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銀行融資の基本 融資審査マンの見方 資金繰り

なぜ在庫で運転資金が必要になるのか?

運転資金は事業を継続する上で欠かせない資金繰りの中心になる存在です。
運転資金を左右する要因の1つに在庫があります。
現実に在庫が原因で運転資金に窮することがあります。
なぜ在庫が運転資金を左右する要因となるのかについて融資担当の銀行員が説明をします。

運転資金の仕組みを理解する

なぜ在庫が運転資金を左右する要因となるのかについては資金の循環で考えるとわかりやすいです。

資金の循環

お金の循環
この図は製造業を例にして資金の循環を簡単に示したものです。
まず製品を製造するには原材料が必要ですから、手元の資金を使用して原材料を購入します。
そしてこの原材料を使用して製品を製造します。
この製品は販売されて売上が発生し、販売先から売上代金を回収します。
手元の資金は原材料→製品→売上代金の過程を経て、ようやく手元に再び戻ってきます。

運転資金とは

つまり手元資金は原材料から製品、販売までの間は手元にはない状態です。
売上代金は仕入の支払いや従業員への給与の支払いの原資となるものですが、手元に売上代金がまだ回収されていなければその間は別の資金を準備して仕入の支払いや従業員への給与の支払いに対応する必要があります。
この売上代金がまだ手元に回収されていない状態で必要になる資金が運転資金です。

売上代金が回収されるまでの間に必要となる資金が運転資金

在庫は手元に資金が戻ってきない状態

在庫はさきほどの製造業の例では原材料及び製品となります。
この原材料や製品の状態はまだ手元に資金が回収されていない段階です。
手元に資金が回収されていない状態ですから運転資金が必要となる状態です。
このように原材料や製品の在庫は運転資金が必要となる要因となるのです。

在庫の状態が長いほど必要な運転資金は多くなる

在庫の状態が長いということはまだ製品は販売されていない状態が長くなるということです。
製品が販売されなければ売上代金として手元に資金は入ってきません。
したがって在庫の状態が長ければ長いほど必要な運転資金は多くなります。
このように在庫は運転資金を左右する要因となるのです。

在庫が多いほど必要な運転資金は多くなる

在庫が原因の運転資金の融資に銀行は慎重

ところで在庫が主な原因となる運転資金の融資には銀行は基本的に慎重姿勢です。
なぜ在庫が主な原因となる運転資金の融資に銀行は慎重だと思いますか?
在庫の増加を要因とする運転資金融資は銀行が警戒するものの1つです。
在庫が増加しているから融資をと銀行に相談しても簡単に融資は通りません。
在庫の増加を要因として運転資金融資を相談する際のポイントを説明します。

在庫増加による資金需要は厳格な銀行融資審査

在庫の増加のための資金需要に対しては銀行融資の審査は非常に厳しいのが現実です。
それは在庫増加の資金需要のほとんどは事業経営にとって前向きではなく、後ろ向きの場合がほとんどだからです。
なお在庫増加による所要運転資金は次の算式により計算出来ます。
在庫増による所要運転資金=平均月商×棚卸資産(在庫)回転期間増加月数

在庫増加を銀行が警戒する理由

なぜ在庫の増加を要因とする運転資金融資を銀行が警戒するのかと言えば、それは業績への悪影響と資金繰りへの悪影響の2つの原因となるからです。

業績への悪影響

在庫が増加しているということは販売が出来ていないという面があります。
在庫を保有してもそれがどんどん順調に販売されていれば在庫が目に見えて増加するということはありません。
在庫が増加して運転資金融資を申込まないといけない状態というのは大半の場合は売上の不振が背景にあります。
当然のことながら業績に悪影響を及ぼします。

資金繰りへの影響

お金の循環
この図はさきほどの事業におけるお金、つまり資金の循環を示したものです。
在庫は製品を意味しますがこの製品が販売されて初めて手元にお金が戻ってきます。
しかし在庫が増加しているということは製品がなかなか販売されていないということですから、手元にお金がなかなか戻ってこないということになります。
そのため資金繰りが悪化して運転資金融資を銀行に相談しないといけなくなるわけです。
資金繰りは事業の維持、発展に必要不可欠なものですし、万が一資金繰りがショートしてしまえばその時点で事業は破綻してしまいます。

銀行融資審査の目線

在庫の増加に伴う運転資金融資の審査では次のような目線で審査を行います。

・在庫増加は経営戦略と照らし合わせて合理的な理由はあるのか
・増加した在庫は売れる見込みはあるのか
・増加した在庫の販売先は決まっているのか
・本当は不良在庫化しているのではないか
・架空の在庫は計上されていないか
・期末の押し込み販売で大量の返品があったのではないか

過去の決算書での在庫回転期間や直近試算表での在庫回転期間の推移を分析しながら、融資先からの申し出の妥当性を審査することになります。
しかし先ほども説明したように、在庫増に伴う資金需要のほとんどは前向きなものではなく、不良在庫化など後ろ向きな場合がほとんどであり、不良在庫化などによるものであれば、その在庫が売れて融資金の返済原資が確保出来るわけではありませんので、融資の危険性が高く、審査基準は非常に高いのが現実です。

なぜ在庫で運転資金が必要になるのか?のまとめ

なぜ在庫で運転資金が必要になるのかについてまとめますと次のようになります。

まとめ

・在庫は販売前の状態であり売上代金がまだ回収されていない状態
・運転資金とは売上代金が回収されるまでに必要となる資金のこと
・そのため在庫のままでは運転資金が必要となる
・在庫増加に伴う運転資金融資には銀行は慎重

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