、実際には存在しない売上を計上すると、売掛金が増加する場合があります。

このような架空売上は、売上高や利益を実態より大きく見せる粉飾決算の一例です。

売上が増えていないのに売掛金だけ増えている

銀行が注意するケースの一つは、売上高が横ばい、または減少しているにもかかわらず、売掛金だけが大幅に増加している場合です。

例えば、次のような状況です。

  • 年間売上高は前年とほぼ同じ
  • 売掛金残高は前年より大幅に増加
  • 回収条件に大きな変更はない

このような場合、銀行は売掛金が増加した理由を確認します。

回収遅延や売上の計上内容などを調べることがあります。

決算期末に売掛金が急増している

決算期末に売掛金が急増している場合にも、銀行はその理由を確認することがあります。

ただし、決算期末の売上が季節的に増加する企業もあります。

そのため、売掛金が期末に増加したという理由だけで粉飾決算と判断するわけではありません。

銀行は、売上の発生状況や取引内容、決算後の回収状況などを確認します。

銀行は売掛金の内訳や回収実績を確認する

売掛金の状況に疑問がある場合、銀行は次のような資料を確認することがあります。

  • 売掛金の取引先別明細
  • 売掛金の年齢表
  • 請求書や納品書
  • 売上代金の入金記録
  • 決算後の売掛金回収状況

銀行は、これらの資料を通じて売掛金の実在性や回収可能性を確認します。

売掛金が多いという理由だけで粉飾決算と判断されるわけではありませんが、合理的な説明ができない場合には融資審査が慎重になることがあります。

売掛金が増加しても問題がないケース

売掛金が増加していても、必ずしも銀行融資の審査に悪影響があるわけではありません。

例えば、次のような場合です。

売上高が増加している場合

売上高が増加すれば、売掛金も増加することがあります。

例えば、月商が3,000万円から4,000万円へ増加した場合、回収条件が変わらなくても売掛金残高が増加することがあります。

この場合、売上規模の増加に見合った売掛金の増加であれば、銀行が特段問題視しないこともあります。

売上代金の回収条件が変更された場合

例えば、これまで翌月末回収だった取引が、翌々月末回収に変更された場合です。

回収までの期間が長くなるため、売掛金残高は増加することがあります。

ただし、回収条件の長期化は資金繰りに影響するため、銀行はその影響を確認します。

季節的に売上が増加している場合

業種によっては、特定の時期に売上が集中することがあります。

そのため、決算日時点の売掛金残高が通常より多くなる場合があります。

このような場合には、前年同月の売掛金残高や売上高などと比較することが重要です。

売掛金が多いと資金繰りが悪化する理由

売掛金は、売上が発生していても、まだ現金として回収されていないものです。

そのため、売掛金が増加すると、企業の資金繰りに負担が生じることがあります。

例えば、商品を販売して売上を計上していても、販売先から代金を回収するまでは、その売上代金を仕入代金や人件費の支払いに使うことができません。

売掛金の回収が遅れると、支払いに必要な資金を別途調達する必要が生じることがあります。

売掛金が増えると運転資金が必要になる

売掛金は、運転資金の需要を発生させる主な要因の一つです。

一般的な経常運転資金の計算式は、次のとおりです。

経常運転資金=売上債権+棚卸資産-仕入債務

売掛金が増加すると、ほかの条件が同じであれば、必要な運転資金も増加します。

そのため、売掛金の増加は銀行融資の必要額にも関係します。

ただし、売掛金が増加した理由によって、銀行の判断は異なります。

正常な売上増加に伴う運転資金の需要と、回収遅延による資金不足では、銀行の審査上の見方が異なるためです。

売掛金が多い企業が銀行融資を受けるための対策

売掛金が多い企業が銀行融資を申し込む場合には、売掛金の状況を銀行に説明できるようにしておくことが重要です。

1. 売掛金の取引先別明細を準備する

銀行が売掛金の内容を確認する際には、取引先別の明細が役立ちます。

どの取引先にいくらの売掛金があるのかを整理しておくと、銀行が売掛金の状況を把握しやすくなります。

2. 売掛金の回収予定を明確にする

売掛金は、回収できて初めて資金繰りに利用できます。

そのため、売掛金の回収予定を整理しておくことが重要です。

例えば、翌月回収予定、翌々月回収予定、回収遅延などに区分して管理するとよいでしょう。

3. 売掛金が増加した理由を説明する

売掛金が前年より増加している場合には、その理由を説明できるようにしておきましょう。

例えば、売上増加によるものなのか、回収条件の変更によるものなのか、回収遅延によるものなのかを整理します。

合理的な説明ができれば、銀行も売掛金の状況を判断しやすくなります。

4. 回収遅延がある場合には対応状況を説明する

売掛金の回収遅延が発生している場合には、回収の見通しや対応状況を銀行に説明することが重要です。

例えば、販売先との協議状況や回収予定、必要に応じた貸倒引当金の計上状況などです。

銀行は、回収遅延の有無だけでなく、企業が適切に管理しているかどうかも確認します。

5. 売掛金回転期間を継続的に管理する

売掛金回転期間は、売掛金の管理状況を把握するために役立つ指標です。

例えば、毎月の売掛金回転期間を計算し、前年同月や過去の平均と比較することで、回収状況の変化を把握できます。

売掛金回転期間が長期化している場合には、その原因を確認することが重要です。

銀行融資の審査で売掛金について提出するとよい資料

銀行から売掛金について説明を求められた場合には、次のような資料が役立ちます。

資料 銀行が確認する内容
売掛金の取引先別明細 取引先ごとの残高
売掛金年齢表 回収遅延や長期滞留の状況
売上高の月次推移 売掛金増加と売上増加の関係
売掛金の回収予定表 今後の入金見通し
入金記録 実際の回収状況
資金繰り表 売掛金回収と支払いの関係

これらの資料をすべて提出する必要があるとは限りません。

銀行から求められた資料や、売掛金の状況を説明するために必要な資料を準備するとよいでしょう。

売掛金と銀行融資についてのよくある質問

売掛金が多いと銀行融資に不利になりますか?

売掛金が多いという理由だけで不利になるわけではありません。

ただし、売上規模や回収条件に比べて売掛金が多すぎる場合には、銀行がその理由を確認することがあります。

売掛金が多いと銀行は粉飾決算を疑いますか?

売掛金が不自然に増加している場合には、売上の計上内容を確認することがあります。

ただし、売掛金が多いという理由だけで粉飾決算と判断するわけではありません。

売掛金回転期間は何か月が適正ですか?

適正な売掛金回転期間は、業種や取引条件によって異なります。

例えば、月末締め・翌月末回収で売上が月内に均等に発生する場合には、約1.5か月が一つの目安になります。

売掛金回転期間が長いと融資は受けられませんか?

売掛金回転期間が長いという理由だけで融資が受けられなくなるわけではありません。

銀行は、取引条件や回収状況などを確認して判断します。

売掛金が増えると運転資金も増えますか?

ほかの条件が同じであれば、売掛金が増加すると必要な運転資金も増加します。

ただし、売掛金が増加した理由によって銀行の審査上の見方は異なります。

売掛金の回収遅延があると融資審査に影響しますか?

回収遅延が発生している場合には、銀行が回収可能性や資金繰りへの影響を確認することがあります。

特に、回収不能が懸念される売掛金が多い場合には、審査が慎重になる可能性があります。

売掛金の適正残高はどのように計算しますか?

売上規模と平均回収期間から概算する方法があります。

例えば、月平均売上高3,000万円、平均回収期間1.5か月の場合、売掛金残高の目安は4,500万円です。

売掛金が多い場合、銀行に何を説明すればよいですか?

売掛金が増加した理由、取引先別の残高、回収予定、回収遅延の有無などを説明することが重要です。

売掛金が増加しても銀行融資に問題がない場合はありますか?

売上増加や季節変動、回収条件の変更などによって売掛金が増加している場合には、合理的な説明ができれば銀行が特段問題視しないこともあります。

銀行は売掛金のどのような資料を確認しますか?

売掛金の取引先別明細、売掛金年齢表、売上高の推移、入金記録などを確認することがあります。

銀行融資における売掛金の位置付けのまとめ

売掛金は、銀行融資の審査で重要な確認項目の一つです。

売掛金は売上に伴って発生するため、売上が増加すれば売掛金も増加することがあります。

しかし、売掛金が多いほど銀行融資に有利になるわけではありません。

銀行は、売上規模や回収条件と比較して売掛金が適正な水準にあるかどうかを確認します。

今回のポイントをまとめると、次のとおりです。

  • 売掛金は売上代金がまだ回収されていない債権である
  • 売掛金は運転資金が必要になる主な要因の一つである
  • 売掛金が多いという理由だけで銀行融資に有利になるわけではない
  • 銀行は売掛金回転期間を用いて回収状況を分析する
  • 売掛金の適正残高は売上規模や取引条件によって異なる
  • 売掛金が不自然に多い場合には回収遅延や不良債権が疑われることがある
  • 架空売上などの粉飾決算がないか確認される場合もある
  • 売掛金の増加が正常な売上増加によるものであれば問題がない場合もある
  • 売掛金が多い企業は取引先別明細や回収予定などを整理しておくことが重要である

銀行員として特に申し上げたいのは、売掛金が多いこと自体を問題視するのではなく、なぜその金額になっているのかを確認することが重要だという点です。

例えば、月商3,000万円の会社で売掛金残高が7,000万円あったとしても、その理由が正常な取引条件によるものであれば、必ずしも問題があるわけではありません。

一方、回収遅延や回収不能の売掛金が含まれている場合には、銀行融資の審査に悪影響を与える可能性があります。

銀行融資の審査では、売掛金の金額だけでなく、売上規模とのバランス、回収条件、回収可能性を確認することが重要です。

-銀行融資の基本・審査
-