「銀行に融資を申し込んだが、審査に通らず断られてしまった」
「1つの銀行に融資を断られたら、他の銀行でも借りられないのだろうか」
「来月の資金繰りが厳しいため、何とかして銀行から融資を受けたい」
中小企業を経営していると、このような状況に直面することがあります。
銀行から融資を断られると、もう他の銀行でも融資を受けられないのではないかと不安になるかもしれません。
しかし、1つの銀行から融資を断られたからといって、他の銀行でも必ず断られるわけではありません。
銀行によって融資方針や審査判断、取引先との関係、既存の融資残高などが異なるためです。
ただし、融資を断られた原因が会社の返済能力や資金繰りの悪化にある場合には、他の銀行でも同じ問題を指摘される可能性があります。
そのため、融資を断られた場合には、やみくもに他の銀行へ申し込むのではなく、まず断られた理由を整理することが重要です。
今回は、銀行の法人融資業務に長年携わってきた立場から、銀行に融資を断られた場合の具体的な対応方法と、次にどの銀行へ相談すべきかについて解説します。
銀行に融資を断られた場合の相談事例
まず、次のような相談を考えてみます。
零細企業を経営しています。
現在、3つの銀行から融資を受けています。
来月の資金繰りが厳しくなるため、取引銀行の1つに追加融資を申し込みましたが、断られてしまいました。
しかし、資金繰りを維持するためには、何とかして資金を確保する必要があります。
残りの2つの銀行に融資を申し込んでも、やはり断られてしまうのでしょうか。
何か対応方法があれば教えてください。
このような場合、最初に申し込んだ銀行から融資を断られたという事実だけで、残りの銀行への申込みを諦める必要はありません。
ただし、次の銀行へ申し込む前に、確認しておきたいことがあります。
銀行に融資を断られたら最初にすべきこと
銀行から融資を断られた場合には、まず融資を断られた理由を確認することが重要です。
銀行が融資を断る理由には、さまざまなものがあります。
融資を断られる主な理由
代表的な理由として、次のようなものがあります。
- 赤字が続いており、返済能力に懸念がある
- 借入金が多く、返済負担が大きい
- 資金使途が不明確である
- 希望する融資金額が必要資金に対して過大である
- 直近の業績が悪化している
- 税金や社会保険料などの支払いに問題がある
- 銀行の融資方針や融資先に対する与信方針と合わない
銀行が融資を断る理由は、必ずしも会社の業績だけとは限りません。
例えば、業績が良好でも、資金使途が不明確であれば融資が難しくなることがあります。
また、銀行がその会社に対してすでに多額の融資を行っており、これ以上の融資残高の増加に慎重になっている場合もあります。
銀行に否決理由を確認する
融資を断られた場合には、担当者に次のような質問をしてみることをおすすめします。
- 今回の融資が難しい主な理由は何でしょうか
- 業績や財務内容に問題があるのでしょうか
- 希望金額を減額すれば検討できる可能性はありますか
- 信用保証協会付き融資であれば検討できる可能性はありますか
- 今後どのような点が改善すれば融資を検討できますか
銀行が審査の詳細や内部判断をすべて説明できるとは限りません。
それでも、融資が難しい理由を可能な範囲で確認することは、次の対応を考えるうえで役立ちます。
銀行から融資を断られた場合には、まず理由を整理し、改善できる点がないかを確認することが重要です。
1つの銀行に融資を断られても他の銀行なら借りられるのか
1つの銀行から融資を断られても、他の銀行から融資を受けられる可能性はあります。
銀行によって融資の審査方針や、融資先との取引状況が異なるためです。
例えば、A銀行ではすでに融資残高が大きく、追加融資に慎重になっていても、B銀行では融資残高が比較的小さく、追加融資を検討できる場合があります。
また、A銀行では資金使途や返済計画について十分な説明ができなかったとしても、資料を整えたうえでB銀行に申し込むことで、審査が進む可能性もあります。
ただし、会社の返済能力が不足している場合には、他の銀行でも融資が難しくなる可能性があります。
したがって、他の銀行に申し込む際には、融資を断られた理由を踏まえて説明内容や資料を見直すことが大切です。
銀行に融資を断られた場合の4つの対応方法
複数の銀行と融資取引をしている会社であれば、次の4つの視点から相談先を検討することができます。
- 融資シェアを踏まえて取引銀行に相談する
- メインバンクに相談する
- 売上入金口座を利用している銀行に相談する
- 経営者個人との取引がある銀行に相談する
これらは、銀行が融資を検討する際に参考となる取引関係を整理するための視点です。
ただし、いずれの場合も融資が受けられることを保証するものではありません。
対応方法1:融資シェアを踏まえて銀行に申し込む
複数の銀行から融資を受けている場合には、各銀行の融資シェアを確認することが有効です。
融資シェアとは
融資シェアとは、会社の銀行借入金全体に占める各銀行の融資残高の割合です。
例えば、3つの銀行から合計1,000万円の融資を受けている会社を考えてみます。
| 銀行 | 融資残高 | 融資シェア |
|---|---|---|
| A銀行 | 500万円 | 50% |
| B銀行 | 300万円 | 30% |
| C銀行 | 200万円 | 20% |
| 合計 | 1,000万円 | 100% |
この場合、A銀行の融資シェアは50%、B銀行は30%、C銀行は20%です。
融資シェアに応じて資金調達を相談する方法
仮に会社が新たに500万円の資金を必要としている場合、融資シェアを参考にして各銀行へ相談する方法があります。
| 銀行 | 融資シェア | 相談する金額の例 |
|---|---|---|
| A銀行 | 50% | 250万円 |
| B銀行 | 30% | 150万円 |
| C銀行 | 20% | 100万円 |
| 合計 | 100% | 500万円 |
このように、1つの銀行に500万円の融資を依頼するのではなく、複数の銀行に分けて相談する方法です。
銀行によっては、自行だけで資金調達額の全額を負担するよりも、他の銀行と協調して融資を行うほうが検討しやすい場合があります。
融資シェアどおりに銀行が支援する義務はない
ただし、融資シェアに応じて各銀行が追加融資を行う義務があるわけではありません。
例えば、A銀行の融資シェアが50%だからといって、新規資金500万円のうち250万円を必ず融資しなければならないということではありません。
各銀行は、自行の融資方針や会社の返済能力、既存融資の状況などを踏まえて判断します。
また、すでに融資を断られた銀行に対して、単に申込金額を分割しただけで審査結果が変わるとは限りません。
融資シェアを利用した相談では、各銀行に他行への相談状況を正確に説明することが重要です。
まだ他行の融資が決まっていない段階で、「他の銀行も融資に応じる予定です」と断定することは避けましょう。
融資シェアは複数銀行との資金調達を考えるための参考資料であり、各銀行の融資を保証するものではありません。
対応方法2:メインバンクに融資を申し込む
銀行から融資を断られた場合には、メインバンクに相談することも有力な選択肢です。
メインバンクとは、一般的に会社にとって中心的な取引銀行を指します。
融資残高が最も多い銀行がメインバンクである場合もありますが、必ずしも融資残高だけで決まるものではありません。
日常的な資金決済や経営相談など、取引全体の関係によって位置づけられることもあります。
メインバンクが融資を検討しやすい理由
メインバンクは、長年の取引を通じて会社の事業内容や経営状況を把握していることがあります。
例えば、過去の業績推移や資金繰り、経営者の考え方などを理解していれば、直近の決算書だけでは分からない事情も踏まえて融資を検討できる場合があります。
また、会社の資金繰りが厳しい場合には、追加融資だけでなく、既存融資の返済条件の見直しなどについて相談できる場合もあります。
メインバンクでも必ず融資するわけではない
ただし、メインバンクだからといって、必ず資金繰りを支援する義務があるわけではありません。
銀行は融資先の返済能力や資金使途などを確認して判断します。
そのため、メインバンクに相談する場合でも、資金不足の原因や今後の返済計画を具体的に説明することが重要です。
メインバンクには会社の事業内容や取引実績を理解してもらっている可能性があるため、融資を断られた際の重要な相談先になります。
対応方法3:売上入金口座を利用している銀行に申し込む
売上代金の入金口座として利用している銀行に融資を相談することも、一つの方法です。
売上入金口座を利用している銀行は、会社の入金状況を把握しやすい立場にあります。
売上入金の実績は銀行の判断材料になる
例えば、毎月一定額の売上代金が継続して入金されている場合、銀行はその取引実績を確認できます。
また、入金額が増加している場合には、売上動向を確認するための参考情報になります。
銀行としては、決算書や試算表に加えて、実際の資金の動きを把握できることに意味があります。
売上入金口座は自動的に融資の担保になるわけではない
ただし、売上代金が入金される口座を利用しているだけで、その入金が法律上の担保になるわけではありません。
銀行が売上入金の実績を評価することと、担保権を取得していることは別の問題です。
また、売上入金が多くても、仕入代金や人件費などの支払いが多ければ、返済に充てられる資金が十分に残らない場合があります。
したがって、売上入金口座を利用している銀行に相談する際には、入金実績だけでなく、会社全体の資金繰りや返済能力を説明する必要があります。
対応方法4:経営者個人との取引がある銀行に申し込む
中小企業の場合、経営者個人と銀行との取引関係が、法人融資の相談に役立つことがあります。
例えば、経営者が長年預金取引を行っている銀行であれば、銀行との接点があるため、法人融資の相談を始めやすい場合があります。
また、経営者個人の資産状況が、法人の経営基盤や資金支援能力を判断する際の参考になる場合もあります。
個人預金があれば法人融資を受けられるわけではない
ただし、経営者個人の預金があるという理由だけで、法人融資を受けられるわけではありません。
銀行が法人融資で重視するのは、あくまでも会社の事業内容や返済能力です。
また、経営者個人の預金が自動的に会社の融資の担保になるわけでもありません。
預金担保などを設定する場合には、別途必要な契約や手続きが必要です。
したがって、経営者個人との取引がある銀行への相談は一つの選択肢ですが、法人の返済能力を説明することが基本になります。
融資を断られたら信用保証協会付き融資も検討する
銀行から融資を断られた場合には、信用保証協会付き融資を利用できるか確認する方法もあります。
信用保証協会付き融資とは、信用保証協会が金融機関に対して保証を行う融資です。
銀行が信用保証協会の保証を利用することで、融資を検討できる場合があります。
プロパー融資が難しくても保証協会付き融資なら検討できる場合がある
例えば、銀行が自ら信用リスクを負担するプロパー融資では対応が難しい場合でも、信用保証協会付き融資であれば検討できる可能性があります。
ただし、信用保証協会付き融資であっても、銀行と信用保証協会による審査があります。
信用保証協会の保証を利用すれば必ず融資を受けられるわけではありません。
すでに信用保証協会付き融資を利用している場合
すでに信用保証協会付き融資を利用している会社では、保証残高や利用可能な制度、既存融資の状況などを確認する必要があります。
また、ある銀行で信用保証協会付き融資を断られた場合には、銀行独自の判断によるものなのか、信用保証協会の審査によるものなのかによって、次の対応が異なります。
信用保証協会の審査で保証が認められなかった場合には、銀行を変更するだけで同じ条件の保証が認められるとは限りません。
融資を断られた場合には、プロパー融資だけでなく、信用保証協会付き融資の利用可能性も銀行に確認することが重要です。
他の銀行に融資を申し込む際に準備する資料
銀行に融資を断られた後、他の銀行に申し込む場合には、融資審査に必要な資料を整理しておきましょう。
| 資料 | 銀行が確認する内容 |
|---|---|
| 決算書 | 過去の業績と財務内容 |
| 最新の試算表 | 直近の業績推移 |
| 資金繰り表 | 資金不足の時期と必要金額 |
| 銀行別借入金一覧表 | 各銀行の借入残高と返済予定 |
| 資金使途の説明資料 | 融資資金の必要性と使い道 |
| 事業計画・改善計画 | 今後の売上・利益・返済見通し |
融資を断られた理由を踏まえて説明を改善する
例えば、最初の銀行から「返済能力が不足している」と指摘された場合には、単に別の銀行に同じ資料を提出するだけでは、再び融資を断られる可能性があります。
その場合には、今後の利益改善策や返済計画を具体的に説明する必要があります。
また、資金使途が不明確であることが原因であれば、必要金額の根拠や資金の使い道を明確にすることが重要です。
希望金額を見直すことも検討する
銀行から希望金額での融資が難しいと判断された場合には、必要資金を再確認し、申込金額を見直す方法もあります。
ただし、実際に必要な資金を下回る金額しか調達できなければ、資金繰りの問題が解決しない場合があります。
そのため、単に申込金額を減らすのではなく、必要資金と返済能力の両方を確認することが重要です。
銀行に融資を断られて資金繰りが厳しい場合の対応
銀行から融資を断られ、来月の資金繰りが厳しい場合には、他の銀行への申込みと並行して、資金繰り対策を進める必要があります。
融資の審査には時間がかかる場合があり、希望する時期までに資金を調達できるとは限らないためです。
資金繰り表で不足金額を確認する
まず、今後の入金と支払予定を整理し、いつ、どの程度の資金不足が発生するのかを確認します。
例えば、来月末に300万円の資金不足が見込まれる場合には、その不足額をどのように補うかを検討します。
売掛金の回収や支出の見直しを行う
売掛金の回収予定を確認し、取引先と協議できる場合には早期回収を検討します。
また、不要不急の支出や設備投資の時期を見直すことも有効です。
ただし、支払先への支払いを一方的に遅らせることは、信用低下や取引関係の悪化につながるため避ける必要があります。
既存融資の返済条件変更を相談する
追加融資が難しく、既存借入金の返済負担が資金繰りを圧迫している場合には、銀行に返済条件の変更を相談する方法があります。
返済条件の変更は、一般的に返済猶予(リスケ)と呼ばれます。
例えば、毎月100万円の元金返済を行っている会社が、銀行との合意によって一定期間の元金返済額を30万円に変更できれば、毎月70万円の資金流出を抑えられます。
ただし、返済条件の変更が認められるかどうかは、会社の状況や銀行との協議によって異なります。
また、返済猶予を受けても借入金が免除されるわけではありません。
融資を断られて資金繰りが厳しい場合には、他行への申込みだけに頼らず、資金繰り表に基づいて複数の対応策を検討することが重要です。
銀行に融資を断られた場合のよくある質問
1つの銀行に融資を断られたら、他の銀行でも借りられませんか?
1つの銀行から融資を断られても、他の銀行から融資を受けられる可能性はあります。
ただし、返済能力の不足などが原因の場合には、他の銀行でも同じ問題を指摘される可能性があります。
銀行に融資を断られた理由を聞いてもよいですか?
融資を断られた理由を銀行に確認することは可能です。
ただし、銀行が審査の詳細をすべて説明できるとは限りません。
メインバンクなら融資に応じてくれますか?
メインバンクは会社の事業内容や取引実績を理解している場合があり、有力な相談先になります。
ただし、メインバンクだからといって必ず融資に応じるわけではありません。
融資シェアに応じて各銀行に申し込めば借りられますか?
融資シェアを参考に複数の銀行へ相談する方法はありますが、各銀行がシェアに応じて融資する義務はありません。
融資の可否は各銀行の審査によって決まります。
売上入金口座を利用している銀行のほうが融資を受けやすいですか?
売上入金口座を利用している銀行は、入金実績を把握しやすいため、融資審査の参考にできる場合があります。
ただし、売上入金口座があるだけで融資が受けられるわけではありません。
経営者個人の預金がある銀行なら法人融資を受けられますか?
経営者個人との取引が、法人融資の相談に役立つ場合はあります。
ただし、法人融資では会社の返済能力が基本となり、個人預金が自動的に担保になるわけではありません。
プロパー融資を断られても信用保証協会付き融資なら借りられますか?
プロパー融資が難しい場合でも、信用保証協会付き融資であれば検討できる可能性があります。
ただし、銀行と信用保証協会による審査があり、必ず融資を受けられるわけではありません。
銀行に融資を断られ、来月の資金繰りが厳しい場合はどうすればよいですか?
まず資金繰り表を作成し、必要な金額と時期を確認することが重要です。
そのうえで、他の銀行への相談、売掛金の回収や支出の見直し、既存融資の返済条件変更などを検討します。
銀行から融資を断られた場合の対応のまとめ
銀行に融資を断られた場合でも、他の銀行から融資を受けられる可能性はあります。
ただし、銀行を変更すれば必ず融資を受けられるというわけではありません。
今回のポイントをまとめると、次のとおりです。
- 銀行から融資を断られたら、まず理由を確認する
- 1つの銀行に断られても、他の銀行で融資を受けられる可能性はある
- 複数銀行との取引がある場合には、融資シェアを参考に相談先を検討する
- メインバンクは重要な相談先になる
- 売上入金口座を利用している銀行への相談も選択肢となる
- 経営者個人との取引がある銀行に相談する方法もある
- プロパー融資が難しい場合には、信用保証協会付き融資も検討する
- 資金繰りが切迫している場合には、他行への申込みと並行して資金繰り対策を進める
銀行員として特に申し上げたいのは、銀行から融資を断られた場合に、同じ内容で次々と銀行に申し込むだけでは十分ではないということです。
銀行が融資を断った理由を整理し、資金使途や返済計画を見直すことが重要です。
また、複数の銀行と取引している場合には、融資シェアやメインバンクとの関係、売上入金口座などを踏まえて相談先を考えることができます。
銀行に融資を断られた場合には、否決理由を確認し、取引銀行との関係を整理したうえで、資金繰りに間に合うよう早めに次の対応を進めることが重要です。