赤字決算先に対しては総じて銀行の融資姿勢は高くなります。
しかし赤字決算先に対しても銀行が融資に応じる事例はたくさんあります。
今回の赤字決算先に対して銀行が融資に応じる1つの事例を紹介します。
赤字決算先に対する銀行員の思考
銀行の融資審査の基本は貸した金が返ってくるかどうかです。
この点において赤字決算ということはこの図のように貸した金が返ってこない可能性が高いということです。
そのために一般的に赤字決算先に対しては銀行の融資姿勢が厳しくなる大きな理由です。
運送業からの融資申し込み
トラック運送業の中小企業からの融資申込みを受けています。
年商規模は5億円程度。
景気低迷の影響で業績は苦労されていますが、直近決算ではかろうじて黒字を確保しています。
ただ借入金が3億円程度と年商の半分を超過しており、いわゆる借入過多の体質にあります。
このため年間の借入返済額は4,000万円ほどあり、銀行融資の返済が資金繰りの大きな圧迫要因となっています。
売上減少で赤字
今回、この中小企業からさらに3,000万円の融資申込みを受けました。
今期の予想は赤字。
赤字の主な要因はやはり売上の低下です。
このため営業収入も減少しており、原価や経費支出を除くと、ほとんど資金余裕がない資金繰り状態で、銀行融資の返済原資が期待出来ない状態です。
このような取引先への追加融資は、銀行の融資原則から考えればお断りせざるを得ない案件です。
しかし簡単に断れない事情があります。
主力銀行であると・・・
それは長年の圧倒的主力先であること。
さきほど借入金が3億円ほどあると述べましたが、その8割は当行からの融資です。
資金繰りのほとんどは当行に依存しているといっても過言ではない状態です。
現在の業績や資金繰り状況では、当行以外の他の金融機関から融資が受けられる可能性は低いと考えざるをえず、まさに当行が取引先の生死を握っていると言えます
ここは銀行としても慎重に考えなければならないところです。
銀行の社会的役割の問題と置き換えることも出来ます。
ただ銀行の社会的役割だけで、返済に懸念が大きい取引先に融資を行うわけには行きません。
融資を行うだけの理由付けが必要です。
本件の場合は、保全が確保出来ることです。
つまり新たな不動産担保の提供で追加融資のすべてがカバー出来る状況にあることです。
当行が取引先の事業継続を支える立場にあり、資金繰りの支援をしなければならない責任があることと、不動産担保にて追加融資の保全が確保出来ることを理由に今回の追加融資の申し出には応諾することとしています。