個人事業主であっても会社と同じように事業を行う上で運転資金や設備資金が必要となります。
今回はこの個人事業主の事業資金の調達ついての基礎を融資担当の銀行員が説明をします。
個人事業主の事業資金の調達は個人ローンだけではない
個人事業主がどうかは別にして個人の方が銀行からお金を借りるというとまずイメージをするのが住宅ローンとかカードローンなどいわゆる個人ローンだと思います。
多くの個人の方が銀行からお金を借りるきっかけとしてはこの住宅ローンに代表される個人ローンであることに間違いはありません。
個人ローンは消費性のもの
ローンを含めた銀行の融資をその資金使途、つまりお金の使い道の観点から分類しますと消費性と事業性に分けることが出来ます。
住宅ローンなどの個人ローンはこのうち消費性に該当します。
消費性とは個人の生活に必要な資金だと考えてください。
事業性とは
これに対して事業性とは事業、つまり商売に関わることに必要な資金だと考えてください。
会社は事業、商売を行う代表的な存在ですが、現実には個人で事業を行っている方々、つまり個人事業主もたくさんいます。
みなさんの身近なところにもいらっしゃると思います。
事業性の融資の対象は会社に限った話ではありません。
個人事業主にも銀行は事業性の融資を行います。
つまり個人事業主でも事業資金の借入を行うことができるのです。
個人ローンと事業資金融資は分けるべき
個人事業主が事業で必要となる運転資金や設備資金をカードローンなどの個人ローンに調達することはあまりおすすめしません。
個人事業主はもちろん個人ですが、事業に関わる部分と純粋に個人の部分とは資金の調達においてもわけるべきです。
したがって事業資金を安易にカードローンなどの個人ローンで調達するのではなく、銀行などの~事業資金として調達すべきなのです。
これが原則です。
事業で必要となる資金は個人ローンではなく事業資金の融資にて調達すべきもの
個人事業主が銀行融資を受けるための基礎知識
それでは個人事業主が銀行から事業資金の融資を受けるための基礎知識を説明します。
銀行融資の仕組みと基礎
事業資金の融資は個人ローンと仕組みは基本的には同じですが、個人ローンとは異なり事業資金特有の特徴があります。
事業資金の融資期間は個人ローンと比べて短い
事業資金特有の特徴はいくつかありますが、個人ローンとの比較でもっとも大きな特徴はその融資期間です。
個人ローンの代表格である住宅ローンはご承知のとおり超長期の融資です。
住宅ローンの融資期間は20年とか30年、35年といったように超長期の融資です。
これに対して事業資金の融資期間は最長でも10年というのが原則です。
運転資金であれば1年から5年、設備資金であれば5年とか7年という融資期間が事業資金の融資では一般的です。
もちろん例外的に事業資金の融資においても融資期間が10年超となるケースもありますが、こちらは例外だと考えてください。
事業資金の融資の期間は最長でも10年が一般的
事業資金の融資の仕組み
事業資金の融資の仕組みは個人ローンと比べて大きな違いはありません。
まずは事業資金の融資を申し込み、銀行の融資の審査を受けて審査が通れば融資契約を行って事業資金の融資が実行されるという手順です。
事業資金の融資の流れは個人ローンと基本的に同じ
事業資金の融資審査のポイント
事業資金の融資の審査のポイントは事業から得られる利益によって融資が返済できるかどうかです。
融資を行う銀行としては融資は必ず最後まで返済されなければなりません。
もし融資が返済されない事態になると銀行は貸倒れという損失を被ることとなります。
そのため融資がきちんと返済されるかどうか、融資をきちんと返済することができる能力があるかどうかが事業資金の融資における審査の最大のポイントとなります。
仮にどれだけ担保があるとしてもこの事業活動によって得らえる利益によって融資の返済に懸念があれば、基本的に事業資金の融資の審査は通りません。
事業資金の融資の審査の最大のポイントは事業によって得られる利益によって返済が可能かどうかという点
事業資金の融資申し込みにおける重要な書類
事業資金の融資を申し込む場合に、絶対に必要となるのが確定申告書です。
個人事業主の確定申告書は会社で言えば決算書に相当します。
銀行はこの確定申告書に基づいて融資の返済能力を審査します。
申告をしておらず確定申告書が提出することができなければ、事業資金の融資の審査はもちろん通りませんし、そもそも銀行は事業資金の融資の申し込みを受け付けてくれません。
個人事業主の事業資金融資の申し込みにおいて確定申告書は絶対に必要
個人向け事業資金融資の特徴
個人の方が個人事業主として銀行から事業資金の融資を受ける際にはいくつかの特徴があります。
日本政策金融公庫の利用
日本政策金融公庫はいわゆる政府系の金融機関です。
日本政策金融公庫は個人事業主向けに事業資金の融資を取り扱っています。
政府系金融機関ということもあり後述する銀行に代表される民間金融機関と比較すると、一般的に金利が低いなどの有利な条件がそろっています。
実際に多くの個人事業主が日本政策金融公庫から事業資金の融資を利用しています。
個人事業主が初めて事業資金の融資を利用する場合には日本政策金融公庫に相談をすることがおすすめです。
日本政策金融公庫の事業資金の融資は多くの個人事業主が利用している
銀行などの民間金融機関の事業資金融資
銀行などの民間金融機関の個人事業主向けの事業資金の融資には1つの大きな特徴があります。
それは公的機関である信用保証協会の保証制度を利用した融資だということです。
信用保証協会とは
信用保証協会とは一種の保証人になってくる公的機関です。
融資を行う銀行からすると会社に比べて個人事業主の方は信用力が弱いのが一般的です。
信用力が弱いとは平たく言えば融資の返済能力が低いということです。
銀行としては融資したお金は必ず最後の1円まで返済してもらわなければなりません。
もし返済してもらえないとなるとその部分は貸倒、つまり銀行の損失となります。
これは銀行としては回避したいところです。
そうなると信用力が弱い個人には銀行は融資を行うことに消極的になります。
これを補完する意味で信用保証協会という公的機関が存在します。
公的機関が保証人になってくれるのであれば銀行は安心して個人事業主にも事業資金の融資を行うことができるようになります。
このような要因もあり個人事業主向けの銀行の事業資金融資の大半は信用保証協会の保証制度を利用した融資となっています。
担保は原則として不要
担保がないと事業資金の融資が受けられないということはありません。
さきほどの信用保証協会の保証制度の場合、個人事業主向けでも担保不要とする保証制度があります。
これを利用すれば担保なしで銀行から事業資金の融資が受けられます。
保証人も不要
上記の関連しますが個人事業主向けの信用保証協会の保証制度は無保証扱いが一般的となっています。
したがってこの保証制度を利用した場合、保証人を立てなくても銀行から事業資金の融資を受けることが出来ます。
制度融資の利用
制度融資とは地元の地方公共団体が中小企業や個人事業主を融資面で応援する制度です。
銀行に支払う金利の補助をしてくれたりします。
そのため制度融資を利用すると一般的に有利な融資条件で事業資金の融資が利用できるメリットがあります。
個人事業主の事業資金融資の基礎のまとめ
以上、個人事業主の事業資金の融資の基礎についてまとめますと次のようになります。
まとめ
・銀行などの民間金融機関でも個人事業主向けの事業資金の融資を行っている
・民間金融機関の個人事業主向けの事業資金の融資は信用保証協会の制度を利用することが一般的