ある解体業からの融資申込事例です。
大きな受注の獲得が予定されていることから運転資金の相談です。
信用保証協会保証付ではなくプロパー融資を希望されています。
銀行の融資審査の考え方を説明します。
債務超過
今回の解体業の会社は年商が4億円程度であり前期は増収増益決算を達成しました。
再来月に規模の大きい解体案件の受注が予定されていることから運転資金の相談です。
増収増益でかつ大きな案件の受注に基づく資金需要ですから前向きに運転資金の融資を検討したいところなのですが、一点大きなマイナス面があります。
それは債務超過だということです。
債務超過とは
債務超過とはこの解体業の会社は設立から10年ほどが経過するのですが設立から現在に至るまでの利益の合計が赤字だということです。
確かに前期は増収増益で黒字の決算でした。
しかし3年、4年前は売上不振で赤字決算でした。
会社は黒字の時も赤字の時もありこの解体業の会社も同様です。
しかし残念ながら設立以来のトータルで見るとこの解体業の会社は黒字よりも赤字の方が大きくその結果、債務超過の状態になっているのです。
債務超過に対する銀行の見方
債務超過というのはその会社が設立以来で考えると赤字体質であることを意味しています。
銀行として融資は必ず返済してもらわなければなりません。
しかし赤字ということは返済が難しいということを意味します。
赤字体質であるということを示す債務超過の事実は銀行にとって融資が検討しづらいことなのです。
プロパー融資
プロパー融資とは信用保証協会の保証付融資ではない銀行の融資です。
信用保証協会は融資に対して保証人になってくれる公的機関です。
銀行としては公的機関である信用保証協会が保証人になってくれれば、融資の回収につき心配は要りませんから非常に融資がしやすいことになります。
これに対してプロパー融資というのは信用保証協会を利用しない融資ですから、万が一融資の回収ができれなければそれは銀行が損失を被ることになります。
銀行としてはプロパー融資はとてもリスクの高い融資なのです。
不動産担保など何か回収の保全になるものがあれば良いのですが、もし担保がなければ融資の回収ができなければそれは銀行の損失に直結します。
プロパー融資の対象となる会社
このようにリスクの高いプロパー融資ですから、プロパー融資が検討可能な会社というのは財務内容が良好な会社であることが大前提となります。
この点においては債務超過というのは財務内容が良好という状態からはかけ離れています。
この解体業の会社からはプロパー融資の希望を受けていますが、しっかりとした担保がない限りプロパー融資を検討することは困難です。
融資審査の結論
今回の資金需要は大きな受注によるものですから、銀行としても運転資金を支援してこの解体業の会社の業績向上に寄与したいところです。
しかしながら債務超過であることや担保がないことからこの会社が希望されているプロパー融資は困難です。
信用保証協会の保証付融資であれば検討可能という結論です。