会社の社長が債務整理をした場合、そのこととは切り離して会社が銀行から融資が受けられるものでしょうか。
銀行の考え方を説明します。
社長と会社の関係
中小企業の場合ですが銀行は会社と社長は実質一体だと見做しています。
例えば会社の資金繰りが苦しい場合、銀行から融資を受ける他に社長が会社に個人の資金を貸し付けることはよく目にすることです。
上場企業などの大企業の場合には会社と社長の関係が分離されていることが多いですが、オーナー色が強い中小企業の場合には会社と社長との結びつきが非常に強いと考えられます。
このことは社長の信用状態が悪いということは一心同体の関係にある会社の信用状態も悪い可能性が高いと考えられます。
社長が債務整理をした
銀行との融資取引の基本契約書である銀行取引約定書では債務者(会社)に債務整理の事態が発生したら、債務者は期限の利益を当然に失うとされています。
①甲について次の各号の事由が一つでも生じた場合には、乙からの通知催告等がなくても、甲は乙に対するいっさいの債務について当然期限の利益を失い、直ちに債務を弁済するものとします。
1.破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始もしくは特別清算開始の申立があったとき。
2.手形交換所または電子債権記録機関の取引停止処分を受けたとき。
3.前2号の他、甲が債務整理に関して裁判所の関与する手続を申立てたとき、もしくは弁護士等へ債務整理を委任したとき、または自ら営業の廃止を表明したとき等、支払を停止したと認められる事実が発生したと
4.甲または甲の保証人の預金その他の乙に対する債権について仮差押、保全差押または差押の命令、通知が発送されたとき。
なお、保証人の預金その他の乙に対する債権の差押等については、乙の承認する担保を差し入れる等の旨を甲が遅滞なく乙に書面にて通知したことにより、乙が従来通り期限の利益を認める場合には、乙は書面にてその旨を甲に通知するものとします。
ただし、期限の利益を喪失したことに基づき既になされた乙の行為については、その効力を妨げないものとします。
これは銀行取引約定書の抜粋です。
期限の利益を失うとは簡単に言えば借りている融資を直ちに全額返済しなければならないということです。
このくらい債務整理の事実については銀行は深刻な事態と考えています。
しかしながら社長と会社は実質一体だとすると、社長に債務整理の事態が発生すれば会社の信用状態も重大な事態だと銀行は考えます。
現在、会社宛に融資しているものを直ちに全額返済することを銀行は求めることは出来ませんが、追加の融資を行うことはまずありません。
一方で社長が債務整理をしても銀行取引約定書上では債務者(会社)が期限の利益を失うとはされていません。
なお4のところで保証人、つまり社長の預金に仮差押等の事態が発生すれば債務者(会社)はやはり期限の利益を失うとされています。
債務整理と仮差押は異なることですが、債務整理をしなければいけない状況はいつ差押が入ってもおかしくない状態だと言えます。