手形貸付は返済期日に返済することが条件ですが、手形貸付の書換という手続きが時々行われます。
手形貸付の書換とは何かについて実際の実例に沿って説明をします。
手形貸付の書換に関する質問
弊社は手形貸付で700万を借りています。
返済は400万と300万の2回に分けての返済となっています。
1回目の400万は返済したのですが、2回目の300万を期日書換や、証書貸付に変更を相談すると、銀行評価は下がるのでしょうか?
今後の手形貸付の融資は難しくなるのでしょうか?
手形貸付の書換とは
少し質問の事例とは異なりますが例えば3月31日に6ヶ月後の9月30日に一括返済の条件で手形貸付により1,000万円の融資を受けたとします。
9月30日が返済期日ですからこの手形貸付の融資は9月30日に1,000万円を全額返済する必要があります。
しかし9月30日に返済が難しい場合に、振出日を9月30日、支払期日を翌年の3月31日、金額を1,000万円とする新たな約束手形を差し入れて実質的に当初の手形貸付の融資を継続することがあります。
これがまさに手形貸付の書換と呼ばれるものです。
当初に差し入れた約束手形とは別の新たな約束手形を銀行に差し入れることから書換という言葉が使われているのです。
ところでこの手形貸付の書換ができるかどうか、つまり手形貸付の融資の継続ができるかどうかはケースバイケースです。
今回の質問の事例で考えていきます。
質問の事例は書換は原則として不可
手形貸付の返済を2回に分けて行うということはおそらく何か売上代金の回収の見込みがあり、それに合わせて2回に分けて返済をするという返済条件を設定したものだと思います。
例えば工事受注に伴う運転資金の融資で、工事代金が中間と最終の2回に分けて回収見込みであるため、その回収時期に合わせて手形貸付の返済条件とするいうような場合です。
1回目の返済が予定通りできたものの、2回目の返済ができないということは融資を受けた当初と何らかの事情の変更があったことが想像されます。
例えば工事の進行が遅れており、最終代金の回収は延びるというような場合です。
工事遅延の事情による
原則として手形貸付は返済条件にしたがって返済をしなければなりませんから、手形貸付の書換は原則としてできません。
ただし融資先の事情も銀行は考慮する必要があります。
事情如何に関わらずただ返済を求めるということは銀行は行いません。
今回のケースですが例えば他の業者が行っている工事が遅れているために融資先の工事進捗が影響を受けている場合には、工事進捗が遅れている原因が融資先にあるとはいえません。
こういったケースでは事情を勘案して銀行は手形貸付の書換に応じて返済期日を実質的に延長する対応を行うでしょう。
一方で工事が終了しているものの、工事の手違いなどの原因で発注先とトラブルになっているといった事情の場合には銀行も安易に手形貸付の書換に応じるわけにはいきません。
状況によっては手形貸付は手元資金にて返済をするように求めることも考えられます。
手形貸付の書換は返済期日前に相談する
何らかの事業により手形貸付の返済が難しい場合にはなるべく早く銀行に相談をしてください。
手形貸付の書換は返済期日前に相談を行うことが大切です。
返済期日が到来し延滞となってしまい銀行から連絡を受けてから相談をしたのでは銀行も容易には手形貸付の書換には応じません。
事情が変わり返済が難しくなる事例や融資先はいくらでもあります。
したがって銀行としても大きな驚きを持つことはありません。
しかしそれは返済期日前に相談を行うことが前提です。
そして銀行と相談するにあたってはなぜ返済が難しくなったのがその理由を率直に伝えてください。
さらに今後の見通しの説明も欠かせません。
事業を勘案して銀行側はどのような次善策を取ったら良いのかを銀行内で検討をすることになります。
また手形貸付が受けられるか
再び手形貸付が受けられるかどうかは手形貸付の書換の事情により異なってきます。
さきほどの前者の例、つまり他の工事業者による工事が遅れている影響から融資先の工事が遅れている場合には融資先に責任はありません。
こういった事情の場合には、今後再び手形貸付の融資が受けられる可能性は十分にあります。
一方で後者の例のように融資先が原因で工事が遅れており、決まった日に工事代金が回収できないといった場合には、今後再び手形貸付による融資が受けられるかどうかは微妙なものとなります。