資金繰り

借入金が多すぎる会社は何から改善すべき?銀行員が教える7つの対策

「会社の借入金が増えすぎてしまった」

「毎月の返済が多く、銀行預金がなかなか増えない」

「これ以上借入金を増やしたくないが、何から改善すればよいかわからない」

このような悩みを抱える中小企業経営者は少なくありません。

借入金は、会社が事業を継続し、成長するための重要な資金調達手段です。しかし、借入金が増えすぎると、元金返済や支払利息の負担によって資金繰りが苦しくなることがあります。

一方で、借入金が多いからといって、直ちに危険な会社とは限りません。

大切なのは、借入金の残高だけを見るのではなく、会社が生み出す利益やキャッシュフロー、毎月の返済額、今後の資金繰りを確認することです。

この記事では、長年にわたり法人融資・融資審査に携わってきた銀行員の立場から、借入金が多すぎる会社の判断方法、改善の優先順位、具体的な7つの対策、銀行への相談方法を解説します。

この記事でわかること

  • 借入金が多すぎる会社の特徴
  • 借入金月商倍率と返済原資の計算方法
  • 借入金が増え続ける主な原因
  • 借入金を減らすための7つの改善策
  • 銀行が評価する財務改善計画の作り方
  • 社長が確認すべき8項目のチェックリスト

借入金が多すぎる会社は何から改善すべきか

結論から言えば、最初に取り組むべきことは、借入金を急いで返済することではありません。

借入金の全体像を把握し、資金繰りを維持しながら、借入金が増えた原因を明らかにすることです。

具体的には、次の順番で進めます。

  1. すべての銀行借入金を一覧にする
  2. 今後3か月から6か月の資金繰りを確認する
  3. 利益と借入金返済額を比較する
  4. 借入金が増加した原因を調べる
  5. 原因に応じた改善策を実行する
  6. 銀行に今後の返済・資金調達方針を相談する

借入金を減らそうとして預金を使いすぎると、仕入代金や人件費の支払いができなくなるおそれがあります。

借入金の削減は重要ですが、事業を継続するために必要な資金を確保することが優先です。

借入金が多すぎるかどうかを判断する3つの方法

銀行は借入金の多さを、残高だけで判断しているわけではありません。

まずは、経営者自身が確認できる3つの指標を見ていきましょう。

1.借入金月商倍率を確認する

借入金月商倍率とは、借入金が平均月商の何か月分に相当するかを示す指標です。

借入金月商倍率=借入金残高÷平均月商

平均月商=年間売上高÷12か月

例えば、年商1億2,000万円、借入金残高6,000万円の会社を考えます。

平均月商は1,000万円ですから、借入金月商倍率は次のようになります。

6,000万円÷1,000万円=6か月

この会社の借入金は、平均月商の6か月分です。

ただし、月商倍率が6か月だから危険、3か月なら安全という一律の基準はありません。

設備投資の多い製造業や運送業と、設備投資の少ないサービス業では、必要な借入金の水準が異なります。

月商倍率は借入規模を把握するための指標であり、返済能力そのものを示すものではない点に注意してください。

2.年間返済額と返済原資を比較する

借入金が多い会社で、特に重要なのが年間の元金返済額です。

銀行融資の元金返済は、原則として損益計算書の費用にはなりません。しかし、返済すると現金は減少します。

返済原資の簡便な目安として、次の計算が用いられることがあります。

返済原資の簡便な目安=税引後利益+減価償却費

例えば、次の会社を考えます。

項目 年間金額
税引後利益 500万円
減価償却費 300万円
返済原資の目安 800万円
借入金元金返済額 1,200万円
返済原資と返済額の差 -400万円

この会社では、簡便な返済原資の目安に対して、年間元金返済額が400万円多くなっています。

ただし、実際の資金収支は売掛金や在庫の増減、設備投資などにも左右されるため、この400万円がそのまま資金不足額になるわけではありません。

重要なのは、会社が生み出す資金に対して、借入金の返済負担が過大になっていないかを確認することです。

3.債務償還年数を確認する

債務償還年数とは、借入金を事業が生み出す資金で返済すると仮定した場合、何年程度かかるかを示す指標です。

簡便な計算方法の一例は次のとおりです。

債務償還年数=有利子負債÷年間返済原資

例えば、有利子負債6,000万円、年間返済原資800万円であれば、7.5年です。

実際の銀行審査では、現預金を控除した実質的な有利子負債や、調整後のキャッシュフローを用いる場合もあります。

また、返済原資がゼロまたはマイナスの場合には、この計算で通常の意味での償還年数を求めることはできません。

債務償還年数も、業種や設備投資の内容によって評価が異なります。年数だけで借入金が適正かどうかを決めないことが大切です。

借入金が増え続ける会社の5つの原因

借入金を減らすには、なぜ借入金が増えたのかを把握する必要があります。

原因1.本業の利益が不足している

本業で十分な利益を確保できなければ、人件費や家賃などの支払いを賄うために借入金が必要になる場合があります。

赤字を補う借入が続けば、借入残高が増加し、将来の返済負担も重くなります。

原因2.売掛金や在庫が増加している

売上が増えると、売掛金や在庫が増加し、運転資金が必要になる場合があります。

このような借入は、事業拡大に伴う資金需要として合理性がある場合もあります。

一方、売掛金の回収遅延や過剰在庫によって資金が固定されているのであれば、改善の余地があります。

原因3.設備投資が過大になっている

工場、機械、車両、店舗などへの設備投資は、会社の成長に必要な場合があります。

しかし、投資によって得られる収益に対して借入金が過大になると、元金返済や利息負担が資金繰りを圧迫します。

原因4.借入金の返済期間が短い

借入残高が同じでも、返済期間によって毎月の返済額は変わります。

例えば、3,000万円を元金均等返済で借り入れた場合、据置期間がなく、利息を除いて計算すると次のようになります。

返済期間 毎月の元金返済額
3年 約83.3万円
5年 50万円
7年 約35.7万円

返済期間が短いと、借入金の減少は早くなりますが、毎月の資金繰り負担は重くなります。

返済期間の長期化は月々の負担軽減につながる場合がありますが、総支払利息が増える可能性もあります。

原因5.借入金の全体管理ができていない

複数の銀行から借り入れている会社では、個々の借入金だけを見て、会社全体の返済負担を把握できていない場合があります。

銀行別の借入残高、返済額、金利、返済期限を一覧にすることが重要です。

借入金が多すぎる会社が実行すべき7つの改善策

ここからは、借入金を減らし、財務内容を改善するための具体的な対策を説明します。

改善策1.すべての借入金を一覧表にする

最初に、銀行別の借入金一覧表を作成します。

最低限、次の項目を整理してください。

  • 借入先の銀行名
  • 借入残高
  • 資金使途
  • 毎月の元金返済額
  • 金利
  • 最終返済日
  • 信用保証協会の保証の有無
  • 担保・保証の状況

これにより、どの借入金の返済負担が大きいのか、いつ返済が終わるのかを確認できます。

改善策2.資金繰り表を作成して預金残高を管理する

借入金の削減を考える際には、資金繰り表が不可欠です。

少なくとも3か月から6か月先までの入金予定、支払予定、借入金返済予定を整理してください。

資金不足が近い場合には、週別・日別の資金繰り表も必要になります。

借入金を返済して預金残高を減らしすぎることがないよう、事業継続に必要な資金を確認することが大切です。

改善策3.本業の利益を改善する

借入金を継続的に減らすためには、会社が事業から資金を生み出す力を高める必要があります。

売上の拡大だけでなく、粗利益率の改善、不採算取引の見直し、固定費の適正化などに取り組みます。

例えば、年商1億2,000万円の会社で粗利益率が1ポイント改善すると、売上高などの条件が同じであれば、年間の粗利益は120万円増加します。

ただし、粗利益の増加額がそのまま現金の増加額になるわけではありません。売掛金の回収や支払いの状況も確認する必要があります。

改善策4.売掛金の回収と在庫管理を改善する

売掛金の回収期間が長い会社では、請求や入金管理を見直します。

在庫の多い会社では、滞留在庫や過剰仕入を確認します。

売掛金や在庫を適正化できれば、運転資金の負担が軽減し、借入金の増加を抑えられる場合があります。

改善策5.新たな設備投資の優先順位を見直す

設備投資を行う際には、必要性だけでなく、投資によって得られる利益やキャッシュフローを確認します。

資金繰りに余裕がない会社では、投資時期を調整したり、投資規模を見直したりすることも選択肢です。

ただし、事業継続に不可欠な設備更新まで一律に延期すると、かえって収益力が低下する場合があります。

改善策6.借入金の返済条件や借換えを銀行に相談する

返済負担が重い場合には、銀行に返済期間の見直しや借換えなどを相談することが考えられます。

複数の借入金をまとめることで、毎月の返済額を軽減できる場合もあります。

ただし、借換えによって必ず返済負担が軽くなるわけではなく、銀行の審査や既存契約の条件によります。

また、返済条件の変更には、今後の融資審査や信用保証協会の利用に影響する場合があるため、内容を十分に確認する必要があります。

改善策7.毎月の財務管理を仕組み化する

借入金の改善は、一度計画を作れば終わりではありません。

毎月、売上高、利益、売掛金、在庫、預金残高、借入金残高、元金返済額を確認します。

そのうえで、計画と実績の差を把握し、必要に応じて改善策を見直します。

借入金を減らすためには、単発の返済対策だけでなく、利益・運転資金・借入金を継続的に管理することが重要です。

銀行融資・資金繰りのメール相談

「借入金が多すぎる」「毎月の返済負担が重い」「銀行に借換えを相談したい」といったお悩みはありませんか。

借入金の改善には、会社の収益力、資金繰り、返済状況を整理することが重要です。

長年の法人融資・融資審査の実務経験を踏まえ、銀行が確認するポイントや相談時の考え方について、メールでご相談をお受けします。

※ご相談はメールでの対応となります。融資の承認・実行や返済条件の変更を保証するものではありません。

借入金が多い会社は銀行にどう説明すればよいか

銀行に相談する際には、単に「借入金が多いので何とかしてほしい」と伝えるだけでは十分ではありません。

銀行が確認したいのは、借入金が増えた理由、現在の返済能力、今後の改善見通しです。

借入金が増えた理由を説明する

借入金が増えた理由を、運転資金、設備資金、赤字補填などに分けて整理します。

例えば、売上増加に伴う運転資金の増加であれば、売掛金や在庫の増加額を示すことで、必要資金の背景を説明しやすくなります。

改善計画を数字で示す

銀行への説明では、改善策を具体的な数字に落とし込むことが重要です。

改善項目 具体的な計画例
粗利益 粗利益率を1ポイント改善する
売掛金 回収遅延を減らし、残高を適正化する
在庫 滞留在庫を減らす
設備投資 投資の優先順位を見直す
借入金 資金繰りを維持できる返済計画を作る

このような改善計画を作成し、毎月の実績を確認することで、銀行にも改善への取り組みを説明しやすくなります。

返済負担が重い場合は早めに相談する

今後の資金繰り表で返済資金の不足が予想される場合には、支払いができなくなる前に銀行へ相談することが重要です。

銀行との相談では、資金繰り表、借入金一覧表、直近の試算表、改善計画などを準備しておくとよいでしょう。

借入金が多すぎる会社の確認チェックリスト

ここまでの内容を踏まえ、自社の借入金管理状況を確認してみましょう。

確認できている項目にチェックを入れると、確認済みの項目数と進捗バーが自動で更新されます。

借入金の改善に向けた8項目の確認リスト

自社で把握・管理できている項目にチェックを入れてください。


0 / 8項目を確認

確認できなかった項目は、今後整理すべき課題の候補です。

※このチェックリストは借入金の管理状況を整理するためのものです。チェック数によって借入金の安全性や融資の可否を判定するものではありません。

チェックできなかった項目から改善する

例えば、借入金の全体像を把握していない場合には、まず銀行別の借入金一覧表を作成してください。

返済原資を把握していない場合には、直近の決算書や試算表を確認し、返済負担を計算します。

資金繰り表を作成していない場合には、今後の入出金予定を整理することから始めましょう。

すべてにチェックが入っても、借入金が適正であることを意味するわけではありません。実際の数字を確認し、継続的に管理することが重要です。

借入金が多い会社のよくある質問

Q1.借入金は年商の何割までなら安全ですか?

すべての会社に共通する安全な割合はありません。業種、利益率、返済期間、キャッシュフローなどによって適正な借入水準は異なります。

Q2.借入金が多い会社は追加融資を受けられませんか?

借入金が多いという理由だけで、追加融資が不可能になるわけではありません。銀行は資金使途、返済能力、財務内容、今後の資金繰りなどを総合して判断します。

Q3.借入金を減らすために預金を使って返済した方がよいですか?

必ずしもそうではありません。預金を減らしすぎると、仕入代金や人件費などの支払いが難しくなる可能性があります。資金繰りを確認したうえで判断することが重要です。

Q4.借入金を一本化すると返済負担は減りますか?

借換え後の返済期間などによっては、毎月の返済額が減る場合があります。ただし、銀行の審査が必要であり、総支払利息が増える可能性もあります。

Q5.借入金が多くても黒字なら問題ありませんか?

黒字であっても、借入金の元金返済額が大きければ資金繰りが苦しくなる場合があります。利益だけでなく、返済原資と資金繰りを確認する必要があります。

Q6.借入金が多すぎる場合、最初に銀行へ相談すべきですか?

まず借入金一覧表と資金繰り表を整理することが望ましいですが、返済資金の不足が迫っている場合には、資料が完成するのを待たず、早めに銀行へ相談してください。

まとめ|借入金を減らす前に原因と資金繰りを確認する

借入金が多すぎると感じた場合、最初に行うべきことは、借入金の残高と返済負担を正確に把握することです。

借入金の改善には、次の7つの対策が重要です。

借入金を改善する7つの対策

  1. すべての借入金を一覧表にする
  2. 資金繰り表を作成する
  3. 本業の利益を改善する
  4. 売掛金の回収と在庫管理を改善する
  5. 設備投資の優先順位を見直す
  6. 返済条件や借換えを銀行に相談する
  7. 毎月の財務管理を仕組み化する

借入金が多いこと自体よりも、返済能力に見合わない借入負担が続くことが問題です。

借入金の改善は、単に借入残高を減らすことではなく、会社が安定して利益と現金を生み出し、無理なく返済できる財務体質をつくることです。

借入金の状況を定期的に確認し、資金繰りを維持しながら、計画的に財務改善を進めてください。

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長年の法人融資・融資審査の経験を踏まえ、銀行がどのような点を確認するのか、実務的な視点からご相談をお受けします。

※ご相談はメールでの対応となります。融資の承認・実行や返済条件の変更を保証するものではありません。

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