会社の社長の預金口座に差押があった場合、その社長が経営する会社の融資にどのような影響を与えるかが今回のテーマです。
結論からいうと会社社長の預金口座への差押は会社融資に重大な影響を与えます。
目次
社長預金口座への差押と融資と関する実例
先日融資取引のある卸売業の会社での出来事です。
その会社社長個人の預金口座に裁判所から仮差押の通知が届きました。
その翌日に会社の財務担当者から新規融資の相談がありました。
さて銀行は新規融資に加えて既存の融資に対してどのような対応を取ると思いますか?
銀行取引約定書第5条
銀行取引約定書第5条にはつぎのような規定があります。
銀行取引約定書第5条
1.破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始もしくは特別清算開始の申立があったとき。
2.手形交換所または電子債権記録機関の取引停止処分を受けたとき。
3.前2号の他、甲が債務整理に関して裁判所の関与する手続を申立てたとき、もしくは弁護士等へ債務整理を委任したとき、または自ら営業の廃止を表明したとき等、支払を停止したと認められる事実が発生したとき。
4.甲または甲の保証人の預金その他の乙に対する債権について仮差押、保全差押または差押の命令、通知が発送されたとき。
なお、保証人の預金その他の乙に対する債権の差押等については、乙の承認する担保を差し入れる等の旨を甲が遅滞なく乙に書面にて通知したことにより、乙が従来通り期限の利益を認める場合には、乙は書面にてその旨を甲に通知するものとします。
ただし、期限の利益を喪失したことに基づき既になされた乙の行為については、その効力を妨げないものとします。
甲というのは債務者、今回のケースでは会社です。
乙とは銀行のことです。
そして甲である会社の融資の保証人の預金口座に差押(仮差押を含む)があった場合には、会社は期限の利益を失い直ちに債務を弁済すると規定されています。
期限の利益とは
期限の利益とは融資の期限までは融資を借りていられるという会社の権利のことです。
銀行は融資の期限までは会社に対して融資の返済を求めることはできないというのが期限の利益です。
保証人への預金口座への差押はこの期限の利益を失うということですから、会社は直ちに銀行に融資全額の返済をしなければならなくなります。
中小企業向けの融資では社長が連帯保証人になっている
中小企業向けの融資においては全部が全部ではないものの、大半のケースにおいて代表取締役である社長が連帯保証人になっているはずです。
したがって社長への預金口座への差押はただちに会社は期限の利益を失い融資全額を銀行に返済しなければならなくなります。
社長の預金口座への差押は非常に重大な事態です。
ましては新規融資など銀行が応じる状況ではありません。
社長の預金口座への差押により会社は直ちに融資全額を返済しなければならなくなる
期限の利益の再付与
社長の預金口座への差押により会社は期限の利益を失い直ちに融資全額の返済義務を負うわけですが、ケースによっては社長への預金口座への差押が相手方とのトラブルによるものであり、和解等により解決し会社の事業にも影響を及ぼさないことがあります。
このような状況においては一旦は会社は期限の利益を失うものの、銀行が期限の利益を再付与して融資全額の返済をする必要がないこともあります。
これはケースバイケースです。
社長の預金口座への差押と会社融資との関係のまとめ
以上、社長への預金口座への差押と会社融資との関係についてまとめますと次のようになります。
まとめ
・連帯保証人である社長の預金口座への差押は会社の融資に関わる期限の利益が喪失される
・期限の利益とは会社は直ちに融資全額を返済しなければならなくなる