隣地購入の設備資金融資案件
年商3億円ほどのマンションの再販業。
リフォーム工事はほとんど外注工事で。
本社は社長の所有物件。
今回隣地が売りに出されたことから、この隣地の購入資金の融資を希望。
この会社は現在借入金が年商の6割ほどあり。
隣地購入および建物新築資金として2億円ほどを借入希望。
当然その購入物件を担保にして。
隣地購入後は会社事務所を新築し、あわせて駐車場も完備したいとのこと。
当方より購入の効果は?との質問に対しては、現在下請けとの打ち合わせは現在の事務所内で行っているが、手狭なことと、駐車場がないため、下請けさんには路上駐車をお願いししている。
近隣の人にも迷惑をかけているし、大勢での打ち合わせは現在できないが、隣地に駐車場兼備の新事務所を持つことにより、これらが解決するというもの。
借入期間としてはできれば20年を希望されている。
結論は、今回の借入申し出は謝絶です。
本業の業績に寄与しない過大な設備投資
設備投資は本来会社の業績を将来的に向上させるために行うもの。
それに対して今回の投資の目的は、気持ちはわかるものの、会社の業績向上には直接に結びつくことはない。
会社の収益向上に結びつかないということは借入金増加による返済負担が今より増加し資金繰りを悪化させることになる。
すでに十分な収益力があり返済面に懸念がないのであれば融資も検討可能であるが、今回の会社の場合には収益力が極めて低く今でも返済負担が相当重い。
このような状況で今回の投資を行ってもますます資金繰りの首を絞めるだけ。
銀行としては当然返済面への懸念が残る案件ということになる。
こういう会社の業績には直接結びつかない投資は、基本的にはやらないことですが、仮に行うとしても手元の資金内でするべきなのです。
また明らかに今回の投資額は当社の規模対比過大です。
設備資金融資の審査で大切なのは収益返済能力
銀行は設備投資資金の融資を検討する場合、もっとも重要視するのは、その会社の収益返済能力です。
総借入金をキャッシュフロー(税引後当期利益+減価償却)で割ります。
そうすると理論上、借入金は何年で返済可能なのかがわかります。
例えば総借入金が1億円。キャッシュフローが年5百万円であれば、返済可能期間は20年ということになります。
新たな設備投資による借入金を含めて、返済可能期間が10年以内であれば、基本的に銀行は融資を前向き検討します。
逆に20年超ということであれば、銀行は融資を断る方針に傾きます。
またこの返済可能期間を算出することにより、計画している設備投資がその会社の規模対比適当な水準なのか、あるいは過大なものなのかのおおよその見当をつけることが出来ます。
返済可能期間は目安は10年以内
銀行的には返済可能期間が10年を超えるような設備投資計画は過大と考えます。
このような場合は、銀行は設備投資計画の規模の縮小が出来ないのか、規模の縮小が出来ないのであれば、自己資金をいくらか投入して借入金を少なくすることは出来ないのか、などを打診することになります。
過大な設備投資は、その後間違いなく会社の経営の重石になります。
それが原因で倒産した企業は数知れません。
新たな設備投資を行う場合は、その借入金を含めて10年以内に返済が理論上可能なのかどうかを考えてください。
10年以内に収まるのであれば、その計画は前へ進めてもよいと思います。
10年を超えるのであれば、その計画を断念するか、あるいは規模の縮小などを検討すべきと考えます。
ちなみに今日の中小企業の場合は、返済可能期間は60年を超えていました。
こういう状態で銀行が設備投資融資を行うことは、まずありません。