必要な運転資金の水準は日々異なりますが、銀行では融資先の前期末時点の所要運転資金の水準を1つの目線としています。
この所要運転資金を上回る運転資金の申し込みがあった場合の銀行の対応について説明をします。
目次
所要運転資金とは
銀行は運転資金の融資申し込みが受けた場合、その融資先の所要運転資金はどれくらいなのかを必ず確認します。
所要運転資金の確認方法
事業者は日々活動をしていますからそれに伴い所要運転資金も変動します。
ただし運転資金の融資検討においては1つの目線が必要です。
銀行では運転資金の融資申し込みを受けた場合、その事業者の前期末時点の所要運転資金を目線としています。
所要運転資金は決算書の貸借対照表から簡単に把握することができます。
所要運転資金は、
【売掛金+受取手形+在庫-支払手形-買掛金】
の算式にて容易に求めることが出来ます。
貸借対照表で示すと次の部分です。
現在の運転資金借入水準は?
所要運転資金を把握したうえで、今度は現在の運転資金借入はどのくらいかを銀行は考えます。
つまり現在の運転資金借入額が所要運転資金の範囲内であれば、【所要運転資金-既存の運転資金借入額】は「まだ出せる運転資金」ということで銀行は融資検討がしやすくなります。
このような状態であれば前向きに運転資金融資を検討します。
もっとも過去の決算あるいは足許の業況が赤字である場合には、やはり銀行は融資に慎重姿勢となります。
このような状況であれば、今後の業況の改善見通しの説明を加える必要があるでしょう。
現在の運転資金借入水準が所要運転資金を超えている場合
次に現在の運転資金借入額がすでに所要運転資金を上回っている場合です。
この状況の示すところはすでに必要な運転資金の調達は済んでいますから、なぜまだ運転資金が必要なのかを銀行は疑問に持ちます。
すでに所要運転資金を上回る運転資金借入を行っているのにまだ必要なケースとして代表的な物は増加運転資金が考えられます。
つまり売上が増加傾向にあるため、過去の決算書で理論上計算される所要運転資金が足許は増加しているということです。
このような状況である場合には、売上が以前に比べてどの程度増加しているのか、また今後もどの程度増加していくのかを月々の売上推移を表などを示して銀行に説明するようにしましょう。
売上が増加傾向にある場合、さらなる運転資金が必要であることは銀行はわかっていますから、むしろ融資を伸ばすチャンスと捉えて積極的に融資提案が受けられる可能性があります。
売上拡大に伴う所要運転資金の増加は銀行は融資を前向きに考える
一方で売上は横ばい、あるいは低下傾向にあるにも関わらず所要運転資金を上回る運転資金が必要な場合です。
この場合は表向きは運転資金融資であっても、実態は運転資金以外の使途に融資が使用される可能性が高いと銀行は考えます。
赤字による資金繰りの悪化の補填であったり、現在の借入金の返済負担が重いため資金繰りを維持する必要がある場合などです。
こういう状況である場合には銀行は融資に慎重な姿勢となりますから、最低限今後の資金繰りの見通しを示す資金繰り予定表を作成して提示しましょう。
今回の運転資金融資にて当面の資金繰りが維持されるということがわかれば、銀行は融資先の事業を継続させるために最低限の資金繰り支援の融資には応じようと考えるものです。
さらにこのような場合には主力行など日頃から取引が厚い銀行に相談しましょう。
取引が薄い下位の銀行に相談しても「主力銀行さんに相談されましたか?」などと謝絶される可能性がありますから。
売上が横ばいあるいは低下の場合の銀行の融資姿勢は渋い
所要運転資金を超えた運転資金融資の申し込みに対する銀行の対応のまとめ
以上、所要運転資金を超えた運転資金融資の申し込みに対する銀行の対応や考え方をまとめますと次のようになります
まとめ
・所要運転資金は貸借対照表から簡単に計算することができる
・現在の運転資金借入額は所要運転資金以下の場合、所要運転資金までの運転資金融資については銀行は前向きに検討する
・一方で現在の運転資金借入額が所要運転資金を超えている場合には、なぜ運転資金が必要なのかを銀行は検証する
・売上拡大に伴い所要運転資金が増加している場合には銀行の融資態度は前向き
・売上横ばいあるいは低下にも関わらず運転資金が必要な場合は赤字補填の懸念があり銀行の融資姿勢は慎重