赤字経営でも倒産しない理由と融資を受けるための条件

赤字になると倒産という言葉が連想しますが、実は赤字だからといって必ず倒産するわけではありません。
赤字でも銀行から融資を受けて事業を継続している事業者はたくさんいます。
今回は赤字経営でも倒産しない理由と銀行から融資を受けるためのポイントについて融資担当の銀行員が説明します。

赤字経営でもすぐに倒産しない理由とは？

倒産の理由でもっとも多いのは業績が不振で赤字であったことであることは事実です。
しかし赤字であってもすぐに倒産するわけではありません。
まずは赤字と倒産の関係について整理をしましょう。

赤字＝倒産ではない本質的な違い

倒産する理由で一番多いのが赤字経営であることは事実ですが、実は赤字が倒産の直接の理由ではありません。
今まで数多くの倒産事例がありますが、倒産の直接の理由は資金繰りの行き詰まりであって赤字ではありません。

資金繰りが行き詰まると仕入代金の支払いができなくなり、仕入先から「あそこは危ない」といった情報が一挙に世の中に拡散します。
つまり信用不安が広まり、他の先も仕入に応じてくれなくなります。
また資金繰りが行き詰まると社員に給与の未払いが発生します。
給与の支給が受けられなければ社員は退社していくでしょう。
社員が退社していけば事業を継続することはできないでしょう。
また元社員の口から給与未払いの情報がやはり一挙に社会に拡散していくことになります。
このように倒産の直接の理由は赤字であることではなく資金繰りの行き詰まりです。
今までの数多くの倒産事例においても直接の理由は資金繰りの行き詰まりです。
別の言い方をしますとどれだけ大きな赤字であっても、あるいはどれだけ赤字が続いていても資金繰りが維持され行き詰まることがなければ倒産はしません。

赤字と資金繰りとの関係

このように赤字は倒産の直接の理由ではありません。
しかし資金繰りの行き詰まりの背景には赤字経営が存在することは事実です。
赤字と資金繰りとの関係を理解しやすくするために、赤字を現金ベースで説明をします。
赤字とは利益がマイナスであるということですが、これを現金に置き換えて説明すると赤字とは入ってくるお金よりも出ていくお金の方が多い状態のことです。
つまり赤字とは現金がマイナス、つまり手元の資金が減っていくということです。
手元資金がまだ残っていれば資金繰りを維持することができますが、大きな赤字やあるいは赤字が続いていくと手元資金が枯渇することになります。
手元資金が枯渇するということは資金繰りが行き詰まるということです。
したがって赤字は倒産の直接の理由ではありませんが、赤字は資金繰りの行き詰まりをもたらす要因であり資金繰りの行き詰まりによる倒産を背景になるのです。

赤字決算でも融資が受けられる理由とポイント

赤字決算になってしまうと銀行の融資姿勢は厳しくなり、銀行が融資を断ることもしばしばです。
その一方で赤字決算であっても銀行から新規の融資を受けている事業者がたくさんいることも事実です。
以下では赤字決算であっても銀行が融資を行う理由と、銀行への融資交渉ポイントを説明します。

赤字決算になると銀行の融資姿勢が厳しくなる理由

赤字決算になると銀行の融資姿勢が厳しくなる理由を理解することで、逆に赤字決算においても銀行との融資交渉のポイントが理解できるようになります。

この図は赤字決算に対して銀行員が抱く印象を簡単に示したものです。
さきほども説明をしましたが銀行の融資業務においてもっとも大切なことは融資を最後まで回収することです。
決して融資のボリュームを増やすことではありません。
融資が最後まで回収することができなければ銀行が融資の貸倒損失を被ることになります。
そのため銀行の融資審査においては融資先がきちんと返済ができるかどうかの融資の返済能力の検証が最重要のポイントとしています。
この点において赤字決算とは資金繰りの行き詰まりの背景であり、少なくとも資金繰りを悪化させることは事実です。
資金繰りが行き詰まる、あるいは資金繰りが悪化すれば融資の返済に回せる資金が危なくなります。
つまり赤字決算に対しては銀行員は融資が返済されないこと、融資が焦げ付いて貸倒損失を被ることを連想します。
そのため赤字決算に対しては銀行の融資姿勢は厳しくなるのです。

赤字でも審査通過できるケースと交渉ポイント

このように赤字決算になると銀行の融資姿勢が厳しくなるわけですが、それは融資が返済されないことを懸念しているからです。
したがって融資がきちんと返済できることを銀行に理解をさせることができれば、赤字決算であっても銀行から融資が受けられる可能性が大きくなります。

今後の業績改善見通しを理解してもらう

赤字決算でも銀行から融資を受けるには、今後、業績が改善して融資をきちんと返済できることを説明することが欠かせません。
事業計画書などを作成して今後の業績改善に向けた見通しを銀行にしっかりと説明をしてください。
その際、大切なことは業績改善の具体的な材料を示すことです。
ただ業績改善に向けて頑張りますと言っても銀行の理解を得ることはできません。
銀行が求めているのは業績改善が実現する具体的な材料です。
どこの販売先に売上増加に向けた営業を強化していくのか、どの商品・製品に注力をして売上の改善は図るのか、どのようにしてコストの削減を図り利益率の上昇を目指すのかといった具体的な施策とともに業績改善の事業計画を説明することがポイントとなります。

自助努力を示すことも重要性

銀行に業績改善を説明し融資を交渉する際にぜひ説明をしたい事柄があります。
それは業績改善、資金繰り改善の自助努力です。
単に銀行に融資をお願いして資金繰りの支援を求めるだけではなく、自分でできることももちろんやりますという自助努力を示すことが銀行に響きます。
自助努力の例としてはつぎのようなものです。

融資先自身も身を削る努力をしているから、融資をして資金繰りを支援しようという気持ちに銀行をさせるのです。