建設業の運転資金の特徴について説明します。
また建設業が銀行に運転資金の融資を相談する際のポイントについてもわかりやすく説明をします。
目次
運転資金とは
最初に運転資金について簡単に整理をしておきます。
飲食業などの現金商売の形態を除いて、多くの事業では売上は掛売りの形態となっています。
掛売りとはツケで販売をすることで、売上代金は売上が発生した時には手元に入ってこなく、後日、販売先との契約に基づいて売上代金を回収することになります。
よく「月末締めの翌月末回収」ということが言われますが、これは今月の売上を月末に締めてその売上代金は翌月末に販売先からの振込などで売上代金を回収するということです。
一方で仕入代金の支払いや給料などの経費の支払いは日々発生しています。
本来は売上代金にて仕入代金の支払いや給料などの経費の支払いに充当できれば資金繰りにおいては一番良いのですが、掛売りの形態ではさきほどの説明のように売上代金はすぐには手元に入ってきません。
そのため売上代金が手元に入ってくるまでの間に発生する仕入代金の支払いや給料などの経費の支払いは別途資金を準備する必要が出てきます。
これが運転資金です。
つまり運転資金とは売上代金回収までの資金繰りのつなぎなのです。
運転資金とは
建設業の運転資金
では建設業においての運転資金とはどのようなものでしょうか。
建設業においてはさきほどの売上代金に相当するものは発注者から受け取る建設請負代金です。
一方で建築材料の仕入や外注先への支払い、給料の支払いなどの経費の支払いはもちろん他の事業と同様に発生します。
建設請負代金の回収方法
売上代金に相当する建設請負代金の回収方法ですが、建設工事着前に発注者から全額の支払いを受けることはほとんどありません。
建設請負代金で一般的な回収方法は、
建設請負代金の一般的な回収方法
・工事完成時に全額回収
したがって建設業においては売上代金である建設請負代金が手元に入ってくる前に建築材料の仕入資金の支払いや外注費の支払い、給料などの経費の支払いが先行する状態であることは他の事業とまったく同じです。
そのため建設業においても運転資金が必要となります。
建設業の運転資金融資の相談ポイント
それでは建設業における銀行への運転資金の相談ポイントを説明します。
建設業向け運転資金融資の基本
銀行が行う建設業向けの運転資金融資は請負工事毎に対応するというのが基本となっています。
複数の工事分をまとめて運転資金の融資を行うというのではなく、1つ1つの建設請負工事毎に運転資金の融資を行うというのが銀行の基本姿勢です。
建設業の運転資金融資の返済方法
建設業向けの運転資金融資の返済原資は工事請負代金となります。
そのため建設業向けの運転資金融資においては返済原資である工事請負代金の回収に合わせて返済をすることが原則となっています。
例えば建設請負代金が中間期と工事完成時の2回に分けて回収されるのであれば、運転資金融資の返済もその中間期と工事完成時の2回に分けての分割返済になるということです。
その他毎月の分割返済となることもあります。
建設業の運転資金融資の相談ポイント
銀行に運転資金の融資を相談する際には、建設工事毎に対応するという銀行の基本姿勢を踏まえて請け負うこととなる建設工事の内容を説明することが必要です。
建設工事の内容の説明内容としては、
建設工事の内容の説明内容
・工事代金の総額
・工期
・工事代金の回収時期とその金額
したがってこれらの内容が記載された請負契約書を準備すると良いでしょう。
また工事原価の明細がわかるものが必要となります。
銀行が行う建設業向けの運転資金融資は工事代金の範囲内ではなく工事原価の範囲内です。
おそらく工事を受注する際にどれくらいのコストがかかるのか、差し引きどれくらいの利益が獲得できるのかを計算すると思いますが、このコストの部分がわかるものを準備してください。
材料費、人件費、外注費の大きく3つの項目に分けて、それぞれどれくらいのコストが必要となるのか、それを計算根拠(例えば単価×数量)とともに説明ができるようにしてください。
したがってまずは工事請負契約書及び工事原価がわかるものを準備して銀行に運転資金の相談を行うことがポイントとなります。
建設業の運転資金のまとめ
以上、建設業の運転資金についてまとめますと次のようになります。
まとめ
・建設業においては売上代金となる工事請負代金回収までのつなぎとして運転資金が必要となる
・建設業向けの銀行の運転資金融資は工事毎に対応するというのが基本姿勢
・建設業において運転資金の融資を相談する際には工事請負契約書及び工事原価表を準備して相談することがポイント