銀行に融資を返済を続けてきたが、売上が不振で資金繰りが苦しくなり毎月の返済がきつい・・・。
このような状況に陥ってしまう事業者が決して少なくありません。
その際には返済額を減らす返済猶予という方法があります。
銀行に返済猶予を相談する際のポイントなどについて融資担当の銀行員が説明をします。
目次
返済猶予とは?金融機関に相談する前に知っておきたい基礎知識
銀行から受けている融資はその契約内容に従ってきちんと返済しなければなりません。
これが当たり前のことです。
しかし融資を受けた際にはきちんと返済できると考えていたとしても、その後の業績の悪化などが原因で返済が苦しくなってしまうことがあります。
この状態をそのまま放置すると融資の返済ができなくなる、つまり延滞になってしまうことも考えられます。
銀行に融資の返済は契約通りにきちんと返済をしなければなりませんが、その返済額を少なくするといったことを銀行に相談をすることができます。
融資の返済額を少なくすることを返済猶予と呼んでいます。
返済猶予に対する銀行の敷居が高くはない
銀行に返済額を少なくしてほしいといった相談を行うことには、強い抵抗感や心配があると思いますが、意外にも返済猶予に対する銀行の敷居は高くはありません。
きちんと銀行に事情を説明すれば、銀行は思った以上に柔軟に返済猶予の相談に乗ってくれます。
迷わず銀行に相談をしてください。
返済猶予に対して銀行の敷居は高くはなく、柔軟に相談に乗ってくれる
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返済猶予を銀行に相談する際の準備と流れ
それでは銀行に返済猶予を相談する際に準備することや相談後の流れについて説明をします。
返済猶予の相談前に準備すべきこと
返済猶予の相談を受ける側である銀行としては、返済猶予の相談を受けた際には次の事項を知りたいと考えます。
銀行が知りたいこと
・現在の資金繰りの状況
・今後の業績や資金繰りはどうなっていくのか
・他の取引銀行からの借入や返済の状況
現在の業績の状況
融資の返済が苦しくなった原因の大半は業績の悪化によるもの場合が1つです。
もう1つは設備投資の融資の場合ですが、設備投資をしたものの設備投資後の業績が計画通りとはならずに返済が苦しい場合です。
いずれにしても現在の業績の状況は必ず銀行から質問を受けます。
現在の業績の状況が説明できなければ返済猶予の相談は前には進みません。
現在の業績の状況を説明する資料としては何はさておき試算表です。
会計ソフトや顧問税理士に相談を行い、試算表を準備してください。
・返済猶予の相談には現在の業績の説明が不可欠
・現在の業績を説明する資料は試算表
現在の資金繰りの状況
現在の業績の状況の説明に加えて、現在の資金繰りの状況の説明も必ず必要となります。
返済猶予の相談を行うということは資金繰りが悪化したからですが、その悪化した資金繰りはどのような状況になっているのか、その説明は不可欠です。
現在の資金繰りの状況を説明する資料は資金繰り表です。
資金繰り表を作成することは難しいのであれば、最低でも次のことが説明をできるようにしてください。
・毎月の売上入金はどれくらいあるのか?
・毎月の支出はどれくらいなのか?
・支出については仕入にいくら、経費にいくら、返済にいくらといったように項目ごとに説明できると良い
今後の業績や資金繰りはどうなっていくのか
返済猶予を銀行が認めるにしても、それは未来永劫に返済猶予を受け入れするわけではありません。
業績や資金繰りが苦しい時期だけ返済猶予にて融資先の資金繰りを支援し、この間に融資先に業績や資金繰りの改善を行ってもらい、再び以前のような返済をしてもらうというのが銀行が考えていることです。
したがって銀行としても返済猶予後に融資先の業績や資金繰りがどのように改善していくのか、どのように改善していくつもりなのか、それは必ず銀行としては把握をしたいところです。
具体的に今後の業績や資金繰りの改善について説明ができないとしても、改善に向けた考えは銀行に説明ができるように準備をしてください。
今後の業績や資金繰りの改善について具体的ではなくても改善に向けた考えは説明できるように準備を行う
他の取引銀行からの借入や返済の状況
複数の銀行から融資を受けている場合、返済猶予はすべての銀行に依頼を行う必要があります。
特定の銀行のみ返済猶予の相談を行っても、その銀行は受け付けてくれません。
平等に返済猶予の取り扱いを行うことが銀行の絶対条件です。
返済猶予の相談を行う際にはまずは他の銀行からの借入状況や毎月の返済金額が説明できるように準備をしてください。
銀行毎の借入金額とその返済金額がわかるように準備を行う
各銀行から発行されている返済予定表が手元にあればそれを準備してください。
返済猶予を成功させる話し方・交渉テクニック
それでは銀行に返済猶予を相談する際にはポイントというものがあります。
このポイントを踏まえていないと銀行が返済猶予を受け入れないということではありませんが、ポイントを踏まえた返済猶予の相談を行うことにより銀行との交渉が間違いなくスムーズに進みます。
そのポイントは単に2つだけです。
以下の2つのポイントを踏まえた返済猶予の相談を銀行と行ってください。
伝えるべきこと
返済猶予の相談の際に銀行に伝えるべきポイントは次のとおりです。
銀行に伝えるべきポイント
・今後どのようにして業績や資金繰りを改善していくつもりか
業績や資金繰り悪化の理由
なぜ返済猶予を相談しなければならない状況になってしまったのか、つまり業績や資金繰りが悪化した理由を銀行に伝えてください。
必ず銀行から聞かれる事柄です。
主要な販売先との取引が減少した、販売先が倒産した、安値競争で価格の低下を余儀なくされた、仕入先からの値上げ要請により利益率が悪化した、設備投資を行ったが、予定通りの売上が確保できていないなど、業績が悪化した理由を事実そのままに銀行に伝えてください。
この点は考える必要はありません。
売上が低下した、利益率が低下した理由をありのままに銀行に伝えれば良いのです。
売上低下など業績や資金繰り悪化の理由をありのまま銀行に伝える
今後の業績や資金繰りの改善に向かっての考え
返済猶予を銀行が認める理由は今は資金繰りが苦しい状態であっても、今後は業績が改善しこれに伴い資金繰りも改善し再び従来通りの融資の返済が可能になることを期待してのことです。
今後の改善を期待して現在の苦しい資金繰りの状況を返済猶予にて支援するというのが銀行のスタンスです。
ですから返済猶予の相談を行う際には、上記の業績や資金繰りの悪化の理由の説明とともに今後どのようにして業績・資金繰りを改善していくのか、少なくともその方向性について説明をしてください。
今後の見込みはどうなるかわからないということでは、銀行としてもすんなりと返済猶予を受け入れることが難しくなります。
なるべく具体的な今後の改善の見通しを説明できれば良いのですが、返済猶予の相談当初は改善に向けての思いだけでも良いので、銀行に話をするようにしてください。
このことにより銀行に「返済する意思はある」ということを伝えられることになります。
今後の業績や資金繰り改善の思いを伝え、銀行に返済意思を明確にすることが大切
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返済猶予のメリット・デメリットと利用時の注意点
資金繰りを維持する上で返済猶予は効果がある方法である一方で、返済猶予にはデメリットもあります。
返済猶予の相談を行うにあたり、このメリットとデメリットはきちんと理解をしておいてください。
返済猶予のメリット
返済猶予のメリットは何といっても資金繰りの維持と改善です。
返済額を少なくすることで資金の流出を抑制することができますから、返済猶予は資金繰りの維持・改善において一定のメリットがあります。
事業においてもっとも重要なことは資金繰りの安定ですから、この点において返済猶予は支出を減らして資金繰りを安定させるメリットがあるのです。
返済猶予のメリット→支出を減らし資金繰りを維持・改善することができる
返済猶予のデメリット
返済猶予のデメリットとしては金利の引き上げや、振込手数料のなどの割引サービスの停止などを受けてしまう可能性がありますが、最大の返済猶予のデメリットは当面の間は銀行から新規の融資が受けられないという点です。
返済猶予を受けながら必要な資金は融資が受けられるということはありません。
新規の融資支援はできないが、その代わりに返済猶予にて資金繰りを支援するということが銀行の考え方です。
したがって返済猶予を受けると基本的には次の期間は銀行から新規の融資を受けることはできないと考えてください。
新規融資が受けられない期間
・返済が正常化後、一定期間(目線としては半年から1年間)
返済猶予を受けている期間中は新規の融資を受けることはできません。
また返済猶予を受けてその後に返済の元の状態に戻したとしても、すぐには新規の融資を受けることはできません。
最低でも半年から1年間の返済実績を積まないと新規の融資を受けることができないのが現実です。
自力で資金繰りを回す必要がある
そのため返済猶予を受けるにあたってはその後は手元資金だけで自力で資金繰りを回していけるのかどうかを判断することが重要です。
返済猶予を受けることによりその後の事業は手元資金だけで自力で資金繰りを回していけるのであれば返済猶予は有効な方法です。
一方で返済猶予を受けてもその後も手元資金だけで自力で資金繰りを回していくことが難しいのであれば、返済猶予は意味がなくなってしまいます。
返済猶予を利用するにはその後の資金繰りが手元資金で自力で回していけるかどうかの見定めが必要
返済猶予の相談事例
以下ではご参考までに返済猶予の相談事例をご紹介します。
質問
はじめまして、
只今、銀行に融資を申し込み中ですが、先日返済猶予の方を進められました。
当方、東京電力の末端の協力会社です。
この度の原発事故により、工事が待機状態で売り上げが減少し、資金繰りが厳しい状態です。
震災対応の融資を申し込みましたが、今までの借入も多く、東電がこのような事態なので、これ以上借入を増やさない方がよいのではと連絡が来ました。
それも検討しましたが、やはり3月からの売上減少には、融資して頂かないと、対応できません。
東電が先行き不透明と言われたのですが、工事量は昨年の2割減という方針を聞きました。
担当者に納得して頂くためには、もっと具体的な書類が必要かと思いますが、契約書などなく、年間工量制という形で毎月出来高払です。
中には、完成時払いもあるので、資金繰りは、厳しい時があります。
配電工事なので、これからなくなってしまう事はないと思います。
私共としては、何とか踏ん張ってこの状況を乗り切りたいのですが、融資して頂くためにどのように対応したらよいでしょうか?
交渉の余地はあるでしょうか?
それとも、返済猶予を受け入れるしかないのでしょうか?
こちらのHPに辿りつき、銀行員の立場としての、見方をお聞きしたくて、ぶしつけながら質問させて頂きました。よろしくお願い致します。
返済猶予とは
返済猶予とは現在の借入の返済条件を見直すことで、もっぱら現在よりも返済額を減らす方向に変えることが返済猶予です。
当面は元金の返済を猶予し利息のみの支払に切り替えるとか、現在よりも返済額を少なくすることです。
返済猶予を受けることにより借入している側からするとそれだけ返済という支出が少なくなり資金繰りを改善させることができます。
つまり返済猶予を銀行が行う資金繰り支援の1つなのです。
銀行にとっての返済猶予とは
借りている側からすると返済猶予により資金繰りが楽になる側面があります。
一方で貸している側の銀行から見て返済猶予は可能な限り避けたいところです。
返済猶予とは融資先の資金繰りが悪化している何よりの証拠です。
ということは融資の回収に懸念が持たれる状況だと言えます。
そのため銀行は返済猶予を行うとその融資全体に対する貸倒引当金の積み増しを行います。
貸倒引当金はコストですから、返済猶予は銀行にとってコスト増を伴うことになります。
そのため銀行としては返済猶予を避けたいのが本音ではあるのですが、取引先の資金繰りを維持するためには対応せざるを得ないのです。
返済猶予か追加融資か
返済猶予か追加融資課の判断は難しいところですが、追加融資の場合で考えなければいけないことは、その後の資金繰りの見通しと事業の継続性の視点です。
追加融資を行うということは銀行にとっては将来の不良債権を増加させる可能性がありますからどうしても慎重に判断せざるを得ないのです。
足元の資金繰り状況を土台にして、今後の毎月の資金繰りの見通しはどんなものでしょうか?
売上として毎月入金になる現金収入から、人件費や材料費など借入の返済以外の支出を差し引いた場合、どの程度、手元に残りますか?
この手元に残る毎月の収支の余剰分にて、追加融資の分を含めた借入金の返済が可能かどうか確認をしてみてください。
手元に残る毎月の収支余剰分にて返済が可能であれば、追加融資は検討しやすくなります。
また収支の余剰分にて返済をすべて賄うことが出来なくても、手元のストックの資金の取崩により、1年程度は資金繰りを維持することが可能であれば、やはり追加融資は検討しやすくなります。
上記2例に該当する場合には、足元の資金繰り表と今後半年間程度の毎月の資金繰り予想表を作成し、金融機関に提示して「追加融資を受ければ、当面は資金繰りが維持でき、事業が自力で続けられる」ということを説明してみてください。
説得力のある説明になるはずです。
金融機関には言葉に加えて具体的数字にて説明することが大切です。
そうでなければ、返済猶予により資金繰りを維持し事業の継続を図るという選択肢になります。