「年商3,000万円の会社は、銀行からいくらまで融資を受けられるのだろうか」
「銀行融資は年商の3か月分までと聞いたが、本当なのだろうか」
「年商3,000万円なら、750万円くらい借りられるのだろうか」
銀行融資を検討している中小企業の経営者や個人事業主の方には、このような疑問があると思います。
結論から申し上げると、年商3,000万円という情報だけで、銀行融資の限度額を決めることはできません。
年商の2~3割にあたる600万円~900万円や、年商の3か月分にあたる750万円という金額は、借入規模を考える際の参考にはなります。
しかし、これらの金額が銀行の一律の融資限度額というわけではありません。
銀行が実際に重視するのは、主に次の3つです。
- 融資を受ける必要性と資金使途が明確であるか
- 借入金を返済できる利益やキャッシュフローがあるか
- 既存借入金を含めて、借入金の負担が過大にならないか
例えば、同じ年商3,000万円の会社でも、利益が十分にあり借入金が少ない会社と、赤字が続き多額の借入金がある会社では、銀行の融資判断は異なります。
この記事では、長年にわたり銀行の法人融資や融資審査に携わってきた経験を踏まえ、年商3,000万円の会社がどのくらい融資を受けられるのか、その考え方と具体的な計算方法をわかりやすく解説します。
年商3,000万円の会社はいくらまで融資を受けられる?
年商3,000万円の会社が銀行からどのくらい融資を受けられるかについて、まずは売上高を基準とした金額を確認してみましょう。
| 年商に対する割合 | 年商3,000万円の場合 |
|---|---|
| 年商の1か月分 | 250万円 |
| 年商の2か月分 | 500万円 |
| 年商の3か月分 | 750万円 |
| 年商の4か月分 | 1,000万円 |
| 年商の6か月分 | 1,500万円 |
例えば、年商の3か月分を計算すると次のようになります。
3,000万円 × 3か月 ÷ 12か月 = 750万円
この計算から、年商3,000万円の会社にとって750万円がどの程度の借入規模なのかを把握できます。
ただし、これはあくまで売上高から算出した金額です。
750万円までなら必ず融資を受けられるという意味でも、750万円を超える融資は受けられないという意味でもありません。
銀行は、売上高だけで融資金額を決定するわけではないからです。
銀行融資は年商の3か月分までというのは本当か
「銀行融資は年商の3か月分まで」という話を聞いたことがある経営者の方もいると思います。
しかし、銀行融資には、すべての会社に共通する「年商の3か月分まで」という決まりがあるわけではありません。
売上高に対する借入金の割合は、借入規模を把握するための参考指標の1つです。
例えば、年商3,000万円で借入金が750万円ある場合、借入金は年商の25%に相当します。
一方、借入金が1,500万円であれば、年商の50%に相当します。
このように売上高と借入金を比較することで、会社の規模に対して借入金がどの程度あるかを確認できます。
しかし、借入金の割合が高いから必ず融資が難しいというわけではありません。
設備投資が多い会社では、売上高に対する借入金の割合が大きくなることがあります。
また、業種によって必要な運転資金の規模も異なります。
銀行が融資を検討する際には、年商に対する借入金の割合だけでなく、資金使途や返済能力などを総合的に判断します。
年商3,000万円の融資可能額を左右する3つの重要な要素
銀行が融資金額を判断する際には、特に次の3つの要素が重要です。
1.借入金を返済できるか
銀行の融資審査で最も重要なポイントの1つが、借入金を返済できるかどうかです。
銀行は融資した資金を最終的に回収する必要があります。
そのため、会社の利益やキャッシュフロー、資金繰りなどを確認し、借入金の返済が可能かを審査します。
例えば、1,000万円を5年間で元金均等返済する場合、年間の元金返済額は単純計算で次のようになります。
1,000万円 ÷ 5年 = 年間200万円
このほかに利息の支払いも必要です。
銀行は、会社が既存借入金の返済も含めて、この返済負担に対応できるかを確認します。
なお、年間200万円を返済するために、必ず税引後利益が200万円必要というわけではありません。
銀行は、利益だけでなく減価償却費なども考慮し、返済原資を確認します。
2.融資を受ける資金の必要性があるか
銀行は、融資した資金を何に使うのかを確認します。
これを資金使途といいます。
例えば、次のような資金需要があります。
- 売掛金の回収までに必要となる運転資金
- 仕入代金や外注費の支払いに必要な資金
- 機械設備や車両の購入資金
- 店舗の改装や設備投資に必要な資金
- 季節的な売上変動に対応する資金
例えば、運転資金が300万円必要な会社が、特に理由なく1,000万円の融資を希望した場合、銀行は融資希望額の妥当性を確認します。
一方、年商3,000万円の会社でも、必要性が明確な設備投資であれば、年商の3か月分を超える融資が検討されることがあります。
銀行融資では、借りたい金額だけでなく、なぜその金額が必要なのかを説明できることが重要です。
3.既存借入金がどのくらいあるか
新たな銀行融資を検討する際には、すでに借り入れている金額も重要です。
例えば、同じ年商3,000万円の会社でも、次の2社では状況が異なります。
| 比較項目 | A社 | B社 |
|---|---|---|
| 年商 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 既存借入金残高 | 200万円 | 1,500万円 |
| 新規融資希望額 | 500万円 | 500万円 |
| 融資後の借入金残高 | 700万円 | 2,000万円 |
※比較のために設定した仮定の数値です。
A社とB社では、融資後の借入金残高に大きな違いがあります。
ただし、借入金残高だけで融資の可否が決まるわけではありません。
銀行は、既存借入金の返済期間や年間返済額、利益、資金繰りなども確認します。
年商3,000万円の会社の返済能力を計算する方法
銀行融資の金額を考える際には、年商だけでなく返済能力を確認することが重要です。
返済能力を確認するための代表的な考え方として、利益と減価償却費を使用した簡易的な返済原資の計算があります。
返済原資の簡易的な計算式
返済原資の簡易的な目安
税引後利益 + 減価償却費
※銀行が返済能力を確認する際に用いることがある簡易的な指標です。実際の資金繰りや返済可能額をそのまま示すものではありません。
減価償却費は会計上の費用ですが、その計上自体によって当期の現金支出が発生するわけではありません。
そのため、利益に減価償却費を加えた金額が、返済原資を考える際の参考になります。
ただし、売掛金や在庫の増加、仕入債務の減少、税金の支払い、設備投資などによって、実際の手元資金は変化します。
したがって、返済原資を正確に確認するには資金繰り表なども必要です。
具体例1.返済原資が年間100万円の場合
次のような会社を考えてみましょう。
- 年商:3,000万円
- 税引後利益:60万円
- 減価償却費:40万円
- 既存借入金の年間元金返済額:0円
簡易的な返済原資は次のとおりです。
60万円 + 40万円 = 100万円
この会社が500万円を5年間で元金均等返済する場合、年間の元金返済額は100万円です。
つまり、簡易的な返済原資100万円に対して、年間元金返済額も100万円となります。
しかし、実際には利息の支払いや税金、運転資金の増減などもあります。
そのため、計算上の返済原資と年間元金返済額が同じだからといって、無理なく返済できるとは限りません。
銀行は、今後の業績や資金繰りを含めて返済可能性を判断します。
具体例2.返済原資が年間300万円の場合
次のような会社を考えてみましょう。
- 年商:3,000万円
- 税引後利益:200万円
- 減価償却費:100万円
- 既存借入金の年間元金返済額:50万円
簡易的な返済原資は次のとおりです。
200万円 + 100万円 = 300万円
既存借入金の年間元金返済額が50万円であるため、単純計算では250万円が新たな借入金の返済に充てられる可能性のある金額となります。
ただし、この250万円がそのまま新規融資の返済に使えると確定するわけではありません。
実際には、運転資金の増減や設備投資、税金の支払いなどを考慮する必要があります。
銀行はこうした点を確認し、無理のない融資金額と返済期間を検討します。
年商3,000万円の会社に必要な運転資金はいくらか
運転資金の融資を希望する場合には、会社にどの程度の運転資金が必要なのかを確認することが重要です。
運転資金とは、売上代金の回収までに必要となる仕入代金や経費などを支払うための資金です。
掛売りや在庫を持つ会社では、売上代金を回収する前に仕入代金などを支払う必要があるため、一定の運転資金が必要になります。
所要運転資金の計算式
所要運転資金を確認する代表的な計算式は次のとおりです。
所要運転資金の基本計算式
売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務
売上債権は売掛金など、棚卸資産は商品・製品など、仕入債務は買掛金などを指します。
例えば、年商3,000万円の会社の決算書に次の残高があるとします。
- 売掛金:400万円
- 棚卸資産:250万円
- 買掛金:200万円
この場合、所要運転資金は次のようになります。
400万円 + 250万円 - 200万円 = 450万円
この会社では、売掛金や在庫などに差し引き450万円の資金が必要となっていることがわかります。
ただし、所要運転資金450万円という計算結果が、そのまま銀行から450万円の融資を受けられることを意味するわけではありません。
すでに運転資金を借り入れている場合や、手元資金が十分にある場合などには、新たな融資の必要額が異なります。
銀行は、資金繰りの状況や既存借入金なども確認して融資金額を判断します。
年商3,000万円でも1,000万円以上の融資を受けられる場合はあるか
年商3,000万円の会社でも、1,000万円以上の融資が検討される場合はあります。
例えば、事業拡大のために機械設備を導入するケースです。
仮に、次のような設備投資計画があるとします。
- 年商:3,000万円
- 設備投資金額:1,500万円
- 自己資金:300万円
- 銀行融資希望額:1,200万円
この場合、融資希望額1,200万円は年商の40%に相当します。
年商の3か月分である750万円を超えていますが、それだけで融資の対象外になるわけではありません。
銀行は、設備投資の必要性や投資効果、会社の財務内容、返済能力などを確認します。
設備導入によって売上や利益がどの程度増加するのか、借入金を返済できる見通しがあるのかを説明することが重要です。
反対に、年商3,000万円の会社が300万円の融資を希望しても、返済能力や資金使途に問題があれば融資が難しくなる場合があります。
融資可能額は年商に対する割合だけではなく、資金の必要性と返済可能性によって判断されます。
年商3,000万円の会社が銀行融資を受ける際の審査ポイント
銀行は融資審査で、主に次のような点を確認します。
1.売上高と利益の推移
銀行は、年商3,000万円という現在の売上規模だけでなく、過去数年間の売上や利益の推移を確認します。
売上が増加しているのか、減少しているのかによって、今後の業績の見通しも異なります。
売上が増加していても利益が出ていない場合には、その原因を確認します。
2.決算書の財務内容
銀行は、決算書から会社の財務内容を確認します。
例えば、自己資本の状況、借入金残高、現預金、売掛金、棚卸資産などです。
債務超過や赤字がある場合には、その原因や改善見通しが重要になります。
3.既存借入金の返済状況
既存借入金がある場合、銀行は借入残高だけでなく、毎月の返済額や返済状況を確認します。
新たな融資を受けることで、返済負担が過大にならないかを判断するためです。
4.資金使途と必要金額の妥当性
銀行は、融資希望額が資金使途に対して適切かを確認します。
運転資金であれば売掛金や在庫、支払条件などを確認し、設備資金であれば見積書や設備投資計画などを確認します。
5.今後の資金繰り
銀行は、融資実行後に資金繰りが安定するかを確認します。
融資を受けた直後は資金が増えますが、その後は借入金の返済が始まります。
そのため、返済予定を含めた資金繰り表を作成し、返済に無理がないことを示すことが重要です。
年商3,000万円の会社が融資を受けやすくするための5つの対策
銀行融資の審査では、年商をすぐに増やすことよりも、会社の現状を正確に説明し、返済可能性を示すことが重要です。
1.必要な融資金額を明確にする
まずは、何のためにいくら必要なのかを整理します。
運転資金であれば、売掛金の回収時期や仕入代金の支払時期などを確認します。
設備資金であれば、設備の見積書や投資計画を準備します。
2.資金繰り表を作成する
資金繰り表を作成することで、今後の入金と出金の予定を把握できます。
また、融資を受けた後の返済額を反映することで、返済可能性を確認できます。
銀行にとっても、融資の必要性や返済可能性を判断する資料になります。
3.試算表を準備する
銀行は決算書だけでなく、直近の業績を確認するために試算表の提出を求めることがあります。
特に決算から時間が経過している場合には、試算表が重要です。
売上や利益の推移を説明できるようにしておきましょう。
4.既存借入金を一覧表にまとめる
銀行ごとの借入残高、毎月の返済額、最終返済日などを一覧表にまとめます。
これにより、現在の借入負担を把握し、新たな融資を受けた場合の返済負担を計算できます。
5.業績改善や設備投資の効果を説明する
赤字や利益の減少がある場合には、その原因と改善策を説明することが重要です。
設備資金を申し込む場合には、設備導入によってどのような効果が見込めるのかを具体的に説明します。
銀行は、融資した資金が事業にどのように役立ち、返済につながるのかを確認します。
年商3,000万円の会社が融資を申し込む前に確認したいこと
融資を申し込む前に、次の項目を確認しておくことをおすすめします。
- 融資を受ける目的は明確か
- 必要な融資金額を計算しているか
- 直近の決算書と試算表を準備しているか
- 既存借入金の残高と返済額を把握しているか
- 融資後の返済予定を資金繰り表に反映しているか
- 売上や利益の今後の見通しを説明できるか
- 銀行から質問された場合に、資金使途や返済原資を説明できるか
これらを準備することで、銀行に融資の必要性と返済可能性を説明しやすくなります。
年商3,000万円の銀行融資に関するよくある質問
年商3,000万円なら銀行から750万円借りられますか?
750万円は年商3,000万円の3か月分に相当しますが、必ず借りられるわけではありません。
銀行は、会社の利益や資金繰り、既存借入金、資金使途などを審査して融資の可否と金額を判断します。
年商3,000万円の会社の借入限度額は600万円~900万円ですか?
600万円~900万円は年商の2~3割に相当する金額ですが、銀行の一律の融資限度額ではありません。
会社の業種や財務内容、資金使途などによって、借入可能額は異なります。
年商3,000万円でも1,000万円以上借りられますか?
1,000万円以上の融資が検討される場合はあります。
例えば、設備投資の必要性が明確で、返済能力が確認できる場合などです。
ただし、融資が認められるかどうかは銀行の審査によります。
赤字でも年商3,000万円あれば融資を受けられますか?
赤字決算でも融資を検討できる場合があります。
ただし、銀行は赤字の原因、今後の業績改善、返済原資などを慎重に確認します。
年商が3,000万円あるという理由だけで融資が認められるわけではありません。
借入金がすでに1,000万円ある場合、追加融資は難しいですか?
既存借入金が1,000万円あることだけで、追加融資が不可能になるわけではありません。
銀行は、既存借入金の返済負担や利益、キャッシュフロー、新たな資金需要などを確認します。
年商3,000万円の個人事業主でも同じ考え方ですか?
個人事業主でも、売上高だけで融資限度額が決まるわけではありません。
事業所得や資金繰り、既存借入金、資金使途などが重要になります。
ただし、個人事業主の場合には、事業と生活に関する資金の状況なども確認される場合があります。
年商3,000万円の会社はいくらまで融資を受けられる?まとめ
年商3,000万円の会社の銀行融資について、重要なポイントをまとめます。
- 年商3,000万円という情報だけでは、銀行融資の限度額は決まらない
- 年商の3か月分は750万円だが、銀行の一律の融資限度額ではない
- 年商の2~3割にあたる600万円~900万円も、必ず借りられる金額や借入の上限ではない
- 銀行は、資金使途、返済能力、既存借入金の返済負担などを重視する
- 返済能力を考える際には、利益だけでなく減価償却費や資金繰りも確認する
- 運転資金では、売掛金や在庫、買掛金などから必要額を確認する
- 設備投資などでは、年商の3か月分を超える融資が検討される場合もある
- 融資を申し込む際には、資金繰り表や試算表などを準備することが重要である
銀行員として特にお伝えしたいのは、「年商3,000万円だからいくらまで借りられるか」だけを考えるのではなく、「いくら必要で、その借入金をどのように返済するのか」を明確にすることが重要だということです。
銀行は、会社の規模だけで融資金額を決定するわけではありません。
必要な資金の内容と返済可能性を具体的に説明することが、融資を検討してもらううえで大切です。
また、融資を受けた後も借入金残高や返済予定を定期的に確認し、資金繰りを管理していくことが、安定した銀行取引につながります。
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銀行融資・資金繰りのメール相談
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