銀行融資のおける担保で代表的なものは不動産担保です。
ところで不動産担保には抵当権と根抵当権の2種類があります。
抵当権と根抵当権の違いを理解しながら、根抵当で融資を受けることのメリットとデメリットについて融資担当の銀行員が説明をします。
目次
抵当権と根抵当権
銀行融資に関わる不動産担保では「抵当権」と「根抵当権」に大きく分けることが出来ます。
抵当権という言葉の前に「根」がついているかついていないかでどのような違いがあるのでしょうか。
抵当権とは
抵当権というのは特定の融資だけ担保する性質のものです。
複数の銀行融資を利用している状況において抵当権は複数の融資のうちの「この1つ」に限定した担保ということになります。
したがって「この1つ」の融資が仮に返済不能となった場合、抵当権が行使されて対象の不動産を失う可能性がありますが、「この1つ」以外の融資が返済不能となっても抵当権は行使されずに不動産を失うことはないという理屈が一応は成立します。
そして「この1つ」の融資の返済が終われば抵当権の効力は消滅します。
抵当権とはある特定の融資を担保するだけ
この特定の融資が完済となれば担保としての効力はなくなる
根抵当権とは
これに対して根抵当権というのは担保の対象とする融資を特定しない性質を持っています。
複数の銀行融資を受けている場合、根抵当権はその複数の融資全てが根抵当権の担保対象となります。
また根抵当権は現在の融資のみならず、将来に別の融資を利用した場合にはその将来の融資も根抵当権の担保の対象となります。
根抵当権は現在と将来の融資をすべてを対象とする不動産担保
根抵当のメリットとデメリット
それでは根抵当のメリットとデメリットについて説明をします。
根抵当のメリット
根抵当のメリットは何と言っても一度根抵当権の設定登記を行えば、その後の追加融資の際に都度、担保の設定手続きを行わなくても良いという点です。
不動産担保の設定には費用がかかる
根抵当権や抵当権の不動産担保は法務局において設定登記を行う必要があります。
不動産担保の設定登記には通常、次のような費用がかかります。
不動産担保の設定費用
・司法書士への報酬
・印紙税
登録免許税は設定金額に対して4/1000の割合で発生します。
例えば不動産担保の設定金額が1,000万円の場合、1,000万円×4/1000=4万円の登録免許税が発生します。
仮に1億円の不動産担保を設定する場合には登録免許税だけで40万円の費用が発生することとなります。
そして法務局への不動産担保の設定の登記は一般的に専門家である司法書士にお願いをすることとなります。
そのため司法書士宛の報酬の支払いもあります。
根抵当は一度設定登記を行えば、その後ずっと担保としての効力がありますから、上記の費用の負担は最初の一度だけで済ませることができます。
根抵当のメリットは設定費用が最初に一度だけで済む
銀行から継続的に融資が受けられる可能性が高まる
根抵当のメリットのもう1つは銀行から継続的に融資が受けられる可能性が高まるという点です。
銀行の融資審査のポイントは返済能力があるかどうかであり、担保の有無は二次的な判断基準です。
しかしやはり担保があると銀行は融資がしやすくなることは事実です。
返済能力が今一歩ではあるものの、担保があるから融資を行うという銀行判断はよくあることです。
根抵当のメリットのもう1つのメリットは銀行から継続的に融資が受けやすくなること
根抵当のデメリット
根抵当には上記のようなメリットがある一方でデメリットもあります。
根抵当のデメリットとしては現在と将来のすべての融資が担保の対象になってしまうということです。
根抵当は普通の抵当権とは異なり、担保の対象となる融資を特定するのではなく包括的にすべての融資が対象となります。
そして現在借りている融資だけではなく、今後銀行から受ける融資も自動的に根抵当の対象になってしまうことです。
そのためある融資を完済しても他の融資がまだ残っていれば根抵当は原則として解除されることはありません。
根抵当は特定の融資だけでなくすべての融資が担保の対象となり、なかなか外れない
抵当権と根抵当権のどちらが良いのか
このように根抵当にはメリットがある一方でデメリットもあります。
それでは担保の対象となる融資を特定する抵当権の方が借り手側には有利のように感じられることもあるでしょう。
しかし必ずしも抵当権の方が有利で便利だとは言い切れません。
一回だけの融資であれば抵当権の方が良いが・・・
銀行から融資を受けるのが一回限りであれば抵当権で十分でしょう。
しかし銀行融資を繰り返し受ける場合、いちいち抵当権の設定をすることは煩雑です。
さきほども説明をしましたように不動産に抵当権や根抵当権を設定するには原則として設定する金額の4/1000の登録免許税の負担が生じます。
仮に設定する金額が1,000万円の場合には4万円の登録免許税の納付義務が生じます。
そして実際には抵当権設定の登記事務は専門家である司法書士に委任することが大半ですから、司法書士への手数料支払いも発生します。
銀行から融資を受ける都度に抵当権を設定していれば手間も面倒であることに加えて登録免許税などの支払負担もバカにはなりません。
根抵当権の利便性
抵当権に対して根抵当権であればその都度、担保を設定する手間が省けます。
根抵当権は現在の融資のみならず将来の融資も担保の対象となりますから、融資を受けるごとに担保設定する手間が省けます。
登録免許税などの支払負担も最初に根抵当権を設定する時のみの負担です。
したがって住宅ローンに代表されるように銀行から融資を受けるのが一回限りだと考えられる場合には抵当権を選択しましょう。
一方で事業資金のように繰り返し銀行から融資を受ける可能性が高い場合には根抵当権を選択することをおすすめします。
根抵当で融資を受けることのメリットでデメリットのまとめ
以上、根抵当で融資を受けることのメリットとデメリットについてまとめますと次のようになります。
まとめ
・根抵当であると今後も銀行から融資が受けやすくなる
・一方で根抵当は現在と将来のすべての融資が対象となり、なかなか根抵当は外れにくい
・事業資金のように継続的に銀行から融資を受ける予定であれば根抵当の方が良い