会社が銀行から融資を受けるにあたり代表取締役をはじめ役員が連帯保証人になることを求められることがあります。
ただし連帯保証人が役員から退任し会社から退職する場合には、連帯保証人から外れたいと考えることは自然なことです。
会社の役員を退職することで連帯保証人から外れることができるのかどうか、融資担当の銀行員が説明をします。
目次
連帯保証人の役割
最初に融資における連帯保証人の意味や役割について簡単に整理をします。
融資は回収しなければならない
退職融資を返済しなければならないのは融資を借りている会社や人、つまり債務者です。
銀行の融資審査においてはこの債務者がきちんと最後まで融資が返済できる能力を持っているかどうかを最大のポイントして審査を行っています。
しかし融資後に業績が悪化して融資の返済が困難な状況に陥ることも考えられます。
しかしだからといって銀行は融資の回収を諦めるわけにはいきません。
融資が回収できなければそれは貸倒という損失を銀行が被ることになるからです。
万が一の融資の回収手段
このように債務者が融資の返済ができなく事態に備えて銀行としては万が一の融資の回収手段を講じておかなければなりません。
この万が一の融資の回収手段の代表的なものは担保です。
担保の売却など処分をしてその代金でもって融資を回収するわけです。
そしてもう1つ、銀行の融資の回収手段の代表的なものが連帯保証人です。
連帯保証人は代表的な融資の回収手段
債務者が融資の返済ができない場合に、銀行は連帯保証人に融資の返済を求めることができます。
つまり銀行にとって連帯保証人は融資の返済を保全する重要な役割を担っています。
役員を退職したので連帯保証人から外れたい
このように銀行にとって連帯保証人は重要な役割がありますが、役員を退職した会社の経営から外れることになった場合、連帯保証人から外れたいという思いは当然のことです。
役員を退職し会社から離れたにも関わらず、万が一の場合には会社の借入を代わりに返済しなければならないということは酷です。
では銀行は役員を退職したことを理由にほぼ自動的にその役員を連帯保証人から外してくれるものでしょうか。
原則として連帯保証人から外れることは出来ない
繰り返しですが、連帯保証人というのは債務者が万が一返済不能となった場合、代わりに返済してもらう義務を負っていますが、これは銀行などの債権者にとっては債権保全の意味合いがあります。
したがって連帯保証人の解除を認めることは銀行にとっては不利なことですから、原則として一度なった連帯保証人から外れることはなかなか難しいというのが現実です。
一度連帯保証人になると原則として外れないということが原則
連帯保証人の解除が認められるケース
しかしながら会社の役員を退任・退職し、会社の経営には何らタッチしていないにもかかわらず、連帯保証だけ負うというのは一個人にとっては大きな負担になるのは事実です。
したがって次のような事実が認められる場合には連帯保証人の解除に銀行は弾力的に応じる方向になってきています。
・債務者の業況が順調であること
・新たな担保が徴求出来ること
・代わりの連帯保証人が徴求出来ること
・出資関係が解消していること
これらすべての条件が充足されないと連帯保証人から外れないということではありません。
これらの条件を勘案しながら総合的に検討して連帯保証人を外すかどうかを銀行は判断をしています。
なお役員を退任して日頃の経営には関与はしていないものの、実質的にその会社の経営権を保持していると認められる場合には連帯保証人から外れることは困難だと言えます。
連帯保証人に関する交渉相手は銀行
なお連帯保証人から外れる場合の交渉相手は勤務している会社ではなく、債権者である銀行です。
どれだけ会社と交渉しても、銀行が認めない限り、連帯保証人からの解除は実現しません。
保証契約の当事者は銀行と連帯保証人の2人だけなのです。
連帯保証人から解除されるには他の利害関係人の同意が必要
なお役員を退任し会社の経営から離れた連帯保証人を外す場合には、銀行は以降の無用のトラブルを避けるために他の利害関係者を同意を得ることにしています。
他の利害関係者とは以下のような人です。
他の理解関係者
・不動産などの担保を提供している人
これらの他の利害関係者からすれば、連帯保証人が少なくなるということは今後の負担が大きくなることにつながり不利となります。
そのため銀行は連帯保証人を解除するにあたって他に利害関係者が存在する場合にはその利害関係者全員の同意を得ることにしています。
他の利害関係者の同意を得ることが難しい場合には連帯保証人を解除することは困難となります。
連帯保証人を解除するには他の利害関係者の同意を得ることが必要
連帯保証人徴求の実務
ところで銀行の融資の連帯保証人を徴求する実務はここ数年で大きく変化しています。
銀行の連帯保証人の徴求方針を説明します。
原則として代表取締役だけを連帯保証人に取る
会社宛の銀行の融資においては原則としえ代表取締役だけを連帯保証人に取ることが銀行の融資実務となっています。
代表権のない取締役は原則として融資の連帯保証人には取らないのが銀行での融資の実務となっている。
代表取締役のみ連帯保証人とするのが今の銀行の融資実務の原則
経営に深く関与している役員
このように現在の銀行融資の実務においては会社宛の融資においては代表取締役のみを連帯保証人に取るのが一般的な実務となっています。
しかし前代表取締役が取締役に残って会社に実権を握っている場合にはこの前代表取締役の役員を連帯保証人に取ることがあります。
また会社の株式の出資割合が代表取締役も多い役員が存在する場合には、その役員が実質的な会社の経営権を握っているとして連帯保証人に取ることがあります。
経営から離れた役員の連帯保証人の取扱い
それでは今まで連帯保証人であった役員が会社を退職し経営から離れた場合、その元役員は第三者としての位置付けとなります。
第三者は連帯保証人に取らない
例外がありますが、銀行は会社宛の融資において経営に関与していない第三者を連帯保証人に取ることはありません。
そのため役員を退任し会社の経営から離れた連帯保証人は基本的にその連帯保証を解除する方向に今の銀行はあります。
役員を退職し会社の経営から離れた連帯保証人は連帯保証を解除する方向にある
連帯保証人に依存しない融資の確立
今、銀行は連帯保証人に依存しない融資の確立を強く求められています。
つまり無保証人で融資を行うことです。
経営者保証のガイドライン
以下の条件を満たす場合には銀行等の連帯保証人を取らない融資を検討することになっています。
経営者保証のガイドラインの骨子
・会社の業績が堅調であり会社のみで融資の返済が可能と判断できること
・会社は銀行等に求めに応じて財務内容などの十分に開示をすること
これらの経営者保証のガイドラインを充足していると考えられる場合には銀行は連帯保証人を取らずに会社宛の融資を検討する基調になっています。
したがってこのような流れもあり、会社の役員を退任し会社の経営から離れた連帯保証人はその連帯保証を解除する方向にあります。
会社の役員を退職したので連帯保証人から外れたいのまとめ
以上、会社の役員をしていた人が会社を退職し連帯保証人から外れたい場合についてまとめますと次のようになります。
まとめ
・連帯保証人から外れるには他の利害関係者の同意を得ることが必要