銀行との取引振りを拠り所にプロパー融資


2014年01月15日

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今回は取引振りを回収の拠り所にして行ったプロパー融資の事例です。
私が以前担当していた法人にクリーニング屋さんK社がありました。
自社で10店舗ほどのクリーニング店を営み、他のチェーン店に依存することなく、自力で事業を行っていました。
金融機関の取引は当行と地元の信用金庫の2行体制。
当行は主にK社の行ってきた新規店舗展開を資金面で支援を行っています。
もっとも経営は決して楽ではありません。
全体的に見られるクリーニングの取扱量の減少や、原油高の影響によるコスト高騰で採算は低下しています。
それでもK社は徹底したコスト削減に努めて、何とか赤字転落だけは回避出来ています。

毎年一定の資金調達が必要
しかしながら、年々の採算低下で毎年生み出されるキャッシュフローも低下しています。
新規店舗展開のための借入金も多く、到底自社のキャッシュフローだけでは返済を賄うことは出来ません。
毎年、一定額の資金調達が必要な状態であり、当行も信用保証協会の保証付融資にてこの資金需要に対応してきました。
決算期が更新となり、私はK社に出向いて最新の決算書をいただきました。
あわせて今年度の資金計画について聴取をしました。
K社の社長からは
・今年度も前期並みの水準を維持するのがやっとであること
・年間の借入返済額が約5,000万円ほどあるが、やはりすべてを自己資金で充当することは困難であること
・先行きの見通しも決して楽ではないため、可能であれば今年度は年間返済額相当の5,000万円の資金調達を行いたい
といった相談を受けました。

信用保証協会保証付で検討するも
私は従来通り、信用保証協会の保証付融資での対応をまずは考えました。
しかし不安がありました。
それはK社の信用保証協会の保証利用残は相当な金額に達しており、前回信用保証協会を利用した際、協会の担当者からは「当面は新規の保証は困難」との言質を受けていたからです。
銀行に戻って私はさっそく信用保証協会に連絡を取り、最新の決算書をもとに新規保証の可能性について照会を行いました。
数日後、信用保証協会から連絡があり、やはり予想していた通り厳しい回答が返ってきました。
それはこれ以上の無担保での保証は無理というものでした。
かといってK社に担保となるような不動産などの資産はありません。
社長の自宅は社長名義ですが、住宅ローンの抵当権が設定されており、それを考えると担保余力は残っていない状態です。

取引先からヒントを与えられる
数日後、私はK社の社長と面談をしました。
信用保証協会の回答状況を伝えるとともに、もしかしたら私が知らない担保となるような資産はないかと思い、質問を行いました。
ただやはり、K社や社長自身に新たに差し入れ可能な担保資産を見出すことは出来ませんでした。
K社の社長の前で私が困った顔をしていると、社長から「銀行さん。信用保証協会や担保もいいけど、うちはお宅に毎日の売上金を入金していますよ。その日々の入金額を見れば、うちのリアルな業績がわかると思う。日々の売上金の入金を担保と見てくれませんか?入金を他のところに持っていくようなことはしませんから」。

取引振りの状況を確認
確かにそうなのです。
日々の売上金の入金からK社の状況は手に取るようにわかるのです。
私は恥ずかしながら、融資取引以外のK社との取引振りについて頭に入っていませんでした。
銀行に帰って検討させてほしい旨を言い残して私はK社を出ました。
銀行に戻ってから、私はさっそくK社との取引振りについて数年分を確認しました。
預金の平均残高と毎月の平均入金額はつぎのとおりでした。
確かに預金平残、月入金額とも年々低下傾向にはあるものの、一定の金額は見込める状態でした。
K社の社長の言われる通りだったのです。
K社の業績は決して楽観視は出来ない状態ではありましたが、だからといって今すぐに危険な状態になるとは客観的には考えられない状態でした。
K社の取引振りの状況から見て、2,000~3,000万円程度は現時点である意味で担保として見ることが出来ました。

当行返済分を取引振りを拠り所にして支援
K社全体の年間借入返済額は5,000万円です。
そのうち当行分の返済額は2,000万円程度でした。
私はこの当行分の年間返済額である2,000万円を取引振りを拠り所としてプロパー融資での対応を検討することになりました。
私は上司に、
・K社とは15年程度の取引歴があること
・不動産などの物的担保を徴求することは難しいが、取引振りは安定していること
・当行分の年間返済額は2,000万円であり、プロパー融資で対応しても取引振りから考えられる拠り所の範囲内であること
を説明し、支援を行いたいことを訴えました。

幸い、上司も私の考え方に納得をしてもらいました。
ただし上司からは、10店舗の店別の収支状況は押さえておくことといった指示が出ました。
私はこのことをK社の社長に伝え、当行返済相当額をプロパー融資で検討していること、そして店別の収支状況を教えてほしいことを伝えました。
社長からは店別の収支状況は日々把握していると言われ、その場で前年度の店別の収支状況をまとめた一覧表をいただきました。
この一覧表によるとすべての店舗が黒字ではありませんでした。
しかし赤字店舗に対する対策をK社の社長はすらすらと私に説明してくれました。
社長はきちんと赤字店舗のことを把握しており、それに対する対策も日々考えていたのです。
こういった姿勢は銀行としては非常に評価出来るポイントです。
私は銀行に戻ってK社から徴求した店別の収支状況の一覧表をもとに上司に状況を報告するとともに、赤字店舗に対する社長の対応を説明しました。
このようにしてK社に対しては当行との取引振りを保全の拠り所としてプロパー融資を実行しました。






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