銀行融資の基本・審査

銀行が安心して融資できる会社の財務管理とは?銀行員が教える7つの実践方法

「銀行から安心して融資を受けられる会社にするには、何を改善すればよいのだろうか」

「毎年の決算書は提出しているが、銀行からの評価がよくわからない」

「資金繰りや借入金の管理を強化したいが、どの数字から確認すればよいのかわからない」

このような疑問を持つ中小企業経営者は少なくありません。

銀行が融資を検討する際、重視するのは決算書の利益だけではありません。現在の資金繰り、借入金の返済能力、財務内容の変化、経営者が自社の状況をどの程度把握しているかなども確認します。

もちろん、財務管理を徹底すれば必ず融資を受けられるわけではありません。しかし、自社の数字を継続的に把握し、問題があれば早期に改善できる会社は、銀行に対して融資判断に必要な根拠を示しやすくなります。

銀行融資の現場では、決算書の数字が良い会社でも、足元の業績や資金繰りが把握できなければ、融資判断を慎重に進めることがあります。

一方、一時的に業績が悪化していても、その原因を把握し、改善策と今後の資金繰りを具体的に説明できる会社であれば、銀行が検討するための材料が増えます。

この記事では、長年にわたり法人融資・融資審査に携わってきた銀行員の視点から、銀行が安心して融資を検討できる会社の財務管理と、社長が毎月実践したい7つの方法を解説します。

この記事でわかること

  • 銀行が財務管理を重視する理由
  • 銀行が安心して融資を検討できる会社の特徴
  • 社長が実践したい7つの財務管理
  • 銀行への説明に役立つ具体的な資料と数字
  • 財務管理が不十分な会社の改善手順
  • 自社の財務管理を確認できるチェックリスト

銀行が安心して融資できる会社とは

銀行にとって安心して融資を検討できる会社とは、単に売上高が大きい会社や、直近の決算が黒字の会社ではありません。

重要なのは、事業活動によって借入金を返済できる見通しがあり、その根拠を客観的な数字で確認できることです。

銀行の融資審査では、融資した資金がどのように使われ、事業活動によってどのように回収・返済されるのかを確認します。

例えば、次のような会社は、銀行が融資判断に必要な材料を把握しやすいと考えられます。

  • 毎月の試算表を作成し、業績の変化を把握している
  • 今後の資金繰りを予測し、資金不足を早期に発見できる
  • 借入金残高と年間返済額を正確に把握している
  • 売掛金や在庫の増加を管理している
  • 利益だけでなく現預金の増減理由を説明できる
  • 財務上の問題に対して具体的な改善策を実行している
  • 銀行に必要な資料を適切な時期に提出できる

これらは融資承認の条件を列挙したものではありません。銀行が会社の経営状況と返済見通しを理解するうえで、役立つ管理項目です。

決算書が良いだけでは十分ではない

例えば、前期決算で利益を計上していた会社があるとします。

ところが、決算期以降に主要取引先からの受注が減少し、直近3か月は赤字になっていたとします。

この場合、銀行は前期の黒字決算だけを根拠に、今後も返済できると判断することはできません。

現在の受注状況、利益の推移、資金繰り、借入金の返済予定などを確認する必要があります。

銀行が確認したいのは、過去の業績だけでなく、融資実行後も会社が資金繰りを維持し、返済を続けられるかどうかなのです。

銀行が財務管理を重視する3つの理由

理由1.足元の業績を把握するため

決算書は通常、年1回作成されます。

しかし、銀行が融資を審査する時点では、決算期から数か月が経過していることも珍しくありません。

その間に売上高や利益が変化している可能性があるため、銀行は試算表などによって現在の業績を確認します。

会社が月次で業績を管理していれば、売上減少や利益率の悪化が起きた場合にも、原因を説明しやすくなります。

理由2.借入金の返済能力を判断するため

銀行融資の返済能力は、借入金残高の大きさだけで決まるわけではありません。

会社が生み出す利益やキャッシュフローに対して、年間の元金返済額がどの程度あるかが重要です。

銀行は、既存借入金の返済に加えて、新たな融資を受けた場合にも返済を継続できるかを確認します。

理由3.問題が発生した場合の対応力を確認するため

会社経営では、売上の減少、取引先の倒産、原材料価格の上昇、設備故障など、予想外の出来事が発生します。

その際、自社の財務状況を把握していなければ、資金不足が深刻化するまで問題に気づかないことがあります。

一方、毎月の財務管理を行っていれば、問題を早期に発見し、資金調達や経費削減などの対策を検討できます。

銀行にとっても、経営者が状況を把握し、対策を説明できることは重要な判断材料になります。

銀行が安心して融資を検討できる会社の財務管理7つの実践方法

1.毎月の試算表で売上と利益を確認する

最初に取り組みたいのが、毎月の試算表による業績管理です。

試算表を作成していても、社長自身が内容を確認していなければ、十分に活用できているとはいえません。

少なくとも、次の数字は毎月確認したいところです。

  • 売上高
  • 売上総利益と売上総利益率
  • 営業利益
  • 経常利益
  • 前年同月・前年同期との比較
  • 計画に対する実績

例えば、売上高が前年同期と同じでも、粗利益率が低下していれば、営業利益が減少する可能性があります。

売上高だけを見ていると、この変化を見落としてしまいます。

銀行に対しても、「売上は横ばいですが、仕入価格の上昇によって粗利益率が2ポイント低下しました。現在は販売価格の見直しを進めています」と説明できれば、問題と対策を具体的に伝えられます。

試算表は銀行に提出するためだけでなく、社長が経営判断を行うための資料です。

2.資金繰り表で将来の現預金残高を予測する

利益が出ていても、資金繰りが安定しているとは限りません。

売掛金の回収よりも仕入代金の支払いが先行する場合や、借入金返済・納税・設備投資が集中する場合には、黒字でも資金不足が発生することがあります。

そのため、資金繰り表を作成し、今後の現預金残高を予測することが重要です。

例えば、次のような会社を考えます。

項目 金額
月初現預金残高 800万円
当月の入金予定 2,000万円
当月の支払予定(借入金返済を含む) 2,300万円
月末現預金残高見込み 500万円

この会社は、当月だけを見ると資金不足にはなりません。

しかし、翌月も300万円の資金流出が見込まれる場合には、現預金残高はさらに減少します。

このような状況を早期に把握できれば、売掛金回収の促進、支出の見直し、銀行への資金調達相談などを前もって検討できます。

資金繰り表は、少なくとも今後3か月程度を確認し、可能であれば6か月程度まで見通すと、納税や賞与、設備投資なども織り込みやすくなります。

3.借入金残高と年間返済額を一覧表で管理する

銀行が返済能力を判断する際には、会社全体の借入金返済額が重要になります。

複数の銀行から借り入れている場合には、銀行ごとの借入残高だけでなく、借入金ごとの毎月返済額や最終返済日を把握する必要があります。

例えば、次のような会社があるとします。

借入先 借入残高 毎月元金返済額
A銀行 3,000万円 50万円
B銀行 1,800万円 30万円
C銀行 1,200万円 20万円
合計 6,000万円 100万円

この会社の年間元金返済額は、毎月100万円×12か月=1,200万円です。

この返済額に対して、会社がどの程度の資金を生み出しているのかを確認する必要があります。

また、短期借入金の期日一括返済や、返済終了予定がある借入金については、返済予定表に基づいて別途確認します。

銀行から安心して融資を検討してもらうためには、既存借入金の返済予定と新たな融資の返済見通しを一緒に説明できることが重要です。

4.売掛金と在庫を管理して運転資金の増加を防ぐ

売上が増えている会社でも、売掛金や在庫が増えすぎると資金繰りが悪化することがあります。

例えば、月商2,000万円の会社で売掛金の回収期間が1か月から2か月に延びた場合、売上が一定で他の条件が変わらなければ、売掛金残高は概算で2,000万円増加します。

その増加分は、売掛金が回収されるまで会社の資金として使えません。

銀行は売上高だけでなく、売掛金の回収状況や在庫の増減にも注意を払います。

社長は毎月、次の点を確認してください。

  • 売掛金残高が売上高に対して増えすぎていないか
  • 回収予定日を過ぎた売掛金がないか
  • 特定の取引先への売掛金が集中していないか
  • 在庫の増加に合理的な理由があるか
  • 長期間売れていない在庫がないか

売掛金や在庫の増加が一時的なものなのか、構造的な問題なのかを把握することが重要です。

5.利益とキャッシュフローを比較して返済能力を確認する

銀行が融資審査で重視するのは、会社が借入金を返済できるかどうかです。

返済能力を確認する簡易的な目安の一つとして、次の計算があります。

簡易的な返済原資の目安

税引後当期純利益+減価償却費

例えば、税引後当期純利益が800万円、減価償却費が400万円の場合、簡易的な返済原資は1,200万円です。

年間元金返済額が900万円であれば、簡易的な返済原資が年間元金返済額を300万円上回ります。

ただし、この計算だけで返済に必要な資金が十分にあると判断することはできません。

売掛金や在庫の増加、設備投資、納税などによって、実際の現預金残高は変化するためです。

銀行への説明では、利益と減価償却費による計算だけでなく、資金繰り表によって実際の資金の動きも確認することが重要です。

6.自己資本と財務体質を継続して改善する

銀行は、会社の利益や返済能力に加えて、貸借対照表の内容も確認します。

特に、自己資本がどの程度あるか、借入金への依存が過度になっていないかといった点は、財務の安定性を考えるうえで重要です。

自己資本比率は、一般的に次のように計算します。

自己資本比率

自己資本÷総資産×100

例えば、総資産1億円、自己資本2,000万円であれば、自己資本比率は20%です。

自己資本比率は高いほど財務の安定性を示す材料になりやすいものの、業種や事業内容によって適切な水準は異なります。

自己資本比率だけで融資の可否が決まるわけではありません。

財務体質を改善するためには、利益の積み重ね、不採算事業の見直し、過大な設備投資の抑制、借入金の適切な管理などが重要になります。

なお、帳簿上の自己資本だけでなく、資産の実態や回収可能性も銀行の評価に影響する場合があります。

7.銀行へ業績と資金繰りを定期的に説明する

財務管理を行っていても、その内容が銀行に伝わっていなければ、融資審査で十分に活用されない場合があります。

銀行との面談では、次のような順序で説明すると、会社の状況を理解してもらいやすくなります。

  1. 現在の売上高と利益の状況
  2. 前年同期や計画との差異
  3. 業績が変化した理由
  4. 今後の受注や売上の見通し
  5. 資金繰りと借入金返済の見通し
  6. 問題点に対する改善策

例えば、業績が悪化している場合でも、次のように説明できます。

「今期は主要取引先の発注減少により、上期の売上高が前年同期比で10%減少しました。

一方、固定費の見直しによって月額30万円の経費削減を進めています。

下期は新規受注の増加を見込んでいますが、受注予定が確定していない部分もあるため、保守的な資金繰り表も作成しています。

現在の借入金返済を含めた今後6か月の資金繰りについて、ご説明したいと考えています。」

このように、実績、問題点、改善策、今後の見通しを具体的に説明することが重要です。

銀行に安心感を与えるのは、都合の良い数字だけを見せることではなく、問題点も含めて正確に説明できることです。

財務管理ができている会社とできていない会社の違い

同じ売上規模の会社でも、財務管理の状況によって銀行への説明力には差が生じます。

確認項目 財務管理ができている会社 管理が不十分な会社
業績 毎月の試算表で把握 決算時まで把握できない
資金繰り 将来の残高を予測 預金残高だけを確認
借入金 年間返済額まで把握 借入残高のみ把握
売掛金・在庫 増減理由を確認 増加原因を把握していない
銀行への説明 数字と改善策で説明 感覚的な説明が中心

財務管理が不十分だからといって、必ず融資を断られるわけではありません。

しかし、必要な資料や数字が揃っていなければ、銀行が返済能力を確認するために追加の調査や説明を求めることがあります。

経営者にとっても、毎月の財務管理を行うことは、銀行対応だけでなく、資金不足の予防や経営判断の精度向上につながります。

銀行融資・資金繰りのメール相談

「銀行から財務内容を改善するように言われた」「自社のどの数字が融資審査で問題になるのかわからない」「試算表や資金繰り表を銀行対応にどう活用すればよいか悩んでいる」といったことはありませんか。

長年の法人融資・融資審査の実務経験を踏まえ、銀行が確認するポイントや、財務上の課題を整理する方法についてメールでご相談をお受けします。

※ご相談はメールでの対応となります。融資の承認・実行を保証するものではありません。

社長が毎月確認したい財務管理の基本資料

銀行に説明できる財務管理を行うためには、特別に複雑なシステムを導入する必要はありません。

まずは、次の4つの資料を継続して確認することから始めてください。

1.月次試算表

売上高、粗利益、営業利益、経常利益などを確認します。前年同期や計画と比較し、変化の理由を把握します。

2.資金繰り表

今後の入金・支払予定と月末現預金残高を確認します。納税、賞与、設備投資などの大きな支出も織り込みます。

3.借入金一覧表

銀行別・借入金別の残高、金利、毎月返済額、返済期日などを管理します。年間の元金返済額も確認します。

4.売掛金・在庫の管理資料

売掛金の回収予定と滞留状況、在庫の増減や長期滞留を確認します。

これらの資料を別々に見るだけでなく、相互に関連づけて確認することが重要です。

例えば、試算表で売上高が増えているのに資金繰り表の現預金残高が減少している場合、売掛金や在庫の増加、借入金返済、設備投資などが原因になっていないかを確認します。

財務管理を改善するための3か月の進め方

これまで財務管理を十分に行っていなかった会社が、すべてを一度に整備する必要はありません。

次のように段階的に進める方法が考えられます。

1か月目:現在の数字を整理する

  • 直近の試算表を確認する
  • すべての銀行借入金を一覧にする
  • 現預金残高と今後の支払予定を整理する
  • 売掛金と在庫の残高を確認する

まずは会社の現状を把握することが目的です。

2か月目:問題点を特定する

  • 粗利益率が低下していないか
  • 借入金の返済負担が重すぎないか
  • 売掛金の回収が遅れていないか
  • 在庫が過剰になっていないか
  • 数か月先に資金不足が発生しないか

問題点が複数ある場合には、資金繰りへの影響が大きいものから優先順位をつけます。

3か月目:改善策を実行し、結果を確認する

  • 売掛金の回収促進
  • 不採算取引の見直し
  • 固定費の削減
  • 在庫管理の改善
  • 借入金返済計画の見直し

改善策を実行したら、翌月以降の試算表や資金繰り表で効果を確認します。

財務管理は資料を作成して終わりではなく、数字を確認し、改善策を実行し、その結果を検証することが重要です。

銀行に説明できる財務管理のチェックリスト

自社の財務管理について、次の8項目を確認してください。

自社の状況を確認してみましょう

確認できている項目にチェックを入れてください。








0 / 8項目を確認

確認できなかった項目は、今後整理すべき課題の候補です。

※チェック数は融資の可否や銀行の信用格付を判定するものではありません。財務管理の状況を整理するためのものです。

チェックできなかった項目はどう改善すればよいか

チェックできなかった項目があっても、すべてを一度に改善する必要はありません。

例えば、試算表を確認できていない場合には、まず月次で業績を把握できる体制を整えます。

資金繰り表を作成していない場合には、今後の入金予定と支払予定を整理することから始めてください。

借入金の年間返済額がわからない場合には、各銀行の返済予定表を集めて一覧にします。

銀行への説明に不安がある場合には、現在の業績、資金繰り、借入金返済の状況を整理し、どこに問題があるのかを明確にすることが大切です。

銀行が安心して融資できる会社の財務管理に関するよくある質問

Q1.黒字決算であれば銀行は安心して融資してくれますか?

黒字決算は融資審査でプラスの材料になり得ますが、それだけで融資が承認されるわけではありません。借入金の返済能力、足元の業績、資金使途、資金繰り、既存借入金なども確認されます。

Q2.試算表は毎月作成した方がよいですか?

毎月作成し、社長が確認することをおすすめします。銀行への提出だけでなく、売上や利益の変化を早期に把握し、経営判断に活用できるためです。

Q3.自己資本比率が低い会社は融資を受けられませんか?

自己資本比率が低いことは財務面の懸念材料になる場合がありますが、それだけで融資が不可能になるわけではありません。収益力、返済能力、今後の改善見通しなどを総合的に判断します。

Q4.銀行に資金繰り表を提出すると、資金不足が知られて不利になりませんか?

資金不足の見通しがある場合、銀行が慎重に判断する可能性はあります。しかし、問題を隠したまま融資を申し込むよりも、原因、必要資金、改善策を整理して早期に相談することが重要です。

Q5.財務担当者がいない会社でも財務管理はできますか?

可能です。社長がすべての資料を作成する必要はありません。会計担当者や税理士などと役割分担しながら、社長自身が重要な数字を毎月確認する体制を整えることが大切です。

Q6.財務管理を改善すれば銀行の信用格付は上がりますか?

財務管理の改善によって、銀行が会社の状況を把握しやすくなることはあります。ただし、信用格付は財務内容や返済状況などを含む各金融機関の基準に基づいて判断されるため、管理体制の整備だけで格付が上がるとは限りません。

まとめ|銀行から信頼される財務管理は毎月の積み重ね

銀行が安心して融資を検討できる会社を目指すには、決算書の数字を良くすることだけでなく、日常的な財務管理を充実させることが重要です。

特に、次の7つを意識してください。

  1. 毎月の試算表で売上と利益を確認する
  2. 資金繰り表で将来の現預金残高を予測する
  3. 借入金残高と年間返済額を一覧表で管理する
  4. 売掛金と在庫の増加を管理する
  5. 利益とキャッシュフローを比較して返済能力を確認する
  6. 自己資本と財務体質を継続して改善する
  7. 銀行へ業績と資金繰りを定期的に説明する

銀行からの評価を高めるための財務管理は、銀行に提出する資料を整えることだけが目的ではありません。

会社自身が資金繰りや財務上の問題を早期に把握し、改善を続けられる体制をつくることが本来の目的です。

その積み重ねが、銀行への説明力を高め、安定した資金調達を検討するうえでの土台になります。

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