銀行に融資の申し込みを行う際には金額と希望時期、それと何に使う目的なのかという資金使途をはっきりとさせることが大切です。
資金使途が不明確なままであると銀行内の融資審査は前には進みません。
今回は資金使途がよくわからない会社からの融資相談事例を融資担当の銀行員が説明をします。
目次
運転資金は要らないですよね
日本の音楽コンテンツを海外に輸出している会社があります。
この会社より今回、運転資金の融資相談がありました。
前々からこの会社からは海外の販売先から代金を前受して、それから日本の音楽会社にコンテンツ代を支払っているとの説明を受けていました。
図で示すと次のようになります。
海外の販売先からの代金の受領が後で、先に日本の音楽会社にコンテンツ代を支払うのであれば運転資金の需要が発生します。
代金を受け取る前に支払う必要があるのですから運転資金が必要であることが理解できます。
しかしこの会社は先に代金を受け取ってから、その後にコンテンツ代を支払うのですから運転資金の必要性がありません。
それにも関わらずこの会社からは運転資金の融資相談があるわけです。
運転資金が不要にもかかわらず運転資金の融資相談
社長との面談
当方:「運転資金としての融資のご相談ですが、御社の資金の流れからすると運転資金の必要性を見出すことができません。なぜ運転資金が必要なのですか?」
社長:「音楽会社にコンテンツ代を支払う必要があるからです」
当方:「しかしその資金は海外からの入金を待って支払うのですよね。なぜ運転資金が必要なのかわからないのですが。何に使う目的なのですか?」
社長:「いや~・・・。先に払わないといけない先もあるので」
当方:「先にコンテンツ代を支払わないといけないとなると運転資金が必要なのはわかります。先に支払わないいけない先は多いのですか?」
社長:「ほとんどは先にもらえるのですが、先に支払わないといけない先も少しあって・・・」
当方:「先に支払わないといけない金額はどれくらいなのですか?」
社長:「2,3百万円くらいですかね」
当方:「今回のご融資の相談金額は3,000万円ですよね。金額の開きが大きすぎるのですが・・・」
銀行が融資の資金使途に拘る理由
社長とのやり取りは終始このような内容でした。
銀行としては運転資金だと言われても、その必要性がわからないと簡単には融資を行うことはできません。
資金使途の流用懸念
運転資金として融資を行ったものが第三者への貸付金に流用されたり、他の借入金の返済に流用されたりするなどのケースは後を絶ちません。
銀行の融資はその融資先に事業に資することを期待して行われるものです。
それが本来の資金使途に反して他の目的に流用されたとなると融資先の事業に資するどころか、逆に事業にマイナスとなることが大半です。
事業にマイナスとなれば融資の返済にも懸念が持たれる状況になりかねません。
このような理由から融資の必要性が乏しい相談には応じることは難しいのです。
なぜ融資が必要なのか、真の資金使途を相談時にはそのことをはっきりとさせてください。
資金使途に違反した場合の代償
ご参考までに銀行融資の資金使途に違反した場合の代償について説明をします。
資金使途に違反した場合の代償
・資金使途に違反した部分の融資の返済を求められる
・資金使途に違反した部分を元に戻すように求められる
資金使途に違反した場合の代償についてはケースケースバイです。
上記の3つの例のうち、どれが適用されるかについては資金使途に違反した事情やその軽重等により個別に判断されます。
全額返済がもっとも厳しい代償となりますが、いずれにしても共通していることはそのままに銀行がしておくということはないということです。
資金使途に違反したものの銀行が黙っているということはありません。
二度と融資は受けられない
上記の3つの事例は資金使途に違反した場合の銀行の実務的な対応です。
しかしこれら以外に資金使途に違反した場合の大きな代償があります。
それは「二度と融資は受けられない」というものです。
資金使途に違反した事実は銀行内ほとんど永久的に記録されます。
資金使途に違反した融資先は不芳先として銀行内でその情報が共有されることとなります。
資金使途に違反するような取引先とは取引を打ち切りたいというのが銀行の本音です。
資金使途に違反した場合、その銀行からは二度と融資は受けられません。
資金使途に違反した場合のもっとも重い代償です。
「社長、何に使う目的(資金使途)ですか?」のまとめ
以上、銀行の融資の資金使途についてまとめますと次のようになります。
まとめ
・資金使途が不明確では審査は進まない
・資金使途に違反するといろいろな代償を被ることとなる
・資金使途に違反するとその銀行からは二度と融資は受けられない