今回は鉄鋼の加工業を営む中小企業社長との面談時の話です。
ここ3年ほど業績が悪く手元資金も目減りしており、今後の会社の方向性についての会話でした。
目次
5年前の工場増設が重荷
5年ほど前に本社工場のすぐ近くに第二工場新設の設備投資をこの会社は行っています。
本社工場と第二工場での業務はほぼ同様のものであり、今後の受注増加を見込んでの工場新設でした。
工場新設に要する設備投資資金は主力銀行から長期融資にて調達をしています。
ところが期待していた受注増加は実現せず、逆に受注が減少している状況です。
このままでは資金繰りが行き詰まる
現在のところは相応の手元資金を有しており、早々に資金繰りが行き詰まるような状態にはなっていません。
しかし赤字状態が続いているため、着実に手元資金は目減りしておりこの会社の社長の見込みではあと10ヶ月後には手元資金が底を着く見通しです。
それまでに手を打たなければなりません。
このような状況の中でこの社長と私との面談がありました。
この中小企業は全部で4つの銀行と取引がありますが、当行は融資シェアでは最下位の4番目です。
資金繰り維持のためリスケを検討
このままでは資金繰りが行き詰まることが差し迫っており、社長としてはいろいろな対策を講じてきましたが借入金の返済を止めて資金の流出を減らす考えを固めました。
その直後に私が面談したことになりました。
リスケは取引銀行すべての対応が必要
リスケは資金繰りを改善する有効策の1つですが、取引銀行が複数あるときにはすべての取引銀行がリスケに応じないとまとまりません。
リスケは銀行にとっては痛手です。
そのためその痛手は取引銀行が平等に受けるというのがリスケの基本原則です。
例えば主力銀行がリスケに応じる姿勢を示しても他の取引銀行がリスケに難色を示せばリスケの話はまとまりません。
リスケに対する銀行の基本方針
もっともリスケに応じないことで融資先の資金繰りが行き詰まり破綻してしまうことを銀行は望んでいません。
あくまでも融資先の事業継続を優先して銀行は考えています。
そのため実務的にはリスケの相談があった場合には他の取引銀行もリスケに応じることを前提にして基本的にリスケを受け入れるというのが銀行の基本方針です。
リスケに反対しリスケがまとまらずに融資先が資金繰り破綻を起こしてしまえば、リスケに反対した銀行が破綻の引き金を引いたと言われかねません。
そこは銀行としては避けたいところです。
リスケの相談をするとき
リスケの相談をするときはまず主力銀行に対して行いましょう。
そして主力銀行の同意を取り付けておいてから他の取引銀行にリスケを相談してください。
なおリスケの相談先はすべての取引銀行です。
「あの銀行はやめておこう」という選択肢はありません。