この記事は、会社の借金や連帯保証の問題を抱える中小企業の経営者や後継者、またはその家族・親族の方に向けて書かれています。
社長交代の際に「会社の借金はどうなるのか?」「連帯保証の責任は誰が負うのか?」といった疑問や不安を解消し、後悔しないための知識と実務ポイントをわかりやすく解説します。
融資担当の銀行員が説明します。
目次
会社の借金は社長交代でどうなる?基本の仕組みと知っておくべきポイント
まずは会社の社長が交代した際に、銀行からの融資などの借金の取り扱いがどうなるのか、その基本ポイントを整理します。
社長交代で会社の借金は消えない
会社の借金は、社長が交代したからといって自動的に消えるものではありません。
借金をしているのは会社であり社長ではありません。
社長が交代したからといって会社そのものの存在には影響を与えるものではありません。
そのため社長が交代しても会社の借金がなくなるといったことはありません。
会社の社長が交代しても会社の借金には影響せずにそのまま借金は残る
連帯保証人の変更等の交渉が金融機関と行う必要がある
中小企業の銀行融資取引において、多くのケースではその代表取締役、つまり社長が連帯保証人になっています。
銀行等の金融機関からすると会社の代表取締役を連帯保証人に取ることが原則となっています。
そのため社長が交代し代表取締役が変更となる場合には、銀行等の金融機関と連帯保証人に関する交渉が必要となってきます。
社長が交代した場合の連帯保証人の取り扱いは原則として次の2通りとなります。
社長交代時の連帯保証人の取り扱い原則
・現在の借入金については前社長が引き続き連帯保証人として残り、新社長は連帯保証人にはならない。
ただし以降の借入については新社長が連帯保証人になる。
前社長は連帯保証人から外れ、新社長が連帯保証人になる
社長交代時の連帯保証人に関する取り扱いの原則の最初は前社長は連帯保証人から外れて、新社長が連帯保証人になるというものです。
これが原則中の原則の取り扱いとなります。
ただ新社長の立場から考えると、自身が社長になる前の借入金については責任を負いたくはない、つまり連帯保証人になりたくないという気持ちになるでしょう。
このため銀行等の金融機関は新社長から連帯保証人になりたくはないという意向表明があった場合には、無理をせず、次の取り扱いをします。
前社長が連帯保証人として残り、新社長は連帯保証人にならない
自分が社長になる前にあった借入金については連帯保証をしたくないという新社長の気持ちを踏まえて、社長交代時にあった借入金の連帯保証人はそのまま前社長が残り、新社長は連帯保証人にならないという取り扱いも可能です。
ただし新社長が社長になった以降に借入する借入金については新社長に連帯保証人になってもらいます。
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社長交代時の会社の借金は誰が返済責任を負うのか?
社長が交代しても会社の借金は、基本的に会社自体が返済義務を負います。
これは当たり前のことです。
連帯保証人の責任はあくまでも二次的なものであり、会社が借金の返済ができなくなった場合に連帯保証人に返済義務が発生します。
社長が交代しても会社の借金を返済しなければならないのは会社そのもの
社長が交代しても連帯保証人から自動的に外れるわけではない
ところで時々誤解があるのですが、社長が交代したからといって前社長は自動的に連帯保証人から外れるということはありません。
融資契約と連帯保証契約は別個のもの
会社が銀行から融資を受ける際には金銭消費貸借契約という融資契約を締結することになります。
これと同時に連帯保証人になる社長は銀行と連帯保証契約を締結することになります。
融資契約と連帯保証契約には強い結びつきがあるわけですが、しかし融資契約と連帯保証契約はあくまでも別個のものです。
融資契約は銀行と会社が締結するものであり、連帯保証契約は銀行と社長が締結するものです。
そして社長の交代はこの融資契約と連帯保証契約には直接の影響は与えない性質のものです。
つまり社長が交代したからといって融資契約や連帯保証契約が自動的になくなったり、変更になったりする性質のものではありません。
連帯保証契約というのはあくまでも銀行と社長である個人との間の契約です。
社長である個人との契約の意味
連帯保証契約は銀行と社長という肩書で締結するものではありません。
連帯保証契約は銀行と社長の立場にある個人の間で締結するものです。
つまり銀行と個人との契約です。
社長が交代しても社長であった個人には何ら変更はないはずです。
このため社長が交代しても前社長の連帯保証が自動的になくなるわけではないのです。
そのため社長交代時にはさきほどの「社長交代時の連帯保証人の取り扱い原則」に基づいた銀行との交渉が必要となってきます。
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連帯保証人から外れる・解除の方法と手続きの具体策
さて社長が交代しても前社長は連帯保証人から自動的に外れることはありません。
では連帯保証人から外れにはどのような手続きを踏めば良いのでしょうか?
以下では連帯保証人から外れる具体的な手続きを説明します。
連帯保証人から外れるには銀行等の同意が必要
結論しては連帯保証人から外れるには、銀行等の同意が必要です。
銀行からの会社の借金が信用保証協会の保証制度を利用したものであれば、銀行の同意に加えて信用保証協会の同意も必要となります。
社長交代に伴い前社長が連帯保証人から外れるために銀行や信用保証協会から同意を得るには次の2つのどちらかを充足する必要があります。
銀行や信用保証協会の同意を得る条件
・無保証人の融資に変更すること
新社長が代わりに連帯保証人になること
この条件は先ほど説明をした「社長交代時の連帯保証人の取り扱い原則」の通りです。
新社長が現在の借入金を含めて連帯保証人になる場合に、前社長が連帯保証人から外れることにつき銀行や信用保証協会は同意をします。
新社長が連帯保証人にならないのであれば、前社長が連帯保証人から外れることを銀行や信用保証協会は同意しません。
無保証人の融資に変更すること
会社の財務内容が良好であるなど一定の要件を満たすと銀行や信用保証協会は保証人なしでも融資をしたり保証制度の利用を認めることがあります。
銀行が「保証人なしでも融資をしますよ」、信用保証協会が「保証人なしでも保証をしますよ」と認められば前社長は連帯保証人から外れることができます。
最近では無保証人の融資や保証制度も拡大していますから、一度相談をしてみる価値はあると思います。
利害関係人の同意も必要
このように連帯保証人から外れるには銀行や信用保証協会の同意を得る必要がありますが、もう1つ重要な同意を得る必要があります。
それは利害関係人からの同意です。
利害関係人からの同意が得られないと銀行などは連帯保証人を外すことを認めません。
少しわかりくいと思いますので、具体的な例で説明をします。
・A社はB銀行から融資を受けている
・B銀行から融資を受けるにあたってA社長の代表取締役であるC社長とC社長の後継者であり弟である取締役のD氏が連帯保証人になっている
・さらにC社長とD取締役の実母Eが所有する不動産を担保としてB銀行に提供をしている
この状態でC社長が退任し新社長としてD氏が就任するにあたり、C社長が連帯保証人から外れたいとします。
A銀行にC社長が連帯保証人から外れることについて同意を得たとします。
その上でC社長が連帯保証人から外れるにはさらに利害関係人からの同意が必要となります。
上記の例で利害関係人とは次の人たちです。
同意が必要な利害関係人
・担保を提供している実母のE氏
連帯保証人として残るD新社長
D氏は今までも連帯保証人でありましたが、C社長も連帯保証人でした。
つまり今までは連帯保証人は二人だったわけです。
したがって万が一、連帯保証人が返済しなければならない事態になったとしても、D氏としてはC社長も連帯保証人であったわけですからD氏が負担する返済額は単純に考えると半分で済みました。
ところがC社長が連帯保証人から外れるとなると連帯保証人はD新社長一人となりその負担額が増加します。
つまりD新社長はC社長が連帯保証人から外れることで不利な立場に置かれることになります。
D新社長はC社長が連帯保証人から外れることにについて利害を持っているわけであり、利害関係人となります。
このため不利な状態に置かれる利害関係人であるD新社長が同意しない限り、銀行などはC社長が連帯保証人から外れることを認めません。
担保を提供している実母E氏
担保を提供している実母E氏は万が一、A社がB銀行に融資の返済ができない事態になった場合、担保に提供している不動産をB銀行に取られてしまいます。
一方で連帯保証人であるC社長とD新社長がいますから、例えばこの二人が返済をしてくれるのであれば、不動産をB銀行に取られないかもしれません。
しかしC社長が連帯保証人から外れることになれば、D新社長だけでは融資全額の返済ができずにE氏所有の不動産をB銀行に取られる可能性が高まってしまいます。
つまりC社長が連帯保証人から外れることにより実母E氏は不利な立場に置かれることになります。
このためC社長が連帯保証人から外れること対して実母E氏には利害があり利害関係人なのです。
したがってC社長が連帯保証人から外れるにあたって実母E氏の同意が得られないとB銀行はC社長が連帯保証人から外れることを認めません。
連帯保証人が死亡した場合
ここまで社長交代に関して会社の借金や連帯保証人がどうなるかについて説明をしてきましたが、最後にご参考までに連帯保証人が死亡した場合に会社の借金や連帯保証人がどうなるかについて説明をします。
連帯保証人が死亡しても会社の借金はそのまま
連帯保証人である社長が死亡しても会社の借金はそのままであり引き続き会社は返済義務を負います。
連帯保証人は相続される
連帯保証人である社長が死亡した場合には相続が発生しますが、相続というと預金や有価証券、不動産といった資産に目がいきますが、相続の対象は資産だけではなく負債も対象となります。
そして連帯保証人である社長が負っている保証債務というのは借金と同じ位置づけの負債となり相続の対象となります。
そのため現実には連帯保証人である社長が死亡した場合には、連帯保証人という負の立場が相続人に相続されることになります。
例えば相続人として奥さんと子供二人の場合には、連帯保証人である社長が死亡した瞬間に、奥さんと子供二人が連帯保証人になります。
これが現実であり注意が必要です。
連帯保証人になることを奥さんや子供二人を避けたい場合には相続放棄という手段があります。
ただし相続放棄は連帯保証という負債だけではなく、預金や有価証券、不動産といった資産を受け継ぐことも放棄しなければなりません。
連帯保証人が死亡するとその相続人が連帯保証人に自動的になる
社長交代で会社の借金はどうなる?連帯保証の真実のまとめ
以上、社長交代で会社の借金はどうなる?連帯保証の真実についてまとめますと次のようになります。
まとめ
・社長の交代に伴い連帯保証人の取り扱いについて銀行などの交渉が必要となる
・社長が交代しても連帯保証人である立場は自動的になくならない
・社長の交代で前社長が連帯保証人から外れるには新社長が連帯保証人なるなど銀行の同意が必要
・連帯保証人から外れるには銀行の同意だけではなく他の連帯保証人や担保提供者といった利害関係人の同意も必ず必要
・連帯保証人が死亡した場合、奥さんや子供といった相続人が連帯保証人になってしまう