預金口座に差押を受けた場合に、銀行からの融資はどうなるのかというテーマです。
結論として預金差押は銀行からの融資に重大な影響を与えます。
融資担当の銀行員が説明します。
目次
「差押 融資」で多い悩み:口座凍結・預金差押が融資審査と資金調達に与える影響
預金口座への差押えを受けた場合に融資を受けている側には非常に大きな影響が発生することがあります。
会社が事業資金の融資を銀行から受けている場合を例にして、預金の差押えの対象者により以下の事態が発生します。
差押えの影響
2.連帯保証人である社長の預金口座に差押えを受けた→会社は融資全額の即時返済を銀行から求められる
3.社長の配偶者の預金口座に差押えを受けた→影響なし
4.社長の親や子供の預金口座に差押えを受けた→影響なし
会社の預金口座に差押えを受けた
銀行から融資を受けている会社の預金口座に差押えが入った場合には銀行は直ちにその会社に対して残っている融資全額の即時一括返済を求めます。
その根拠は次の銀行取引約定書の期限の利益の喪失条項です。
銀行取引約定書期限の利益の喪失条項
1.支払の停止または破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始もしくは特別清算開始の申立があったとき。
2.手形交換所または電子債権記録機関の取引停止処分を受けたとき。
3.甲または甲の保証人の預金その他の乙に対する債権について仮差押え、保全差押えまたは差押えの命令、通知が発送されたとき。
4.甲の責めに帰すべき事由によって、甲の所在が乙にとって不明になったとき。
②甲について次の各号の事由が1つでも生じた場合には、乙からの請求によって、甲は乙に対するいっさいの債務について期限の利益を失い、直ちに債務を弁済するものとします。
1.乙に対する債務の一部でも履行を遅滞したとき。
2.担保の目的物について差押えまたは競売手続の開始があったとき。
3.乙とのいっさいの約定の1つにでも違反したとき。
4.甲の保証人が前項または本項の各号の1つにでも該当したとき。
5.前各号のほか乙の債権保全を必要とする相当の事由が生じたとき。
甲とは融資を受けている会社、つまり債務者のことです。
そして乙とは銀行のことです。
期限の利益とは
期限の利益とは融資を受けている側、つまり会社側が銀行に対して持っている権利です。
一例で説明しますと会社が銀行から5年間の分割返済の条件で融資を受けているとします。
このケースにおいては会社はきちんと分割返済を行っている限りにおいて5年間は銀行から融資を受けることができます。
この5年間にわたって融資が受けられる権利のことが期限の利益と呼ばれるものです。
条件通りに分割返済をきちんと行っている限りは銀行は会社に対してただちに融資全額の返済を求めることはできません。
期限の利益とは銀行から一括返済を求められずに融資を借り続けられる債務者側の権利のこと
預金口座への差押えで期限の利益を失う
しかしきちんと条件通りに分割返済を行っていても会社の預金口座に差押えが入ると、さきほどの銀行取引約定書の期限の利益喪失条項を根拠に、会社は期限の利益を失います。
期限の利益を失うということは借り続けられる権利を失う、つまり直ちに融資全額を銀行に返済しなければならないということです。
預金口座への差押えにより期限の利益を失う
連帯保証人である社長の預金口座に差押えを受けた
会社の預金口座に差押えを受けると直ちに会社は銀行に融資全額の返済をしなければなりませんが、連帯保証人の預金口座に差押えが入るとやはり銀行取引約定書の期限の利益喪失条項により会社は期限の利益を失い直ちに融資全額を銀行に返済しなければなりません。
会社の社長が連帯保証人になっている場合、その社長の預金口座に差押えを受けると会社は融資の期限の利益を失い、残っている融資全額をただちに銀行に返済しなければならなくなるのです。
なぜ差押えを受けると期限の利益を失うのか
ここでなぜ預金口座に差押えを受けると期限の利益を失い直ちに融資全額を返済しなければならなくなるのかを整理します。
差押えを受けるということは何かしらの支払いが遅れているということです。
そして支払先から通常な複数回の請求が行われたにも関わらず、反応がなく未払いが続いている状況において強制回収手段として差押えが行われることが一般的です。
差押えというものはそうすぐには行われません。
何度も連絡をしているが連絡がつかない、何度も督促をしているが一向に支払いに応じないなどよほどの状況になって初めて差押えが行われます。
そしてなぜ支払いがされていないかといえば、それはやはり資金繰りに窮しているからと考えるのが一般的です。
もしかしたら資金繰りは問題ないもののその他の理由から支払いに応じていないケースもあるとは思いますが、客観的に考えれば資金繰りに窮しており支払いができないと考えるのが妥当なはずです。
差押えは資金繰りに重大な懸念がある危険信号
融資をしている銀行からすれば資金繰りが危ない、融資が回収できない緊急事態と考えます。
そのため銀行としては一刻も早く融資を回収する事態に直面したことになります。
このことから差押えが発生すると銀行は借り手側の期限の利益を喪失させて融資の全額返済を求めることになるのです。
社長の配偶者の預金口座に差押えを受けた
次に社長(連帯保証人)の配偶者の預金口座に差押えが入ったケースです。
社長の配偶者、つまり家族ではあるものの配偶者の預金口座に差押えが入ってもそれが会社の資金繰りに重大な懸念が生じているとは考えられません。
配偶者の資金繰り状況と会社の資金繰り状況は基本的に無関係です。
そのため社長の配偶者の預金口座に差押えが入っても会社の融資には影響が生じることはありません。
社長の親や子供の預金口座に差押えを受けた
社長の親や子供の預金口座に差押えが入ってもそれもさきほどの配偶者のケースと同じ考え方であり会社の融資には影響が生じることはありません。
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差押え後に取れる対処法:解除・回避・交渉で一括返済を止められる可能性
それでは差押えが行われた後に取るべき対応方法を説明します。
まずは差押えの解除に全力を尽くす
差押えを受けると今まで繰り返し説明してきましたように銀行から融資全額の一括返済を求められます。
そのためその原因となった差押えの解除に向けた動きを最優先にしてください。
一例で説明をします。
税金の滞納で預金口座の差押え処分を受けたとします。
まずは税務署や市役所など差押えを行った相手方に連絡をして先方と話し合いを行うようにしてください。
滞納している税金の支払いを行えば差押えは解除されますが、一括納付が難しい場合には分割して税金を支払う分割納付の交渉をしてください。
分割納付で決着すれば差押えは解除されます。
差押えを受けたらそれで決して終わりではありません。
実は差押えをする真の目的は一向に話し合いの場につこうとしない相手方を交渉のテーブルに着かせるための手段であることが少なくありません。
実際に税金滞納で差押えを受けたものの、その後の話し合いの結果、差押えが解除された例は決して少なくありません。
銀行に差押えが解除されたことを報告する
差押えが解除されることになったら、その事実を銀行に伝えてください。
そして差押えを行った税務当局から銀行に差押えの解除通知が到着すれば大きな危機は脱することができます。
期限の利益の再付与
差押えの解除通知を受けた銀行では一旦喪失した期限の利益を再度認めるかどうかの協議を行います。
そして協議の結果、期限の利益が再付与されれば元のように分割返済をしていけば良いのです。
期限の利益が再付与されない場合の対応
しかし銀行で期限の利益の再付与を認めない結論に至ることもあります。
その場合には銀行と残っている融資の今後分割にて返済していくことにつき協議を行ってください。
銀行としても即時一括返済が困難な相手方にいたずらに即時返済を求め続けても現実的ではないことは理解をしています。
期限の利益の再付与は行われないものの、分割返済を求めることも十分にあります。
預金口座の差押えと銀行融資に関する参考事例
それでは実際の預金口座の差押えがあった場合の銀行融資の参考事例をご紹介します。
質問
今、自営業での融資を銀行へお願いしたくて、動いているのですが、消費税滞納の問題があり、門前払いと思っていましたが、相談に行った銀行員が良心的な方で親身に相談にのっていただき、消費税は国税で、市税ではないから、一端置いといて、必要書類を提出すれば、保証協会へかけ合ってくれるとのことでした。
必要書類を準備してる最中ですが、とんでもない事を思い出しました。
借主予定者(旦那)が、銀行口座の預金差押を時々されています。
お恥ずかしい話ですが、10年くらい前、仕事の関係で数台の車を所有していた時の自動車税が、利息が膨らみ、ますます払えず、ほっておいたままです。
今は、住所も変わり、督促も書類も来ませんが、3年ぐらい前に預金差押を受けた事実があります。
どこの銀行にも預金らしい預金は入っていませんので、金額的に数十万預金差押さえたという事はありません。が、何も解決していません。
どう考えても、県内の銀行全てに、預金差押の連絡は出しているでしょうから、生年月日、氏名から、ばれると思います。
そうなると、それが原因で破談の可能性は大いにあるのでしょうか。
融資の期限の利益
預金差押は融資の期限の利益に重大な影響があります。
まず融資の期限の利益というものについて整理をしておきます。
融資の期限の利益というのは融資の期限までは借りていられる、返さなくても良いという借り手側の権利です。
例えば融資金額3,000万円を期間5年の毎月分割返済で融資を受けているとします。
融資を受けてから2年が経過し、毎月元金を50万円ずつ返済しています。
融資の期限までは残り3年です。
ここで融資の期限の利益とは残り3年は毎月元金50万円ずつ返済していけば、期限をまたずに銀行から一括返済を求められることはないということです。
残り3年間は借りていられるというのが融資の期限の利益です。
融資の期限の利益の喪失
しかし一定の出来事がおこるとこの期限までは借りていられるという融資の期限の利益が喪失してしまうことがあります。
融資の期限の利益喪失条項
ではどのような出来事が起こると融資の期限の利益が喪失されるのでしょうか?
それは銀行との融資取引の基本約定書である銀行取引約定書に明記されています。
それが以下です。
①甲について次の各号の事由が一つでも生じた場合には、乙からの通知催告等がなくても、甲は乙に対するいっさいの債務について当然期限の利益を失い、直ちに債務を弁済するものとします。
1.破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始もしくは特別清算開始の申立があったとき。
2.手形交換所または電子債権記録機関の取引停止処分を受けたとき。
3.前2号の他、甲が債務整理に関して裁判所の関与する手続を申立てたとき、もしくは弁護士等へ債務整理を委任したとき、または自ら営業の廃止を表明したとき等、支払を停止したと認められる事実が発生したとき。
4.甲または甲の保証人の預金その他の乙に対する債権について仮差押、保全差押または差押の命令、通知が発送されたとき。
なお、保証人の預金その他の乙に対する債権の差押等については、乙の承認する担保を差し入れる等の旨を甲が遅滞なく乙に書面にて通知したことにより、乙が従来通り期限の利益を認める場合には、乙は書面にてその旨を甲に通知するものとします。
ただし、期限の利益を喪失したことに基づき既になされた乙の行為については、その効力を妨げないものとします。
②甲について次の各号の事由が一つでも生じた場合には、乙からの請求によって、甲は乙に対するいっさいの債務について期限の利益を失い、直ちに債務を弁済するものとします。
1.甲が乙に対する債務の一部でも履行を遅滞したとき。
2.担保の目的物について差押、または競売手続の開始があったとき。
3.甲が乙との取引約定に違反したとき、または第14条に基づく乙への報告もしくは乙へ提出する財務状況を示す書類に重大な虚偽の内容がある等の事由が生じたとき。
4.甲の責めに帰すべき事由によって、乙に甲の所在が不明となったとき。
5.甲が暴力団員等もしくは第15条第1項各号のいずれかに該当し、もしくは同条第2項各号のいずれかに該当する行為をし、または同条第1項の規定に基づく表明・確約に関して虚偽の申告をしたことが判明したとき。
6.甲が振り出した手形の不渡りがあり、かつ、甲が発生記録をした電子記録債権が支払不能となったとき(不渡りおよび支払不能が6か月以内に生じた場合に限る)。
7.保証人が前項または本項の各号の一つにでも該当したとき。
8.前各号に準じるような債権保全を必要とする相当の事由が生じたと客観的に認められるとき。
預金差押は期限の利益喪失に該当
上記の銀行取引約定書の中の赤字の部分をよくご覧ください。
4.甲または甲の保証人の預金その他の乙に対する債権について仮差押、保全差押または差押の命令、通知が発送されたとき。
甲というのは借り手側、つまり債務者のことです。
預金差押というのはその瞬間に銀行が債務者に通知をしなくても、自動的に、当然に期限の利益を喪失することとなります。
つまり融資の期限がまだ先であっても債務者はただちに全額の銀行に返済しなければならないというものです。
預金差押という事実は客観的にみればその差押られた人の資金繰りが大きな懸念があることを示すことです。
今回の質問のケースで税金を長期にわたって延滞していたために税務当局から預金差押を受けたものでした。
税金を滞納しているということは資金繰りの余裕がない何よりも証拠です。
融資をしている銀行からすれば今後の返済に重大な懸念をもつ非常事態に相当します。
そのため期限の利益を喪失させてただちに融資の回収に走る事態となるのです。
預金差押と今後の融資
預金差押を受けたら現在の融資は期限の利益を喪失に全額をただちに一括返済をしなければならない事態でした。
ではその後の融資や現在申し込みをしている融資はどうなるのでしょうか。
預金差押は融資の期限の利益を喪失する重大事態でした。
そのため、当然、今後の融資や現在申し込みをしている融資は受けることはできません。
融資を受けるためにはまずはこの預金差押が解除されることが絶対条件です。
預金差押が解除されれば再び融資が受けられるというわけではありませんが、とにかく預金差押が解除されることが前提条件です。