税金や社会保険料を滞納している状態で銀行から融資を受けることは原則として困難です。
ただし一定の条件のもとであれば税金滞納の状態であっても銀行から融資が受けられる可能性があります。
今回は税金滞納中に銀行から融資を受ける方法について融資担当の銀行員が説明をします。
目次
税金滞納中でも融資を受けるための全体像と影響
まずは税金滞納中であっても銀行から融資が受けられる全体像について説明をします。
税金滞納が銀行融資やローンに与える影響
最初に税金滞納をしているとなぜ銀行からの融資やローンにマイナスの影響を与えるかについて整理をします。
税金を滞納しているということは資金繰りが苦しいこと
支払わなければならない税金を支払っていない、つまり税金滞納は支払おうとしても資金繰りが苦しいために支払いをすることができない状態であると考えられます。
銀行としては融資は必ず最後まで返済をしてもらわなければなりません。
もし融資が最後まで返済されずに融資を回収することができなければ、それは銀行が貸倒という損失を被ることとなります。
銀行も収益を獲得する必要があり、また融資の原資は預金者からの預金が大半を占めていますから、融資が回収できないということは究極的には預金者に預金の払い戻しに応じられないことにつながります。
銀行の融資審査はいろいろな切り口で行っていますが、その目的は何は差し置き融資が最後まで返済されるかどうかです。
融資が最後まで返済されるためには資金繰りが安定していることが第一条件です。
資金繰りが安定していなければ、融資を安定して返済することに重大な懸念が持たれます。
この点から税金を滞納しているということは資金繰りが苦しいということですから、融資の返済能力に大きな懸念が持たれる状態です。
そのため税金を滞納していると銀行の融資は通らないというのが大原則です。
税金を滞納している→資金繰りが苦しい→融資の返済がおぼつかない→銀行の融資審査に通らない
税金滞納でも銀行融資の可能性がある場合
このように税金を滞納しているとまずは銀行の融資審査には通りません。
しかし一定の条件が整うと税金滞納の状態であっても銀行の融資が通ることがあります。
この税金滞納中でも銀行の融資が通る一定の条件とは次のとおりです。
銀行融資が通る一定の条件
・一定期間の分割納付の実績があること
・分割納付により短期間のうちに税金の滞納が解消されること
税金の分割納付の手続きをしていること
まずは滞納している税金について税務署と相談を行い分割納付の手続きをしていることです。
分割納付の一定期間の実績があること
そのうえでその分割納付計画に基づいて一定期間、遅滞なく税金の納付実績があることです。
一定期間とは最低でも3回分と考えてください。
滞納している税金を分割納付の申請をして、それを最低でも3回分を納期限までに遅滞なく納付している実績があることです。
分割納付により税金滞納が解消される見込みがあること
そして滞納している税金を分割納付を行うことで短期間のうちに税金滞納が解消される見込みがあることです。
では短期間とはどれくらいかといえば、目線は6か月と考えてください。
どれだけかかっても1年以内が限度です。
今は税金滞納の状態ではあるが、税務署に分割納付の申請を行いその分割納付の計画にしたがってきちんと納期限まで税金を納付し、これを続けることで6か月、どれだけ遅くとも1年以内に税金滞納の状態が解消される見込みが高い場合に、税金滞納であっても銀行の融資が通る可能性があります。
融資を前提にして滞納している税金を一括納付のケースがありうる
現在、税金滞納の状態ではあるが、その滞納している税金を完納できるだけの資金は手元にはある。
しかしそれを支払ってしまうと他の支払いができなくなるため、税金を納付できずに滞納の状態にあることもあります。
銀行としては税金滞納の状態のままではさきほどの分割納付のケースを除いては、受け入れることはできません。
ただし事前に滞納している税金をすべて納付をし、税金滞納の状態が解消されれば融資検討の道が開けてきます。
事前に滞納税金をすべて納付し税金滞納が解消されれば融資の可能性が出てくる
ただし銀行から融資が受けられるかどうかがわからない状態で、滞納している税金をすべて納付することにためらいがあると思います。
滞納している税金をすべて納付してしまえば、手元の資金がなくなり今後の資金繰りがショートしてしまうからです。
このような場合には融資の内定など銀行から融資が受けられる可能性がほぼ確定の状態になってから、滞納している税金をすべて納付し、その後に銀行から融資を受ける方法があります。
このケースの場合には銀行と事前に念入りな相談が必要です。
銀行から融資が受けられるだろうとの勝手な思い込みは危険です。
事前に銀行から融資の内定を確認してから税金滞納の状態を解消するために納付を行ってください。
銀行から融資が受けられることが確実の状態で、融資前に税金を納付して税金滞納の状態を解消する
税金滞納中の融資は保全重視
税金滞納の状況で銀行が融資を行うことは異例なケースと考えてください。
銀行としては融資の返済能力が非常に弱い状態であり、融資が焦げ付く可能性が高い融資だと受け止めています。
そのため銀行としては焦げ付きを回避するために保全重視の融資となります。
保全とは不動産などの担保だと考えてください。
担保があれば融資が返済されなくなっても担保を処分することにより融資を回収することができます。
では担保がない場合には担保に代わる手段として信用保証協会の保証制度を利用した融資となります。
信用保証協会は融資の保証人になってくれる公的機関です。
公的機関が融資の保証人になってくれるのですから、銀行としても安心です。
したがって税金滞納中の融資は十分な担保があるか信用保証協会の保証制度を利用した融資になります。
税金滞納中の銀行融資は十分な担保付きか信用保証協会の保証付き融資となる
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税金滞納による差し押さえは絶対に回避
税金を滞納していると税務署から銀行の預金口座に差し押さえるを受けるリスクがありますが、この差し押さえは絶対に回避してください。
差し押さえを受けると現在の借入も一括返済しなければならない
税金滞納により預金口座に差し押さえを受けると、返済期限まで融資を継続して利用ができるという借り手側の期限の利益を失います。
期限の利益を失うということは現在借入している融資をただちに一括返済をしなければならなくなります。
差し押さえを受けるということは税金滞納が相当期間続いており、税務署としても差し押さえという強制手段でないと税金を徴収できないという事態です。
銀行として目をつぶることができない状況だということです。
税金滞納で預金口座の差し押さえを受けると現在の借入金を直ちに全額返済しなければならない
差し押さえを受ければ新規融資は不可能
そして差し押さえを受けてしまうと銀行からの新規融資は一切受けられないと考えてください。
さきほど税金滞納であっても融資が受けられる可能性がある条件をお示ししましたが、差し押さえを受けるとそれ以前の問題となり新規融資は一切無理となります。
税金滞納で差し押さえを受けると新規融資は一切無理
税金滞納中に融資を申し込む具体的な手順
それでは税金滞納にある中で銀行に融資を申し込む場合の具体的な手順を説明します。
準備すべき資料
税金滞納にある中で銀行に融資を申し込む際には以下の資料を準備してください。
準備する資料
・税務署に対する分割納付の申請書類
・分割納付済みの領収書写し
・資金繰り表
資金繰り表について
資金繰り表が必要となる理由ですが、これは税金の分割納付をしながら今回の融資により当面の資金繰りに問題がないことを示すための資料となります。
銀行としては資金繰り表で確認をしたいポイントは今回の融資により当面の資金繰りが安定するのかどうかを検証するためです。
当面とは1年程度の考えてください。
融資をしてもまたすぐに資金繰りが持たなくなるのでは今回の融資の焦げ付きが懸念されることになります。
この状態では銀行が新規の融資に応じることは不可能です。
ただでさえ税金を滞納している状態ですから、今回の融資により間違いなく資金繰りが当面の間、安定することが絶対条件です。
どれだけ未納税金の分割納付の手続きを済ませてもいても、その後の資金繰りに不安がある状態では銀行から融資を受けることは無理だと考えてください。
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税金滞納と融資に関する参考事例
以下では税金滞納と融資に関する相談の事例をご紹介します。
質問
小さな会社を経営しています。
銀行から運転資金の融資を受けたいと思っています。
ただ過去に何回か税金を滞納しています。
最近遅れている税金はすべて納付しました。
このような場合でも銀行から融資を受けることは難しいでしょうか?
回答
銀行融資は大きくプロパー融資と信用保証協会の保証付融資に分けることが出来ます。
まずプロパー融資ですが、現在税金を滞納している場合は困難です。
そして現在は滞納していないが過去に滞納していた場合ですが、銀行によって対応は異なると思いますが、基本的には難しいと考えられます。
銀行融資の申し込みにおいては納税証明書の提出が求められますが、一言で納税証明書といっても、いろいろな種類があります。
銀行に提出を求められる代表的な納税証明書の種類は、
・納税証明書 その1
・納税証明書 その3の3
です。
その1は直近期時点のものが求められます。
したがって税金を滞納していたのが、直近期より以前の時期であれば、直近期の納税証明書には「延滞税」の表示がなくなりますから、銀行に滞納の自主申告をされない限りはわかりません。
なお納税証明書のその3の3は現時点で税金の未納の有無を確認するためです。
次に信用保証協会保証付融資の場合。
参考までに東京信用保証協会のホームページに「ご利用いただけない中小企業」として次の記載があります。
信用保証協会を利用できないケース
(2)原則として、協会に対して求償権の保証人として保証債務を負っている方。
(3)銀行取引停止処分を受けている方。(原則として1回目の不渡を出して6ヵ月を経過していない方を含む)
なお、法人の代表者が銀行取引停止処分(1回目の不渡を含む)を受けている場合、当該法人も原則として保証利用できません。
(4)破産、民事再生、会社更生等法的手続中の方(申立中の方を含む)又は内整理等私的整理手続中の方。
(5)最後の登記後12年以上経過した株式会社で、新会社法第472条の規定により休眠会社として解散したものとみなされた方。
(6)協会の保証付融資又は金融機関固有の融資について延滞等の債務不履行がある方。
(7)確定申告をしていない方。※粉飾決算や融通手形操作を行っている、税金を滞納し完納の見通しが見込めない、事業実態・資金使途・返済能力などを判断するための資料がない等の場合もお取扱できません
つまり信用保証協会は税金を滞納していても、完納見通しがあれば保証を行う場合があるということです。
完納の見通しについて具体的な基準は示されていませんが、管理者の実務経験から判断して、長くても1年以内に完納出来る見通しがないと保証を得ることは難しいようです。
要するに信用保証協会保証付融資の場合には、税金を滞納していても短期間に完納できる見込みがあれば可能性があるということです。
そして現在は税金の未納がないのであれば、過去に滞納の事実があっても信用保証協会保証付融資が受けられる可能性はあるということです。
税金滞納中でも融資を受けるための具体的な対策と手順のまとめ
以上、税金滞納中に融資を受けるための対策や手順についてまとめますと次のようになります。
まとめ
・税金の分割納付中で一定の納付実績があり、短期間に税金滞納が解消されることを条件に融資が受けられる可能性がある
・税金滞納で銀行口座に差し押さえを受けてしまうと銀行の融資は絶対に無理