利率だけで融資先を選別する取引先


2014年01月29日

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融資業務に長く携わっていると取引先の業績良し悪しに関係なく、「この先には何としても融資をしたい」と考えたり、逆に「この先には絶対に融資をしたくない」と考える時があります。
今回は私が「この先には絶対に融資をしたくない」と考えた事例をご案内します。
もっとも「この先には何としても融資をしたい」の場合も「この先には絶対に融資をしたくない」の場合も、決して個人的な感情からの判断ではありません。
融資取引、銀行取引を考えても判断です。

シェアアップ志向先から融資の相談
ある日スポーツ用品を取り扱うM社の社長から一本の電話がかかってきました。
「来月末に借入を考えています。お宅の条件を明後日までに提示をしてほしい」というものです。
M社の業績は堅調で日頃からシェアアップを志向していました。
取引銀行は当行の他に3行と取引があり、どの取引銀行も日頃から積極的な対応をしていました。
当行は以前は融資額で取引銀行中第2位の位置にありましたが、直近では第3位に甘んじており、日頃からシェアアップの機会を窺っていたのです。
私は上司に何とか今回の融資を獲得してシェアを回復したいこと、日頃から利率などの条件が厳しい先なので、思い切った低利率の条件提示をしたいことを訴えました。
上司からはちょうど今、銀行全体で優良先への低利率の特別ファンドを募集しているから、そのファンドを利用して条件提示をしてみればとのアドバイスをもらいました。

私はM社の社長から指定された回答期日に電話連絡を行い、特別ファンドを利用した低利率の融資条件を提示しました。
社長からは「おお、今回はなかなかいい利率だね。今までに回答のあった銀行の中では一番低い利率だよ。あと一行から回答を受けていないが、このままだと今回はお宅で借入することになると思うよ」との反応をもらいました。
私は上司にその旨を報告しました。
上司からは「まだ安心は出来ないよ」と少しブレーキを踏まれました。

繰り返される利率引き下げ要請
私は今回の融資は当行で対応出来ると内心喜んでいました。
そしてその日の夕刻にM社の社長から電話がかかってきました。
私としては「今回はお宅でお願いする」という内容を予想して電話に出たのですが、社長からは「実はあの後、お宅から提示のあった利率を他の銀行にも伝えたんだよ。そうしたらお宅より高い利率を提示していたA信金から、もっと低い利率の再提示があったんだよ。今回はお宅でと考えていたんだ。
どうかな。お宅はもっと低く出来る?」といった内容でした。
私は内心「うちの利率を他行に言わないでほしい」と思いつつも「そうですか。わかりました。もう一度検討してみます。少し時間をください」といって電話を切りました。
私はすぐに上司にさきほどの社長とのやり取りを報告しました。
上司は「しょうがないな」といった顔つきをしながらも、最終的にA信金よりもさらに低い利率を提示することを承知してくれました。
ただ上司からは「社長にはこれが最後の提示です」ということをしっかりと伝えるように言われました。

私はさっそくM社の社長に連絡をし、A信金よりもさらに低い利率を提示しました。
社長からは「お、やるじゃない。じゃ、今回はお宅のお世話になるよ」と言われました。
私はとにかくM社に久しぶりに融資ができ、シェアアップに成功することを喜びました。
そしてさっそく融資の稟議作成にかかりました。
ところが翌日、M社の社長から再び連絡が入り、「A信金に今回はお宅から借入することを伝えたところ、さらに低い利率の提示があったんだよ。お宅もこの利率で大丈夫かな?無理であればA信金から借入するけれど」と思いかげない内容を耳にしました。
私は「昨日、社長はうちから借入してくださるとおっしゃったじゃないですか」と言いましたが社長からは「でもA信金の方が利率が低いのだからしょうがないでしょう」と反応でした。

利率だけが判断材料なのか?
私はこの社長からは連絡受けて、ピンと張っていた糸が切れる思いをしました。
これではバナナのたたき売りと一緒です。
私は取引先と銀行との取引は長い取引が出来ることが大切との思いを持っていました。
また取引は何も融資取引に限られるものではなく、預金取引や為替取引など複合的なもののはずです。
しかし残念なことにM社の社長の頭の中には「利率が低いところから借入をする」と一点だけのように私は感じました。
私としてはA信金の利率とあまりにも差があるのであれば、やむを得ないのですが、その差はほんのわずかなものでした。
さらにM社には振込手数料の優遇など利率以外のところでも、一定の努力をしているつもりでした。
ただ利率の比較だけで取引銀行を選別し、総合的な判断をしていただけないM社の社長に私は嫌気がさしてしまったのです。

私は上司にM社の社長からさらに利率の引き下げ要請があったこと、しかし自分自身としてはこれ以上の引き下げには応じたくない旨を報告しました。
上司からも「気の考え方でいいよ」と言われ、私は社長に連絡をし、当行としてはこれ以上の利率の引き下げは無理であることと、他の取引を含めた総合的な判断で借入する銀行を決めてほしいとお願いをしました。
しかし結果は、A信金からの借入でした。
日常的によくある事例ですが、利率で取れた融資は簡単に利率で取られてしまいます。
また利率だけで勝負するほどレベルが低く、また疲労がたまる交渉事はありません。
融資利率以外の分野でも取引の拡大を図り、取引先に利率だけを判断材料にしていただかないように日頃からのコンタクトが大切です。
また融資以外の取引振りの充実がここぞというところでの融資の可否判断に大きな影響を与えます。






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