経営改善計画・リスケ

銀行融資のリスケは主力銀行だけでよい?他行への説明と交渉方法を銀行員が解説

複数の銀行から融資を受けている会社が、資金繰りの悪化によって借入金の返済条件を変更する場合、まず主力銀行に相談することが一般的です。

しかし、主力銀行と相談してリスケの方向性を決めたとしても、それだけで他の取引銀行への対応が終わるわけではありません。

先日、私が担当している取引先の社長から、次のような電話がありました。

「主力銀行と相談してリスケをお願いすることにしました。今月分から返済を止めていただきたく、取り急ぎ電話で失礼します」

ところが、その後10日が経過しても、この社長から追加の説明や資料の提出はありませんでした。

銀行の融資担当者としては、リスケを申し込む事情があることは理解できます。

しかし、主力銀行以外の取引銀行も、返済条件の変更を判断するために、資金繰りが悪化した理由や今後の返済見通しについて説明を受ける必要があります。

今回は、銀行の法人融資業務に長年携わってきた立場から、主力銀行主導でリスケを進める場合の注意点、他行への説明方法、銀行がリスケの申し込みを受けた際の考え方について解説します。

銀行融資のリスケは主力銀行だけに相談すればよいのか

結論から申し上げますと、主力銀行への相談は重要ですが、他の取引銀行への説明も必要です。

リスケとは、一般に借入金の返済期間の延長や元金返済額の減額、一定期間の元金返済猶予など、融資の返済条件を変更することをいいます。

複数の銀行から融資を受けている会社では、各銀行との融資契約が存在します。

そのため、主力銀行がリスケに前向きであっても、他の銀行の融資契約まで自動的に変更されるわけではありません。

返済条件を変更するには、原則として、それぞれの取引銀行との間で必要な協議と合意を行う必要があります。

主力銀行から相談を始めることは合理的

資金繰りが厳しくなった場合、まず主力銀行に相談すること自体は合理的な対応です。

主力銀行は、会社の業績や財務内容、資金繰りの状況などを比較的詳しく把握している場合が多いためです。

また、複数の銀行との返済条件の調整において、主力銀行が中心的な役割を果たす場合もあります。

ただし、主力銀行が必ず他の銀行との交渉を代行してくれるわけではありません。

会社自身が、各取引銀行に対して必要な説明を行うことが基本です。

主力銀行の了解だけでは他行の返済は止められない

例えば、A銀行、B銀行、C銀行から借入をしている会社があるとします。

A銀行が主力銀行で、A銀行から元金返済の猶予について前向きな回答を得たとします。

しかし、そのことによってB銀行やC銀行の返済条件が自動的に変更されるわけではありません。

B銀行とC銀行についても、それぞれ返済条件の変更を協議する必要があります。

正式な合意がないまま約定返済を停止すると、契約上の延滞などの問題が生じるおそれがあります。

したがって、主力銀行とリスケの方向性を相談した段階と、すべての関係銀行との条件変更が成立した段階は、明確に区別する必要があります。

リスケではなぜ複数の銀行の足並みをそろえる必要があるのか

複数の銀行から融資を受けている会社がリスケを行う場合、銀行間の公平性や返済条件の整合性が重要になります。

例えば、ある銀行だけ元金返済を猶予し、別の銀行には従来どおり返済を続ける場合を考えてみましょう。

元金返済を猶予した銀行から見れば、自行が返済を待っている間に、他行の借入金だけが減っていくことになります。

そのため、リスケを申し込まれた銀行は、他の取引銀行がどのような対応をするのかを確認することがあります。

銀行間の公平性が重視される理由

銀行が元金返済の猶予に応じると、当初予定していた返済が行われなくなります。

銀行としては、融資先の事業継続を支援する一方で、融資債権の回収見通しについても検討しなければなりません。

そのため、特定の銀行だけが大きな負担を負うような返済条件になっていないかを確認します。

複数の銀行が協調して支援する場合には、各銀行の借入残高や融資条件などを踏まえて、返済条件の公平性を検討することが一般的です。

すべての銀行が完全に同じ条件でなければならないのか

必ずしも、すべての銀行が完全に同一の条件でなければならないわけではありません。

例えば、借入金の種類や残高、担保の状況、融資契約の内容などが異なる場合があります。

また、金融機関ごとに支援方針が異なることもあります。

重要なのは、関係銀行が納得できるように、返済条件の変更理由と銀行間の負担の考え方を説明し、必要な合意を得ることです。

したがって、「すべての銀行が必ず同じ返済条件にしなければリスケは成立しない」と一律に考えるのは適切ではありません。

主力銀行以外の取引銀行はリスケの連絡をどう受け止めるのか

ここからは、銀行の融資担当者の立場から説明します。

主力銀行と相談してリスケを申し込むという連絡があれば、主力銀行以外の取引銀行も、会社の資金繰りが厳しい状況にあることは理解します。

しかし、電話で「今月から返済を止めてほしい」と伝えられただけでは、銀行として判断するための情報が不足しています。

銀行が最初に知りたいのは資金繰りが悪化した理由

銀行は、まず会社がなぜリスケを必要とする状況になったのかを確認します。

例えば、次のような事情が考えられます。

  • 売上が減少して営業赤字が続いている
  • 仕入価格や人件費の上昇によって利益が減少している
  • 売掛金の回収が遅れている
  • 設備投資に伴う借入金の返済負担が大きい
  • 借入金の元金返済額が事業から生み出す資金を上回っている

これらの事情によって、銀行が確認する内容は異なります。

一時的な資金不足なのか、収益力の低下による構造的な問題なのかを把握する必要があるためです。

今後の資金繰りと返済見通しも必要

銀行は、リスケを行うことで資金繰りがどの程度改善するのかを確認します。

例えば、毎月の元金返済額が300万円である会社が、一定期間の元金返済猶予を受ける場合、単純計算では毎月300万円の資金流出を抑えられます。

ただし、それだけで資金繰りの問題が解決するとは限りません。

営業赤字によって毎月資金が流出している場合には、元金返済を猶予しても資金不足が続く可能性があるからです。

そのため、銀行はリスケ後の資金繰り見通しや収益改善策を確認します。

連絡がないと銀行内部の審査を進めにくい

銀行が返済条件の変更に応じる場合には、所定の審査や承認手続きが必要です。

審査では、リスケが必要になった理由や会社の財務状況、今後の返済見通しなどを確認します。

銀行によっては本部などの決裁が必要になる場合もありますが、すべてのリスケ案件が必ず本部決裁になるわけではありません。

いずれにしても、会社から十分な説明や資料の提出がなければ、銀行は判断に必要な情報をそろえられません。

電話一本でリスケを申し込んだ後に必要な対応

資金繰りが厳しい場合には、まず電話でリスケの意向を伝えることもあるでしょう。

緊急時に電話で連絡すること自体が問題なのではありません。

重要なのは、その後の対応です。

できるだけ早く正式な説明の機会を設ける

電話でリスケの意向を伝えた後は、できるだけ早く各取引銀行に詳しい説明を行うことが望ましい対応です。

対面での説明が難しい場合には、銀行と相談してオンライン面談などの方法を検討することもできます。

説明する際には、資金繰りが悪化した経緯や今後の対応方針を整理しておくことが重要です。

主力銀行との協議内容を他行にも説明する

主力銀行とリスケについて協議している場合には、他の取引銀行にも、その協議状況を説明します。

例えば、次のような内容です。

  • 主力銀行にリスケを相談した時期
  • 主力銀行との協議で検討している返済条件
  • 他の取引銀行にも同様の相談を行っているか
  • 関係銀行との条件調整をどのように進める予定か

ただし、主力銀行の正式な承認を得ていない場合には、そのことも正確に伝える必要があります。

主力銀行との相談段階であるにもかかわらず、「主力銀行の了承は得ている」と説明すると、後に認識の違いが生じるおそれがあります。

返済日が迫っている場合は特に早めの連絡が必要

すでに今月の返済日が迫っている場合には、早急に銀行と協議する必要があります。

リスケの申し込みをしただけで、約定返済の義務が自動的に停止するわけではありません。

返済条件の変更が正式に成立するまでは、原則として従来の融資契約に基づく返済義務が続きます。

返済が難しい見込みであれば、返済日を迎える前に銀行へ具体的な状況を伝え、対応を協議することが重要です。

リスケを相談する際に銀行へ提出する主な資料

リスケの申し込みに際しては、銀行から必要資料の提出を求められることがあります。

主な資料は次のとおりです。

資料 銀行が確認する内容
直近の決算書 会社の業績と財務内容
直近の試算表 決算後の業績や財務状況
資金繰り表 現在と今後の資金不足の状況
借入金一覧表 各銀行の借入残高、返済額、返済条件
経営改善計画書 収益改善策や今後の返済見通し
返済条件変更の希望内容 猶予期間、返済額、開始時期など

実際に必要な資料は、銀行や会社の状況によって異なります。

すべての資料が最初から完成していなければ相談できないわけではありません。

まず現状を説明し、銀行と相談しながら必要資料を準備することも考えられます。

複数の銀行とリスケを進める際の基本的な手順

複数の銀行から融資を受けている会社では、次のような流れでリスケの協議を進めることが考えられます。

1. 資金繰りの現状を把握する

まず、いつ、いくら資金が不足するのかを確認します。

資金繰り表を作成し、借入金の返済を続けた場合と、返済条件を変更した場合の資金繰りを比較します。

2. 主力銀行に早めに相談する

資金繰りが厳しくなる見込みが立った段階で、主力銀行に相談します。

その際には、資金繰りが悪化した理由や、希望する返済条件の変更内容を説明します。

3. 他の取引銀行にも速やかに連絡する

主力銀行との協議が進んだら、他の取引銀行にも速やかに連絡します。

ただし、返済日が迫っている場合などには、主力銀行との協議がまとまるのを待たずに、他行にも早めに相談することが必要です。

4. 各銀行に同じ基礎資料を提出する

各銀行に提出する決算書や資金繰り表、借入金一覧表などの基礎資料は、原則として整合性のあるものを使用します。

銀行ごとに異なる説明をすると、会社の資金繰りや返済方針に対する信頼を損なうおそれがあります。

5. 返済条件を調整する

各銀行の意向や融資条件を確認しながら、返済条件の変更内容を協議します。

必要に応じて、主力銀行を中心に関係銀行との調整を進める場合もあります。

6. 各銀行と正式な条件変更手続きを行う

返済条件について合意した後は、各銀行と必要な契約変更などの手続きを行います。

正式な手続きが完了する時期についても確認することが重要です。

銀行がリスケの申し込みを受けた際に重視すること

銀行は、リスケの申し込みを受けると、単に元金返済を猶予するかどうかだけでなく、会社の事業継続や今後の返済見通しを確認します。

リスケによって資金繰りが改善するか

銀行は、元金返済額を減らすことによって資金繰りがどの程度改善するのかを確認します。

返済条件を変更しても資金不足が続く場合には、追加の経営改善策などが必要になることがあります。

事業の収益改善が見込めるか

リスケは資金繰りを改善するための手段ですが、それだけで会社の収益力が改善するわけではありません。

銀行は、売上や利益を改善するための具体的な取り組みを確認します。

経営者が現状を正確に説明しているか

銀行は、経営者が会社の現状をどの程度把握しているかにも注目します。

資金繰りの悪化要因や今後の改善策について、具体的な説明があることは重要です。

また、主力銀行以外の取引銀行にも適切な説明が行われているかは、銀行間の調整を進めるうえで大切な点です。

主力銀行以外への説明を怠るとどうなるのか

主力銀行には詳しく説明している一方で、他の取引銀行には十分な説明をしていない場合、リスケの協議が円滑に進まなくなるおそれがあります。

銀行が判断に必要な情報を得られない

リスケの必要性や今後の返済見通しが分からなければ、銀行は返済条件の変更を判断しにくくなります。

結果として、追加の説明や資料の提出が必要になり、手続きが長引く場合があります。

銀行間の調整が難しくなる

各銀行が会社の状況を十分に把握していないと、返済条件についての認識がそろわない可能性があります。

また、他行の対応状況が分からなければ、自行の支援内容を決めにくい場合もあります。

銀行との信頼関係に影響する場合がある

銀行との取引では、会社の状況を正確に説明することが重要です。

資金繰りが厳しいこと自体よりも、必要な情報が十分に共有されないことが、銀行との信頼関係に影響する場合があります。

リスケを円滑に進めるためには、主力銀行だけでなく、他の取引銀行にも誠実かつ具体的に説明することが重要です。

銀行融資のリスケと主力銀行に関するよくある質問

リスケは主力銀行から相談するべきですか?

主力銀行から相談を始めることは合理的な方法の一つです。

ただし、他の取引銀行にも説明が必要です。

特に返済日が迫っている場合には、主力銀行との協議がまとまるのを待たずに、関係銀行へ早めに相談することが重要です。

主力銀行がリスケを認めれば他の銀行も応じますか?

必ずしもそうではありません。

各銀行は、それぞれの融資契約や審査方針に基づいて返済条件の変更を判断します。

主力銀行が前向きであっても、他の銀行との協議や合意が必要です。

すべての銀行が同じ条件でリスケする必要がありますか?

必ずしも完全に同一の条件である必要はありません。

銀行間の公平性や各融資の条件を考慮しながら、関係銀行が納得できる返済条件を調整することが重要です。

電話でリスケを申し込めば返済を止めてもよいですか?

電話で申し込んだだけでは、通常、返済条件は変更されません。

原則として、銀行との合意や必要な手続きが必要です。

返済が難しい見込みであれば、返済日を迎える前に銀行へ相談してください。

リスケを申し込む際に経営改善計画書は必要ですか?

銀行から経営改善計画書の提出を求められる場合があります。

ただし、最初の相談時点ですべての資料が完成していなければ相談できないわけではありません。

まずは資金繰りの状況を説明し、銀行と相談しながら必要資料を準備することが考えられます。

主力銀行以外の銀行にも直接説明する必要がありますか?

各銀行が返済条件の変更を判断できるよう、必要な説明を行うことが重要です。

主力銀行が銀行間の調整を支援する場合でも、会社自身が各銀行への説明責任を果たすことが基本です。

主力銀行主導のリスケと他行への説明のまとめ

複数の銀行から融資を受けている会社がリスケを行う場合、主力銀行に相談することは合理的な対応です。

しかし、主力銀行とリスケの方向性を決めたからといって、他の取引銀行への対応が終わるわけではありません。

各銀行が返済条件の変更を判断するためには、資金繰りが悪化した理由や今後の返済見通しなどを把握する必要があります。

  • リスケは主力銀行から相談を始めることが一般的な方法の一つである
  • 主力銀行の了解だけで他行の返済条件が変更されるわけではない
  • 銀行間の公平性や返済条件の整合性が重要になる
  • すべての銀行が完全に同一条件であることが絶対条件ではない
  • 主力銀行以外にもリスケが必要な理由を具体的に説明する
  • 資金繰り表や借入金一覧表などの資料を準備する
  • 返済条件の変更が成立する前に一方的に返済を停止しない
  • 各銀行との信頼関係を維持するために、迅速で正確な情報共有を行う

今回紹介した取引先の社長のように、主力銀行と相談したことを電話で伝えるだけでは、他の銀行はリスケの必要性や今後の見通しを十分に把握できません。

銀行の融資担当者としては、会社が厳しい状況にあることは理解できますし、事業継続に向けた支援を検討する必要があると考えています。

だからこそ、主力銀行以外の取引銀行にも、資金繰りの現状や改善方針をきちんと説明していただきたいのです。

リスケを円滑に進めるために大切なのは、主力銀行との相談だけでなく、すべての関係銀行との丁寧な協議と信頼関係です。

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