今日のお昼前、担当先の会社の社長から電話がかかってきました。
「来月から銀行融資の返済をストップしてほしい」
いわゆるリスケの申し出です。
銀行の融資担当者として、取引先からこのような相談を受けることがあります。
会社の資金繰りが厳しくなり、毎月の借入金返済を続けることが難しくなったという相談です。
銀行にリスケを申し出ると、銀行はどのように考えるのでしょうか。
また、リスケを申し出れば、すぐに返済を止めてもらえるのでしょうか。
結論から申し上げますと、銀行はリスケの申し出を受けると、会社の資金繰りと返済能力を確認し、返済条件の変更が必要かどうかを検討します。
リスケは資金繰りを改善するための重要な手段ですが、銀行にとっては融資の回収リスクが高まっている可能性を示す出来事でもあります。
また、リスケを行うと、新規融資を受けることが難しくなる場合があります。
今回は、銀行の法人融資業務に長年携わってきた立場から、リスケの申し出を受けた銀行員の本音、銀行が確認するポイント、複数銀行との調整、新規融資への影響について解説します。
銀行にリスケを申し出るとどうなるのか
銀行にリスケを申し出ると、銀行はまず会社の資金繰り状況や、返済が難しくなった理由を確認します。
そのうえで、毎月の返済額を減らす必要があるのか、どの程度の期間であれば返済条件を変更することが適切なのかを検討します。
ただし、リスケを申し出たからといって、銀行が必ず返済停止に応じるわけではありません。
融資の返済条件を変更するには、原則として銀行との合意が必要です。
リスケとは銀行融資の返済条件を変更すること
リスケとは、リスケジュールの略称で、銀行融資の返済条件を変更することをいいます。
銀行が融資を実行する際には、融資金額、金利、返済期日、返済方法などを定めて契約を行います。
例えば、毎月20万円ずつ元金を返済する契約であれば、会社は原則としてその契約に従って返済する必要があります。
しかし、業績不振や売上減少などによって資金繰りが悪化すると、当初の返済条件どおりに返済することが難しくなる場合があります。
そのような場合に、銀行と相談して返済条件を変更するのがリスケです。
リスケには元金返済の停止や返済額の減額がある
リスケの代表的な方法には、次のようなものがあります。
- 一定期間、借入金の元金返済を停止する
- 毎月の元金返済額を減らす
- 返済期限を延長する
- 返済方法を変更する
例えば、毎月20万円の元金返済を行っている会社が、一定期間、元金返済を停止して利息のみを支払う条件に変更するケースがあります。
また、毎月20万円の元金返済を5万円に減額する方法も考えられます。
どのような条件変更を行うかは、会社の資金繰り状況や銀行との協議によって決まります。
なお、元金返済を停止しても、通常は利息の支払いが続きます。利息の取り扱いも含めて、銀行との合意内容を確認する必要があります。
リスケの申し出を受けた銀行員の本音
ここからは、銀行の融資担当者としての実務的な考え方を説明します。
担当先の社長から「来月から返済を止めてほしい」と言われた場合、銀行員として最初に考えるのは、会社の資金繰りがどの程度悪化しているのかということです。
そして、融資した資金を今後どのように回収していくのかを考える必要があります。
銀行にとってリスケは回収リスクが高まる可能性を示す
銀行融資は、融資した資金が契約に従って返済されることを前提としています。
ところが、会社がリスケを申し出るということは、当初の返済計画どおりに返済することが難しくなっている可能性を示しています。
銀行としては、今後も融資を回収できるのか慎重に確認する必要があります。
そのため、リスケの申し出は、銀行にとって決して軽い話ではありません。
リスケによって貸倒引当金が増える場合がある
銀行は、融資先の信用状態などに応じて、将来の貸倒損失に備えるための貸倒引当金を計上しています。
リスケの申し出を受けた場合には、会社の業績や財務内容、返済能力などを改めて確認する必要があります。
その結果、融資先の信用リスクが高まったと判断されれば、銀行の引当負担が増える場合があります。
ただし、リスケを実施したという事実だけで、必ず貸倒引当金が増加するわけではありません。
実際の取り扱いは、融資先の経営状況や回収可能性などによって異なります。
銀行員はリスケを避けたいが、相談を受けることも重要
銀行の本音としては、できれば当初の返済条件どおりに返済してもらいたいと考えています。
リスケが必要になるほど資金繰りが悪化しているのであれば、融資の回収リスクが高まる可能性があるからです。
しかし、返済を続けることで会社の資金繰りがさらに悪化し、事業継続が難しくなれば、銀行にとっても望ましい結果にはなりません。
そのため、銀行は会社の実態を確認しながら、返済条件の変更によって事業を継続できる可能性があるかを検討します。
銀行はリスケを積極的に歓迎するわけではありませんが、会社の事業継続と融資の回収可能性を考えて対応を検討します。
銀行がリスケを認めるかどうか判断する5つのポイント
銀行がリスケの申し出を受けた場合、単に返済が苦しいという説明だけで判断するわけではありません。
会社の資金繰りや今後の見通しなどを確認します。
1. なぜ借入金の返済が難しくなったのか
銀行は、資金繰りが悪化した原因を確認します。
例えば、次のような理由が考えられます。
- 売上高の減少
- 原材料費や人件費などの増加
- 売掛金の回収遅延
- 借入金の返済負担の増加
- 設備投資などによる資金負担
銀行としては、資金繰り悪化の原因が一時的なものなのか、構造的な問題なのかを確認する必要があります。
2. リスケを行えば資金繰りが維持できるのか
銀行が重視するのは、リスケを行うことで会社の資金繰りがどの程度改善するかという点です。
例えば、毎月の元金返済額が100万円で、返済を停止することによって月100万円の資金流出を抑えられる場合があります。
しかし、会社の営業活動そのものから毎月200万円の資金不足が発生しているのであれば、元金返済を停止しても資金繰りの問題は解消しません。
そのため銀行は、リスケ後の資金繰りが維持できるかを確認します。
3. 今後の業績改善が見込めるのか
リスケは、借入金の返済負担を一時的に軽減するための手段です。
それだけで会社の収益力が改善するわけではありません。
銀行は、売上や利益の改善策、経費削減、資金繰り改善などについて確認します。
リスケによって生まれた時間を使い、会社がどのように経営を立て直すのかが重要です。
4. 経営者が会社の状況を把握しているか
銀行は、経営者が会社の現状をどの程度把握しているかも確認します。
例えば、毎月の資金不足額や借入金返済額、今後の入出金予定などです。
経営者が資金繰りの状況を説明できなければ、銀行としても返済条件変更の必要性や妥当性を判断しにくくなります。
5. 他の取引銀行との調整ができるか
複数の銀行から融資を受けている場合には、他の取引銀行との調整も重要です。
一部の銀行だけが返済負担の軽減に応じる一方で、別の銀行には従来どおり返済を続けると、銀行間の公平性が問題になる場合があります。
そのため、銀行は他の取引銀行の対応状況について確認することがあります。
リスケはすべての取引銀行に申し出る必要があるのか
複数の銀行から融資を受けている会社がリスケを行う場合、銀行間の調整が重要になります。
銀行の融資実務では、関係する金融機関が合理的な負担を分担するという考え方が重視されることがあります。
銀行間の公平性が重要になる理由
例えば、A銀行とB銀行からそれぞれ融資を受けている会社があったとします。
会社がA銀行にだけ元金返済の停止を申し出て、B銀行には従来どおり返済を続けるとします。
この場合、A銀行としては、自行が返済負担を軽減した結果、会社の資金がB銀行への返済に使われることを懸念する可能性があります。
そのため、A銀行はB銀行にも一定の返済条件変更を相談してほしいと考える場合があります。
特に、会社全体の資金繰りを立て直すためのリスケでは、複数銀行の協調が重要になります。
すべての銀行で同じ条件にすることが絶対条件ではない
ただし、リスケを行う場合に、すべての取引銀行で必ず同一の返済条件にしなければならないというわけではありません。
融資の種類や残高、担保・保証の状況、各銀行との契約内容などによって、対応が異なる場合があります。
また、信用保証協会付き融資などでは、関係機関との調整が必要になることもあります。
重要なのは、一部の銀行だけに相談して進めるのではなく、借入金全体の状況を整理し、関係する銀行と十分に協議することです。
複数銀行との交渉では借入金一覧表を準備する
複数銀行にリスケを相談する場合には、借入金の一覧表を作成しておくとよいでしょう。
一覧表には、次のような情報を整理します。
- 借入先の銀行名
- 借入金残高
- 毎月の元金返済額
- 金利と利息支払額
- 返済期限
- 信用保証協会の保証の有無
- 担保や保証の状況
これらを整理することで、会社全体の返済負担を把握しやすくなります。
銀行にリスケを申し出ると新規融資は受けられなくなるのか
リスケを検討する経営者に、特に理解していただきたいことがあります。
それは、リスケを行うと、新規融資を受けることが難しくなる場合があるという点です。
リスケ中は新規融資の審査が厳しくなりやすい
リスケを行っている会社は、当初の契約どおりに借入金を返済することが難しい状況にあると考えられます。
そのため銀行は、新たに融資を行った場合の返済可能性について慎重に判断します。
既存の借入金の返済が難しい状況で、新たな借入金の返済負担を増やしても問題がないのかを確認する必要があるからです。
このため、リスケ中の新規融資は、通常の融資と比べて難しくなる傾向があります。
リスケ中でも新規融資が絶対に不可能とは限らない
ただし、リスケ中の会社に対する新規融資が、すべて認められないわけではありません。
会社の事業内容や資金使途、経営改善の状況、返済可能性などによっては、新規融資を検討できる場合があります。
もっとも、融資が実行されるかどうかは個別の審査によります。
リスケ中でも新規融資を受けられる可能性はありますが、簡単に借りられると考えるべきではありません。
リスケ後は新規融資に頼らない資金繰りが重要
リスケを行う場合には、当面、新規融資に頼らずに資金繰りを維持できるかを検討する必要があります。
例えば、売掛金の回収、在庫の圧縮、経費の見直し、利益率の改善などによって資金繰りを改善することが考えられます。
リスケは返済負担を軽減する手段ですが、会社の収益構造そのものを改善することも重要です。
銀行にリスケを申し出るタイミングはいつがよいのか
銀行へのリスケ相談は、できるだけ早い段階で行うことが重要です。
特に、借入金の返済日が迫ってから相談するのでは、銀行が必要な確認や手続きを行う時間が不足する場合があります。
返済ができなくなる前に相談する
今後の資金繰りを確認した結果、数か月後に借入金の返済が難しくなる見込みがある場合には、その段階で銀行に相談することが考えられます。
実際に返済が滞ってから相談するよりも、銀行と協議する時間を確保しやすくなります。
銀行に無断で返済を止めない
リスケを申し出たからといって、その時点で返済義務が変更されるわけではありません。
銀行との合意が成立するまでは、原則として従来の契約条件が適用されます。
そのため、銀行との合意がないまま、一方的に返済を停止することは避けてください。
返済が難しい見込みであれば、早めに銀行に事情を説明し、対応を相談することが重要です。
銀行にリスケを相談する際に準備したい資料
リスケを申し出る際には、会社の現状と今後の見通しを説明できる資料を準備することが重要です。
銀行によって必要な資料は異なりますが、一般的には次のような資料が考えられます。
- 直近の決算書
- 直近の試算表
- 資金繰り表
- 銀行別の借入金一覧表
- 今後の業績見通し
- 経営改善に向けた具体的な取り組み
- 返済条件変更後の資金繰り見通し
特に重要なのは資金繰り表
銀行がリスケの必要性を判断する際に重要となる資料の一つが資金繰り表です。
資金繰り表によって、いつ、どの程度の資金不足が発生するのかを確認できます。
また、元金返済を減額した場合に、資金繰りがどの程度改善するのかも確認できます。
銀行としては、返済条件を変更した後も会社が事業を継続できるかを判断する必要があります。
経営改善の方向性も説明する
リスケは、返済負担を軽減するための手段です。
しかし、会社の業績や資金繰りが改善しなければ、リスケ期間が終了した後も返済が難しい状態が続く可能性があります。
そのため、銀行には今後どのように業績や資金繰りを改善していくのかを説明することが重要です。
経営改善計画書の提出が求められる場合もありますが、必要な資料や計画の内容は銀行や会社の状況によって異なります。
リスケのメリットとデメリット
リスケを検討する際には、メリットだけでなくデメリットも理解する必要があります。
リスケのメリット
- 毎月の元金返済負担を軽減できる
- 資金繰りの悪化を一時的に抑えられる
- 経営改善に取り組むための時間を確保できる
- 事業継続の可能性を高められる場合がある
特に、毎月の元金返済額が大きい会社では、返済負担を軽減することによって資金繰りが改善する場合があります。
リスケのデメリット
- 新規融資を受けることが難しくなる場合がある
- 返済期間が長くなる場合がある
- 返済期間の延長などによって利息の総支払額が増える場合がある
- 銀行から経営状況や資金繰りについて継続的な説明を求められることがある
- 複数銀行との調整に時間がかかる場合がある
リスケは資金繰りを改善するために有効な手段となる場合がありますが、安易に選択すべきものではありません。
一方で、返済を続けることで事業継続が難しくなる場合には、リスケの相談を先送りすることも適切ではありません。
会社の資金繰りと今後の事業見通しを踏まえて判断することが重要です。
銀行へのリスケの申し出に関するよくある質問
銀行にリスケを申し出たらすぐに返済を止められますか?
リスケを申し出ただけでは、返済条件は変更されません。
銀行との協議を行い、返済条件変更について合意する必要があります。
合意が成立するまでは、原則として従来の契約条件が適用されます。
リスケを申し出ると銀行から嫌がられますか?
銀行にとって、リスケの申し出は融資先の資金繰り悪化を示す重要な情報です。
そのため、銀行は慎重に対応します。
ただし、銀行がリスケを積極的に歓迎しないことと、リスケの相談に応じないことは別の問題です。
資金繰りが厳しい場合には、早めに銀行へ相談することが重要です。
複数銀行から借入がある場合、すべての銀行にリスケを申し出る必要がありますか?
複数銀行との調整が必要になる場合があります。
特に、会社全体の資金繰り改善を目的とする場合には、銀行間の公平性が重視されることがあります。
ただし、すべての銀行で必ず同じ条件にしなければならないわけではありません。
リスケをすると新規融資は受けられなくなりますか?
リスケ中は新規融資の審査が厳しくなりやすいと考えられます。
ただし、新規融資が絶対に不可能というわけではありません。
資金使途や経営改善の状況、返済可能性などによって個別に判断されます。
リスケをする場合、経営改善計画書は必要ですか?
銀行が経営改善計画書の提出を求める場合があります。
ただし、必要な資料や計画の内容は、会社の状況や銀行の判断によって異なります。
まずは資金繰り表や借入金一覧表などを準備し、銀行に相談することが重要です。
リスケは会社にとって最後の手段ですか?
リスケは、新規融資への影響などを考えると慎重に検討すべき手段です。
しかし、返済を続けることで資金繰りが行き詰まる可能性がある場合には、早めに検討することが重要です。
リスケを最後まで避けること自体が目的にならないようにする必要があります。
銀行にリスケを申し出る場合のまとめ
銀行にリスケを申し出ると、銀行は会社の資金繰りや返済能力、今後の事業見通しなどを確認し、返済条件変更の必要性を検討します。
今回のポイントをまとめると、次のとおりです。
- リスケとは、銀行との合意によって融資の返済条件を変更すること
- 銀行はリスケの申し出を受けると、融資の回収可能性を慎重に確認する
- リスケによって銀行の貸倒リスクや引当負担が増える場合がある
- 複数銀行から借入がある場合には、銀行間の調整が重要になる
- すべての銀行で必ず同じ条件にすることが絶対条件ではない
- リスケ中は新規融資が難しくなる場合がある
- 返済ができなくなる前に銀行へ相談することが重要
- リスケを申し出ただけで返済を停止できるわけではない
- 資金繰り表や借入金一覧表などを準備し、今後の改善策を説明する
担当先の社長から「来月から返済をストップしてほしい」と電話を受けたとき、銀行員としては、まず会社の資金繰りがどの程度厳しくなっているのかを確認する必要があると考えます。
そして、返済負担を軽減することによって会社が事業を継続できるのか、今後の返済の見通しを立てられるのかを検討します。
銀行としては、できれば当初の契約どおりに返済してもらいたいというのが本音です。
しかし、返済を優先することで会社の事業継続が難しくなるのであれば、返済条件の変更を含めた対応を検討する必要があります。
リスケは銀行にとっても会社にとっても重要な判断です。資金繰りが厳しくなった場合には、返済が滞る前に銀行へ相談し、事業を立て直すための具体的な対応を考えることが大切です。