融資先の決算書を分析していると時々減価償却費の償却不足の決算書に出会うことがあります。
減価償却不足に対する銀行の考え方を説明します。
質問
会社の経理を担当しています。
毎年定額法で減価償却費を1,000万円ほど計上していますが、今年の決算状況が悪いため、少しでも赤字を減らすために減価償却費を300万円程度に抑えたいと考えています。
ただ、顧問の税理士からは「銀行から粉飾と見られてしまうかも」と言われています。
減価償却費をいくら計上するかは会社の自由だと思うのですが、それでも銀行は粉飾決算と見るのですか?
減価償却費を減らしても無意味
減価償却費は費用ですからその減価償却費を減らせばそれだけ決算書上の利益が増加することになります。
通常通りに減価償却費を計上すると赤字になり、銀行の融資姿勢が厳しくなることを懸念して減価償却費を減らして赤字を回避する動きが時々見受けられます。
しかしこれは銀行には無意味です。
減価償却費の償却不足
減価償却費の計上は定額法とか定率法にてその計上基準が決まっています。
その計上基準に従って毎期、減価償却費をきちんと計上するのが正しいことです。
決算書上の利益をかさ上げするために本来計上しなければならない減価償却費の金額より少ない金額を計上、つまり減価償却費の償却不足を行っても銀行は本来の減価償却費を計上した場合の利益水準にて融資判断を行います。
そして減価償却費の償却不足の取引先は利益体質が弱い財務体質だと銀行は考えますから何らプラスにはなりません。
要するに減価償却費の償却不足を行って決算書上の利益をかさ上げしても銀行にはプラスにならないどころかむしろマイナスだということです。
粉飾決算とまでは言わないが
減価償却費をいくら計上するかは事業主の自由です。
銀行がとやかく言う話ではありません。
したがって減価償却不足があっても、それが粉飾決算とは言えません。
ただし銀行は、特に融資審査にあたっては融資先の真の実力を見極めようとします。
減価償却を少なめに計上すれば、その分だけ利益はプラスされます。
このことにより損益計算書上は黒字額が増加したり、赤字額が減少したりします。
損益計算書の表面的な数字を、減価償却費の計上度合いによって「操作」することが可能となります。
ただし銀行は融資審査においては融資先の真の利益水準を把握し返済可能性等を分析して融資可否を判断しています。
減価償却費の償却不足を行って決算書の表面上の利益を操作しても、真の利益水準は変わりません。
結論は銀行の融資判断において減価償却費の償却不足はマイナスです。