運転資金として銀行から融資を受けたものを例えばグループ会社に転貸した場合、どうなるかというテーマです。
本来であれば転貸先のグループ会社が融資を受けるべきところを親会社などが融資を受けてそれを転貸するケースといったものです。
転貸融資を行うと銀行融資にどのような影響があるのかについて融資担当の銀行員が説明をします。
目次
運転資金を転貸する
本来であれば運転資金を必要とする子会社などが銀行から融資を受けるべきです。
しかしその子会社が業績が悪くて銀行から融資を受けられない場合に、親会社等が銀行から融資を受けてそれを子会社等に転貸融資するケースで考えます。
運転資金を転貸することは資金使途違反
初めから子会社に転貸することを前提で銀行から融資を受けた場合には、資金使途は子会社への転貸資金ということですから資金使途違反にはなりません。
しかし運転資金として融資を受けたものを子会社に転貸することは資金使途違反です。
運転資金としての融資を転貸することは資金使途違反
子会社が運転資金として利用しても資金使途違反
運転資金として融資を受けた資金を子会社が必要とする運転資金として転貸したとしても、資金使途違反となります。
銀行はあくまでも親会社等の運転資金として融資をしているわけですから、子会社等は関係ありません。
子会社等が運転資金として使用しても資金使途違反
子会社等への転貸融資がなぜダメなのか?
子会社等への転貸融資がなぜ資金使途違反として銀行から指摘を受けてしまうのかを説明します。
運転資金は売上代金回収までのつなぎ
そもそも運転資金というのは売上代金が回収されるまでの間の資金繰りのつなぎです。
一般的に売上は常時発生していますから、売上代金が回収されるまでの資金繰りのつなぎの必要性も常に発生することになります。
そのため銀行が運転資金の融資を行うことにより融資先の資金繰りの安定を支援して、事業が順調に行くことを期待しているのです。
転貸融資は資金繰りを不安定にする
ところがこの運転資金を子会社等への転貸融資に流用してしまうということは、融資先自身の資金繰りを不安定にすることにつながります。
これでは融資をしている銀行の立場としては運転資金の融資の返済に懸念が持たれるということになります。
そのため運転資金を転貸融資に流用することは銀行としては認められないのです。
このため運転資金を転貸融資に流用することは融資契約上、違法であり資金使途違反として銀行は指摘をすることになるのです。
運転資金を転貸融資に流用することは違法で資金使途違反
転貸融資の資金使途違反の代償
それでは運転資金として融資を受けたものを子会社等への転貸融資に流用した場合の銀行の対応について説明をします。
融資全額の即時全額返済を求める
まず銀行が対応を検討することとしては、転貸融資に流用されてしまった運転資金の融資の即時全額返済の請求を検討します。
基本的には転貸融資に流用した運転資金の融資の全額返済を求めます。
転貸融資に流用した運転資金の融資を即時全額返済を求める
転貸融資を取り消すように求める
全額返済までは求めないとした場合、次に銀行が考えることは転貸融資を取り消すように求めるということです。
具体的には子会社等から転貸融資の回収を求めるということです。
転貸融資の取り消しをさせて元の運転資金の融資の戻すということです。
転貸融資を回収しても元の戻すように求める
どの対応を銀行が求めるかはケースバイケース
運転資金として融資したものを転貸融資に流用した場合の銀行の対応は大きく上記2つとなります。
どの対応を銀行が求めるかはケースバイケースです。
融資前に繰り返して銀行が転貸融資に流用しないように警告をしていたにも関わらず、転貸融資に流用した場合には悪質だとして即時全額返済を求める可能性となります。
あるグループ会社への転貸融資の実例
それでは実際にあったグループ会社への転貸融資の実例をご紹介します。
グループ会社の中核企業から運転資金融資の申し出があります。
中核企業を含めてこのグループには計3社のグループ会社があります。
3社のそれぞれの業務は異なりますが、社長は同一人物です。
銀行の着目点について説明をします。
グループ会社間の資金の貸借
グループ会社間の資金の貸借自体はこのグループ会社の自由ですから銀行がとやかく言う立場にはありません。
しかしグループ会社間で資金の貸借を行っているところから融資の申し出がある場合には銀行は要警戒態勢となります。
本当に運転資金に使うの?
例えば運転資金として融資の相談があった場合には本当に運転資金として融資した資金が仕入資金や人件費などの運転資金に使用されているかどうか、疑問を持ってしまいます。
今、私たち銀行員は従来以上に資金使途に神経をとがらせています。
銀行融資の代表的な資金使途には運転資金、設備資金、決算資金、賞与資金の4つがありますが、この融資の使途どおりに使われているかどうかを注意しているのです。
というのは、融資した使途以外に資金が使われた場合、経験則上、その会社の業績が悪くなる、また資金繰り破綻に至るケースが多いためです。
他の会社への転貸資金に使われるのでは?
今回のようにグループ会社間で資金の貸借が行われているところから運転資金としての融資相談があった場合、銀行員がまず考えるのはまた他のグループ会社への転貸に使われるのではないかという懸念です。
もしグループ会社への転貸に融資が使用されてしまえば資金使途違反であることを当然のこととして、何よりも融資を受けた会社には何らプラスにはなりません。
融資の返済原資は最終的には事業活動によって得られる利益です。
しかしながらグループの他の会社への転貸資金に融資が使用されてしまえば、融資先には何らプラスにはならず利益を生み出すものではありませんから銀行としては融資の回収に懸念を持ってしまうのです。
資金繰りの悪化
また銀行から受けた融資を他のグループ会社に転貸してしまえば、融資の受けた会社の資金繰りには何らプラスにはなりません。
プラスになるどころかその後の融資の返済を考えれば資金繰りを悪化させることになります。
実際に融資実務でも多いことなのですが、転貸した融資先は資金繰りが悪化し返済に窮する実例が少なくありません。
銀行の融資姿勢
結論から申し上げてグループ会社間で資金の貸借がある先からの融資申し出に対しては基本的に銀行は融資謝絶を念頭にした対応を取ります。
グループ会社間で資金の貸借が多く行われている場合、そのグループ会社全体で資金繰りが苦しい場合が少なくありません。
資金繰りが苦しく銀行からの融資もスムーズに受けられないためにグループ会社間で資金の貸借・融通を行い資金繰りを回しているのです。
このようにグループ会社間で資金を回している場合にはどこかの会社の資金繰りがショートした場合、その影響はグループ会社全体に連鎖します。
銀行としては怖くて融資などできません。
転貸融資は違法なのでしょうか?のまとめ
以上、運転資金として融資を受けたものを子会社等への転貸融資に流用した場合についてまとめますと次のようになります。
まとめ
・銀行は原則として融資の即時全額返済を求める
・ケースによっては転貸融資を取り消すように求める
・転貸融資への流用は必ず銀行にわかる