「売上はあるのに、毎月の借入金返済が重く、預金が増えない」
「複数の銀行から借り入れており、会社全体でいくら返済しているのか把握できていない」
「借入金の返済負担を減らしたいが、何から改善すべきかわからない」
このような悩みを抱える中小企業経営者は少なくありません。
借入金の返済負担を考える際に重要なのは、借入金残高の大きさだけではありません。
会社が事業活動から生み出せる資金に対して、年間の元金返済額がどの程度あるのかを確認することが重要です。
借入金残高が多くても、十分な返済原資があれば返済を続けられる会社があります。一方、借入金残高が比較的少なくても、毎月の返済額が大きいために資金繰りが苦しくなる会社もあります。
この記事では、長年にわたり法人融資・融資審査に携わってきた銀行員の立場から、借入金の返済負担を数字で把握する方法と、無理のない返済水準に近づけるための改善策を解説します。
この記事でわかること
- 借入金の返済負担が重いかどうかを判断する方法
- 年間返済額と返済原資の計算例
- 借入金一覧表で確認すべき数字
- 返済負担を軽減する5つの改善方法
- 銀行に相談する際の具体的な説明方法
- 社長が毎月確認したい8項目のチェックリスト
借入金の返済負担が重い会社とは
借入金の返済負担が重い会社とは、毎月または年間の借入金返済額が、会社の資金創出力や手元資金に対して大きく、資金繰りを圧迫している会社です。
例えば、毎月100万円の元金返済がある会社でも、毎月200万円の資金を安定して生み出せるのであれば、返済負担は比較的軽いと考えられます。
一方、毎月の資金創出額が50万円しかない会社では、毎月100万円の元金返済を続けることは難しくなります。
つまり、返済負担の重さは、借入金の残高や返済額だけでは判断できません。
借入金残高が多いことと返済負担が重いことは異なる
例えば、借入金残高が5,000万円ある会社でも、返済期間が長く、十分な返済原資があれば、毎月の資金繰りが安定する場合があります。
反対に、借入金残高が2,000万円でも、短い返済期間の借入金が集中していれば、毎月の返済負担が重くなることがあります。
借入金残高と年間元金返済額は、分けて管理する必要があります。
借入金の返済負担を判断する3つの数字
1.年間の借入金元金返済額
まず、すべての銀行借入金について、年間の元金返済額を合計します。
例えば、次のような借入金がある会社を考えます。
| 借入先 | 借入残高 | 毎月元金返済額 |
|---|---|---|
| A銀行 | 3,000万円 | 50万円 |
| B銀行 | 1,800万円 | 30万円 |
| C銀行 | 1,200万円 | 20万円 |
| 合計 | 6,000万円 | 100万円 |
この会社の年間元金返済額は、毎月100万円×12か月=1,200万円です。
実際には、ボーナス返済、期日一括返済、返済終了予定などがあるため、返済予定表に基づいて計算してください。
2.会社が生み出す返済原資
銀行融資の返済能力を確認する際、一般的な目安の一つとして次の計算が使われます。
簡易的な返済原資の目安
税引後当期純利益+減価償却費
例えば、税引後当期純利益が500万円、減価償却費が300万円であれば、簡易的な返済原資は800万円です。
ただし、この計算だけで実際の返済可能額が決まるわけではありません。
売掛金や在庫の増加、設備投資、納税、その他の資金支出によって、実際に返済に使える現金は変わります。
したがって、利益と減価償却費による計算に加えて、資金繰り表による確認が必要です。
3.年間元金返済額と返済原資の差
先ほどの会社について、年間元金返済額と簡易的な返済原資を比較します。
年間元金返済額:1,200万円
簡易的な返済原資:800万円
差額:年間400万円の不足
この計算例では、簡易的な返済原資に対して年間元金返済額が400万円上回っています。
この差額を、手元資金の取り崩しや新たな借入れなどで補っている可能性があります。
ただし、売掛金の回収や在庫削減などによって資金を確保できる場合もあるため、この差額だけで資金ショートや返済不能と判断することはできません。
大切なのは、差額が発生している理由と、それを継続的に補えるかどうかを確認することです。
借入金返済能力を返済カバー率で確認する
返済負担を把握する補助的な指標として、返済原資が年間元金返済額の何倍あるかを確認する方法があります。
ここでは、簡易的な返済カバー率として次のように計算します。
簡易的な返済カバー率
返済原資÷年間元金返済額
返済原資800万円、年間元金返済額1,200万円の場合は、約0.67倍です。
この数値は、簡易的な返済原資が年間元金返済額を下回っていることを示します。
ただし、これは銀行が用いる指標を一律に示したものではありません。利息支払いを含める指標や、営業キャッシュフローを使う指標などもあり、算出方法は異なります。
また、1倍を超えていても、設備投資や運転資金の増加によって資金不足になることがあります。
借入金の返済負担を軽減する5つの改善方法
改善方法1.借入金を一覧表にして返済の集中を確認する
最初に行いたいのが、会社全体の借入金を一覧表にまとめることです。
銀行ごとの借入残高だけでなく、借入金ごとの返済期間、毎月返済額、最終返済日を確認します。
特に、短い返済期間の借入金が集中している場合には、毎月の返済負担が重くなることがあります。
また、期日一括返済の借入金がある場合には、返済期日にどのように対応するのかを別途確認する必要があります。
改善方法2.返済期間や借換の可能性を銀行と相談する
返済負担を軽減する方法の一つが、借入金の返済期間の見直しです。
例えば、残高1,200万円の借入金を元金均等で残り3年間返済する場合、毎月の元金返済額は約33万3,000円です。
仮に銀行との協議によって返済期間を5年間にできれば、毎月の元金返済額は20万円になります。
ただし、返済期間の延長が認められるかどうかは、会社の業績、借入金の資金使途、銀行の審査などによって異なります。
また、返済期間を延長すれば、利息の総支払額が増える場合があります。
借換についても、既存融資の内容や新たな融資の条件によっては、必ずしも返済負担が軽減するとは限りません。
改善方法3.売掛金・在庫を見直して返済に使える資金を増やす
返済負担を改善する方法は、借入条件の見直しだけではありません。
売掛金の回収が遅れていたり、過剰な在庫を抱えていたりすると、会社の資金が固定されます。
売掛金の回収促進や在庫削減によって手元資金を確保できれば、借入金返済に伴う資金繰りの負担を緩和できる場合があります。
ただし、回収条件の変更や在庫処分には、取引先との関係や販売への影響もあるため、慎重に検討してください。
改善方法4.粗利益率と固定費を改善して返済原資を増やす
借入金の返済負担を根本的に軽減するためには、会社が生み出す資金を増やすことが重要です。
例えば、年間売上高2億円の会社が粗利益率を1ポイント改善できれば、売上高が変わらない場合、年間粗利益は200万円増加する計算になります。
この改善が経費増加などで相殺されなければ、利益と資金創出力の改善につながる可能性があります。
不採算取引の見直し、販売価格の適正化、外注費や固定費の見直しなどを検討してください。
改善方法5.返済が難しい場合は早めに返済条件変更を相談する
通常の返済を継続すると資金繰りが維持できない場合には、銀行へ返済条件変更(リスケ)を相談する方法があります。
リスケによって、一定期間の元金返済額を減らしたり、元金返済を猶予したりできる場合があります。
ただし、リスケには銀行との協議・審査が必要です。
また、返済を先送りした元金は将来返済する必要があり、新規融資の審査にも影響する場合があります。
返済条件変更は借入金を消す方法ではなく、会社の資金繰りを立て直すための時間を確保する方法です。
返済が難しくなる見込みがある場合には、延滞する前に銀行へ相談することが重要です。
借入金返済額をいくら減らせばよいのか
銀行に返済負担の軽減を相談する場合には、単に「返済が苦しい」と伝えるだけでなく、どの程度の返済額なら資金繰りを維持できるのかを検討します。
例えば、次の会社を考えます。
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 営業活動による資金余剰(利息支払後・元金返済前) | 80万円 |
| 毎月の借入金元金返済額 | 120万円 |
| 差引資金収支 | -40万円 |
ほかの資金移動がないと仮定すると、毎月40万円ずつ現預金が減少します。
仮に毎月の元金返済額を60万円に変更できれば、差引資金収支は20万円のプラスになります。
ただし、実際には季節変動、納税、設備投資、売掛金・在庫の増減などを考慮する必要があります。
したがって、返済可能額は単月の数字だけで決めず、今後の資金繰り表を使って判断してください。
銀行融資・資金繰りのメール相談
「毎月の借入金返済額が重い」「返済原資と返済額のバランスがわからない」「銀行に返済期間の見直しを相談したい」といったお悩みはありませんか。
長年の法人融資・融資審査の実務経験を踏まえ、返済負担の整理方法や銀行が確認するポイントについて、メールでご相談をお受けします。
※ご相談はメールでの対応となります。融資の承認・実行や返済条件の変更を保証するものではありません。
銀行へ返済負担の軽減を相談するときの説明方法
銀行に返済負担の軽減を相談する際には、会社全体の返済状況を数字で説明することが重要です。
銀行に準備したい資料
- 直近の決算書
- 直近の試算表
- 銀行別・借入金別の借入金一覧表
- 今後3か月から6か月程度の資金繰り表
- 売上・利益の改善見通し
- 返済額の見直しを希望する場合は、その根拠となる資金繰り計画
これらがすべて完成していなくても、返済が難しくなる見込みがある場合には、銀行への相談を先延ばしにしないことが大切です。
銀行への説明例
「現在、会社全体で毎月120万円の元金返済があります。一方、足元の営業活動から生み出せる資金は、利息支払後で月80万円程度です。
このままでは毎月40万円程度の資金不足が続く見込みです。
売掛金の回収促進と固定費削減を進めていますが、改善には時間が必要です。
今後の資金繰り表を作成しましたので、返済負担を軽減できる方法についてご相談したいと考えています。」
このように、現状、問題点、改善策、相談したい内容を順序立てて説明すると、銀行も検討すべき事項を把握しやすくなります。
複数銀行から借入れをしている会社の注意点
複数の銀行から借入れをしている場合には、特定の銀行の返済額だけでなく、会社全体の返済額を確認する必要があります。
例えば、A銀行への返済額を減らしても、B銀行やC銀行への返済負担が重いままでは、資金繰りの改善効果が限定的になる場合があります。
返済条件変更を相談する場合には、各銀行の融資内容や返済状況を整理し、必要に応じて主力銀行とも相談しながら進めることが重要です。
ただし、すべての銀行で必ず同じ返済条件にしなければならないというわけではありません。金融機関間の公平性や担保・保証の状況なども踏まえ、関係銀行との協議が必要になります。
借入金返済負担の8項目チェックリスト
自社の借入金管理について、次の8項目を確認してください。
借入金返済負担チェックリスト
確認できている項目にチェックを入れてください。
0 / 8項目を確認
※このチェックリストは借入金管理の状況を整理するためのものです。チェック数によって返済能力や融資の可否を判定するものではありません。
借入金の返済負担に関するよくある質問
Q1.借入金が年商の半分を超えていたら危険ですか?
借入金が年商に対して多い場合には注意が必要ですが、その比率だけで返済能力は判断できません。業種、利益率、運転資金、設備投資、年間返済額などを総合的に確認する必要があります。
Q2.黒字なのに借入金返済が苦しいのはなぜですか?
借入金の元金返済は原則として損益計算書の費用になりません。そのため、黒字でも元金返済額が大きい場合や、売掛金・在庫が増えている場合には資金繰りが苦しくなることがあります。
Q3.返済期間を延ばせば毎月の返済額は減りますか?
元金均等返済などでは、返済期間を延長することで毎月の元金返済額が減る場合があります。ただし、銀行の審査が必要であり、利息の総支払額が増える場合もあります。
Q4.借入金を一本化すれば返済負担は減りますか?
一本化によって返済期間や条件を見直せれば、毎月の返済額が減る場合があります。ただし、一本化するだけで自動的に返済額が減るわけではありません。新たな返済条件を確認する必要があります。
Q5.リスケをすると新規融資は受けられなくなりますか?
返済条件変更中は新規融資の審査が慎重になる場合がありますが、一律に禁止されているわけではありません。業績改善状況、資金使途、返済見通しなどによって判断されます。
Q6.借入金の返済が難しくなったら、いつ銀行へ相談すべきですか?
返済が難しくなる見込みが立った段階で、できるだけ早く相談してください。延滞が発生する前であれば、必要資料の準備や返済条件の検討に時間を確保できます。
まとめ|借入金の返済負担は年間返済額と返済原資で管理する
借入金の返済負担が重い会社では、借入金残高だけでなく、年間元金返済額と会社の返済原資を比較することが重要です。
改善方法としては、次の5つが考えられます。
- 借入金一覧表で返済状況を把握する
- 返済期間や借換の可能性を銀行と相談する
- 売掛金・在庫を見直して手元資金を確保する
- 粗利益率と固定費を改善して返済原資を増やす
- 返済が難しい場合は早めに返済条件変更を相談する
借入金返済の改善は、返済額を減らすことだけでなく、会社が安定して返済できる資金を生み出すことが目的です。
資金繰りが苦しくなってから慌てて対応するのではなく、毎月の借入金管理と早めの銀行相談を心がけてください。
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長年の法人融資・融資審査の実務経験を踏まえ、借入金返済負担の整理方法や銀行との相談の進め方について、メールでご相談をお受けします。
※ご相談はメールでの対応となります。融資の承認・実行や返済条件の変更を保証するものではありません。