資金繰り

資金繰り表を作っても資金不足が解消しない7つの理由|銀行員が改善策を解説

「資金繰り表を作成しているのに、毎月の資金不足が解消しない」

「銀行から融資を受けても、しばらくするとまた資金が足りなくなる」

「資金繰り表では預金が残る予定だったのに、実際には支払いが苦しくなっている」

このような悩みを抱える中小企業経営者は少なくありません。

資金繰り表は、将来の入金と支払いを予測し、資金不足を早期に発見するための重要な資料です。

しかし、資金繰り表を作成しただけで、会社の資金繰りが改善するわけではありません。

資金繰り表によって資金不足の時期や金額が明らかになっても、その原因に対する具体的な改善策を実行しなければ、預金残高は減り続ける可能性があります。

この記事では、長年にわたり法人融資・融資審査に携わってきた銀行員の立場から、資金繰り表を作っても資金不足が解消しない7つの理由と、実際に資金繰りを改善するための対策を解説します。

この記事でわかること

  • 資金繰り表を作っても資金不足が解消しない理由
  • 資金不足が一時的か継続的かを判断する方法
  • 資金繰り表の予測と実績がずれる原因
  • 資金不足額を具体的に計算する方法
  • 資金繰り改善のために社長が実行すべき対策
  • 銀行へ融資を相談する際の説明方法
  • 資金繰り管理の8項目チェックリスト

資金繰り表を作っても資金不足が解消しないのはなぜか

結論から言えば、資金繰り表は資金不足を発見するための資料であり、資金不足そのものを解消する手段ではないからです。

例えば、資金繰り表を作成した結果、2か月後に500万円の資金不足が発生することがわかったとします。

この段階で必要なのは、単に資金繰り表の数字を修正することではありません。

なぜ500万円不足するのかを分析し、入金の増加、支出の削減、資金調達などの対策を検討することです。

資金繰り表を「作ること」から「改善に使うこと」へ変える必要があります。

資金繰り表には3つの役割がある

  1. 将来の資金不足を予測する
  2. 資金不足の原因を明らかにする
  3. 改善策を実行した場合の資金繰りを確認する

この3つの役割を果たして初めて、資金繰り表は経営改善に役立つ資料になります。

資金繰り表を作っても資金不足が解消しない7つの理由

理由1.入金予定を楽観的に見積もっている

資金繰り表でよくある問題の一つが、入金予定を実際よりも早く、または多く見積もっていることです。

例えば、得意先から月末に500万円入金される予定としていたものの、実際には300万円しか入金されなかった場合、200万円の差が生じます。

売上予定をそのまま入金予定としている場合にも注意が必要です。

掛売りであれば、売上が計上されても、売上代金を回収するまでは現金が増えません。

改善策は、売上予定と入金予定を分け、得意先別の回収予定日を確認することです。

入金が確定していない売上については、受注状況や過去の回収実績を踏まえて慎重に見積もります。

理由2.支払予定に漏れがある

仕入代金や人件費は資金繰り表に反映していても、税金、社会保険料、賞与、設備代金などを見落としている場合があります。

また、借入金の利息だけを計上し、元金返済を反映していないケースにも注意が必要です。

借入金の元金返済は原則として損益計算書の費用にはなりませんが、返済時には現金が減少します。

支払予定の漏れを防ぐには、通帳、借入金返済予定表、納税予定、請求書などを照合することが重要です。

理由3.営業収支が継続的に赤字になっている

資金繰り表で特に確認したいのが、通常の営業活動による資金収支です。

例えば、毎月の営業収支が100万円のマイナスであれば、ほかの資金移動がないと仮定すると、6か月間で600万円の資金が減少します。

このような状態で銀行から500万円を借り入れても、営業収支が改善しなければ、再び資金不足が発生する可能性があります。

営業収支が継続的にマイナスの場合には、売上高、粗利益率、固定費、売掛金の回収状況などを確認する必要があります。

追加融資だけでなく、本業の収益と営業収支を改善することが重要です。

理由4.借入金の元金返済が重すぎる

営業収支がプラスでも、銀行借入金の元金返済が大きければ、預金残高が減少する場合があります。

例えば、毎月の営業収支が80万円のプラスで、借入金の元金返済が150万円ある会社を考えます。

ほかの収支がない場合、毎月70万円ずつ資金が減少します。

毎月の資金収支の例

営業収支:+80万円

借入金元金返済:-150万円


差引資金収支:-70万円

この場合には、銀行別の借入金返済予定を整理し、会社全体の返済負担を確認する必要があります。

返済が難しくなる見込みであれば、返済期日前に銀行へ相談してください。

理由5.売掛金や在庫の増加を見落としている

売上が増加すると、売掛金や在庫が増え、必要運転資金が増加する場合があります。

例えば、売上が増えても売掛金の回収期間が長ければ、仕入代金などの支払いが先行します。

また、販売見込みを超えて在庫を仕入れると、その分だけ資金が固定されます。

資金繰り表を確認する際には、損益計算書だけでなく、売掛金や棚卸資産などの残高も合わせて確認することが重要です。

理由6.月末残高だけを見ている

月末の預金残高がプラスであっても、月の途中で資金不足が発生する場合があります。

例えば、次のような会社です。

  • 月初の現預金残高:300万円
  • 10日の支払い:500万円
  • 25日の売上入金:700万円

ほかの入出金がない場合、月末残高は500万円になります。

しかし、10日の支払時点では200万円不足します。

月末残高だけを見ていれば、この資金不足を見落とす可能性があります。

資金繰りが厳しい場合には、月次だけでなく週別・日別の資金繰り表も作成してください。

理由7.資金繰り表を更新するだけで改善策を実行していない

資金繰り表を毎月更新していても、改善策が実行されていなければ、資金不足は解消しません。

例えば、売掛金の回収遅延が原因とわかっていても、得意先への確認や回収条件の見直しを行わなければ、状況は変わりません。

在庫の増加が原因とわかっていても、仕入計画を見直さなければ、資金は在庫に固定されたままです。

資金繰り表で問題を発見したら、改善策、担当者、実行期限を決めることが重要です。

資金不足が一時的か継続的かを判断する

資金繰り改善で重要なのは、資金不足の原因が一時的なものなのか、継続的なものなのかを区別することです。

一時的な資金不足の例

売掛金の入金が翌月になる一方で、仕入代金や外注費の支払いが今月発生する場合です。

入金予定に合理的な根拠があり、その後の資金繰りが安定する見通しであれば、入金までのつなぎ資金を銀行に相談することが考えられます。

継続的な資金不足の例

毎月の営業収支が赤字で、借入金を増やさなければ支払いができない状態です。

この場合には、一度融資を受けても、営業収支が改善しなければ再び資金不足になる可能性があります。

比較項目 一時的な不足 継続的な不足
主な原因 入金と支払いの時期のずれ 収益不足・過大な返済負担など
確認すること 入金の確実性と時期 営業収支と返済能力
主な対応 回収促進・つなぎ資金など 収益改善・返済負担の見直しなど

実際には、一時的な資金不足と継続的な資金不足が同時に発生する場合もあります。

資金繰り表から必要資金額を計算する方法

資金繰り表で資金不足が予想された場合には、いつ、いくら不足するのかを計算します。

資金不足額の計算例

ある会社の今後3か月の資金繰り見込みが次のとおりだったとします。

項目 11月 12月 1月
月初現預金 800万円 500万円 100万円
入金予定 1,200万円 1,000万円 1,100万円
支払・返済予定 1,500万円 1,400万円 1,400万円
月末現預金見込み 500万円 100万円 -200万円

この例では、追加対策を講じなければ、1月末の現預金残高が200万円のマイナスになる見込みです。

したがって、月末残高だけを基準にすれば、少なくとも200万円の資金対策が必要です。

ただし、実際には月の途中の資金不足や、事業継続に必要な最低手元資金も考慮する必要があります。

最低手元資金を考慮する

仮に、この会社が最低300万円の手元資金を確保する必要があると判断した場合には、次のように計算できます。

必要な資金対策額の目安

最低手元資金300万円-1月末現預金見込み(-200万円)

=500万円

この500万円は、最低手元資金を維持するために必要な対策額の例です。

必ずしも500万円全額を銀行から借り入れる必要があるという意味ではありません。

売掛金の回収促進、支出の見直し、設備投資時期の調整などによって不足額を減らせる場合があります。

また、銀行融資の必要額は、資金使途や返済見通しなどを踏まえて検討する必要があります。

資金繰り表を改善につなげる5つの実践方法

1.資金繰りの予定と実績を毎月比較する

資金繰り表は、作成した時点の予測です。

実際の入金と支払いが予測どおりになるとは限りません。

月末には、予定と実績の差を確認し、その理由を整理してください。

例えば、予定より入金が200万円少なかった場合には、回収遅延なのか、売上の減少なのかを確認します。

2.営業収支と財務収支を分けて確認する

資金繰り表では、営業活動による収支と、借入・返済などによる収支を区別して確認することが重要です。

借入金によって預金残高が維持されている場合、営業活動自体は資金不足になっている可能性があります。

また、営業収支がプラスでも、元金返済が多ければ資金が減少する場合があります。

3.資金不足の原因別に対策を決める

資金不足の原因 主な改善策
売上・粗利益の減少 販売価格、原価、固定費の見直し
売掛金の回収遅延 入金確認、回収条件の見直し
在庫の増加 仕入計画と滞留在庫の見直し
元金返済の負担 返済予定の整理と銀行相談
設備投資の集中 投資時期・資金調達方法の見直し
税金・賞与などの集中 年間支払計画と早期の資金準備

4.改善策を反映した資金繰り表を作成する

例えば、売掛金の回収促進によって翌月の入金が100万円増える見込みであれば、その効果を資金繰り表に反映します。

ただし、実現が確定していない対策は、必ず実現するものとして計上しないよう注意してください。

基本となる資金繰り表とは別に、改善策が実現した場合の試算を作る方法も有効です。

5.改善策の担当者と期限を決める

改善策を実行するためには、担当者と期限を明確にすることが重要です。

例えば、次のように決めます。

  • 売掛金の入金遅延の確認:営業責任者が今週中に実施
  • 滞留在庫の調査:仕入担当者が月末までに実施
  • 借入金返済予定の整理:経理担当者が今週中に作成
  • 銀行への資金繰り相談:社長が資金不足の見込みを確認した段階で実施

資金繰り表を経営会議などで確認し、改善策の実施状況も継続して管理してください。

銀行融資・資金繰りのメール相談

「資金繰り表を作成しても資金不足が解消しない」「銀行から借りても再び資金が足りなくなる」「借入金の返済負担をどう考えればよいかわからない」といったお悩みはありませんか。

資金繰りの改善には、不足額だけでなく、その原因と今後の返済見通しを整理することが重要です。

長年の法人融資・融資審査の実務経験を踏まえ、銀行が確認するポイントや相談時の考え方について、メールでご相談をお受けします。

※ご相談はメールでの対応となります。融資の承認・実行や返済条件の変更を保証するものではありません。

銀行は資金繰り表のどこを確認するのか

銀行が資金繰り表を確認する目的は、資金不足の原因、必要額、必要な時期、融資後の資金繰り、返済見通しなどを把握することです。

資金不足の原因が明確になっているか

銀行は、売上代金の回収遅延による一時的な不足なのか、営業収支の赤字による継続的な不足なのかを確認します。

原因によって、検討する融資の内容や必要な改善策が異なります。

融資後に資金繰りが安定するか

例えば、500万円の融資を受けることで当面の資金不足が解消しても、その後も毎月100万円ずつ資金が減少するのであれば、再び資金不足が発生する可能性があります。

銀行は、融資実行後の資金繰りも確認します。

借入金を返済できる見通しがあるか

銀行融資は原則として返済が必要です。

そのため、融資後の資金繰り表には、新たな借入金の返済予定も反映する必要があります。

銀行への説明では、資金が不足する理由だけでなく、融資後にどう改善し、どのように返済するのかを示すことが重要です。

資金繰り表を作っても改善しない場合のチェックリスト

次の8項目を確認し、自社の資金繰り管理に不足している点がないか整理してください。

確認できている項目にチェックを入れると、項目数と進捗バーが更新されます。

資金繰り改善のための8項目チェックリスト

自社で確認・実行できている項目にチェックを入れてください。


0 / 8項目を確認

確認できなかった項目は、今後整理すべき課題の候補です。

※このチェックリストは資金繰り管理の状況を整理するためのものです。チェック数によって会社の安全性や融資の可否を判定するものではありません。

チェックできなかった項目から改善する

例えば、入金予定の確認ができていない場合には、得意先別の入金予定表を作成してください。

営業収支の確認ができていない場合には、通常の営業活動で資金が増えているのか減っているのかを整理します。

改善策を決めていない場合には、資金不足の原因ごとに具体的な行動と期限を設定してください。

すべての項目にチェックが入っても、資金繰りが安全であることを意味するわけではありません。実際の数字を継続して確認することが重要です。

資金繰り表を作っても資金不足が解消しない場合のよくある質問

Q1.資金繰り表を作れば資金不足は改善しますか?

資金繰り表を作るだけでは改善しません。資金不足の原因を明らかにし、回収促進、支出の見直し、収益改善、資金調達などの対策を実行する必要があります。

Q2.資金繰り表では預金が残る予定なのに、実際には足りなくなるのはなぜですか?

入金予定の遅れ、支払予定の漏れ、売上見通しの過大評価、月中の資金不足の見落としなどが考えられます。予定と実績を比較して原因を確認してください。

Q3.毎月の営業収支が赤字の場合はどうすればよいですか?

売上、粗利益率、固定費、売掛金の回収、在庫などを確認し、営業収支が赤字になる原因を調べます。必要に応じて資金調達を検討するとともに、継続的な改善策を実行することが重要です。

Q4.資金不足が予想された場合、すぐに銀行へ相談すべきですか?

資金不足の時期や金額が見えてきた段階で、早めに相談することをおすすめします。資金繰り表が完成していなくても、返済や支払いが難しくなる見込みがあれば、相談を先延ばしにしないことが重要です。

Q5.資金繰り表は何か月先まで作るべきですか?

まずは3か月から6か月程度の見通しを作成する方法があります。資金不足が迫っている場合には、週別・日別の資金繰りも確認してください。

Q6.銀行融資を受ければ資金繰りは改善しますか?

融資によって一時的な資金不足を解消できる場合があります。ただし、営業収支の赤字などが続けば、再び資金不足になる可能性があります。融資後の返済も含めて資金繰りを確認する必要があります。

まとめ|資金繰り表は作成後の改善行動が重要

資金繰り表を作っても資金不足が解消しない主な理由は、次の7つです。

資金不足が解消しない7つの理由

  1. 入金予定を楽観的に見積もっている
  2. 支払予定に漏れがある
  3. 営業収支が継続的に赤字になっている
  4. 借入金の元金返済が重すぎる
  5. 売掛金や在庫の増加を見落としている
  6. 月末残高だけを見ている
  7. 改善策を実行していない

資金繰り表は、会社の資金不足を予測するための重要な資料です。

しかし、資金繰りを改善するには、資金不足の原因を調べ、具体的な対策を実行し、その結果を再び資金繰り表で確認する必要があります。

資金繰り表の目的は、表を完成させることではなく、会社が支払いを続けられる状態を維持することです。

毎月の数字を確認し、資金不足が予想された段階で早めに行動してください。

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