銀行融資の基本・審査

信用保証協会の代位弁済後はどう返済する?返済計画と自己破産の判断ポイント

信用保証協会付き融資を利用していた会社が返済できなくなり、信用保証協会が銀行に代位弁済を行った場合、その後の返済はどうなるのでしょうか。

「信用保証協会から一括返済を求められているが、支払えるお金がない」

「毎月少しずつ返済することはできるのか」

「返済の見通しが立たないので、自己破産した方がよいのではないか」

このような悩みを抱える中小企業の経営者や連帯保証人は少なくありません。

結論から申し上げると、信用保証協会が代位弁済した後も返済義務は原則として残りますが、直ちに自己破産を選択しなければならないわけではありません。

信用保証協会と今後の返済方法を協議することができますし、状況によっては経営者保証に関するガイドラインを利用した保証債務の整理なども検討できます。

一方で、返済能力がなく、事業の再建や保証債務の整理も難しい場合には、自己破産が選択肢になることもあります。

大切なのは、返済できないからといって信用保証協会からの連絡を放置せず、現在の収入、資産、負債、今後の事業の見通しを整理して対応することです。

この記事では、長年にわたり法人融資や融資審査に携わってきた銀行員の立場から、信用保証協会の代位弁済後の返済計画、分割返済の相談方法、自己破産を検討する際の注意点について解説します。

この記事のポイント

  • 代位弁済後は信用保証協会に対する返済義務が生じる
  • 連帯保証人の責任も原則として残る
  • 一括返済が難しい場合には返済方法を相談する
  • 返済計画は収入や資産、必要な生活費を踏まえて考える
  • 返済の見通しが立たない場合には保証債務の整理や自己破産も検討する
  • 自己破産したからといって将来の信用保証協会の利用が永久に禁止されるわけではない

信用保証協会の代位弁済後はどうなる?

まず、信用保証協会が代位弁済した後の基本的な仕組みを整理します。

信用保証協会は、中小企業や個人事業主が銀行から事業資金を借りる際に、その借入債務を保証する公的機関です。

信用保証協会付き融資では、会社が銀行に返済することが基本です。

ところが、業績悪化や資金繰りの悪化によって返済できなくなった場合には、所定の条件と手続きを経て、信用保証協会が会社に代わって銀行に返済することがあります。

これが代位弁済です。

代位弁済によって銀行への返済が行われる

例えば、会社が信用保証協会付き融資を利用しており、借入残高が1,000万円あったとします。

会社が返済できなくなり、信用保証協会が銀行に1,000万円を代位弁済した場合、銀行は代位弁済された範囲について融資金を回収します。

ただし、これは会社の借金が免除されたという意味ではありません。

信用保証協会は代わりに返済した金額について、会社に返済を求める権利を取得します。

なお、実際の代位弁済額は保証割合や契約内容などによって異なります。必ずしも銀行融資の残高全額が代位弁済されるわけではありません。

代位弁済後は信用保証協会に返済する

信用保証協会が代位弁済すると、信用保証協会は会社に対して求償権を取得します。

求償権とは、他人の債務を代わりに支払った人が、本来返済すべき人に対して支払額などの返還を求める権利です。

つまり、代位弁済後は、原則として銀行ではなく信用保証協会に対して返済することになります。

実際には、信用保証協会の委託先などが回収業務を担当する場合もあります。

また、代位弁済額のほかに、契約や法令に基づく損害金などが請求される場合があります。

連帯保証人の責任も原則として残る

会社の社長が信用保証協会付き融資の連帯保証人になっている場合、代位弁済後も保証責任は原則として残ります。

会社が信用保証協会に返済できなければ、連帯保証人である社長個人も返済を求められる可能性があります。

ただし、すべての信用保証協会付き融資に経営者保証が付いているわけではありません。

社長個人が保証責任を負うかどうかは、実際に締結した保証契約などを確認する必要があります。

詳しくは次の記事で解説しています。

信用保証協会が代位弁済すると連帯保証人はどうなる?返済義務と対処法

代位弁済後は信用保証協会と返済計画を相談する

信用保証協会が代位弁済した後、まず重要になるのが今後の返済方法についての相談です。

代位弁済に至った会社は、通常、銀行への返済を継続することが難しい状態にあります。

そのため、信用保証協会から返済請求を受けても、直ちに一括返済できるとは限りません。

信用保証協会はこのような事情も踏まえて、債務者や連帯保証人の状況を確認し、返済方法について協議する場合があります。

ただし、希望する分割返済が必ず認められるわけではありません。

返済条件は、収入、資産、債務の状況などを踏まえた個別の判断になります。

信用保証協会からの連絡を無視しない

代位弁済後に最も避けたいのは、信用保証協会からの通知や連絡を無視することです。

返済できるお金がないため、連絡を受けること自体が負担になる場合もあるでしょう。

しかし、連絡を無視しても返済義務がなくなるわけではありません。

対応しない状態が続けば、状況によっては訴訟や強制執行などの法的手続きが進む可能性もあります。

一括返済が難しい場合には、その事実を伝え、返済方法について相談することが重要です。

返済計画の相談で確認されること

信用保証協会との返済協議では、現在の返済能力を把握することが重要です。

会社が事業を継続している場合には、主に次のような事項を整理します。

  • 現在の売上高と利益の状況
  • 毎月の入金額と支払額
  • 事業を継続するために必要な経費
  • 手元の預金残高
  • 売掛金や在庫などの資産
  • 今後の事業の見通し
  • 毎月返済に充てられる金額

連帯保証人個人が返済について相談する場合には、次の事項も重要です。

  • 給与や年金などの収入
  • 生活に必要な支出
  • 預貯金や不動産などの資産
  • 住宅ローンなど他の借入金
  • 扶養家族などの生活状況
  • 継続して返済できる金額

これらを整理しておくことで、現在の状況を具体的に説明しやすくなります。

信用保証協会への返済計画の立て方

返済計画を考えるうえで大切なのは、無理に大きな返済額を約束しないことです。

代位弁済後の返済は、短期間で完済できるとは限りません。

そのため、毎月の返済可能額を現実的に考える必要があります。

会社が事業を継続している場合

会社が事業を継続している場合には、まず今後の資金繰りを確認します。

例えば、毎月の売上入金が500万円、仕入代金や人件費などの支払いが470万円であれば、差額は30万円です。

ただし、この30万円すべてを信用保証協会への返済に充てられるとは限りません。

設備の修繕費、税金の納付、季節的な売上変動、他の債務の返済なども考慮する必要があるためです。

返済額を決める前に、少なくとも今後数か月から1年程度の資金繰りを確認しておきたいところです。

連帯保証人個人が返済する場合

連帯保証人である社長個人が返済する場合には、生活を維持するために必要な費用を踏まえて返済可能額を検討します。

例えば、次のような状況を考えてみましょう。

項目 月額
毎月の手取り収入 25万円
住居費・食費・光熱費など 19万円
医療費・臨時支出への備え 3万円
差引額 3万円

この例では、計算上の差引額は月3万円です。

ただし、これは返済可能額を考えるための仮定の例であり、毎月3万円の返済が適切だと決まるわけではありません。

収入の変動、家族の生活状況、将来必要となる支出なども踏まえて検討する必要があります。

毎月1万円の返済でもよいのか

信用保証協会への返済について、「毎月1万円などの少額でも相談できるのか」という疑問を持つ人もいるでしょう。

毎月の返済額は、債務者や連帯保証人の状況を踏まえて個別に協議することになります。

少額の分割返済について相談すること自体は考えられますが、必ず認められるというわけではありません。

また、仮に1,000万円の債務を毎月1万円ずつ返済すると、損害金などを考慮しなくても完済まで約83年かかる計算になります。

したがって、少額の返済を継続するだけで問題が解決するとは限りません。

返済額だけでなく、今後の収入の見通し、資産の状況、債務整理の必要性も含めて検討することが重要です。

返済計画で大切な3つのポイント

  1. 現在の収入と支出を正確に把握すること。 無理な返済計画を立てないための基本です。
  2. 今後の見通しを説明すること。 事業の継続可能性や収入の変化などを整理します。
  3. 返済が難しくなったら早めに相談すること。 約束した返済ができなくなる前に状況を伝えることが重要です。

信用保証協会との返済協議で準備したい資料

返済協議を円滑に進めるには、口頭で「返済できません」と説明するだけでなく、現在の状況が分かる資料を用意することが有効です。

会社と連帯保証人個人では、必要になる資料が異なります。

会社が準備したい資料

  • 直近の決算書
  • 最新の試算表
  • 資金繰り表
  • 預金残高が分かる資料
  • 借入金の一覧表
  • 今後の事業計画や収支見通し

事業を継続する場合には、売上をどのように維持・改善していくのか、今後どの程度の資金が必要なのかを説明できるようにしておきましょう。

連帯保証人が準備したい資料

  • 給与明細や年金額が分かる資料
  • 毎月の生活費の一覧
  • 預貯金の残高が分かる資料
  • 保有不動産などの資産一覧
  • 住宅ローンなどの返済予定表
  • 他の借入金の残高一覧

なお、実際に求められる資料は個別の事情によって異なります。

信用保証協会の担当窓口に確認して準備してください。

代位弁済後に自己破産を選択すべきか

信用保証協会への返済の見通しが立たない場合、自己破産を検討することがあります。

しかし、代位弁済を受けたからといって、必ず自己破産しなければならないわけではありません。

返済能力や資産の状況、会社の事業継続の可能性などによって、適切な対応は異なります。

自己破産とは

自己破産は、債務の返済が困難になった場合に、破産法に基づいて裁判所に申し立てる法的手続きです。

個人の場合には、破産手続きに加えて免責許可を受けることで、原則として対象となる債務の支払義務を免れることができます。

ただし、税金などの非免責債権や、法律上免責されない債務もあります。

また、会社の破産と社長個人の破産は別の問題です。

会社が破産しただけで、社長個人の連帯保証債務が当然になくなるわけではありません。

自己破産を検討する状況

例えば、次のような場合には、自己破産を含む法的な債務整理を検討する必要があるかもしれません。

  • 今後も安定した収入を得られる見込みが乏しい
  • 債務額が大きく、現実的な返済計画を立てられない
  • 事業の再建が難しく、継続するほど負債が増える
  • 複数の債権者から返済を求められている
  • 保証債務の整理について協議しても解決が難しい

ただし、これらに該当するからといって、自己破産が唯一の方法になるわけではありません。

個別の事情を確認し、弁護士などの専門家と相談して判断することが重要です。

分割返済と自己破産はどちらを選ぶべき?

信用保証協会への分割返済と自己破産は、目的や影響が異なります。

それぞれの特徴を比較してみましょう。

比較項目 分割返済の協議 自己破産
基本的な目的 返済可能な条件を協議する 法的に債務を整理する
返済義務 原則として残る 個人は免責許可により原則として免責対象の債務から解放される
返済能力 継続的な返済可能額を確認する 支払不能などの要件が問題となる
資産への影響 契約や回収手続きなどによる 一定の財産が処分対象となる場合がある
将来の融資 代位弁済や債務の状況が審査に影響する 破産や過去の取引状況などが審査に影響する

分割返済が適切か、自己破産を検討すべきかは、単に毎月いくら支払えるかだけで判断できません。

今後の収入、債務総額、保有資産、家族の生活、事業の再建可能性などを総合的に検討する必要があります。

自己破産以外に経営者保証を整理する方法はある?

会社が返済不能になった場合、社長個人の連帯保証債務については、自己破産以外の方法を検討できることがあります。

その1つが、経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務の整理です。

経営者保証に関するガイドラインとは

経営者保証に関するガイドラインは、中小企業の経営者保証について、保証契約の締結や保証債務の整理などに関する考え方を示したものです。

会社の事業再生や廃業などに伴って経営者保証を整理する際、一定の条件を満たす場合には、ガイドラインに沿った対応が検討されることがあります。

この方法は、裁判所で行う自己破産とは異なる枠組みです。

一定の生活基盤を残せる可能性がある

経営者保証に関するガイドラインに基づく保証債務の整理では、個別の事情や債権者との協議によって、一定の生活費に相当する資産などを残すことが検討される場合があります。

ただし、必ず希望どおりの資産を残せるわけではありません。

保証債務の減免や残存資産の範囲についても、一定の条件や債権者との調整が必要です。

早い段階で専門家に相談する

経営者保証に関するガイドラインの活用には、会社の状況や債務の内容、債権者との関係などを整理する必要があります。

そのため、信用保証協会への返済が困難になった場合には、自己破産を決める前に、保証債務の整理に詳しい弁護士などへ相談することも重要です。

代位弁済後の選択肢は、分割返済か自己破産かの二者択一とは限りません。

自己破産すると信用保証協会は二度と利用できない?

自己破産を検討する経営者が特に心配するのが、将来の銀行融資への影響です。

「自己破産をすると信用保証協会は一生利用できない」という話を聞いたことがあるかもしれません。

しかし、自己破産をしたという理由だけで、信用保証協会を永久に利用できなくなると一律に決まっているわけではありません。

過去の代位弁済や保証債務の状況は審査に影響する

信用保証協会は保証審査を行う際、事業内容、業績、資金繰り、返済能力、過去の保証利用状況などを確認します。

過去に代位弁済を受けた事実や、その後の債務の状況は、将来の保証審査に影響する可能性があります。

そのため、自己破産後に新たな事業を始めたとしても、すぐに信用保証協会付き融資を利用できるとは限りません。

一方で、将来にわたって絶対に利用できないと断定することも適切ではありません。

再び融資を受けられるかは個別の審査による

新たな事業を始める際には、事業計画、自己資金、収支見通し、過去の債務の整理状況などが重要になります。

信用保証協会付き融資だけでなく、銀行のプロパー融資や日本政策金融公庫の融資についても、それぞれの審査基準や個別の事情によって判断されます。

したがって、自己破産後の資金調達を検討する場合には、事業の見通しと資金計画を十分に準備したうえで、利用を希望する金融機関などに相談することが大切です。

代位弁済後に避けたい3つの行動

信用保証協会から返済を求められた場合、対応を誤ると状況がさらに悪化する可能性があります。

1.信用保証協会からの連絡を放置する

返済できないからといって連絡を無視しても、問題は解決しません。

請求内容を確認し、返済が困難であることを伝え、今後の対応について相談することが重要です。

2.無理な返済計画を約束する

返済の意思を示そうとして、実際には支払えない金額を約束することは避けましょう。

無理な返済計画では、再び支払いができなくなる可能性があります。

収入と支出を正確に把握し、継続可能な返済額を検討することが大切です。

3.高金利の借入れで返済資金を調達する

信用保証協会への返済資金を確保するために、高金利の借入れを重ねることには注意が必要です。

新たな借入れで一時的に返済できても、債務全体が増え、さらに資金繰りが悪化する可能性があります。

返済のための借入れを繰り返す前に、債務全体を整理し、必要に応じて専門家に相談しましょう。

信用保証協会の代位弁済後によくある質問

代位弁済後は必ず一括返済しなければなりませんか?

信用保証協会から一括返済を求められる場合があります。

ただし、一括返済が困難な場合には、現在の収入や資産の状況などを説明し、返済方法について相談することが考えられます。

分割返済が必ず認められるわけではありませんが、早めに相談することが重要です。

信用保証協会への返済は毎月1万円でもよいのでしょうか?

毎月の返済額は、債務者や連帯保証人の状況を踏まえて個別に協議することになります。

毎月1万円の返済が認められると一律に決まっているわけではありません。

返済額だけでなく、債務総額や今後の収入の見通しも踏まえて相談する必要があります。

会社が破産すれば社長個人の返済義務もなくなりますか?

会社が破産しても、社長個人の連帯保証債務が自動的になくなるわけではありません。

社長が連帯保証人になっている場合には、個人の保証債務について別途対応を検討する必要があります。

自己破産すれば信用保証協会への返済義務はなくなりますか?

個人の場合には、破産手続きに加えて裁判所から免責許可を受けることで、原則として免責対象となる債務の支払義務を免れることができます。

ただし、免責されない債務もあります。また、会社の破産と個人の免責は区別する必要があります。

自己破産すると将来の銀行融資は絶対に受けられませんか?

自己破産をしたからといって、将来の銀行融資が永久に禁止されるわけではありません。

ただし、過去の返済状況や債務整理の状況は融資審査に影響する可能性があります。

融資を受けられるかどうかは、金融機関や信用保証協会などの個別審査によります。

自己破産以外に連帯保証人の責任を整理する方法はありますか?

状況によっては、経営者保証に関するガイドラインを活用した保証債務の整理などを検討できる場合があります。

利用できるかどうかは個別の条件によるため、制度に詳しい専門家に相談することが重要です。

まとめ:代位弁済後は返済計画を整理し、自己破産以外の選択肢も検討する

信用保証協会が代位弁済した後は、会社や連帯保証人の返済義務が原則として残ります。

そのため、信用保証協会から返済を求められた場合には、現在の収入、資産、負債の状況を整理し、今後の返済方法について相談することが重要です。

今回のポイントをまとめると、次のとおりです。

  • 信用保証協会が代位弁済しても返済義務は原則として残る
  • 代位弁済後は信用保証協会が求償権を取得する
  • 連帯保証人の責任も保証契約に基づいて原則として残る
  • 一括返済が難しい場合には信用保証協会と返済方法を相談する
  • 返済計画は実際の収入や資産、生活費などを踏まえて考える
  • 返済の見通しが立たない場合には保証債務の整理や自己破産を検討する
  • 自己破産した場合でも、将来の融資利用が永久に不可能になると一律に決まっているわけではない
  • 信用保証協会からの連絡を無視せず、早めに対応することが大切

信用保証協会への返済が困難になった場合、返済を続けるべきか、保証債務の整理を検討すべきか、自己破産を選択すべきかは、個々の事情によって異なります。

特に、社長が連帯保証人になっている場合には、会社の事業だけでなく、社長個人の生活や資産にも影響が及ぶ可能性があります。

代位弁済後は、無理な返済約束をするのではなく、現実的な返済能力を確認し、必要に応じて専門家の助言も受けながら対応を決めることが重要です。

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