一定の事態になると銀行から融資の一括返済を求められることがあります。
事業資金の融資を銀行から受けている場合、その事業をやめた場合に融資の一括返済を求められるのでしょうか。
質問
父が金融機関から事業資金融資を受けているのですが、父が亡くなり現在は事業をしておらず母が返済をしております。
父が亡くなってからも一回も滞ることなく返済しているのですが、金融機関の担当者から、「事業をするための融資であり事業をしていないのならば一括で返してほしい。出来ないのであれば家を競売にかける」と言われました。
一括で返せるお金が無く今後もローンで返済をしていきたいのですが、本当に担当者の言うように一括返済を求められてもやむを得ないのでしょうか?
期限の利益の喪失
期限の利益とは
融資を受けている側、つまり債務者には期限の利益という権利があります。
期限の利益とは何かといいますと、期限までは融資を借りていられるという権利です。
したがって条件通りに返済をしている状態においては原則として銀行から期限前に一括返済を求められることはありませんし、銀行にそのような権利はありません。
期限までは借りていられるというのが期限の利益です。
期限の利益の喪失
しかしながら債務者はどのような場合でも期限の利益を持てるわけではありません。
今回の例のように事業をやめたということは銀行からすると返済が受けられない事態です。
返済が受けられないと考えられる事態にも関わらず、融資の期限がまだ先ということで銀行が返済を求めることができないというのは銀行にとって酷です。
このように事業を停止して返済が困難だと客観的に認められる場合には銀行は債務者に与えている期限の利益を喪失させることができます。
期限の利益を喪失されてしまえば、融資は直ちに全額の一括返済を求められることとなります。
事業停止の衝撃
事業資金融資というのは事業をするための資金、例えば運転資金とか設備資金に使用するための融資です。
そしてその融資の返済は事業活動によって得られた収入から返済することになります。
この点においてご質問者さまの場合、融資を受けた時点においてはその資金はきちんと事業活動に必要な部分に使用されたと思います。
したがって融資の入り口の部分は問題ないわけです。
取引金融機関の担当者が「問題視」しているのは、現在は事業活動を行っていないという点です。
そして返済は事業活動以外の資金から行っているという点です。
しかし融資後に事業が何らかの理由で停止してしまうことはある面やむを得ないことです。
ご質問者さまを含めて、誰もが「わざと」事業を停止することはまずありません。
金融機関が事業資金融資を行う際、基本的には融資先がきちんと事業を継続することを前提としていますが、倒産などの事態に遭遇し事業が破綻してしまうことは避けられない面があります。
このことは金融機関が取るリスクの1つだと言えます。
一括返済を求められてもやむを得ない
事業を停止した状態になれば銀行から期限の利益を喪失されて融資の一括返済を求められてもやむを得ない事態です。
残念ですがこれが現実です。
しかし一括返済を求められてもそれが不可能な場合も当然あります。
このような場合はあくまでも銀行との話し合いです。
銀行は最終的に融資を全額回収することを目的としています。
一括返済を求めらてもそれが不可能であれば、銀行もやみくもに一括返済を求めても仕方がありません。
担保になっている家を競売にかけて回収することも確かに銀行の手段の1つです。
しかしその前に話し合いが決着すれば競売といった強制回収を銀行はしません。
率直に銀行と話し合いをしてください。
銀行も聞く耳はきちんと持っていますから。