銀行融資の基本・審査

銀行融資の審査で重視される6つの判断材料|銀行員が「貸せる」と考える根拠

銀行融資の審査では、決算書の内容や返済能力、担保、信用保証協会の保証など、さまざまな項目が確認されます。

しかし、銀行員が融資審査を行う際には、単にこれらの項目を確認しているだけではありません。

最終的に「この会社には融資をしても大丈夫だろう」と判断するための根拠を探しています。

銀行の融資実務では、この判断の根拠を「拠り所」と考えることがあります。

例えば、会社の業績が安定しており、今後も十分な利益やキャッシュフローが見込まれるのであれば、返済能力を根拠として融資を検討できます。

また、業績に多少の懸念がある場合でも、信用保証協会の保証や担保などが融資判断を補完する材料になることがあります。

ただし、担保や保証があれば、返済能力に問題があっても必ず融資を受けられるというわけではありません。

銀行融資の審査で最も重要なのは返済能力であり、その判断を支えるさまざまな材料が融資審査の「拠り所」となります。

今回は、銀行の法人融資業務に長年携わってきた立場から、銀行員が融資審査で重視する6つの判断材料と、融資稟議を進める際の考え方を解説します。

銀行融資の審査でいう「拠り所」とは何か

銀行融資の審査でいう「拠り所」とは、銀行が融資を実行しても大丈夫だと判断するための根拠のことです。

銀行員が融資を承認する際には、融資先が今後も返済を続けられると考える理由を明確にする必要があります。

そのため、融資審査では「なぜこの会社に融資できるのか」という判断の根拠が重要になります。

銀行は融資を返済できる根拠を探している

銀行融資の審査で最も重要なのは、融資した資金が返済されるかどうかです。

銀行は、決算書や試算表、資金繰り表などを確認し、会社の返済能力を分析します。

例えば、利益が安定しており、借入金の返済に必要な資金を事業活動から生み出せる会社であれば、融資を検討しやすくなります。

反対に、赤字が続き、今後も資金不足が見込まれる会社では、返済能力について慎重な判断が必要になります。

銀行員は、これらの分析を通じて、融資を実行できると考える根拠を整理します。

融資稟議では判断の根拠を説明する必要がある

銀行融資は、担当者が融資をしたいと考えただけで実行できるものではありません。

通常は、銀行内部で必要な審査や決裁を受けることになります。

その際、融資担当者は、融資を実行する理由や返済の見通し、懸念事項などを説明する必要があります。

例えば、次のような説明が考えられます。

  • 業績が安定しており、営業キャッシュフローから返済が可能と考えられる
  • 一時的な赤字はあるものの、受注状況から今後の業績改善が見込まれる
  • 資金使途が明確で、融資による資金繰り改善が見込まれる
  • 信用保証協会の保証や担保によって回収リスクが一定程度軽減される

このように、融資を実行できると判断する理由を具体的に説明できることが、銀行の融資審査では重要です。

銀行融資の審査で重視される6つの判断材料

銀行が融資を判断する際の主な拠り所には、次の6つがあります。

  1. 業績と返済能力
  2. 信用保証協会の保証
  3. 担保
  4. 資金調達余力
  5. 預金残高と預金平残
  6. 売上代金の入金状況

これらはすべて同じ役割を持っているわけではありません。

業績や返済能力は、融資を返済するための基本的な判断材料です。

一方、信用保証協会の保証や担保は、返済が難しくなった場合の回収リスクを補完する材料です。

それぞれの違いを理解することが重要です。

1. 業績と返済能力は融資審査の最も重要な拠り所

銀行融資の審査で最も重要な判断材料は、会社の業績と返済能力です。

銀行は、融資した資金が会社の事業活動から返済されることを基本として考えています。

銀行は利益だけでなくキャッシュフローを確認する

会社が黒字であれば、それだけで返済能力が十分にあると判断されるわけではありません。

銀行は、利益だけでなく、借入金の返済に必要な資金を実際に確保できるかどうかを確認します。

例えば、利益が出ていても売掛金の回収が遅れたり、在庫が増加したりすれば、資金繰りが厳しくなることがあります。

そのため、銀行は決算書や資金繰り表などを用いて、会社の資金創出力を分析します。

過去の業績だけでなく今後の見通しも重要

過去の業績が良好であっても、それが将来にわたって続くとは限りません。

銀行は、今後の売上見通しや受注状況、利益率の変化なども確認します。

例えば、過去の業績が良好でも、主要取引先との取引が終了する予定であれば、今後の返済能力について慎重に判断する必要があります。

反対に、直近の業績が一時的に悪化していても、その原因が明確で、改善の見通しに合理的な根拠があれば、融資を検討できる場合があります。

業績は将来を保証するものではありませんが、返済能力を判断するうえで最も重要な拠り所の一つです。

2. 信用保証協会の保証は銀行の回収リスクを補完する

信用保証協会の保証も、銀行融資の審査で重要な判断材料となります。

信用保証協会は、中小企業や小規模事業者などの資金調達を支援するため、金融機関からの借入に対して信用保証を行う公的な機関です。

信用保証協会の保証が銀行にとって重要な理由

信用保証協会の保証が付いた融資では、融資先が返済できなくなった場合、所定の条件に従って信用保証協会が金融機関に代位弁済を行う仕組みがあります。

そのため、信用保証協会の保証は、銀行が負担する回収リスクを軽減する材料になります。

特に、中小企業向けの融資では、信用保証協会の保証が重要な役割を果たしています。

信用保証協会の保証があっても融資が確実とは限らない

ただし、信用保証協会の保証があれば、必ず銀行融資の審査に通るわけではありません。

信用保証協会による保証審査があるほか、銀行も融資先の返済能力や資金使途などを確認します。

また、信用保証協会の保証には、保証制度や融資条件に応じた保証割合などの違いがあります。

信用保証協会の保証は銀行の回収リスクを補完するものであり、会社の返済能力そのものを高めるものではありません。

3. 担保は融資の回収可能性を補完する拠り所

担保も、銀行融資の審査における重要な判断材料の一つです。

銀行が担保を取得している場合、融資先が返済できなくなった際には、担保権を実行するなどして融資の回収を図ることがあります。

不動産担保が融資審査で評価される理由

例えば、会社が所有する土地や建物に銀行が抵当権を設定している場合です。

融資先が返済できなくなった際には、担保不動産の処分などによって融資の回収を図ることがあります。

このため、担保があることは銀行にとって回収リスクを軽減する材料になります。

担保があっても融資の審査に通るとは限らない

ただし、担保があれば必ず融資を受けられるというわけではありません。

担保不動産の評価額は変動する可能性があります。

また、先順位の担保権が設定されている場合などには、銀行が想定した金額を回収できない可能性もあります。

そのため、銀行は担保の有無だけでなく、担保価値や担保権の順位なども確認します。

さらに、銀行融資は原則として会社の事業活動から返済されることを前提としています。

担保は返済能力を補完する材料であり、返済能力に代わるものではありません。

4. 資金調達余力は資金繰りの安定性を判断する材料

会社にどの程度の資金調達余力があるかも、銀行が融資審査で確認する事項の一つです。

資金調達余力とは、会社が今後必要な資金を調達できる可能性や、そのための余地を指します。

資金調達余力がある会社は資金繰りに対応しやすい

例えば、会社が十分な手元資金を確保している場合や、利用可能な融資枠がある場合には、予期しない資金需要に対応しやすくなります。

また、追加担保として利用できる資産がある場合には、資金調達の選択肢が広がる可能性があります。

このような資金調達余力は、会社の資金繰りの安定性を判断する材料になります。

追加借入ができることと返済能力があることは別

ただし、資金調達余力があることだけで、融資の返済能力が十分にあるとはいえません。

新たな借入によって資金を確保できても、借入金の返済負担が増加する場合があります。

また、保有資産があっても、それを担保に必ず融資を受けられるわけではありません。

銀行は、資金調達余力を補完的な判断材料として確認します。

5. 預金残高と預金平残は資金余力を判断する材料

銀行融資の審査では、会社の預金残高や預金平残が判断材料になることがあります。

預金平残とは、一定期間における預金残高の平均を指します。

例えば、月末だけ多額の預金がある会社と、日常的に一定の預金残高を維持している会社とでは、資金繰りの状況が異なる可能性があります。

一定の預金残高は資金繰りの余裕を示す

会社が日常的に一定の預金残高を確保していれば、急な支払いや売掛金の回収遅延などに対応しやすくなります。

そのため、銀行は預金残高や預金平残を、会社の資金余力を判断する材料として確認することがあります。

ただし、預金残高が多いことだけで返済能力が十分にあると判断できるわけではありません。

預金残高があっても銀行が必ず回収できるわけではない

銀行は、一定の条件のもとで、融資債権と預金債務を相殺できる場合があります。

しかし、預金口座に残高があるからといって、銀行がいつでも自由に預金を回収に充てられるわけではありません。

実際の相殺の可否や手続きは、契約内容や法的な条件などによって異なります。

また、預金は会社の事業活動に必要な資金でもあります。

したがって、預金残高は資金繰りや回収可能性を考える際の参考材料ですが、担保と同じように確実な回収を保証するものではありません。

6. 売上代金の入金状況は銀行が資金の流れを把握する材料

売上代金の入金状況も、銀行融資の審査で参考にされることがあります。

例えば、融資を申し込んだ銀行の預金口座に売上代金が継続的に入金されていれば、銀行は入金の推移を確認できます。

売上入金から会社の事業活動を把握しやすくなる

銀行は売上入金の状況を通じて、会社の資金の流れを把握しやすくなります。

例えば、売上入金が減少している場合には、売上高の減少や売掛金の回収遅延などが起きていないか確認することがあります。

また、売上入金が安定していれば、資金繰りの状況を判断する際の参考情報になります。

ただし、預金口座への入金額と会計上の売上高は必ずしも一致しません。

そのため、銀行は売上入金の状況だけで業績を判断するわけではありません。

売上入金が他行口座でも融資を受けられる

売上代金の入金が他行口座に集中している場合でも、銀行融資を受けられることはあります。

銀行は、必要に応じて他行口座の入出金明細などを確認することで、資金の流れを把握できます。

ただし、融資銀行の口座に売上入金があれば、銀行は日常的な資金の動きを把握しやすくなります。

このため、売上入金の状況は、融資審査における補完的な判断材料になることがあります。

業績が悪い会社でも銀行融資を検討できる理由

銀行融資の審査では返済能力が最も重要ですが、業績が悪い会社でも融資を検討できる場合があります。

例えば、一時的な赤字であって、今後の業績改善に合理的な根拠がある場合です。

赤字の原因と今後の改善見通しが重要

銀行は、赤字であるという事実だけでなく、その原因を確認します。

例えば、一時的な費用の発生によって赤字になった場合と、主力事業の収益力が継続的に低下している場合とでは、今後の返済能力に対する評価が異なります。

赤字の原因が明確で、今後の改善策に合理性がある場合には、銀行が融資を検討できることがあります。

保証や担保は返済能力の不足を自動的に補うものではない

業績が悪い会社に対して、信用保証協会の保証や担保が融資判断を補完する場合があります。

しかし、保証や担保があるからといって、返済能力に問題がある会社に必ず融資できるわけではありません。

銀行は、会社の事業継続の可能性や今後の返済見通しなどを総合的に判断します。

銀行員は融資稟議でどのように拠り所を説明するのか

ここからは、銀行の融資実務の視点から説明します。

融資担当者が融資稟議を作成する際には、融資を実行する理由を明確にする必要があります。

特に、業績や財務内容に懸念がある場合には、その懸念をどのように評価し、なぜ融資を検討できると考えるのかを説明することが重要です。

返済能力が十分な場合の融資稟議の考え方

例えば、会社の業績が安定しており、営業キャッシュフローから借入金の返済が可能と見込まれる場合です。

このような会社では、事業から生まれる返済原資が融資判断の中心になります。

銀行員としては、過去の業績だけでなく、今後の売上や利益の見通しなどを確認して、返済能力の根拠を説明します。

業績に懸念がある場合の融資稟議の考え方

一方、直近の業績が悪化している会社では、銀行員はその原因と今後の見通しを詳しく確認します。

例えば、赤字が一時的なものなのか、今後の業績改善が見込まれるのか、資金繰りが維持できるのかといった点です。

そのうえで、信用保証協会の保証や担保などが回収リスクを補完する材料になるかも確認します。

ただし、これらの材料を並べるだけでは、融資を実行する根拠として十分とは限りません。

融資稟議では、会社の返済能力について合理的な説明ができることが重要であり、保証や担保などはその判断を補完する位置づけになります。

銀行融資の審査に通るために経営者が準備すべきこと

銀行融資の審査で重要なのは、銀行員が融資を実行できると判断するための根拠を示すことです。

経営者としては、銀行に融資を申し込む際に、次のような準備を行うとよいでしょう。

1. 融資金の使い道を明確にする

銀行は、融資金が何に使用されるのかを確認します。

運転資金であれば、どのような支払いに必要なのかを説明します。

設備資金であれば、設備投資の内容や金額、事業への効果などを説明します。

2. 返済原資を具体的に説明する

銀行が最も重視するのは、融資をどのように返済するのかという点です。

例えば、今後の利益やキャッシュフロー、売掛金の回収予定など、返済に必要な資金を確保できる根拠を示すことが重要です。

3. 決算書や試算表の内容を説明できるようにする

銀行は、決算書や試算表を分析して会社の財務内容を確認します。

売上や利益が増減した理由、借入金が増加した理由などについて、経営者が説明できるようにしておくことが重要です。

4. 今後の業績見通しを整理する

過去の業績が良好でも、将来の返済能力が保証されるわけではありません。

そのため、今後の売上見通しや受注状況、利益計画などを整理しておくとよいでしょう。

特に、直近の業績が悪化している場合には、改善の見通しを具体的に説明することが重要です。

5. 資金繰りの状況を把握する

利益が出ていても、資金繰りが厳しければ借入金の返済に支障が生じる可能性があります。

銀行に融資を申し込む際には、資金繰り表などを用いて、今後の入出金や借入金返済の見通しを説明できるようにしておくとよいでしょう。

銀行融資の審査の拠り所に関するよくある質問

銀行融資の審査で最も重要な判断材料は何ですか?

最も重要なのは、融資先の返済能力です。

銀行は、決算書や試算表、資金繰り表などを確認し、融資した資金が返済される見込みがあるかを判断します。

信用保証協会の保証があれば銀行融資の審査に通りますか?

信用保証協会の保証があっても、必ず融資の審査に通るわけではありません。

信用保証協会の保証は銀行の回収リスクを補完するものですが、銀行は返済能力や資金使途なども確認します。

担保があれば赤字でも銀行融資を受けられますか?

赤字でも融資を検討できる場合はありますが、担保があることだけで融資が承認されるわけではありません。

銀行は赤字の原因や今後の業績見通し、返済可能性などを総合的に判断します。

預金残高が多いと銀行融資の審査に有利ですか?

預金残高は会社の資金余力を判断する材料になります。

ただし、預金残高が多いことだけで融資が承認されるわけではありません。

売上入金が他行口座でも銀行融資を受けられますか?

売上入金が他行口座であっても、銀行融資を受けられる場合があります。

必要に応じて他行口座の入出金明細などを提出し、資金の流れを説明することが重要です。

業績が悪い会社は銀行融資の審査に通りませんか?

業績が悪い会社でも、融資を検討できる場合があります。

銀行は、業績悪化の原因や今後の改善見通し、返済可能性などを確認します。

ただし、返済能力に重大な懸念がある場合には、融資が難しくなることがあります。

銀行融資の審査で重視される拠り所のまとめ

銀行融資の審査では、融資した資金が返済されると判断できる根拠が重要です。

この判断の根拠が、銀行の融資実務でいう「拠り所」です。

今回のポイントをまとめると、次のとおりです。

  • 銀行融資の審査では、返済能力が最も重要な判断材料となる
  • 融資稟議では、融資を実行できると考える理由を具体的に説明する必要がある
  • 信用保証協会の保証は、銀行の回収リスクを補完する材料になる
  • 担保も回収リスクを補完するが、返済能力に代わるものではない
  • 資金調達余力は、会社の資金繰りの安定性を判断する材料になる
  • 預金残高や預金平残は、会社の資金余力を確認する材料になる
  • 売上入金の状況は、会社の事業活動や資金の流れを把握する材料になる
  • 銀行はこれらの材料を総合的に判断して融資の可否を検討する

銀行員が融資審査を行う際には、融資を実行できると考える根拠を探しています。

そして、融資稟議では、その根拠を具体的に説明する必要があります。

業績が良好な会社であれば、事業から生まれる返済原資が重要な拠り所になります。

一方、業績に懸念がある会社では、今後の改善見通しや資金繰りの状況などを確認し、保証や担保などが判断を補完する場合があります。

銀行融資の審査に通るためには、単に「融資を受けたい」と申し込むのではなく、銀行が「この会社なら返済できる」と判断できる具体的な根拠を示すことが重要です。

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