他行の動きと融資判断

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他行の動きを見定めて融資実行

融資を行うか否かの判断においては他行の動きも重要な判断材料となります。
業績が順調で取引銀行からのそれぞれの借入金額が少ない場合にはそれほど他行の動きを気にする必要はないかもしれません。
他行も積極的に融資営業を行っていることが推測されるからです。
問題なのは業績の良し悪しは別にして借入金額が大きく、取引銀行からそれぞれ相応の金額を借入している場合です。
借入金額が大きくなると自然と返済額も多くなります。
返済資金をすべて手許資金にて賄うことが出来る会社はそれほど多くはありません。
むしろ多くの会社が返済による資金繰りの悪化を防ぐために、一定の借換資金の調達が必要となります。
このような場合には銀行一行だけで資金繰りを支えることは難し、それぞれの取引銀行が借換資金等の融資に行い複数の銀行にて資金繰りを支える必要が出てきます。

主要銀行一行からの融資残高が減少

以前管理者が担当していた取引先にEE 社があります。
企業の人事関係のコンサルタントを手掛けている会社で、上場企業のコンサルタントも請 け負っており事業基盤は確立されていました。
ところがコンサルタント料、つまり当社の売上の回収はコンサルタントが終了した時点の一括払いであったため、売上回収期間が長期になってしまう傾向がありました。
例えばコンサルタント期間が1年であれば、1年後にやっと売上が回収出来るということです。
その間の人件費をはじめとした必要経費は当社が立替する必要がありますから、当然所要運転資金が膨らんできます。
そのため銀行からの運転資金借入も多く、複数の取引銀行から相応の支援を受けていまし た。
そのような EE 社から決算説明を受けた時点で、今後 1 年間分の返済額に匹敵する融資の依頼を受けました。
いわゆる折り返し資金の要請です。
私は検討することを約束しました。
そして新しい決算書の分析から融資の可否の判断をスタートさせました。
業績はまずまずです。
売上利益とも前期比増収増益の状態であり、今後のコンサルタント契約予定から今期もほぼ前期並みの業績が維持出来ることが想像されました。
ところが気になった点が 1 つありました。
それは他行の融資残高の推移です。
EE 社は当行を含めて 5 つの金融機関から借入をしていました。
ほとんど金融機関からの借入金残高にそれほど大きな変動はなく、これらの金融機関は当社の要請等に応じていわゆる折り返し資金に対応していることが想像されました。
ところが 2 番目に融資残高の大きい M 銀行の残高が気になりました。
前期比大きく減少しているのです。
私は過去の決算書を引っ張り出してM 銀行の融資残高の数年間の推移を確認しました。
その結果、およそ 2 年前より M 銀行からの融資残高が減少していることがわかりました。
EE 社にM 銀行からの借入状況について問い合わせを行いました。
EE 社からは M 銀行には折り返し資金をお願いしているものの、なかなか応じてもらえていないという回答でした。
それを補うために当行を含めて他行からの借入金が少しずつ増加しています。
つまり EE 社は M 銀行からの融資が受けられないため、M銀行宛返済資金に見合う部分を他行への融資依頼額に上乗せして調達して M 銀行に返済金額部分を埋め合わせしていたのです。

他行の融資応諾が条件

ここで問題になるのは M 銀行の今後の対応に加えて、他行の動きです。
他行も M 銀行がここしばらく融資に応じていないことに気付くはずです。
そうなると他行の銀行も今後の M 銀行の対応を見守り、今までのように容易に折り返し資金の融資に応じない可能性が出てきます。
そうなると EE 社の資金繰りは窮地に陥ってしまいます。
私は上司に相談しましたが、やはり同じ考えでした。
関係者とも協議した結果、他行、特に M 銀行の動きを見定めてから当行の融資可否を判断 するという結論に達しました。
つまり M 銀行や他行が今期の折り返し資金の融資に応じたことを見定めてから、当行も融 資に応じるということです。
これは当行が折り返し資金に応じても M 銀行をはじめ他行が融資に応じなければ、当社の資金繰りが回る可能性が少なくなり、当行の貸し倒れが増えてしまう懸念があるというこ とです。
そのために他行の融資に応じたことを見守り、他行からの調達を確認し、つまり EE 社の資金繰りがひっ迫しないことを確認したうえで融資に応じるということです。

私はこの結論を EE 社に伝えました。
当方:「先日依頼をいただきましたご融資の件ですが、現在検討させていただいております。ところで M 銀行さんからの借入がここしばらく行われていないように見えますが実際はど うなのでしょうか」
先方:「他の銀行さんからも同じようにことを指摘されています。M銀行には以前から繰り返して融資のお願いはしているのですが、なかなか良い返事がもらえていません。M 銀行に はお宅が融資に応じてもらえないと他の銀行さんも融資をしてくれないと訴えているので すが・・・」
当方:「そうなのです。今社長が言われたとおり御社の主要な取引銀行である M 銀行の動きはどうしても私たちも気になります。当行の考え方としては少なくとも M銀行が融資を実 行することが当行融資の条件となりました。ですから何としてもM銀行から融資が受けら れるよう交渉をお願いします」
先方:「わかっています。残念ながら御行をはじめ銀行さんから今年も融資を受けないと、返済が出来なくなります。M銀行の対応には我々も腹立たしく思っているのですが喧嘩してもしょうがないですからね。ここはじっと我慢してM銀行との交渉を進めていきます」
当方:「ぜひそのようにお願いします。M銀行の反応についてはまた教えてください。どうぞよろしくお願いします」
先方:「わかりました。お宅をはじめ銀行さんから融資が受けないと本当に困りますからね。状況についてはまた連絡しますよ」
後日談にはなりますが結果としてM銀行は約 2 年ぶりに EE 社に折り返し資金の融資を実行 しました。
M銀行が融資に応じたことで当行をはじめ他行も融資を行い、EE 社の資金繰りに支障が出ることは回避することが出来ました。
EE 社の社長もほっとした表情をうかべていました。



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