資金繰りは事業内容によって特徴が変わってきます。
ここでは卸売業の資金繰りの特徴と注意点について説明をします。
卸売業の特徴
卸売業というのは受注先からの要望に基づいて商品や製品、あるいは原材料などを販売する業務です。
販売先からの受注に即応する体制を保有するには一定の在庫を維持しておかなければなりません。
この一定の在庫を維持しておくということは卸売業の最大の特徴となるでしょう。
そのため在庫は卸売業の資金繰りにおいてはキーポイントとなります。
卸売業の資金繰りの考えるにあたって、ある金属製品の卸売業を例にして説明をしていきます。
ネジ・ボルトの卸売業
ネジやボルトの卸売業を営むT社は汎用品から専門の大型製品までの扱う総合的なネジ・ボルトの卸売業と言えるでしょう。
T社に言えばどのようなものでも入手できると評判が立つほどです。
あらゆる種類のネジ・ボルトに対応出来るというところがT社の最大の強みと言えます。
在庫が資金繰りを圧迫
しかしあらゆる種類に対応するということは常に一定の在庫を保有しておかなければなりません。
この図は資金の循環を示したものですが、卸売業のT社の場合には製品の部分が多いということです。
在庫は当たり前のことですが販売されてはじめて在庫が資金化されます。
販売されるまでの間は資金は在庫の姿のままです。
在庫を用意するには資金が必要なわけですから、在庫が多いとそれだけ多額の資金を投入する必要が出てきます。
そのためT社では充実した在庫を保有しているという強みの反面、その在庫に資金が固定化して資金繰りを圧迫しているという要因もありました。
在庫資金に対する銀行の融資姿勢は厳しい
ところで在庫が主な要因となる運転資金に対しては銀行の融資姿勢は厳しいのが一般的です。
銀行などの外部から見ると在庫は売れるのがどうかははっきりとはわかりません。
さらに在庫の量が多いと「売れ残りではないのか」「不良在庫ではないのか」という懸念を持たざるを得ません。
このような理由から在庫資金に対する銀行の融資姿勢は厳しいものがあります。
実際にT社は豊富な在庫を維持するために多額の資金が在庫に固定化しており、資金繰りを大きく圧迫していました。
そのため取引銀行からの運転資金借入も多額に上っています。
倉庫も必要
さらに在庫を保有するには当然のことながら保管する倉庫が必要です。
T社に自前の倉庫を持っていましたがそれだけでは不十分なために数カ所の在庫を賃借しています。
保管料負担も決して無視できない水準でした。
卸売業の資金繰りが在庫がキーポイント
卸売業にとって在庫は必ず必要です。
しかしT社のように幅広い製品等の取扱いをするとなるとそれだけ大量の在庫保有が必要となり資金繰りを圧迫することとなります。
そのため取り扱う分野を限定して在庫負担を軽減している卸売業もあります。
卸売業の資金繰りは決して在庫だけが要因ではありませんが、資金繰りの中心が在庫になるのは事実です。
卸売業の資金繰りにおいてはいかにこの在庫水準を適正なものにするのがかがポイントとなります。