会社の社長は原則として連帯保証人になることを求められます。
しかしその後に社長を退任した場合でも連帯保証人から解除されることは不可能なのでしょうか。
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連帯保証が解除されない質問
先代社長時に保証協会付融資を受け、私が社長になった時に追加保証を要求され、連帯保証人となりました。
その後、諸事情により解任という形になり、現在では株式未保有であり経営に関与しない、いわゆる第三者の状況にあります。
しかし、保証協会は連帯保証解除を対応してくれません(先代社長の連帯保証は残っています)。
先日金融庁から「経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立」という通達が出されましたが、この原則に則っているのでしょうか。
過去の融資に関しては適用外ということでしょうか。
金融庁の文章を読むほどに、保証協会の考え方次第で如何様にでもなりそうな内容ですが、保証解除について何らかの可能性は無いものでしょうか。
保証解除の申し出に対する経営者保証ガイドライン
今回のように前社長から自身の連帯保証の解除に申し出を受けた場合、経営者保証ガイドラインではつぎのように記載がされています。
対象債権者は、前経営者から保証契約の解除を求められた場合には、前経営者が引き続き実質的な経営権・支配権を有しているか否か、当該保証契約以外の手段による既存債権の保全の状況、法人の資産・収益力による借入返済能力等を勘案しつつ、保証契約の解除について適切に判断することとする。
つまり前経営者が引き続き実質的な経営権・支配権を持っている場合には連帯保証の解除は難しいことになります。
しかし今回のケースは「現在では株式未保有であり経営に関与しない」とありますから経営者保証ガイドラインを条件に合致しているように考えられます。
経営者交代に伴う連帯保証人に関する実務対応
私が勤務している銀行のケースで経営者交代に伴う連帯保証人について取扱いに関しての一般的な実務対応は次のとおりです。
・新経営者の連帯保証を徴求し前経営者の連帯保証を解除する
・新経営者が連帯保証を拒絶する場合には前経営者の連帯保証は解除しない
・新経営者になってからの新規融資には新経営者が連帯保証人になってもらう。その際前経営者の連帯保証は求めない。
今回のケース
連帯保証の解除には信用保証協会の同意が必要
現在、前社長が連帯保証人となっている融資は信用保証協会の保証付融資のようです。
信用保証協会の保証付融資の場合には、連帯保証人の変動には信用保証協会の同意がなければできません。
そして信用保証協会も以前は前社長の連帯保証の解除には相当否定的でしたが、現在では弾力的な対応となっており退任した前社長の連帯保証を解除に同意するケースも少なくありません。
もちろん経営者保証ガイドラインに記載のとおりに前社長が出資を含めてまったく会社とは無関係になっていることが前提条件です。
顧問のような肩書で非常勤であっても何らかの関わり合いがその会社とあれば連帯保証の解除は困難です。
今回のケースで想像できる状況
信用保証協会が前社長の連帯保証の解除に応じない理由としてはつぎのことが考えられます。
・新社長が連帯保証人になっていない(ならない)
・信用保証協会保証付融資を延滞もしくはリスケをしている
この2つの事例のいずれかが該当する場合には、前社長が今はまったく会社とは無関係とは言え、前社長の連帯保証の解除は難しい判断となってしまいます。