独立して事業を開始する際に必要となる資金を対象にして融資制度に創業融資があります。
民間銀行だけではなく政府系金融機関でも創業融資は取り扱いがされています。
ところで創業融資には一定の自己資金が必要だと言われていますが、やはり創業融資は自己資金なしでは利用することが難しいのでしょうか?
質問
ネットにて貴ホームページを拝見させて頂き、とても的確なコメントが多く、是非悩みのご相談をさせて頂きたく問合せします。
私は現在、建設会社の工事管理をしている42歳の会社員です。
現在の勤務先は3年と短い勤務年数ですが、職種としては13年の経験があります。
1年程前より自分で事業をしてみたいと思い色々な事を検討していたのですが、建設会社の開業ではなく、フランチャイズによる賃貸住宅専門の原状復旧工事(クリーニングや内装工事等)を主とした業務で創業したいと考えました。
フランチャイズ本部に何度か伺い、事業説明、創業シュミレーション等を確認してきました。
家族(妻や実父)とも何度も話し合い、創業してみようと決心したものの、創業資金となる自己資金が殆ど無く、私と妻の貯えは住宅購入の頭金で無くなり、その後は安月給の中で幼稚園(私立)の子供二人の費用の出費ばかりで、節約しても現在貯金は殆ど ありません。
そこでネット上で融資について調べた結果、日本政策金融公庫へ相談する事にしました。
自分で何とか10ページからなる事業計画書を作成し、内容確認をこれまたネット上で見た行政書士事務所へ有料相談に2回程伺い、日本政策金融公庫対策の観点から、事業計画書の修正アドバイスを頂きました。
自己資金の問題は、自分で50万円、父親から200万円の贈与の計250万円で500万円の希望融資額でH22.11.10に申請しました。
結果としては、担当者曰く、自己資金の内自分自身での資金が少ないとの理由でした。(本当の理由かどうかわかりませんが)
私は住んでいる市の制度融資を考え、保証協会へ相談に行きました。
そこでの話では、保証協会のホーム ページにある条件のうち、自己資金なしの条件は実質扱っていないと言われました。
これから自己資金を百万円単位で貯めるとなると、随分先になってくると思われます。
出来れば身体が無理を効く今の内に創業しておきたいと考えております。
資金稼ぎの為にバイトを検討しているのですが、職種がら、朝早く、夜が遅く、休みも不規則でなかなか定期的に出来るバイトが見当たらない状況です。
何か創業融資に関して良きアドバイスがあればお願い致します。
ちなみに私は現在、カードローン(銀行系・消費者金融の2社)から残り約95万円程度、住宅ローン残り約3000万円程度、自動車(トヨタファイナンス)ローン残り約35万円程度の借入れがあります。
カードローンは過去に最大2ヶ月の遅延が発生した事があります。(以前、日本信用情報機構では「事故」とはなっていませんでした。)
創業融資は自己資金なしも対象です
まず結論から先に申し上げますと創業融資には自己資金の条件がないものがあります。
つまり自己資金なしで創業融資が対象になるということです。
東京都のHPには次のように記されています。
〔融資対象1〕事業を営んでいない個人であって、次の条件をすべて満たす者
①1か月以内に新たに個人で又は2か月以内に新たに法人を設立して事業を開始しようとする具体的 な計画があること。
②許認可事業の場合は、原則として許認可等を受けていること。
自己資金についての記述はありません。
自己資金の記述がないということは自己資金のあるなしは条件ではない、つまり創業融資は自己資金なしでも検討が可能だということです。
創業融資と自己資金の関係
もっとも自己資金があった方が良いに決まっています。
理由は大きく2つあります。
創業への本気度
自己資金がないから創業への思いが弱いということではないとは思いますが、やはり客観的に見て自己資金を準備して創業する場合と自己資金なしで創業する場合を比較した場合、前者は創業に向けて時間をかけてコツコツと準備をしてきたことが客観的に考えられます。
これに対して自己資金なしで創業の場合には、事前の準備はされずにもしかしたら突然、思いつきで創業するのかとも考えられます。
銀行等はあくまでも第三者として創業する人たちを見ますから、自己資金のあるなしでどうしても創業への熱意を比較してしまうのです。
資金繰り面
自己資金があるとそれだけ創業融資の利用額が少なくすみます。
逆に自己資金なしとなると創業融資の利用額が膨らみます。
創業融資も融資ですから返済をしなければなりません。
返済額は当たり前のことですが融資額が少ないほど負担が小さくなります。
創業後の事業が必ずしも計画通りに行くとは限りません。
むしろ計画通りに行かない場合も想定して創業を準備することが大切です。
仮に計画通りに創業後の事業が進まない場合には、当然資金繰りにも悪影響を及ぼすでしょう。
そうなると創業融資の返済に窮する事態も懸念されます。
したがって創業融資は自己資金なしでも利用することができますが、資金繰りの安定を考えるとやはり自己資金の準備があった方が無難でしょう。