トラック運送業への銀行融資に関する銀行員の視点は主に以下の点です。
目次
1.規制緩和により業者数が増加している
トラック運送業への参入が従来の免許制から、原則自由の免許制へ緩和。
このため新規参入がしやすくなり、業者間の競争が激しくなっている。
2.運賃の低下が著しい
1の新規参入数の増加による競争の激化に加え、荷主への価格転嫁が難しい業種であり、
運賃の低下が著しい。
つまり収益力が低下しているということ。
3.排ガス規制への対応などでコストがかさんでいる
環境配慮への動きから、排ガス規制など今後とも環境面に対する規制強化が予想され、それに対応するコスト負担が増加している。
一方でそのコスト増加を、競争などの影響で荷主に転嫁することが難しく、収益力の確保が課題。
4.法令順守への対応の必要性が一層高まっている
排ガス規制のほかにも、駐車違反の取り締まり強化や過積載の取り締まり強化、飲酒運転に対する取り締まり強化など、トラック運送業界にとっては社内管理体制の強化が求められている。
規制や法に違反する取引先への融資は銀行も否定的にならざるを得ません。
5.設備負担が重い
輸送するためのトラック、物流基地や倉庫など設備負担が重い
銀行融資申込み時にポイント
トラック運送業界に対する銀行の見方は上記のとおり、業界環境は厳しく個々の事業体の収益力は総じて厳しいとの認識を持っています。
したがってまずは収益力の維持・向上のためにどのような対策を取っているのかを整理しておく必要があります。
またトラック運送業への融資は設備投資資金が中心となります。
設備投資の返済原資は利益であり、銀行は当期利益+減価償却費を返済原資とみなして、返済能力を審査しています。
ただトラック等車両の減価償却費は返済原資から控除して、返済能力を見ています。
これはトラック等車両は定期的に買い替えが必要であり、少なくともトラック等車両に関わる減価償却費は、銀行融資の返済原資というよりも、トラック購入への再投資分と見るほうが無難だからです。
トラック等車両の購入ならともかく、物流基地や倉庫などの設備投資の場合にはその投資効果を十分に整理しておく必要があります。
銀行は慎重に投資効果を検証しています。
さらに全般的に言えることですが、銀行自身も含めてコンプライアンス遵守の要請はますます高まっています。
したがって従業員に対する意識付け(飲酒運転や駐車違反等)を十分にかつ定期的に行っているかどうかも、融資の審査と合わせてチェックされます。