事業資金の融資金利は金利があらかじめ決まっている自治体の制度融資を除いては、銀行が融資金利を独自に決めています。
融資金利はどのようにして銀行は決めているのか、その中身をご紹介します。
目次
銀行にとっての融資金利の意味
融資金利の決まり方を理解する上では貸し手側である銀行の理屈を知っておくことが有用です。
融資金利は収益源
銀行にとっての融資金利の意味は大きく2つあります。
1つ目は融資金利は銀行の収益源だということです。
銀行の収益源はいろいろとありますがその中でも大黒柱であるのが融資金利による収益です。
したがって銀行にとっては融資金利は高い方が良いということになります。
融資金利はリスクの対価
銀行にとっての融資金利の2つ目の意味は融資金利はリスクの対価ということです。
銀行側からすると融資したお金が最後まで返済してもらわなければなりません。
万が一、最後まで融資したお金が回収できない、つまり貸倒れが発生した場合にはそれは銀行の損失ということになります。
銀行も営利企業ですから損失は当然、回避したいところです。
しかし現実には貸倒が発生し銀行に損失が発生しています。
貸倒が発生する可能性は融資先の信用力の良し悪しによって変わっていきます。
毎年黒字決算の先とずっと赤字決算の先とを比べた場合、貸倒が発生する可能性は一般的にはずっと赤字決算の先だと考えられるでしょう。
銀行はこの貸倒リスクに備えて融資先ごとに一定の貸倒引当金というコストを負担しています。
ではどれくらいの貸倒コストを負担するかというと、それは融資先の信用力の良し悪しによって変わってきます。
決算内容が良好な融資先は一般的に貸倒リスクが低いと考えることができますから、貸倒コストも低く抑えることができます。
これに対して赤字など決算内容が良くない融資先は貸倒リスクが相対的に高いと考えることができますから、それに応じて貸倒コストも多く計上する必要がでてきます。
貸倒コストを高く計上している先には相対的に高い融資金利を適用しないと適正な採算を銀行が得ることができません。
つまり融資金利は貸倒リスクの対価という側面を持っているのです。
融資金利が決まる要素
融資金利は次の3つの要素で決まってきます。
調達金利
融資する資金を市場や預金者から調達してくる際、銀行が支払う金利のことです。
要するに銀行のお金の仕入代です。
銀行から見たお金の仕入代の代表例は預金金利です。
したがって預金金利が上がってくるとそれに比例して融資金利も上がってきます。
経費
銀行を営む上で必要な経費、例えば人件費や家賃、通信交通費など一般企業と同様にかかる経費のことです。
貸倒引当コスト
融資に貸倒れは避けて通りません。
銀行融資の過去の統計をもとに、取引先の信用格付毎に一定のデフォルト率(貸倒れ確率)を計算し実際に貸倒れの発生有無にかかわらず、あらかじめ一定の引当コストを計上するものです。
収益
銀行の儲けの部分です。
財務内容が良好で銀行として積極的に融資を行いたい取引先には収益を低くします。
逆に財務内容が悪く銀行として慎重に融資を行う取引先には高い収益の確保を目指します。
上記1~3は銀行が最低限負担するコストです。
このコストに4の銀行の儲けを上乗せして取引先の金利を決めています。
融資金利を低くするには
では取引先としてはどのような努力をすれば融資金利が低くなるのでしょうか?
それは上記デフォルト率と収益の部分です。
信用格付が良くなれば銀行のデフォルト率は低下しますし、信用格付が高い取引先には銀行は収益を低くしてでも積極的に融資を行いたいと考えます。
信用格付は決算書の財務分析を主とする定量要因と業界環境や経営者の資質など定性要因に基づいて決定されています。
財務内容を良くするとともに、日頃から銀行の担当者との接触を多くして会社の売り込みを行うことで信用格付を高める効果が期待出来ます。
信用格付が良くなれば、厳しい交渉を銀行と行わなくても銀行の方から低利率にて融資の提案があるはずです。