過去に事業等で失敗をし破産などの債務整理をした後に、やはり再び開業して今度は事業を成功させたいと考える人が少なくないと思います。
今回は債務整理後に開業する方法と開業資金の資金調達の注意点について融資担当の銀行員が説明をします。
債務整理後の開業は可能か?ブラックリストでも挑戦できる理由
破産などの債務整理を行ったということは金融事故を起こしてしまったということです。
金融事故を起こすといわゆるブラックリストということになります。
ブラックリストになると銀行からの融資は基本的に絶望的になります。
ブラックリストになると銀行から融資を受けることは困難
ブラックリストとは?信用情報の仕組みを解説
クレジットカード、住宅ローン、教育ローン、カードローン、消費者金融など私たち個人で利用しているケースは少なくないはずです。
クレジットカードなどの新規申し込みの事実や、その後の支払いや返済状況などは個人信用情報として専門の情報機関に登録がされています。
特にクレジットカードの毎回の支払い状況やローンの返済状況の情報は重要です。
クレジットカードを毎回、きちんと支払いをしているか、支払いが遅れていることはないか、ローンをきちんと返済をしているか、延滞などをしていない、自己破産などの債務整理を行っていないかなどの情報は個人信用情報として綿密に登録がされています。
そして次のような状況になると個人信用情報に「事故情報」として登録がされることになっています。
個人信用情報の事故情報
・自己破産などの債務整理の実施
個人信用情報の事故情報がいわゆるブラックリスト
この個人信用情報の事故情報こそが俗に言われているブラックリストのことです。
ブラックリストとは延滞や債務整理の金融事故を起こした人のこと
ブラックリストの意味すること
ではこのブラックリストは銀行などの融資を行う側からみるとどのようなことを意味すると思われますか?
さきほどブラックリストとは延滞や自己破産などの債務整理を行ったことでした。
つまりは支払いや返済ができないということです。
これを融資をする銀行やカード会社のサイドから見ると、ブラックリストの個人に対してクレジットカードを発行したりローンを実行しても、支払いや返済がされない、つまり焦げ付くということを意味します。
焦げ付きとは銀行やカード会社が貸倒という損失を被ることになります。
したがってブラックリストの人にローンなどを貸すことは返済されずに焦げ付き、損失を被る可能性が他の人よりもはるかに高いことを意味してしまいます。
そのため銀行やカード会社などはブラックリストの人にはローンを実行することやクレジットカードの利用を行わないということにつながってしまうのです。
ブラックリストの人にローンなどを貸すことは焦げ付きという損失を被る可能性が高いことを意味する
ブラックリストは永久ではない
しかしブラックリストに載ってしまったから、その後永久に銀行から融資を受けたりクレジットカードが作ることができないというわけではないのです。
延滞の場合
3ヶ月以上の延滞をしてしまうとブラックリストに載ってしまいますが、この延滞という事故情報は延滞が解消してから5年が経過すると自動的に消えます。
つまりブラックリストではなくなるということです。
延滞の場合は延滞が解消してから5年が経過するとブラックリストから消える
自己破産などの債務整理の場合
自己破産などの債務整理は10年が経過するとブラックリストから自動的に消えます。
自己破産などの債務整理は10年が経過するとブラックリストから消える
ブラックリストから消えることの意味
ブラックリストから消えるということは、その人の個人信用情報から延滞や債務整理の事故情報が消えるということです。
また過去のブラックりストであったというような履歴の情報も残りません。
つまりブラックリストから消えるということは完全にブラックリストではないということです。
クレジットカードの新規申し込みや個人ローンの新規申し込みを行うと、銀行やカード会社などはその人の個人信用情報を調査しますが、ブラックリストの情報は出てきません。
つまり銀行やカード会社などはその人が過去においてもブラックリストであったことを知ることができなくなるのです。
ブラックリストから消えるということはその人は昔も今もブラックリストではないことを意味する
ブラックリストから消えれば再び融資などが受けられる
このようにブラックリストから消えるとその人は過去も今もブラックリストではないことになります。
銀行やカード会社などもその人が過去においてブラックリストであったことも知ることができなくなります。
ブラックリストではない人とまったく同じ条件でローンやクレジットカードの審査を受けることとなります。
そのためブラックリストから消えれば銀行から融資を受けたりクレジットカードが新規に発行されたりすることが可能となるのです。
ブラックリストから消えれば融資などを受けることができるようになる
債務整理後の開業と資金調達
それでは今回のテーマの中心である債務整理後の資金調達について説明をします。
ブラックリスト中は銀行等からの資金調達は無理
さきほども説明をしましたが自己破産などの債務整理を行うとブラックリストに掲載されます。
そしてブラックリストに掲載されている期間は10年です。
この間、つまりブラックリストに掲載されている間は銀行等からの資金調達は無理です。
ブラックリストに掲載されている間は銀行等からの融資による資金調達は無理
債務整理後10年が経過すると資金調達は可能
ブラックリストに一度載ると永久に銀行等から融資が受けられないということはありません。
債務整理によるブラックリストはその情報が10年間登録されることになっています。
そして10年が経過するとブラックリストからは自動的に削除されます。
ブラックリストから削除されると、そもそもブラックリストではなかった状態になります。
個人信用情報にも過去にブラックリストであった情報が登録がされません。
そのため銀行等が審査の過程で個人信用情報を調査しても、ブラックリストであったという情報を確認することができません。
つまり銀行等は融資を申し込みした人がブラックリストであったことを知ることはないのです。
ブラックリストでなければ銀行等の融資審査は通常通りに行われます。
したがってその審査が通れば、過去にブラックリストであっても銀行等から融資を受けて資金調達を行うことができるのです。
もちろん開業資金の融資も利用することができます。
債務整理後10年が経過すると開業資金の資金調達が可能となる
参考情報
さて債務整理は行っていないが、現在借金を抱えている個人の人が開業資金の融資を受けることができるかどうかについて説明をします。
ある個人の方からの質問
現在、個人的につくった200万円の借金があります。
クレジットカードや消費者金融からのものです。
仕事は自営業(個人事業)です。
このたび、全く新しい事業をはじめることを計画しており100万円くらい費用がかかります。
事業資金として銀行融資を受けたいのですが、融資の審査の段階で個人の借金があるとして断られてしまいますでしょうか?
借金の種類が問題
純粋の個人として借金があっても事業資金の融資は受けられる可能性があります。
審査で問題になるのは個人としての借金の種類、内容です。
個人の借金が住宅ローンの場合
個人の借金が住宅ローンの場合には、事業資金の融資が受けづらくなるといった影響はそれほどありません。
あくまでも審査の中心は住宅ローンを含めて返済が可能かどうかの判断となります。
住宅ローンに加えて教育ローンやオートローンも同様のことが言えます。
住宅ローンや教育ローン、オートローンは純粋な個人の生活に要するものでありこのようなローンの金利は一般的に低水準です。
個人の借金が消費者金融の場合
一方で個人の借金が消費者金融の場合には、返済が出来るかどうかの審査以前にその個人の属性の観点から問題となります。
もっとも消費者金融が悪だということではありません。
ただ消費者金融というのは一般的に金利が高水準です。
このような高金利の借金があるということはその個人の方の資金繰りが苦しいのではないかとどうしても考えてしまいます。
借金や融資の返済を安定的に行うためには資金繰りが安定していなければなりません。
この点において消費者金融から借金がある→資金繰りが苦しいのではないか→事業資金融資を行っても返済出来ないのではないかと銀行では考えてしまうのです。
高金利の借金を借換するのではないか
銀行の事業資金融資の金利は基本的に消費者金融の金利よりもはるかに低金利です。
事業資金の融資は文字通り事業に必要な資金に対応するものです。
しかし実際には事業に融資資金を使用せずに高金利の消費者金融からの借金に流用されてしまうことを銀行は懸念しています。
これが審査を難しくする大きな要因の1つです。
銀行の現実の対応は?
上記のように消費者金融など高金利の借金がある個人の方からの事業資金の融資申込を受けた場合、銀行はまずその高金利の借金を完済してから改めて相談されるように対応をしています。
消費者金融など高金利の借金がある状態では事業資金融資をお断りしているのが現実の銀行の対応です。
債務整理後に開業する方法と資金調達の注意点のまとめ
以上、債務整理後の開業資金の資金調達の注意点についてまとめますと次のようになります。
まとめ
・債務整理後10年が経過するとブラックリストから消える
・ブラックリスト中は開業資金の資金調達は無理
・ブラックリストから消えれば開業資金の資金調達は可能