税金対策で赤字にしたというケースが少なくありません。
しかし赤字の理由が税金対策であってもそれは銀行には通用しません。
税金対策で赤字にした場合に銀行がどのように考えるかについて融資担当の銀行員が説明をします。
目次
ある中小企業の事例
ある中小企業から運転資金の融資申し込みを受けています。
既に私の銀行とは融資取引がある中小企業で、日ごろから元気のある社長さんで、私としても前向きに融資を検討すべく新しい期の決算書をいただきました。
下の図は最近3期の損益計算書です。
売上増だが赤字決算
日ごろから売上が伸びていることを聞いていましたが、その通り前期対比売上は確かに増加しています。
ところが売上が増えている一方で赤字決算になっています。
赤字決算の理由について社長からは「僕はとにかく税金を払いたくない。そのため社員にボーナスを支給したりして赤字にし税金を払わないようにした」との説明でした。
さらに「応接セットなどを買って一括して償却した」との説明もありました。
つまり税金対策で決算を赤字にしたということです。
過度の税金対策で赤字決算
中小企業によくあるパターンですが、税金を払いたくないために過度の税金対策をし、その結果、赤字決算に「わざと」することがあります。
確かに税金を払いたくないという気持ちはわかります。
毎日汗水たらして商売を行い、決算時にポンと利益の半分の税金を取られる・・・。
冗談ではないと。
もう現状で満足で、これ以上会社を大きくしたくないというのであれば、それでもよいかもしれません。
しかしこの中小企業の社長の場合、事業意欲は旺盛で、また日々よく研究をされており、次のステップへの挑戦を考えている社長さんです。
税金対策で赤字にしたという説明を銀行はそのまま受け止めない
ところで税金対策で赤字にしたと銀行に説明をしても、銀行はその説明をそのまま受け止めることはしません。
決算が赤字であれば赤字だと銀行は受け止めるだけです。
税金対策で赤字という理由を銀行が信じることはありません。
税金対策であろうとなかろうと赤字であれば本当に赤字だと銀行は考えます。
銀行は税金対策と言う理由を信用しない。 赤字であれば赤字だと銀行は考えるだけ。
赤字に対する銀行の見方
この図は赤字に対する銀行の一般的な見方です。
銀行の融資業務においてもっとも大切なことは融資のボリュームを増やすことではなく、融資を最後まで回収することです。
もし融資が回収できなければ銀行が損失を被ることとなります。
株式会社である銀行は一般企業と同じように損失を被ることは絶対に避けたいところです。
赤字は返済が出来ないということを示します
事業拡大の過程においては新たな資金調達が必要なこともあると思います。
しかしながら赤字決算ではどうしても銀行の融資目線は厳しくなってしまいます。
融資は返済していただくことが前提ですが、赤字決算ということは融資の返済が不可能ということを意味しているからです。
返済が不可能にもかかわらず融資を実施するということはありえません。
決算書は銀行融資審査の重要は判断材料
しかし、そのために税金対策の考えもあって「わざと」赤字決算にするのは考えものです。
どれだけ熱く事業について話してもらっても、融資審査において重要は判断資料となるのは客観的な数字である決算書です。
本当は黒字だけれど税金対策で赤字にしただけと言われてもそれを銀行は正面から聞くことはありません。
実際はそうだとしても、融資審査は決算書に記載されている数字での判断が基礎となるからです。
つまり税金対策で赤字にしても銀行は赤字だから融資の返済に懸念を持ち融資に慎重な姿勢になるということです。
本当は黒字だから融資をしても大丈夫と銀行は考えることはありません。
赤字だからという理由で一切融資をしないということではないが・・・
赤字決算だからということで融資をすべてお断りすることはありません。
赤字決算であっても融資を実施する場合はいくらでもあります。
しかしこの場合、社長が希望している金額には届かない場合がほとんどです。
過度の税金対策で赤字決算にして税金対策に成功しても、そのツケは後で回ってくるような気がします。
社長が展望する事業拡大に銀行がついていけないのです。
融資したくても客観的な重要な融資判断材料である決算が赤字の連続であれば、社長の考えは理解できても、融資は難しくなります。
税金対策は常識の範囲内にとどめてください。
会社が儲かるためにはきちんと税金は払わないといけないとおっしゃる社長さんもいらっしゃいます。
税金対策で赤字決算にしましたは通用しませんのまとめ
以上、税金対策で赤字にした場合の銀行の考え方についてまとめますと次のようになります。
まとめ
・赤字であれば赤字だと銀行は考えるだけ
・赤字であれば返済に懸念が持たれ融資に銀行は慎重になる