資金繰り

売掛金と買掛金が資金繰りに与える影響とは?回収・支払いのタイミングと改善方法を銀行員が解説

「売上は順調なのに、なぜ資金繰りが苦しいのだろうか」

「売掛金の回収よりも買掛金の支払いが先になると、資金繰りはどうなるのだろうか」

「売掛金と買掛金をどのように管理すれば、資金繰りを安定させられるのだろうか」

このような疑問を持つ中小企業の経営者は少なくありません。

会社にとって売上を増やし、利益を確保することは重要です。

しかし、利益が出ていても、支払いに必要な現金が不足すれば事業を継続できなくなる可能性があります。

資金繰りを安定させるためには、売上や利益だけでなく、現金がいつ入ってきて、いつ出ていくのかを管理する必要があります。

その資金繰りに大きな影響を与えるものが、売掛金と買掛金です。

売掛金はこれから回収する売上代金、買掛金はこれから支払う仕入代金です。

この2つの回収・支払いのタイミングによって、会社の資金繰りは大きく変わります。

私は長年、銀行で法人融資や融資審査に携わってきましたが、資金繰りを考える際には、売掛金と買掛金の金額だけでなく、回収日と支払日を把握することが重要だと考えています。

この記事では、売掛金と買掛金の違い、資金繰りに与える影響、入金と支払いの時間差による資金不足、資金繰りを安定させる管理方法、銀行融資との関係を具体例で説明します。

売掛金と買掛金の違いとは

まず、売掛金と買掛金の基本的な違いを確認しましょう。

どちらも企業間取引で一般的に発生するものですが、会社から見たお金の流れは反対です。

売掛金とは後日回収する売上代金

売掛金とは、商品やサービスを販売して売上が発生したものの、まだ回収していない代金です。

企業間取引では、商品を販売した際にその場で代金を受け取るのではなく、後日まとめて回収する「掛売り」が広く行われています。

例えば、「月末締め・翌月末回収」という取引条件があります。

この場合、5月1日から5月31日までに発生した売上代金を、6月末に回収します。

5月に売上が発生していても、6月末までは現金が手元に入りません。

この未回収の売上代金が売掛金です。

買掛金とは後日支払う仕入代金

買掛金とは、商品や原材料などを仕入れたものの、まだ支払っていない代金です。

企業間取引では、商品や原材料を仕入れた際にすぐ代金を支払うのではなく、後日まとめて支払う「掛仕入れ」も広く行われています。

例えば、「月末締め・翌月末払い」という取引条件です。

この場合、5月中に仕入れた商品の代金を、6月末に支払います。

5月に仕入れを行っても、6月末までは代金を支払う必要がありません。

この未払いの仕入代金が買掛金です。

売掛金と買掛金の違いを比較

比較項目 売掛金 買掛金
意味 未回収の売上代金 未払いの仕入代金
発生する取引 掛売り 掛仕入れ
将来のお金の動き 入金 出金
貸借対照表上の分類 流動資産 流動負債
所要運転資金への影響 増加要因 減少要因

売掛金は将来入金されるもの、買掛金は将来支払うものです。

この違いを理解することが、資金繰り管理の基本となります。

売掛金は資金繰りにどのような影響を与えるのか

売掛金は、売上が発生した結果として生じるものです。

そのため、売掛金が発生すること自体は悪いことではありません。

しかし、資金繰りの面では注意が必要です。

売上が発生しても現金が入るとは限らない

例えば、5月に1,000万円の売上が発生したとします。

売上代金の回収条件が翌月末であれば、1,000万円が入金されるのは6月末です。

一方、会社は5月中にも従業員への給与や家賃などを支払う必要があります。

そのため、売上が発生していても、支払いに必要な現金が不足することがあります。

売掛金は将来回収できる予定のお金ですが、回収するまでは現在の支払いに使えません。

売掛金の回収期間が長いと資金繰りの負担が増える

売掛金の回収期間が長くなると、売上代金が手元に入るまでの時間が長くなります。

例えば、売上代金の回収条件が「翌月末回収」から「翌々月末回収」に変更された場合です。

従来よりも1か月遅く売上代金が入金されるため、その間の支払いに必要な資金を準備しなければなりません。

売掛金の回収期間が長くなるほど、資金繰りの負担が大きくなる場合があります。

売掛金の回収遅延は資金繰りを悪化させる

売掛金は、販売先と約束した日に回収することが基本です。

しかし、販売先から予定どおり入金されない場合があります。

例えば、6月末に1,000万円を回収する予定だったのに、販売先から入金がなかった場合です。

会社は予定していた1,000万円を支払いに利用できなくなります。

その結果、仕入代金や人件費などの支払いに影響が出る可能性があります。

したがって、売掛金の入金管理は資金繰りを安定させるために重要です。

買掛金は資金繰りにどのような影響を与えるのか

買掛金は、仕入代金の支払いを後日にすることで発生します。

そのため、買掛金は通常、資金繰りの負担を軽減する働きをします。

買掛金は仕入代金の支払いを後日にできる仕組み

例えば、5月に800万円の商品を仕入れたとします。

仕入代金の支払条件が翌月末であれば、800万円を支払うのは6月末です。

5月に商品を仕入れても、その時点では800万円の現金を支払う必要がありません。

そのため、会社は手元資金を残しておくことができます。

買掛金は、仕入代金の支払いを一定期間後にできるため、運転資金の負担を軽減する働きがあります。

買掛金の支払期間が短くなると資金繰りが苦しくなる

例えば、仕入代金の支払条件が「翌々月末払い」から「翌月末払い」に変更されたとします。

この場合、従来よりも1か月早く仕入代金を支払う必要があります。

そのため、売上代金の回収前に仕入代金を支払う場面が増え、資金繰りの負担が大きくなる可能性があります。

買掛金が増えても資金繰りが良いとは限らない

買掛金は、通常の取引条件の範囲で増える場合には、所要運転資金の負担を軽減する働きがあります。

しかし、仕入先への支払いが遅れて買掛金が増えている場合には注意が必要です。

例えば、仕入代金を支払う資金が不足し、支払期日を過ぎても買掛金が残っている場合です。

この場合、買掛金残高は増加していますが、資金繰りが改善したとはいえません。

支払遅延が続けば、仕入先との信用関係にも影響する可能性があります。

買掛金は支払条件の範囲内で適切に管理することが重要であり、支払遅延によって資金繰りを維持することは望ましくありません。

売掛金の回収と買掛金の支払いの時間差が資金繰りを左右する

売掛金と買掛金が資金繰りに与える影響を理解するためには、売上代金の回収日と仕入代金の支払日を比較することが重要です。

具体例で説明します。

売掛金の回収より買掛金の支払いが先になる場合

ある会社が、5月に商品を800万円で仕入れ、同じ5月に1,000万円で販売したとします。

取引条件は次のとおりです。

  • 5月の仕入代金800万円は6月末に支払う
  • 5月の売上代金1,000万円は7月末に回収する

この場合、売上代金を回収する前に仕入代金を支払う必要があります。

時期 取引内容 入金 出金
5月 仕入・販売 0円 0円
6月末 仕入代金の支払い 0円 800万円
7月末 売上代金の回収 1,000万円 0円

※この表は、該当する1回の仕入・販売取引に限定した例です。他の売上、仕入、人件費、経費、借入金返済などは含めていません。

6月末には仕入代金800万円を支払う必要がありますが、売上代金1,000万円が入金されるのは7月末です。

したがって、この取引に関しては、6月末から7月末の回収まで800万円の資金を立て替える必要があります。

これが、売掛金と買掛金の回収・支払いの時間差によって運転資金が必要になる仕組みです。

売掛金の回収が買掛金の支払いより先になる場合

では、先ほどと同じ取引で、売上代金の回収が6月末、仕入代金の支払いが7月末だった場合はどうでしょうか。

  • 5月の売上代金1,000万円は6月末に回収する
  • 5月の仕入代金800万円は7月末に支払う

この場合、売上代金の回収が仕入代金の支払いよりも先になります。

6月末に1,000万円が入金され、その後7月末に800万円を支払います。

他の資金の出入りがなければ、回収した売上代金から仕入代金を支払うことができます。

したがって、先ほどの例と比較すると、資金繰りの負担は小さくなります。

売上代金の回収が早く、仕入代金の支払いが遅いほど、一般的には資金繰りの負担が軽くなります。

ただし、支払条件は取引先との合意に基づくものであり、一方的に支払いを遅らせてよいわけではありません。

売掛金と買掛金の回収・支払期間を数字で確認する

売掛金と買掛金の関係を把握するためには、それぞれの回転期間を確認する方法があります。

売掛金回転期間の計算方法

売掛金回転期間は、売掛金を回収するまでに平均してどれくらいの期間がかかるかを示す指標です。

売掛金回転期間(月)=売掛金残高÷月平均売上高

例えば、売掛金残高が2,000万円、月平均売上高が1,000万円であれば、売掛金回転期間は2か月です。

買掛金回転期間の計算方法

買掛金回転期間は、買掛金を支払うまでに平均してどれくらいの期間がかかるかを示す指標です。

買掛金回転期間(月)=買掛金残高÷月平均掛仕入高

例えば、買掛金残高が1,600万円、月平均掛仕入高が800万円であれば、買掛金回転期間は2か月です。

なお、これらは残高を使った簡易的な計算方法です。

実際には、受取手形や支払手形、電子記録債権・債務の有無、季節変動なども考慮する必要があります。

回収期間と支払期間を比較する

売掛金回転期間が2か月、買掛金回転期間が1か月の場合には、売上代金の回収より仕入代金の支払いが先行しやすくなります。

そのため、資金繰りの負担が大きくなる場合があります。

ただし、回転期間だけで必要な運転資金の全額が決まるわけではありません。

在庫の保有期間や人件費・経費などの支払いも考慮する必要があります。

売掛金と買掛金の関係を資金繰り表で確認する

資金繰りを安定させるためには、売掛金と買掛金の残高を把握するだけでなく、実際の入金日と支払日を管理する必要があります。

そのために役立つのが資金繰り表です。

資金繰り表では入金と出金を予定日ごとに管理する

資金繰り表には、売掛金の回収予定、買掛金の支払予定、人件費、経費、借入金返済などを記載します。

例えば、次のような資金繰り表を作成します。

項目 6月 7月 8月
前月末現金残高 500万円 200万円 300万円
売掛金回収 1,000万円 1,200万円 1,300万円
買掛金支払い 800万円 700万円 900万円
人件費・経費 400万円 400万円 400万円
借入金返済 100万円 100万円 100万円
月末現金残高 200万円 200万円 100万円

※この表は、説明のために入出金項目を簡略化したものです。実際の資金繰り表には税金や社会保険料、設備投資などの支払いも必要に応じて含めます。

このように資金繰り表を作成すると、売掛金の回収と買掛金の支払いのタイミングによって、手元資金がどのように変化するかを確認できます。

なお、月末残高がプラスであっても、月の途中で資金が不足する場合があります。

支払日が集中する会社では、月次だけでなく、週次や日次の資金繰り管理も重要です。

銀行融資・資金繰りのメール相談

「売掛金の回収より買掛金の支払いが先になり資金繰りが苦しい」「入金と支払いのタイミングが合わない」「銀行への運転資金融資の相談方法がわからない」といったお悩みについて、メールでのご相談を受け付けています。

※融資の承認や返済条件変更の実現を保証するものではありません。

売掛金と買掛金を管理して資金繰りを改善する5つの方法

売掛金と買掛金の管理を適切に行うことで、資金繰りの安定につなげることができます。

1.売掛金の入金予定日を管理する

売掛金は、販売先と約束した日に回収することが基本です。

販売先ごとに売掛金の残高と入金予定日を管理してください。

予定日に入金がない場合には、原因を確認することが重要です。

回収遅延を放置すると、売掛金が増加し、資金繰りが悪化する可能性があります。

2.入金遅延があれば早めに販売先へ確認する

販売先から予定どおり入金されない場合には、早めに連絡して状況を確認してください。

単なる振込手続きの遅れなのか、請求内容に相違があるのか、販売先の資金繰りが悪化しているのかによって対応は異なります。

入金遅延が続く場合には、回収見込みを慎重に確認する必要があります。

3.請求書の発行漏れを防ぐ

売掛金の回収が遅れる原因の一つに、請求書の発行漏れや送付遅延があります。

取引先との約束に従って、請求書を確実に発行することが重要です。

請求書の発行が遅れると、販売先の支払処理も遅れる場合があります。

売上が発生したら、請求から回収までの管理を徹底してください。

4.買掛金の支払予定日を管理する

買掛金についても、仕入先ごとに支払予定日を把握することが重要です。

支払日が集中する場合には、必要な資金を事前に準備する必要があります。

買掛金の支払遅延は仕入先との信用関係に影響するため、予定どおり支払えるように管理してください。

5.回収条件と支払条件を定期的に見直す

売掛金の回収期間が長く、買掛金の支払期間が短い場合には、資金繰りの負担が大きくなることがあります。

可能であれば、販売先との回収条件や仕入先との支払条件を見直すことも検討してください。

ただし、取引条件の変更には相手先との合意が必要です。

資金繰りを改善するためには、売掛金の回収を早めることと、買掛金の支払いを適切に管理することの両方が重要です。

売掛金と買掛金の時間差に対応する銀行融資

売掛金の回収より買掛金の支払いが先になる場合には、その時間差を埋めるための運転資金が必要になることがあります。

会社の手元資金だけでは対応できない場合には、銀行からの運転資金融資を検討することがあります。

銀行は売掛金と買掛金の内容を確認する

銀行が運転資金融資を審査する際には、売掛金と買掛金の残高だけでなく、回収条件や支払条件も確認します。

例えば、売掛金の回収期間が長く、買掛金の支払期間が短い会社では、運転資金が必要になる理由を説明しやすい場合があります。

ただし、売掛金の回収遅延や買掛金の支払遅延が発生している場合には、銀行がその原因を慎重に確認することがあります。

所要運転資金を計算する

銀行が運転資金の必要額を確認する際には、一般的に次の計算式を参考にします。

所要運転資金=売掛債権+棚卸資産-買掛債務

例えば、次のような会社を考えます。

  • 売掛債権:3,000万円
  • 棚卸資産:1,000万円
  • 買掛債務:1,500万円

この場合の所要運転資金は次のとおりです。

3,000万円+1,000万円-1,500万円=2,500万円

所要運転資金は2,500万円です。

ただし、実際の融資必要額は、手元資金や既存借入金、今後の資金繰りなどによって異なります。

銀行への相談では入金と支払いの予定を説明する

銀行に運転資金融資を相談する際には、次のような内容を整理してください。

  • 売掛金の回収予定日と金額
  • 買掛金の支払予定日と金額
  • その他の人件費や経費の支払予定
  • 現在の手元資金
  • 資金不足が発生する時期と金額
  • 今後の資金繰りと返済見通し

これらを資金繰り表にまとめることで、銀行に資金需要を説明しやすくなります。

銀行への運転資金融資の相談では、売掛金と買掛金の時間差によって、いつ、いくら資金が必要になるのかを具体的に説明することが重要です。

売掛金と買掛金の資金繰りに関するよくある質問

Q.売掛金が増えると資金繰りは悪くなりますか?

売掛金が増えると、売上代金を回収するまでの資金負担が増えることがあります。

ただし、売上増加に伴う正常な売掛金の増加もあるため、売掛金が増えたという理由だけで資金繰りが悪化したとは判断できません。

Q.買掛金が増えると資金繰りは良くなりますか?

通常の取引条件の範囲で買掛金が増える場合には、所要運転資金の負担を軽減する働きがあります。

ただし、支払遅延によって買掛金が増えている場合には、資金繰りが改善したとはいえません。

Q.売掛金の回収より買掛金の支払いが先になる場合はどうすればよいですか?

まず、売掛金の回収予定日と買掛金の支払予定日を整理し、資金繰り表を作成してください。

手元資金で対応できない場合には、早めに銀行へ運転資金融資を相談することが考えられます。

Q.売掛金と買掛金の差額が必要な運転資金ですか?

売掛金と買掛金の差額だけでは、必要な運転資金を十分に把握できない場合があります。

一般的には、売掛債権に在庫を加え、買掛債務を差し引いて所要運転資金を計算します。

さらに、実際の資金繰りでは人件費、経費、税金、借入金返済なども考慮する必要があります。

Q.売掛金と買掛金はどちらを優先して管理すべきですか?

どちらも重要ですが、売掛金は予定どおり回収できなければ資金不足につながるため、入金管理を徹底することが重要です。

一方、買掛金も支払遅延が発生しないように管理する必要があります。

売掛金と買掛金の両方を管理し、入金と支払いのタイミングを把握してください。

まとめ|売掛金と買掛金の回収・支払いの時間差を管理する

売掛金と買掛金は、会社の資金繰りに大きな影響を与えます。

売掛金は、売上が発生していても、まだ回収していない代金です。

一方、買掛金は、商品や原材料などを仕入れたものの、まだ支払っていない代金です。

売掛金と買掛金の資金繰りへの影響を整理すると、次のようになります。

  • 売掛金は回収するまで現金にならないため、資金繰りの負担となる。
  • 買掛金は支払いを後日にできるため、通常は運転資金の負担を軽減する。
  • 売掛金の回収より買掛金の支払いが先になると、運転資金が必要になる。
  • 売掛金の入金予定日と買掛金の支払予定日を管理することが重要。
  • 資金繰り表を作成し、将来の資金不足を早めに把握する。
  • 手元資金で対応できない場合には、早めに銀行へ相談する。

私は長年、銀行で法人融資に携わってきましたが、資金繰りを考える際には、売上や利益だけでなく、入金と支払いのタイミングを確認することが重要だと考えています。

売掛金と買掛金を適切に管理し、必要な運転資金を確保することが、安定した事業継続につながります。

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