減価償却費を通常どおり計上すると、決算が赤字になってしまう。
そのため、銀行融資への悪影響を心配して、減価償却費を少なく計上し、何とか黒字決算にしようと考える中小企業の経営者がいます。
しかし、減価償却費を少なく計上して黒字にすれば、銀行融資の審査で有利になるのでしょうか。
また、減価償却費を適切に計上した結果、赤字決算になった場合には、銀行はどのように評価するのでしょうか。
結論から申し上げると、減価償却費が原因で赤字になったからといって、銀行融資が必ず受けられなくなるわけではありません。
銀行は決算書の最終利益だけでなく、減価償却費を考慮した返済原資や、実際の資金繰りも確認しているからです。
一方で、利益を大きく見せるために減価償却費を過少に計上しても、銀行の融資審査で有利になるとは限りません。
私は長年、銀行で法人融資の営業や融資審査に携わってきました。
その実務経験をもとに、減価償却費が赤字決算や銀行融資に与える影響、減価償却不足に対する銀行の評価、返済能力の判断方法について具体的に説明します。
減価償却費が原因の赤字でも銀行融資は受けられる
まず、この記事の結論を整理します。
- 減価償却費が原因で赤字になっても、銀行融資を受けられる可能性はあります。
- 銀行は赤字額だけでなく、減価償却費を考慮した返済原資を確認します。
- 減価償却費は計上時に現金支出を伴わない費用です。
- ただし、減価償却費を加算した返済原資がプラスでも、必ず融資が受けられるわけではありません。
- 減価償却費を過少に計上して黒字に見せても、銀行は実質的な利益水準を確認します。
- 銀行融資を受けるためには、赤字の原因と今後の返済見通しを説明することが重要です。
銀行の融資審査では、融資した資金を約束どおりに返済できるかどうかが重要です。
したがって、決算書が赤字か黒字かという点だけで融資の可否を判断するわけではありません。
赤字の原因が何なのか、今後の収益力はどうなのか、借入金を返済する資金を確保できるのかという点を総合的に判断します。
その中でも減価償却費は、銀行が返済能力を分析する際に重要な項目の一つです。
減価償却費とは何か
減価償却費が銀行融資に与える影響を理解するために、まず減価償却の仕組みを整理します。
設備の取得費用を使用期間にわたって配分する
減価償却とは、建物や機械設備、車両などの減価償却資産の取得原価を、一定の期間にわたって費用として配分する会計処理です。
例えば、運送業の会社が事業用トラックを1,000万円で購入したとします。
このトラックは購入した年だけでなく、その後も数年間にわたって運送業務に使用されます。
そのため、取得費用を購入時にすべて費用計上するのではなく、使用する期間にわたって配分していく考え方が減価償却です。
減価償却の計算には、資産の種類、耐用年数、償却方法などが関係します。
1,000万円のトラックを購入した場合の計算例
ここでは説明をわかりやすくするために、取得価額1,000万円を5年間で均等に費用配分するものと仮定します。
この場合、毎年の減価償却費は次のようになります。
1,000万円÷5年間=年間200万円
この例では、毎年200万円ずつ減価償却費を計上することになります。
ただし、これは仕組みを説明するための単純化した計算です。実際の償却額は、車両の種類や耐用年数、適用する償却方法、取得時期などによって異なります。
減価償却費は利益を減少させる
減価償却費は、損益計算書上の費用です。
製造原価や販売費及び一般管理費などに計上され、利益を減少させる要因となります。
例えば、減価償却費を計上する前の利益が300万円で、減価償却費が500万円の場合を考えます。
ほかの条件が同じであれば、減価償却費を計上した後の利益は次のようになります。
300万円-500万円=200万円の赤字
このように、減価償却費の負担によって決算が赤字になる場合があります。
特に運送業、製造業、建設業など、設備投資が多い業種では減価償却費が多額になりやすい傾向があります。
銀行は減価償却費による赤字をどのように評価するのか
それでは、減価償却費によって赤字になった会社を、銀行はどのように評価しているのでしょうか。
銀行は赤字の原因を分析する
銀行が赤字決算の会社から融資の申し込みを受けた場合、まず確認するのは赤字の原因です。
例えば、次の2つの会社を比較してみましょう。
A社:売上の減少や経費の増加によって赤字になった会社
B社:多額の減価償却費を計上したことで赤字になった会社
両社とも決算書は赤字ですが、銀行の評価が同じになるとは限りません。
A社の場合には、営業活動そのものから十分な利益を確保できていない可能性があります。
一方、B社の場合には、減価償却費を計上する前の段階では利益を確保できている可能性があります。
減価償却費は、費用として計上する時点で現金支出を伴わないため、返済原資を考える際には重要な違いとなります。
減価償却費が原因の赤字は一律に悪い評価とはならない
銀行の融資審査では、減価償却費が原因の赤字について、ほかの赤字と区別して分析することがあります。
例えば、当期純損失が200万円で、減価償却費が500万円の場合、簡易的な返済原資は次のように計算できます。
当期純利益▲200万円+減価償却費500万円=300万円
この計算では、決算書上は200万円の赤字でも、減価償却費を加算した簡易的な返済原資は300万円のプラスです。
銀行は、このような点も踏まえて返済能力を判断します。
ただし、簡易的な返済原資がプラスであることと、実際の現金収支がプラスであることは同じではありません。
売掛金や在庫の増加、設備投資、税金の支払いなどによって、実際の資金繰りが悪化している場合もあります。
減価償却費が多くても融資審査が厳しくなる場合
減価償却費が原因の赤字であれば、どのような会社でも銀行融資を受けられるわけではありません。
例えば、次のような場合には融資審査が厳しくなる可能性があります。
- 減価償却費を加算しても返済原資がマイナスである
- 既存借入金の年間返済額が返済原資を大きく上回っている
- 売上や利益が継続的に減少している
- 売掛金や在庫が増加し、資金繰りが悪化している
- 設備の更新に必要な資金を確保できていない
- 借入金が過大で、追加融資後の返済見通しが立たない
銀行が最終的に重視するのは、赤字の原因を踏まえたうえで、借入金を返済していけるかどうかです。
減価償却費とキャッシュフローの関係
銀行の融資審査で減価償却費が重視される理由を理解するには、キャッシュフローとの関係を知る必要があります。
減価償却費は計上時に現金が出ていかない費用
減価償却費の大きな特徴は、損益計算書上の費用でありながら、費用計上する時点では通常、現金支出が発生しないことです。
先ほどの1,000万円のトラックを例に説明します。
トラックの購入代金を現金で支払った場合、現金が出ていくのは購入代金を支払った時点です。
その後、毎年減価償却費を計上しても、その減価償却費を支払うために追加で現金が出ていくわけではありません。
つまり、減価償却費は利益を減らしますが、費用計上時点の現金支出を伴わないのです。
ただし、トラックを購入する際には現金支出や借入れが発生することがあり、借入れを利用した場合にはその後の返済も必要です。
減価償却費そのものが現金支出を伴わないことと、設備投資全体で現金が不要であることは別の問題です。
銀行が利用する簡易キャッシュフローの計算
銀行の融資審査では、返済能力を確認するために、次のような簡易的な計算を利用することがあります。
簡易キャッシュフロー=当期純利益+減価償却費
この計算は、減価償却費が現金支出を伴わない費用であることに着目したものです。
ただし、銀行によっては税引後利益に各種調整を加えるなど、異なる計算方法を用いる場合があります。
また、この簡易キャッシュフローは、キャッシュフロー計算書における営業キャッシュフローそのものではありません。
実際の現金収支を判断するためには、売掛金、棚卸資産、買掛金などの増減や、設備投資、借入金返済なども確認する必要があります。
赤字でも簡易キャッシュフローがプラスになる例
次のような会社を考えてみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 当期純利益 | ▲300万円 |
| 減価償却費 | 800万円 |
| 簡易キャッシュフロー | 500万円 |
この会社は決算書上では300万円の赤字です。
しかし、減価償却費を加算した簡易キャッシュフローは500万円のプラスとなります。
銀行は、この500万円を返済能力の一つの目安として分析します。
もっとも、実際の現金収支や年間の借入金返済額を確認しなければ、返済可能かどうかは判断できません。
銀行融資では年間返済額と返済原資の比較が重要
減価償却費が原因で赤字になった場合、銀行が重要視するのは、減価償却費を加算した返済原資と借入金の年間返済額との関係です。
返済原資がプラスでも返済額が多ければ厳しい
例えば、次のような会社があるとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 当期純利益 | ▲200万円 |
| 減価償却費 | 700万円 |
| 簡易キャッシュフロー | 500万円 |
| 年間借入金元本返済額 | 800万円 |
| 簡易返済原資との差額 | ▲300万円 |
この会社は、減価償却費を加算した簡易キャッシュフローが500万円のプラスです。
しかし、年間の借入金元本返済額は800万円あります。
単純に比較すると、返済額に対して300万円不足しています。
この場合、銀行は借入金の返済を継続できるかどうかを慎重に判断します。
実際には、預金残高や運転資金の回収、借入金の借換え、今後の設備投資なども確認しますが、簡易キャッシュフローがプラスという理由だけで融資に前向きになるとは限りません。
返済原資が返済額を上回る場合
反対に、簡易キャッシュフローが500万円で、年間借入金元本返済額が300万円であれば、単純計算では200万円の余裕があります。
この場合には、返済能力を説明するうえで一定のプラス材料となります。
ただし、売掛金の回収遅延や在庫増加、設備更新などによって現金が不足する場合もあります。
銀行はこうした点も踏まえて融資の可否を判断します。
銀行融資・資金繰りのメール相談
減価償却費が原因で赤字になった場合、銀行には赤字の理由だけでなく、返済原資や今後の資金繰りを具体的に説明することが重要です。
「赤字決算で銀行融資が受けられるか不安」「減価償却費をどのように説明すればよいかわからない」「借入金の返済額が大きく資金繰りが厳しい」といった悩みを抱えている経営者の方もいるでしょう。
銀行融資・資金繰りのメール相談
銀行融資の審査、赤字決算への対応、借入金返済、資金繰りなどについて、メールでのご相談を受け付けています。
※融資の承認・実行を保証するものではありません。税務・会計上の具体的な処理については税理士・公認会計士などにご確認ください。
減価償却費を少なく計上して黒字にすると融資審査に有利なのか
ここからは、減価償却費を少なく計上して赤字を回避する場合について説明します。
銀行融資への影響を心配する経営者が、特に気にする問題です。
減価償却不足とは
減価償却不足とは、一定の償却基準に照らして計算した減価償却費よりも、実際に計上した金額が少ない状態を指す言葉です。
例えば、通常の償却計算では年間1,000万円の減価償却費となる会社が、300万円しか計上しなかった場合を考えます。
この場合、差額の700万円が償却不足として問題になる可能性があります。
ただし、どの金額を適正な償却額とするかは、適用する会計基準や資産の状況などによって異なります。
税務上の償却限度額と会計上の適正な減価償却費も、必ずしも同じ概念ではありません。
減価償却費を減らせば決算書上の利益は増える
減価償却費は費用ですから、計上額を少なくすれば、その分だけ決算書上の利益は増加します。
例えば、次のような会社を考えてみましょう。
| 項目 | 通常計上 | 計上額を減らした場合 |
|---|---|---|
| 減価償却費計上前の利益 | 500万円 | 500万円 |
| 減価償却費 | 1,000万円 | 300万円 |
| 利益 | ▲500万円 | 200万円 |
通常どおり1,000万円の減価償却費を計上すれば、500万円の赤字です。
一方、減価償却費を300万円に減らせば、200万円の黒字になります。
しかし、減価償却費を少なく計上したからといって、会社の売上や現金収入が増えたわけではありません。
この点を銀行は重視します。
銀行は実質的な利益水準を確認する
銀行の融資審査では、決算書に記載された利益だけでなく、その利益がどのように計算されているかも確認します。
減価償却費が通常の水準より大幅に少ない場合には、その理由を確認することがあります。
必要に応じて、償却不足額を考慮した実質的な利益水準を分析することもあります。
先ほどの例では、決算書上は200万円の黒字ですが、700万円の償却不足があると判断されれば、実質的には500万円の赤字として評価される可能性があります。
銀行は表面的な黒字だけでなく、その黒字が継続的な収益力を表しているかどうかを確認しているのです。
減価償却不足は必ず粉飾決算になるのか
減価償却費を少なく計上した場合、必ず粉飾決算になるのでしょうか。
この点については、慎重に考える必要があります。
法人税法上、減価償却費の損金算入には償却限度額などのルールがありますが、税務上の償却限度額まで必ず費用計上しなければならないという意味ではありません。
一方、会計上は、適用される会計基準に従って適切に減価償却を行うことが求められます。
したがって、減価償却費を少なく計上したことだけで、直ちに粉飾決算と断定することはできません。
しかし、適切に計上すべき費用を意図的に過少計上し、利益を実態より大きく見せている場合には、会計上の問題となる可能性があります。
銀行の融資審査においても、利益を大きく見せるための不自然な会計処理は、決算書の信頼性を低下させる要因になります。
減価償却不足で黒字にしても返済能力は改善しない
減価償却費を少なく計上すると、決算書上の利益は増加します。
しかし、会計処理を変更しただけでは、事業から生み出される現金が増えるわけではありません。
例えば、先ほどの会社について、税金などの影響を考慮せずに簡易キャッシュフローを比較すると、次のようになります。
| 項目 | 通常計上 | 計上額を減らした場合 |
|---|---|---|
| 利益 | ▲500万円 | 200万円 |
| 減価償却費 | 1,000万円 | 300万円 |
| 簡易キャッシュフロー | 500万円 | 500万円 |
この例では、減価償却費を少なく計上しても、簡易キャッシュフローは500万円のままです。
つまり、決算書上の赤字を黒字に変えても、事業から生み出す資金の実力が改善したわけではないのです。
銀行が減価償却不足による黒字化を必ずしも高く評価しない理由は、ここにあります。
減価償却不足は銀行融資の審査で逆効果になる場合がある
減価償却不足によって利益を大きく見せることは、銀行融資の審査で逆効果になる場合があります。
銀行は決算書の信頼性を重視する
銀行が融資を判断する際、決算書は非常に重要な資料です。
銀行は決算書をもとに、融資先の収益力、財務内容、返済能力などを分析します。
そのため、決算書の数字が適切に作成されているかどうかは、融資審査の重要な前提となります。
もし銀行が、利益を大きく見せる目的で減価償却費が過少計上されていると判断すれば、決算書全体の信頼性に疑問を持つ可能性があります。
償却不足が継続している会社は注意が必要
減価償却不足が一時的なものなのか、毎期継続しているのかという点も重要です。
毎期のように減価償却費を少なく計上して黒字を維持している場合には、銀行は実質的な収益力を慎重に確認することがあります。
その結果、決算書上は黒字でも、銀行内部の分析では実質的な赤字として評価される可能性があります。
赤字を隠すよりも赤字の原因を説明する方が重要
銀行融資の審査において大切なのは、単に黒字決算にすることではありません。
なぜ赤字になったのか、今後どのように利益を改善するのか、借入金をどのように返済していくのかを説明することです。
減価償却費が原因で赤字になったのであれば、そのことを銀行に説明し、返済原資や今後の資金繰りを具体的に示すことが重要です。
減価償却費と節税は銀行融資にどう影響するのか
減価償却費については、節税との関係も理解しておく必要があります。
減価償却費の計上には税負担を抑える効果がある場合がある
減価償却費は、税務上の要件を満たして損金に算入される場合、課税所得を減少させる効果があります。
そのため、減価償却費の計上によって税負担が軽減される場合があります。
ただし、減価償却費は設備の取得原価を期間配分する会計処理であり、自由に利益を調整するためのものではありません。
また、税務上の取扱いは資産の種類や償却方法、適用する制度などによって異なります。
節税目的で利益を減らしたという説明だけでは不十分
銀行融資の審査で、経営者から「節税のために利益を少なくしただけです」と説明されることがあります。
しかし、銀行はその説明だけで融資先の収益力を高く評価するわけではありません。
実際の決算内容、費用の性格、継続的な収益力、返済原資などを確認します。
減価償却費の計上によって赤字になったのであれば、減価償却費を加算した返済原資を説明することが重要です。
一方、節税のために必要性の低い支出を増やした場合には、実際に現金が減少している可能性があります。
減価償却費のように費用計上時点で現金支出を伴わない費用と、実際に現金が出ていく経費は区別して考える必要があります。
節税と資金繰りの両方を考えることが重要
税金を減らすことは、会社の資金繰りにとってプラスになる場合があります。
しかし、節税を優先するあまり利益や手元資金が減少し、銀行融資の審査に悪影響が出ることもあります。
中小企業の経営者は、税負担だけでなく、銀行融資や借入金返済、設備投資に必要な資金も考慮して財務管理を行うことが重要です。
減価償却費を減らしたいという実際の相談事例
ここで、減価償却費と銀行融資に関する相談事例を紹介します。
相談内容
会社の経理を担当しています。
毎年、定額法で減価償却費を1,000万円ほど計上しています。
しかし、今年は業績が悪いため、赤字を少しでも減らす目的で、減価償却費を300万円程度に抑えたいと考えています。
顧問税理士からは「銀行から粉飾と見られる可能性がある」と言われています。
減価償却費の計上額は会社の判断で決められる部分もあると思うのですが、銀行はどのように評価するのでしょうか。
銀行は減価償却費を減らした理由を確認する
この相談に対して、銀行融資の実務経験から説明します。
まず、減価償却費を1,000万円から300万円に減らせば、決算書上の利益は700万円増加します。
しかし、銀行は減価償却費が大幅に減少した理由を確認することがあります。
設備の売却や償却終了などによって減価償却費が減少したのであれば、合理的な理由があります。
一方、赤字を回避するために計上額を減らしたという場合には、銀行は実質的な利益水準を慎重に分析する可能性があります。
銀行は償却不足を考慮して利益を分析する場合がある
例えば、通常の減価償却費が1,000万円で、実際の計上額が300万円の場合、差額は700万円です。
銀行がこの700万円を実質的な償却不足と判断した場合には、決算書上の利益から700万円を差し引いて分析する可能性があります。
そのため、決算書上は黒字になったとしても、銀行内部では実質的な赤字と評価されることがあります。
赤字になるとしても適切な会計処理を優先する
銀行融資を受けやすくする目的だけで、減価償却費を少なく計上することはおすすめできません。
会計上、適切な金額を計上した結果として赤字になるのであれば、その赤字の原因を説明することが重要です。
特に減価償却費が大きい会社では、損益計算書上の赤字と返済原資の関係を説明することで、銀行に財務状況を理解してもらいやすくなります。
銀行融資のために必要なのは、表面的な黒字ではなく、信頼できる決算書と具体的な返済計画です。
減価償却費が原因で赤字になった会社が融資を受けるための対策
減価償却費が原因で赤字になった場合、銀行融資を受けるためにはどのような準備が必要なのでしょうか。
経営者が実行できる対策を説明します。
1.赤字の原因を明確にする
最初に、赤字の原因を整理しましょう。
減価償却費が大きいために赤字になったのか、それとも売上減少や経費増加などによって収益力そのものが低下しているのかを区別する必要があります。
銀行には、損益計算書をもとに赤字の原因を具体的に説明することが重要です。
2.減価償却費を加算した返済原資を計算する
次に、当期純利益に減価償却費を加算した簡易キャッシュフローを計算します。
例えば、当期純損失が300万円で減価償却費が800万円の場合、簡易キャッシュフローは500万円です。
この500万円が、借入金返済能力を説明する際の一つの目安になります。
ただし、実際の資金繰りとは異なるため、売掛金や在庫、設備投資などの影響も確認する必要があります。
3.年間の借入金返済額を整理する
簡易キャッシュフローがプラスでも、借入金の返済額がそれを大きく上回っている場合には、銀行の融資審査が厳しくなる可能性があります。
そのため、現在の借入金について、金融機関ごとの残高、毎月の返済額、年間の返済額を一覧表に整理しましょう。
借入金の返済負担が大きい場合には、返済期間の見直しや借換えなどについて、金融機関に相談することも考えられます。
ただし、返済条件の変更や借換えが認められるかどうかは、金融機関の判断によります。
4.今後の利益改善計画を作成する
銀行は過去の決算だけでなく、今後の業績見通しも確認します。
そのため、赤字の原因を説明するだけでなく、今後どのように利益を改善するのかを具体的に示すことが重要です。
例えば、次のような項目を整理します。
- 今後の売上見通し
- 売上総利益率の改善策
- 人件費や外注費などの経費管理
- 設備の稼働率や生産性の改善
- 今後の減価償却費の見通し
- 借入金の返済予定
銀行が知りたいのは、赤字の説明だけではなく、今後どのように返済を続けるのかということです。
5.資金繰り表を作成する
減価償却費を加算した簡易キャッシュフローがプラスであっても、実際の資金繰りが厳しい会社はあります。
そのため、銀行に融資を申し込む際には、資金繰り表を作成することをおすすめします。
資金繰り表では、売上代金の入金、仕入代金や経費の支払い、借入金返済、設備投資などを月別に整理します。
これにより、いつ、どの程度の資金が必要になるのかを説明しやすくなります。
特に設備投資が多い会社では、減価償却費と実際の設備投資資金を区別して管理することが重要です。
減価償却費と銀行融資に関するよくある質問
Q.減価償却費が原因で赤字になっても銀行融資を受けられますか?
受けられる可能性はあります。
銀行は赤字の原因、減価償却費を加算した返済原資、年間借入金返済額、今後の業績見通しなどを総合的に判断します。
ただし、赤字の原因が減価償却費であっても、必ず融資が受けられるわけではありません。
Q.減価償却費を少なく計上して黒字にすると銀行融資に有利ですか?
必ずしも有利にはなりません。
銀行は減価償却費の計上状況を確認し、必要に応じて償却不足を考慮した実質的な利益水準を分析します。
利益を大きく見せるための不自然な会計処理は、決算書の信頼性を低下させる可能性があります。
Q.減価償却不足は粉飾決算になりますか?
減価償却不足があることだけで、必ず粉飾決算になるとは限りません。
ただし、適切に計上すべき費用を意図的に過少計上し、利益を実態より大きく見せている場合には、会計上の問題となる可能性があります。
具体的な会計処理については、税理士や公認会計士などに確認することが重要です。
Q.減価償却費が多い会社は銀行からの評価が悪くなりますか?
減価償却費が多いという理由だけで、銀行の評価が悪くなるわけではありません。
銀行は設備投資の内容、収益力、返済原資、設備更新の必要性などを確認します。
減価償却費が多くても、借入金を返済できる見通しがあれば、融資を検討できる場合があります。
Q.減価償却費を加算したキャッシュフローがプラスなら融資は通りますか?
簡易キャッシュフローがプラスでも、必ず融資が通るわけではありません。
年間の借入金返済額、実際の資金繰り、財務内容、今後の業績見通しなども審査の対象となります。
まとめ|減価償却費で赤字でも返済能力を説明することが重要
減価償却費が原因で赤字になった場合、銀行は赤字という結果だけで融資の可否を判断するわけではありません。
減価償却費は費用計上時に現金支出を伴わないため、銀行は減価償却費を考慮した返済原資も確認します。
一方、減価償却費を過少に計上して黒字にしても、実際の収益力や返済能力が改善するわけではありません。
- 減価償却費が原因で赤字になっても、銀行融資を受けられる可能性はある。
- 銀行は赤字の原因と減価償却費を考慮した返済原資を分析する。
- 減価償却費は計上時に現金支出を伴わない費用である。
- 簡易キャッシュフローがプラスでも、借入金返済額が大きければ融資審査は厳しくなる。
- 減価償却不足によって黒字にしても、銀行の評価が改善するとは限らない。
- 銀行融資のためには、適切な決算書と具体的な返済計画が重要である。
減価償却費が原因で赤字になった場合には、赤字を隠すことよりも、赤字の原因と返済能力を銀行に正しく説明することが重要です。
また、減価償却費を加算した簡易キャッシュフローだけで安心するのではなく、年間の借入金返済額や設備更新資金、実際の資金繰りまで確認する必要があります。
こうした財務管理を継続することが、銀行との信頼関係を築き、将来の資金調達を円滑に進めることにつながります。
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