融資担当の銀行員から「運転資金の折り返し」という説明を受けたことがありませんか?
銀行での融資現場ではしばしば運転資金の折り返し融資を行っています。
運転資金の折り返しとは何かを説明します。
目次
運転資金の折り返しは長期運転資金で発生する
運転資金の折り返しは現在の運転資金の融資が長期運転資金の場合によく発生します。
長期運転資金の返済方法は毎月の分割返済が大半ですから、融資後の時間の経過とともに徐々に運転資金の融資残高は減少していきます。
運転資金は常に必要なもの
ところで運転資金というのは売上代金回収までのつなぎ資金の位置づけです。
売上代金が売上の発生とともにすぐに手元に入れば、その資金にて仕入資金の支払や従業員への給与支払いなどに充てることができます。
しかし多くの事業では掛売りで行われているために売上が発生してもすぐにその代金は手元には入ってきません。
そのために運転資金が必要となるのです。
ということは運転資金は事業を継続している限りは常に必要な資金です。
長期運転資金は返済付
ところが長期運転資金はさきほども説明をしたように毎月の分割返済の形態となることが大半です。
では長期運転資金の毎月の返済の元手は何かと言うと、それは売上代金の回収金です。
売上代金の回収金は本来は仕入資金の支払や給料の支払に充てたいところですが、その一部を割いて長期運転資金の返済に充てていることになります。
そうしますと長期運転資金を返済した分だけ運転資金が不足していくということになります。
長期運転資金にて運転資金を調達したものの、その後の返済でまた運転資金が不足していくということです。
折り返しとは長期運転資金融資の復元
そこで運転資金の折り返しが登場してきます。
長期運転資金の返済により運転資金が不足してきますから、その長期運転資金を元の金額まで戻して返済で不足した運転資金を再び融資することが運転資金の折り返しです。
運転資金の折り返しを具体的な数字で説明をします。
当初3,000万円の長期運転資金を期間3年の分割返済で融資を受けたとします。
期間3年の分割返済ですから1年の返済額は1,000万円となります。
当初3,000万円で利用した長期運転資金融資は1年後には2,000万円の残高になっていることになります。
そこで現在残高2,000万円になっている長期運転資金融資を再び3,000万円の長期運転資金融資に戻すことを運転資金の折り返しと言います。
融資実務においては3,000万円の長期運転資金を実行し、同時に現在残高2,000万円の長期運転資金を全額繰上返済してもらいます。
これにより返済による不足した運転資金1,000万円が3,000万円-2,000万円=1,000万円で復元します。
このように返済が進んだ長期運転資金の融資を元の金額まで融資額を戻すことを運転資金の折り返しと呼んでいます。
長期運転資金を期日一括返済にはできない
運転資金は常に必要であるので、分割返済とはせずに期日一括返済とすれば期日までは返済がありませんから、運転資金が不足するようなことにはなりません。
そのために長期運転資金の融資は期日一括返済とすれば良いのではないかということになるのですが、それではいつまでたっても融資残高が減少しませんから銀行にとってはリスクが高すぎます。
その融資リスクを低減させるために長期運転資金は毎月の分割返済とすることが一般的なのです。
折り返しは必ず受けられるとは限らない
ところでこの運転資金の折り返しですが、融資残高が減ってくれば必ず銀行が折り返しをしてくれるとは限りません。
銀行が運転資金の折り返しを行うかどうかはその時点での融資先の業績によります。
仮に業績が悪化していれば融資の回収への懸念が増加しますから、運転資金の折り返しをして融資額を増やすようなことはできません。
業績が無難であれば運転資金の折り返しに銀行は対応しますが、業績が悪化していれば運転資金の折り返しを行わないという銀行判断があります。
運転資金の折り返しは必ず受けられるかどうかはわからない。
この点には注意が必要です。